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辺野古:埋立土砂の問題 その2

2015年04月27日 / 辺野古

土砂問題の続きが沖縄タイムスに掲載されました。


4月25日沖縄タイムスより

県も対応策を考えています。

4月26日沖縄タイムス


これは3月24日に秘策として報道されたものです。奄美大島などの山や森を破壊して、沖縄の海を埋めることは許されません。秘策の実現を応援しています。


3月24日沖縄タイムスより

★署名のお願い★
この問題に想いを寄せて下さる方はぜひ署名にご協力ください

http://goo.gl/eL7ady

(執筆:さめ)  

Posted by 沖縄BD at 00:42Comments(0)

県知事の海上作業停止の「指示」をめぐって Part III

2015年04月25日 / 辺野古/ 辺野古・大浦湾/ ボーリング調査

Part III(Part IとPart IIを書いてから少し時間が経ってしまいましたが、Part IIIです)
Part I とPart IIでは、翁長知事が沖縄防衛局に対して出した海上作業停止の「指示」をめぐる沖縄県と沖縄防衛局の動きについて、法制度や関連する手続きの問題に焦点を置き述べてきた。ここPart IIIでは、翁長知事の「指示」と評価と、この対立の検証から見えてきた翁長知事の基地建設阻止の手法についての考察と、翁長知事と沖縄県に対する提案を試みたい。



翁長知事の海上作業停止の「指示」をどうみるか
沖縄BDとしては、翁長知事による海上作業停止の「指示」と、それに伴って示された、破砕の検証に基づいての「岩礁破砕の許可」の取り消しという方向性を、基本的に評価している。なぜならは、それは3月13日に、沖縄県議会の農林水産委員会で対応してもらう予定で沖縄BDが提出していた陳情の内容と一致しているからだ。

陳情では、沖縄防衛局の「岩礁破砕の許可」区域外での巨大コンクリートブロック投入と「仮設桟橋(岸壁)」の設置を、ボーリング調査の「協議」の手続きとリンクさせ正当化しようとする問題を指摘しながら、

1. 沖縄県知事/沖縄県は、県が制定した「岩礁破砕等の許可に関する取扱方針」に鑑み、沖縄防衛局のボーリング調査に関わる問題点を早急に整理し、それを踏まえて、同方針11「その他」の(4)「無許可行為に対する措置」に従い、沖縄県知事はボーリング調査の停止及び、巨大コンクリート・ブロックにより損傷したサンゴの現状回復を命ずること。沖縄県知事/沖縄県の問題点の整理においては、辺野古・大浦湾において環境保全活動を行う市民からの情報も参考にすること。

2. 沖縄県知事は、沖縄防衛局がボーリング調査停止の命令に従わない場合、岩礁破砕の許可を取り消すこと。

としていた。 陳情はこちら%E5%B2%A9%E7%A4%81%E7%A0%B4%E7%A0%95%E7%AD%89%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E9%99%B3%E6%83%85%EF%BC%88%E6%B2%96%E7%B8%84BD%EF%BC%89.pdf (PDF: 148.53KB)

沖縄BDが陳情で強調したのは、沖縄県と沖縄防衛局が「岩礁破砕の許可」や「ボーリング調査」「協議」手続きの正当性(不正当性)の解釈をめぐり議論する間にも、ボーリング調査が継続され、それに伴って「仮設桟橋」が設置されることへの危機感である。

それゆえ、沖縄防衛局が作業停止指示を無視し、米軍が岩礁破砕についての検証調査の許可を与えないという現状では、翁長県知事は早急に「岩礁破砕の許可」の取り消しを行うべきだ、としていた。また、今回知事が実際に行った「指示」(「行政指導」)ではなく、「命令」(「行政命令」)という強い形での対応を求めていた。そして、その根拠として、翁長知事が示したように、沖縄県の海岸環境と漁業場業を反映させて県が制定した「岩礁破砕の取扱方針」とすべきである、としていた。

この沖縄BDの陳情は、県議会により「農林水産委員会」ではなく「基地対策特別委員会」が対応する判断となった。それゆえ今議会ではなく、次回の議会で取り扱われることに決まった。しかし次回の議会での議論を待つまでもなく、翁長県知事が陳情を実行してくれた形となっている。(なおこのような場合、提出した陳情がどのように扱われるのかは議会事務局に確認してみたい。)

翁長知事の「指示」とその後の対応から見えてくること:「法制度」「手続き」の闘い
今回の翁長知事の海上作業停止の「指示」や、その後の沖縄防衛局と日本政府の反応に対する翁長知事の意見書の提出等の対応からは、翁長知事の辺野古基地建設を止める手法が読み取れるのではなかろうか。翁長知事は「あらゆる権限を使って」基地建設を止めるとしているが、それが今回の一連の対応に具体的に示されたと言えよう。

それは、
1)できるだけ細かく、数多くの、法制度や手続きに基づいた課題)を沖縄防衛局と日本政府に突き付ける。(作業停止の要請、作業停止の指示、調査のための臨時水域への立ち入り許可の要請、「弁明証」の提出等)

2)その課題に対して、沖縄防衛局や日本政府が、反故、無視、さらには違法な対応をして、建設に向けての作業を強行するが、むしろそれを前提として、反故、無視、違法な対応を防衛局と政府に積み重ねさせる。(翁長知事や沖縄県は、今回の日本政府の対応を「想定内」としていたと沖縄タイムス 2015年3月31日は伝えている。)

3) 積み重ねられる反故、無視、あるいは違法な対応を根拠とし、「岩礁破砕の許可」、そして最終的には「埋立て承認」の取り消し・撤回へと臨む。承認の取り消し・撤回後は、防衛局の反故、無視、違法な対応を根拠に裁判等で闘う。

という手法ではなかろうか。

行政手続き上の最終決着点を、埋立て承認の取り消しにおいた、手堅い、保守的なアプローチとも言える。これは翁長知事が、「埋立て承認」の取り消しあるいは撤回にむけ設置した「第3者委員会」の特徴や動きと共通している(第3者委員会についての沖縄県からの情報はこちら。情報が非常に限られているのだが、、、)。

勿論、今回の「指示」を含めて翁長知事の対応については賛否両論分かれている。権力と対峙するには、慎重過ぎることはないとし、行政上の法制度、手続きを可能な限り検証していくことを支持する人々もいる。一方で、ボーリング工事が強行されるなか、いつまで待つのか、早めに「埋立て承認」を基地建設反対の「民意」を基に撤回し、工事自体を止めるべきだ、細かい検証はその後でもいい、という議論もある。

いずれの立場をとるにしても、今回の海上作業停止の「指示」をめぐる、翁長知事/沖縄県と沖縄防衛局と日本政府の対峙の様相から、以下の2点が明確になったと言っていいだろう。

まず1点目は、全くの予想通り、日本政府は、沖縄防衛局を矢面に立たせながら、農林水産省、防衛省、外務省、(環境省?)という行政省を使い、圧倒的な権力をもって翁長知事に対抗していく、ということだ。そして、裁判闘争となっても、これまでの日本国内における、あるいは沖縄における司法と国家行政の関係をみていると、国政府が有利な立場にある、ということだ。

これは、沖縄防衛局が3月24日に農林水産省に不服を申し立て、その1週間後には、防衛局の要求を全面的に受け入れる形で同相が4月30日には知事の「指示」の効力を停止させたことに如実に表されている。どのような検証を持って、農林水産相の判断が下されたのかも不透明であり、確かな検証よりも国の「建設ありき」の方針を優先させたといえる。

一方2点目は、沖縄防衛局も日本政府も、その権力のみ依拠し、法制度や手続きを完全に無視した形で強行することはできないだろう、ということだ。Part IIで述べたように、岩礁破砕をした巨大コンクリートブロックの投入が、「協議」を通して、沖縄県から了承を得たと主張せざるをえないこと自体が、(全く当たりまえなのだが)、法制度や手続きに縛られていることを示している。

このパラドックス的な状況を踏まえると、沖縄防衛局が押し進める基地建設において法制度や手続きにおける問題をあぶり出す(そして次に備える)という翁長知事の手法は、道理にかなっていると言えるだろう。

「民意」、「法制度」、「手続き」の関係
ここで翁長知事の手法を検証・評価する意味で、「民意」と「法制度」「手続き」の関係について指摘しておきたいことがある。

「民意」という点では、新聞等による世論調査等で示されてきたように、沖縄県民はこの普天間基地の辺野古への移設計画が出て以来、常に60%以上の人々が反対してきた。沖縄タイムス 2015年4月21日)そしてこの基地建設に反対する翁長知事や国会議員、名護市長の誕生をもって、知事が言う「圧倒的民意」が示されたといえる(琉球新報 2015年4月17日)。


     2014年9月の辺野古での反基地建設集会にての翁長知事(当時はまだ知事候補者)

しかし「民意」だけでは十分でない、というのがこの問題に取り組んできた沖縄BDの見解だ。

なぜなら、逆説的に、かつ極端な例で述べると、もし「民意」により基地建設や環境破壊が容認されれば、既存の法制度やその手続きを全て無視する形でも、基地建設や環境破壊が許されるのか、という問題になるからだ。基地建設や環境破壊という「民意」が既存の法制度や手続きに反するならば、その「民意」は実現されてはならないし、もし実現するのであれば、まず法制度そのものを変えていく必要があるはずだ。

さらに言えることは、これまで、民主的に選挙で選ばれた歴代の知事や名護市長が、「世論調査」等で示される基地建設反対の「民意」に反して、基地を容認してきた事実がある。日本政府は(そして米国政府は)、選挙で選ばれた歴代の知事と市長の示した「民意」を根拠に、これまで基地建設を進めてきているのだ。そしてそれが法制度や手続きと結びつく形で如実に示されたのが、仲井真前知事の公有水面埋立ての承認だ。現在、日米両政府が主張しているのは、仲井真前知事が正当な手続きを踏んで埋立てを「承認」した、ということだ。

このように考えると、「民意」を主張するだけではなく、やはり「法制度」や「手続き」の問題を追求することは不可欠である。沖縄BDは、一貫して、辺野古・大浦湾における基地建設計画は、「民意」の観点からも、環境アセス、埋立て承認の「法制度」「手続き」の観点からも問題であると指摘してきた。そして、日本政府からの圧力のもと、仲井真現知事と当時の沖縄県が、「民意」を無視し、自らの手で「法制度」や「手続き」をねじ曲げ、「埋立て承認」をしたと認識している。

Part IとPart IIでも指摘したように、翁長知事と現在の沖縄県は、沖縄防衛局や日本政府と対峙しているだけではなく、仲井真前知事と彼の県政下の沖縄県とも対峙しているといえる。私たちはそこをきちんと認識する必要があるだろうし、私たちが怒り、そして追求すべきは、仲井真前知事と沖縄県をそのような立場に追い込んだ日本政府と、それに屈した仲井真知事と沖縄県である。

まとめにかえて:翁長知事と沖縄県への提案
これから翁長知事と沖縄県が基地建設阻止に取り組むなかで、最大の礎となるのは、沖縄県民の建設反対の意思「民意」であり、「民意」に基づいた様々な「行動」であり、その「民意」と「行動」に対する日本本土や国際社会からの支援だ。そして防衛局や日本政府が最も恐れているのは、沖縄の揺るがない建設反対の「民意」であり、それに基づく「行動」であり、そして国内外からの沖縄への「支援」である。それゆえPart IとPart IIで述べてきた「法制度」や「手続き」の問題は、県民の「民意」及び県内外からの支援に対して、さらなる正当性を与えるものとして、明確に位置づけられるべきである。

そしてそのためには、法制度や手続きがねじ曲げられながらこの基地建設が押し進められてきた事実を、翁長知事と沖縄県がしっかりと県民や国内外の支援者に伝えることが必要である。

その意味で、今回の「岩礁破砕の許可」区域外での巨大コンクリートブロック投入とサンゴの破砕の問題は、まさに、翁長政権が、沖縄防衛局と日本政府の法制度や手続きをねじ曲げている姿を浮き彫りにする絶好の機会だといえる。また仲井真政権の時代の問題を明確にし、是正していく機会であり、7月に下される「埋立て承認」の取り消しまたは撤回に向けての貴重なステップとなると言えよう。

しかしそのためにも、翁長知事と沖縄県が解決しなければならない課題がいくつかある。

まず1点目は、現在の沖縄県が、このコンクリートブロック投入、サンゴの破砕に関わる「法制度」や「手続き」の問題に関する立場や見解きちんと県民や県内外の社会に伝えてきれていないということだ。沖縄県のHPをみても、同問題について殆ど何も書かれていない(沖縄県のHPはこちら)。県の立場はどうなのか。非常に分かりにくい。さらに、国際的にも注目され、米国政府にむけての対応が必要であるにもかかわらず、これらの問題に関しての沖縄県からの英語による情報発信も非常に少ない。

現在の翁長県知事や沖縄県は、県の情報や見解を記者会見等を通して、県内のメディアに情報発信をさせている。しかしこの県内メディア依存のこの状況は好ましいとは言えない。県内メディアは決して沖縄県の代弁者ではないし、そうであってはならないはずだ。さらには、本土の大手メディアとの力関係のなかでは、県内のメディアの影響力は限られており、メディアを通しても、翁長知事や沖縄県の立場や見解はきちんと伝わっていないのが現状であろう。(この問題については、東京新聞 2015年1月22日の記事を参考に。記事はこちらでも読めます。)

沖縄県知事や沖縄県は、沖縄県民は勿論、国内外(米政府も含めて)に向けての、HP等を通した、自らの言葉による明確な情報やメッセージの発信が必要である。

2点目の課題は、沖縄県がこの問題に取り組むなかで、環境NGOを含む市民団体の監視活動、環境調査、政府との交渉との報告をこれからどのように効果的に扱うのか、つまり市民社会への対応についてだ。巨大コンクリートブロックの投入やサンゴの破砕は、最初にヘリ基地反対協のチームレインボーにより確認され、その後幾つかの市民団体が県への要請等を通して情報を提供してきた。また法制度や手続き上の問題点を指摘してきたのも市民団体である。沖縄県はそれらを受けて独自の調査へ着手した経緯がある。しかし現在沖縄県は、「中立性」や行政の立場ということからか、自らの調査や独自の検証にこだわっているようにも見うけられる。

しかし、臨時制限区域においては米軍による調査許可も得られていない現状や、調査に費やする時間や予算等を考慮すると、沖縄県が独自の調査を行い、意義ある結果を時宜に生み出すことは難しいのが実状であろう。そのような状況のなかで、「中立性」を踏まえながら沖縄県ができることは、沖縄防衛局によるサンゴ破砕の調査報告を検証し、防衛局の意見や見解も聞きながら(沖縄防衛局が設置した環境監視等委員会第4回委員会の議事録等はこちら)、同時に市民団体の調査報告や意見・見解を積極的に収集していくことではないだろうか。両サイドからの情報や見解を沖縄県が収集し、検証し、沖縄県としての対応を進めていくという方法である。

実際、Part IIで議論した「仮設桟橋」について、環境NGOのジュゴン保護キャンペーンセンターは、4月17日の防衛省との交渉において、防衛省から重要な見解を引き出しいる。防衛省の交渉担当は、「仮設桟橋」が設置されていない現在の状況でもボーリング調査を行うことは可能であると認めた上で、「仮設桟橋」は作業の「効率上」設置するものである、という見解を示した(交渉についてのSDCCのブログはこちら)。言い換えれば、事実上の「埋立て」作業となる「仮設桟橋」の設置は、ボーリング調査の現段階では必ずしも要らないということだ。この防衛省の見解を、沖縄県はみずから確認し、現在農林水産相が調停する形となっている巨大コンクリートブロック投入やサンゴ破砕の問題とは独立した形で、桟橋設置はさせない、という対応ができるはずである。


       (琉球新報 2015年 3月4日からの画像)
  「仮設桟橋」設置のために「港湾築堤マット」を海中に投入する準備はすでにできている?


翁長知事のリーダーシップのもと、沖縄県が勇気と気概をもって、自己浄化しながら、この巨大コンクリートブロックの投入やサンゴの破砕の問題について取り組み、そして翁長知事による公有水面埋立ての承認の取り消しあるいは撤回に向けての貴重なステップとすることを希望する。
  

Posted by 沖縄BD at 12:10Comments(0)

辺野古:埋立土砂の問題 その1

2015年04月25日 / 辺野古アセス/ 辺野古

辺野古の埋め立ては沖縄の自然破壊を招くだけのものでありません。埋め立てを行う際には大量の土砂が必要で、奄美大島、徳之島、小豆島、五島列島、門司など多くの場所から土砂の調達が予定されています。つまり日本各地の自然も同時に、大きな影響を受けるということを意味します。

沖縄タイムスがここ2日間、この問題を連載していますのでぜひご覧ください。 



4月23日掲載分




4月24日掲載分

★署名のお願い★
署名にご協力お願いします。

http://goo.gl/eL7ady


参考:辺野古埋め立て土砂採取に反対署名へ 予定地の奄美・瀬戸内海
http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=107608

(執筆:さめ)
  

Posted by 沖縄BD at 04:33Comments(0)

沖縄市サッカー場:17本のドラム缶から新たに有害物質検出の発表と報道

2015年04月19日 / 枯れ葉剤/ 沖縄防衛局/ 基地返還跡地/ 汚染/ 沖縄市サッカー場/ 沖縄県環境政策/ 日米地位協定/ 環境協定

 3月23日、沖縄防衛局は「 嘉手納飛行場返還跡地内(現沖縄市サッカー場)において2月6日から2月19日までの間 で発見されたドラム缶(17本)の付着物や底面土壌等について(中間報告)」[2015.03.23]を発表しました。

 
目が...

http://www.mod.go.jp/rdb/okinawa/07oshirase/kanri/kanri-info/270323okinawashisakkadoramu.pdfより抜粋
 
その報道を下にまとめました。

報道は、下にみられるとおり、基準値のとり方による混乱がありましたが、その件については、報道の中でもコメントくださった池田こみちさんがブログ記事で説明してくださっています。この記事には、発見された有害物質についての説明もありますので、リンクをたどってみてください。

沖縄の基地返還跡地で 今度は高濃度のVOC汚染発覚 池田こみち(環境総合研究所 顧問)(2015.3.25)
"・・・注意を要するのは、①のドラム缶付着物については、評価を廃掃法に基づく産廃の埋立基準を用いて判定し、②の底面土壌については、土対法(土壌汚染対策法)の特定有害物質の溶出基準を用いている点である。そのため、この発表を受けて翌24日の各紙の記事では、基準値の何倍かについて取り上げ方が分かれて読者の間に混乱が広がった。
 琉球新報は、①についても土対法に準拠し45万倍としたのに対し、沖縄タイムスは①は廃棄物なので4万5500倍とした。それぞれ間違いではないが、発見された場所がこれまで同様、嘉手納基地返還跡地で沖縄市がサッカー場として整備している場所であること、また、ドラム缶付着物といっても数十年前に埋められたものが掘り起こされた結果明らかになった物であり、付着物とそれが周辺にこぼれ落ちた土壌との明確な区分が出来ないことから判断し、より安全側にたった評価を行うことが今後の対策の検討の上からも望ましい。
 環境基準や判定基準はあくまでも汚染のレベルを判断し、行政上の判断、措置等を検討するためのものであり、住民にとっては廃棄物であれ、土壌であれ高濃度の汚染が、由々しくも、子どもたちが走り回るサッカー場で発見されたという事実である。”
  
 ここにあるとおり、ドラム缶付着物と底面土壌が別の基準でとられています。それについては、調査の目的が何なのか、汚染の実態を踏まえ、議論の必要があると思われます。
 防衛局の発表内容については、他にも問題がありますので、これはリリースを聞くメディアへの意識喚起も含め、改めて問題化したいと思います。

◯沖縄タイムス


こちらは沖縄市の声を拾っています。


◯琉球新報




◯QAB サッカー場ドラム缶に極めて濃度の高い有害物質 (2015.3.23)
"沖縄市のサッカー場で地中から発見されたドラム缶について、沖縄防衛局は、きわめて濃度の高い揮発性の有害物質が新たに検出されたと発表しました。
沖縄市のサッカー場では先月新たに17本のドラム缶が発掘され、沖縄防衛局がこのドラム缶の付着物や土壌を調査していました。
その結果、このうち地表面から3.2メートルの地点にあったドラム缶の下の土壌から、揮発性の有害物質ジクロロメタンが1リットルあたり100ミリグラム、環境基準値の5000倍という非常に高い濃度で検出されました。
沖縄防衛局では25日にも、より深い部分の土壌の調査を再開しますが、すべての調査結果が出るには半年以上かかる見通しで、その間、掘り起こした土は飛散防止の処置をしたうえでサッカー場に仮置きする状態が続くということです。"
  

Posted by 沖縄BD at 21:50Comments(0)

沖縄市サッカー場調査結果に対する専門家意見について (要請文)

2015年04月19日 / 枯れ葉剤/ 沖縄防衛局/ 基地返還跡地/ 汚染/ 沖縄市サッカー場/ 沖縄県環境政策/ 環境協定

 たまり水の調査報告に関する専門家の意見を踏まえ、3月19日に要請文を関係機関に送付しました。



---------------------------------------------------------------------------
2015年3月19日
 
沖縄防衛局長 井上 一徳殿
沖縄市長 桑江朝千夫殿  
沖縄市教育長 狩俣 智殿
沖縄県知事 翁長 雄志殿
嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会
会長 嘉手納町長 當山宏殿

沖縄・生物多様性市民ネットワーク
共同代表/ディレクター 河村 雅美
沖縄県宜野湾市志真志4-24-7 セミナーハウス304
 NPO法人「奥間川流域保護基金」事務所内
 TEL/FAX:098-897-0090 

沖縄市サッカー場調査結果に対する専門家意見について
(要請

2015年2月10日、沖縄防衛局は主に2014年10月2日に採水したたまり水についての沖縄市サッカー場調査結果・分析「旧嘉手納飛行場(26)土壌等確認調査(その2)嘉手納飛行場返還跡地内報告書 平成27年1月 沖縄防衛局調達部/中央開発株式会社」を公開しました。

この調査は、2014年7月にたまり水やドラム缶底面土壌から、ダイオキシン類、DDT類、油分等が検出されたことから、汚染範囲の特定等のために実施された調査です。
今回の調査は、沖縄市はカウンター的調査は実施していません。

沖縄・生物多様性市民ネットワークは、「沖縄市サッカー場調査監視・評価プロジェクト」の一環として3名の専門家、宮田秀明氏(摂南大学名誉教授)、池田こみち氏(環境総合研究所顧問)、國吉信義博士(元マーチ基地環境保全官)から沖縄防衛局の調査、分析、評価が妥当なものであるかなどについて評価を求めました。

3意見書は共通して、沖縄防衛局は汚染を限定的にみていることを指摘しています。この指摘に対し、関係諸機関は考慮、対応するべきであると考えます。

主に、以下の点が指摘されています。

1. たまり水のダイオキシン濃度は高い。しかし、危険性/安全性を認識するために明示すべき数値を、報道資料等で触れていない。
-未ろ過水: 170pg/-TEQ/L、ろ過水: 33pg-TEQ/Lは、環境基準値の170倍、33倍であり、極めて高い。これに触れていないことは問題である。
 -ダイオキシン類の危険性を知る上で重要な数値である2,3,7,8-TCDDの割合は、市民に示すべきデータであるが、わかりやすく数字として示されていない。
15%は決して小さい割合でない。水試料で、2.3.7.8-TeCDDの毒性等量濃度の割合が15%程度というのはかなり高く、土壌ではほとんど見られない数字である。

2. 雨水等によって埋め立て物から異常な濃度のダイオキシン類が持続して溶出している。
 -今回のろ過水に含まれているダイオキシン類は粒子に吸着しているものではなく、たまり水に「溶存体」という存在形態で溶解しており、極めて高率で存在している。
-ダイオキシン類の溶解性を増加させる物質がたまり水に含まれており、雨水によって容
易に溶出される状況である。長期間にわたって持続していたものと判断される。 (宮田秀明氏意見書)

3. ドラム缶発掘工事の影響が、排水で検出されたダイオキシンで確認されていることは認めているが、その原因については追求していない。
 -報告書では、「平成26年1月末から2月初めにかけて実施したドラム缶発掘工事の影響が考えられる」「ドラム缶発掘工事の影響はあるものの」”(p.34)と、工事の影響があったこと自体は認めているにも関わらず、「たまり水の影響は排水口に及んでいないと判断される」と、たまり水と排水口の関係のみで結論づけている。工事の影響を受け、ダイオキシンがどのような媒体で、どのように移動したのかの原因について追求していない。また、この部分の記述も、わかりにくいものになっており、用語も専門用語では用いられない用語(「毒性等量割合」)も見受けられ、報告の記述として問題もある。 (池田こみち氏意見書) [参照別紙1]
                                                             
4. 沖縄防衛局の調査は汚染範囲を限定的にみている 
- 上記3項目について考慮している分析になっていないがゆえに、汚染範囲を限定的にみている。
-國吉信義氏の以下のコメントも考慮すべきである。
“ドラム缶はシルト質の地層に埋められていた。シルト質は全くの非浸透性ではない。たまり水はドラム缶を掘り出したとき、周囲のシルト質粘土の壁から、じわじわとにじみ出て、窪地にたまった水であろう。
  防衛局は、たまり水が出た周辺は浸透性の低い地層なので、ダイオキシンを含む水が直下の地板に浸透する可能性は小さいと結論しているが、シルト質地層に含まれている水は粘土層で遮られているので直下には浸透しにくいが、横にはゆっくりだが、動くはずである。横に動いて、粘土のないところにきたら、水は下に動く。ドラム缶が埋もれていたシルト層がどの程度広がっているか、ダイオキシンを含む水が拡散していないか知りたい。“

5. 沖縄防衛局の調査は明らかに不正確な分析がある
-沖縄防衛局の調査分析は次の2点で不正確な分析がある。[別表2]
 ①たまり水の主な異性体割合 
1,2,3,7,8-PeCDDが多く、これは焼却関連物(焼却灰、焼却飛灰など)に含まれる代表的ダイオキシン類異性体である。これを含まない、「….(2,3,5-T不純物、PCP不純物、およびPCBに由来するダイオキシン類が混在して存在していたと考えられる)(「報告書」、p.30)との内容は正確ではない。
 ②ダイオキシン類の溶解性を増加させる物質
防衛局の調査では一般土壌に存在する腐植物であるフミン酸やフルボ酸がたまり水に含まれており、ダイオキシン類の溶存体を増加させたものと記載しているが、腐植物以外の埋め立て物(ドラム缶)に起因によるものと推測される。 (宮田秀明氏意見書)

このような分析は、これまでの調査結果の範囲内に納めることによって、これ以上問題が拡散しないこと、処理処分についてもできるだけ限定的にしたい意図があるように疑念を持たれる可能性がある。

6. 「監修」する専門家の位置づけ
-沖縄防衛局は報告書を「愛媛大学農学部森田昌敏感客員教授監修の下、とりまとめた」としているが、森田氏の「監修」の位置づけが曖昧である。 (池田こみち氏意見書)

沖縄防衛局によれば、調査報告のアドバイザー的な役割とのことであるが、報告書内で、どの部分が調査会社の記述・分析で、どの部分が専門家の見解なのか明確でなく、評価の責任の所在が不明である。

7. 埋め立て物は「ドラム缶」とは限らない
-当該地域の埋立物は、全てが金属製のドラム缶であったのか、ポリ袋やダンボール等の非磁気性の容器のものである可能性が示唆されている。 (宮田秀明氏意見書)

8, 沖縄県の水質調査は問題がある。
-調査報告の記述が十分でない。 (國吉信義氏コメント)

この問題は、環境総合研究所『嘉手納基地返還跡地(沖縄市サッカー場)ドラム缶発掘追加調査に関する意見書』(2014年12月16日付けで関係機関に送付済み)でも、「沖縄県の地下水などの周辺環境調査はおざなりなものであり、地域住民に安心材料を与えるには不十分である。(p.28)」と指摘されている。

以上を踏まえ、関係機関に以下を要請します。

【要請】
1.沖縄市と沖縄県は、今回の調査が妥当であるか独自に評価すること。また、関係諸機関は、汚染範囲の確定、浄化方法に関する開かれた協議の場を設定すること。
  このように複数の専門家から問題が指摘されている沖縄防衛局の調査報告について、沖縄市と沖縄県は調査分析が妥当であるかどうか、安全面から独自の評価をするべきであると考える。
  同時に、汚染範囲の確定、浄化方法決定過程において、誰が何をどのような基準で決定したかのプロセスが検証できるシステムをつくり、各機関の説明責任を担保すること。
 汚染に関しては、国内のダイオキシン汚染対策にみられる「技術検討委員会」などを参考にし、検討する第三者機関を設置すること。サッカー場の汚染はヒ素汚染なども含む「複合汚染」のため、まずは、専門性が担保された協議が必要であることを関係機関で確認すること。

2 ダイオキシンの溶出などについて、沖縄防衛局の調査報告では言及されていない専門家の見解を踏まえ、関係諸機関で評価・対処を再検討すること。 
また、ドラム缶発掘工事の影響がどのように排水口に及ぶこととなったのか、さらなる調査を実施すること。
理由は上記の問題指摘にあるとおり。

3. 発掘工事による汚染の拡散、作業者や住民への安全確保、環境への影響について慎重に検討し、事前に市民/住民に必要な情報を説明すること。

4. 汚染の本質的な原因究明を行うこと。
なぜこのサッカー場に100 本以上のドラム缶が埋め立てられて、長期間存在し、異常な濃度のダイオキシン類が持続して溶出することに至ったのか、その原因を究明すること。
  沖縄市の聞き取りによって得られた米軍人の埋設(1964年)以降の事実が確認されていないことを重要視すべきである。地歴調査からみると、サッカー場整備時にドラム缶が見逃され、埋め戻しをされている可能性も強く示唆される。過去の汚染、汚染経路、作業員などの被曝の可能性の洗い出しも含め、本格的な調査を行い、県内にこのような事例がないかを検討することが必要である。

5. 沖縄防衛局の調査報告の分析・記述・「監修」の問題を解決すること。
  不正確な分析や矮小化の懸念が持たれる報告書は問題である。今回の調査結果評価を再検討し、見解をあらたに公開することが必要であると考える。また、今後、環境基準値との比較や重要な数値の記述に努め、専門家の責任の所在の不明確さも解決に努めること。

6. ボーリング調査を基本とすること。
  埋め立て物はドラム缶とは限らないことが指摘されている。「廃棄物の埋め立て地における有害物の種類や濃度は均一ではなく、全くの不連続性を特徴とする。そのため、少し離れた地点における有害物質の種類や濃度は、水平的にも垂直的にも極めて大きく相違するため、ボーリング調査を基本とした調査設計をすること」という宮田氏の意見を検討すること。
  
7. 沖縄県の水の調査/分析の改善に努めること。
 複数の専門家から沖縄県の水の調査/分析については問題指摘がある。その改善に努めること。まずは、調査報告の記述(調査地点の選定理由など)について改善すること。

8. 調査の目的を明確にし、市民/県民のための報告をすること。
誰のために調査を行っているのかが曖昧である。国、県、市は税金を用いて、誰のために何のために調査を行い、評価し、報告しているのかをより明確にすべきである。汚染の有無が最終的な目的でなく、汚染原因の究明や汚染の拡散の可能性など、地域住民の視線や立場に立って調査が行われる必要である。
また、報告書も調査会社の報告をそのまま出すのではなく、市民/県民が理解できる報告書を作成すべきである。

                                           以上 

<専門家コンタクト>
◯宮田秀明(摂南大学名誉教授)
e-mail: miyata@m3.dion.ne.jp
Tel/Fax: 072-852-8233
携帯電話:090-3860-9501
◯池田こみち (環境総合研究所顧問)
ikeda@eritokyo.jp
080-1093-8754
◯國吉信義(元マーチ基地環境保全官)
skuni18@gmail.com


写送付先:宜野湾市長

要請文と別紙1
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別表2
%E6%B2%96%E7%B8%84%E9%98%B2%E8%A1%9B%E5%B1%80%E5%A0%B1%E5%91%8A%E6%9B%B8%E3%81%A8%E5%AE%AE%E7%94%B0%E8%A6%8B%E8%A7%A3%E7%9B%B8%E9%81%95%E8%A1%A8.pdf (PDF: 170.66KB)
  

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沖縄市サッカー場:ドラム缶たまり水専門家意見3)國吉信義氏①地質から汚染をみる

2015年04月19日 / 枯れ葉剤/ 沖縄防衛局/ 基地返還跡地/ 汚染/ 沖縄市サッカー場/ 沖縄県環境政策/ 日米地位協定/ 環境協定

國吉信義さんのたまり水についての意見書を紹介します。これまでは、ドラム缶内容物の汚染がどのようなものであるかに焦点が当てられてきましたが、たまり水の調査から、汚染の範囲の確定にどのような要素が必要かということが、具体的になってきました。
 汚染の拡散や汚染範囲の確定に地質学の面からの要素が必要であることを、國吉さんの意見書からみることができます。
 なぜそのような要素が必要なのか?それは汚染の拡がりは、地層の性質や、地層図、地下水分布図などをみて確定しなければならないからです。











嘉手納基地帯水層の境界線を示す國吉さん



 
 國吉さんの意見書は下に貼り付けてあるのでそちらを見てください。

たまり水とは/ドラム缶が埋められていた地層とは
 まず、たまり水とは何か、そしてドラム缶が埋められていた地層がどのような性質を持っているのかについて述べています。
“たまり水とはサッカー場西側でドラム缶を掘り出したときの窪地にたまった水です。ドラム缶があった付近3箇所で3.8mの深さまで、ボーリングをしており、その柱状図が示されています。柱状図によると、地表から2m位まではシルト質粘土で、その下1.8m位は粘土質の地層です。粘土は水を通さない非浸透の地層です。その上にあるシルト質とは非常に細かい砂で、水を含むが浸透性は低い。全くの非浸透性ではない。たまり水はドラム缶を掘りだしたとき、周囲のシルト質粘土の壁から、じわじわとにじみ出て、窪地にたまった水でしょう。ドラム缶はシルト質の地層に埋められていました。

土は、もともと水分を含んでおり、たまり水は、ドラム缶が掘り出された時に周辺の土壌からにじみ出たものがたまり水である(雨水とは違うもの)ということがまず説明されています。

 この中にある柱状図とは、沖縄防衛局の調査報告書にある以下の図です。詳しくは、リンクをたどってみてください。


「旧嘉手納飛行場(26)土壌等確認調査(その2)」調査報告書 巻末資料ボーリング柱状図 http://www.mod.go.jp/rdb/okinawa/07oshirase/kanri/houkokusyo6/3.pdfより抜粋

 ここから、ドラム缶が埋められていた層はシルト質粘土という層であるということがわかります。そして、
國吉さんはそのシルト質粘土の性質について、「浸透性は低い。」が、「全くの非浸透性ではない」と説明しています。

沖縄防衛局の調査報告の問題
 そして、地層の性質と水の動き(横にはゆっくりと動く)を鑑み、沖縄防衛局の調査報告の問題を以下のように指摘しています。
”防衛局は、たまり水が出た周辺は浸透性の低い地層だから、ダイオキシンを含む水が直下の地盤に浸透する可能性は小さいと結論しています。ドラム缶が発見された所ではシルトの下に1.8m位までは粘土層があります。この粘土層はどの程度まで深く、広く分布しているかわかりません。シルト質地層にふくまれている水は粘土層で遮られているから直下には浸透しにくいが、横にはゆっくりだが、動くはずです。横に動いて、粘土のないところにきたら、水は下に動くでしょう。ドラム缶が埋もれていたシルト層がどの程度広がっているか、ダイオキシンを含む水が拡散していないか知りたいです。”

 つまり、たまり水の直下の動きのみで浸透の可能性や範囲を結論づけることは問題で、シルト質地層の広がりと横への動きを考慮に入れた上で、汚染の拡散の可能性を考えなければならない、ということです。

嘉手納帯水層の境界線は?
また、この粘土層がどこまで広く分布しているかを、上にある写真の米軍の地下水分布図などで調べる必要があるということです。意見にある「嘉手納帯水層の境界線」というのは、粘土層が切れている線です。粘土層は永遠に続いているわけではなく、切れている場合はそこから(水などは)横に動くということです。粘土層は沖縄で「クチャ」と呼ばれている土です。
"米国地質調査所が軍の依頼で、1965年に嘉手納基地の地下水を調べました。その地下水分布図によると、サッカー場あたりがKadena Aquifer(帯水層)の境界線あたりになっています。防衛局のボーリングで見つかった粘土層がどこまで広く分布しているか知りたいです。“"

 國吉さんは、サッカー場現地もご覧になり、掘り起こしてある土が褐色であることから、あれは埋め立てのために他所から持ってきた土であろう、もともとの土壌もみるべきであるとおっしゃっていました。

地質学も含めた専門家チームを
 このように、地質学的な観点から調査を見るのは非常に重要なことがわかります。
 國吉さんは、化学だけでなく、地質学の面、健康の面からの専門家も含め、チームを作って調査にあたるべきであるとおっしゃっていました。

 ※わかりやすいように、少し米国の例から引いてみます。少し年代としては古いですが、エージェント・オレンジの点からも沖縄ととりまく環境がよく似たグアムのTCE(トリクロロエチレン)の地下水汚染の例からひいてみます。1978年に、飲料水のTCE汚染がグアムのアンダーソン空軍基地で発覚しました。米軍が調査をしましたが、議会の要請により、その調査の精査を、米国のGeneral Accounting Office(現Government Accountability Office、以下GAO) が行いました。その報告書(GAO Report to Congress (May 1987)  HAZARDOUS WASTE Abandoned Disposal Sites May Be Affecting Guam's Water Supply)の一部を切り取りました。
 この文書をみると、米国環境保護庁、グアム環境保護庁とともに米国地質調査所(United States Geological Survey, USGS)が、基地の汚染調査照会・精査に関わっていることがわかります。


GAO Report to Congress (May 1987)  HAZARDOUS WASTE Abandoned Disposal Sites May Be Affecting
Guam's Water Supply


 沖縄県の水の調査については、他の専門家からの意見でもでているので、また別記事にします。
沖縄市サッカー場周辺環境調査の結果について(お知らせ)

 國吉さんの意見にある”防衛局が、環境を守る目的でない”、という件については私も調査の最初の時点で問題化しており、だからこそより監視の目が必要であり、監視は制度化し、予算化していく必要があると思います。

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たまり水について
“たまり水とはサッカー場西側でドラム缶を掘り出したときの窪地にたまった水です。ドラム缶があった付近3箇所で3.8mの深さまで、ボーリングをしており、その柱状図が示されています。柱状図によると、地表から2m位まではシルト質粘土で、その下1.8m位は粘土質の地層です。粘土は水を通さない非浸透の地層です。その上にあるシルト質とは非常に細かい砂で、水を含むが浸透性は低い。全くの非浸透性ではない。たまり水はドラム缶を掘りだしたとき、周囲のシルト質粘土の壁から、じわじわとにじみ出て、窪地にたまった水でしょう。ドラム缶はシルト質の地層に埋められていました。
防衛局は、たまり水が出た周辺は浸透性の低い地層だから、ダイオキシンを含む水が直下の地盤に浸透する可能性は小さいと結論しています。ドラム缶が発見された所ではシルトの下に1.8m位までは粘土層があります。この粘土層はどの程度まで深く、広く分布しているかわかりません。シルト質地層にふくまれている水は粘土層で遮られているから直下には浸透しにくいが、横にはゆっくりだが、動くはずです。横に動いて、粘土のないところにきたら、水は下に動くでしょう。ドラム缶が埋もれていたシルト層がどの程度広がっているか、ダイオキシンを含む水が拡散していないか知りたいです。
米国地質調査所が軍の依頼で、1965年に嘉手納基地の地下水を調べました。その地下水分布図によると、サッカー場あたりがKadena Aquifer(帯水層)の境界線あたりになっています。防衛局のボーリングで見つかった粘土層がどこまで広く分布しているか知りたいです。“

沖縄県環境保全課の調査について
“この報告書によると、嘉手納基地内の井戸2箇所と運動公園2箇所で地下水を採取しています。4箇所とも分析結果は健康に害する成分は基準以下だったと報告しています。
まず、運動公園内の地下水採取の場所、ドラム缶発掘場所との位置関係、井戸から採取したのか、井戸の深さや水位、井戸のスクリーンの位置、過去にも採取して調べたのか、など知りたいです。県の環境保全課は基地の環境汚染を調べているのか、専門家がいるのか。“

環境省の役割について
防衛局は国を敵からまもるのが本職でしょう。環境を守るのは本職でないと思う。アメリカのEPAは”to protect human health and environment”といって両方を本職としています。沖縄の基地の環境問題でなぜ日本の環境省が関与していないのか。環境省には基地汚染の専門家がいるはずです。私が嘉手納基地の環境保全部で働いていたとき、東京の環境省の人たちが定期的に嘉手納基地に来て、排水口のサンプリングをしていました。私が案内しました。

(沖縄・生物多様性市民ネットワーク河村雅美へのメールより抜粋)

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Posted by 沖縄BD at 18:12Comments(0)

大浦湾でジュゴンのはみ跡35本以上確認

2015年04月18日 / 辺野古

2013年3月28日に発見されたのと同じ場所でジュゴンのはみあとが見つかりました。
ダイビングチーム・レインボー、ジュゴンネットワーク沖縄、北限のジュゴン調査チーム・ザンが調査をしたところ、35本もはみあとが
あったとのことです。

●大浦湾でジュゴンのはみ跡35本以上確認(動画)
http://www.qab.co.jp/news/2015041565064.html

●琉球新報:水深19メートル超にジュゴン食み跡 掘削で深場移動か
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-241874-storytopic-1.html


沖縄タイムス記事

この発見を受けて、早速、環境監視等委員会に要望書を出しました。この科学的事実をしっかり議論してきちんと環境保全してくださいという内容です。
●環境監視等委員会あて要望書
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また沖縄県にもぜひ独自の調査をしてほしいので、県知事と農林水産部長に要望書を出しました。
●沖縄県知事、農林水産部長あて要望書
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こんな力に負けるか!   沖縄タイムスより。

  

Posted by 沖縄BD at 13:13Comments(0)

沖縄市サッカー場:ドラム缶たまり水専門家意見3)専門家國吉信義さんについて

2015年04月17日 / 枯れ葉剤/ 沖縄防衛局/ 基地返還跡地/ 汚染/ 沖縄市サッカー場/ 沖縄県環境政策/ 日米地位協定/ 環境協定

今回、たまり水の件で意見を書いてくださった國吉信義さんは、昨年嘉手納基地に書いた手紙の中でもコメントをいただいていますが、意見書解説の前に、詳しいバックグラウンドやご経験について、あらためてこの記事でご紹介したいと思います。
 

今回の来沖時に沖縄市サッカー場にお連れしました


 國吉さんは、米国カリフォルニア州、マーチ空軍基地で環境浄化プログラムに15年従事していらっしゃった地質学の専門家です。嘉手納基地にも3年間いらっしゃったことがあります。下に、沖縄タイムスの國吉さんについての記事(2014.3.18)がありますので、詳しくはそちらを参考にしてください。米国L.Aに在住されており、北米沖縄県人会の会長でもいらっしゃいます。

 マーチ空軍基地は1918年開設以来、訓練基地、爆撃機や給油機の基地として継続的に使用されてきた基地で、1980年代に汚染調査が始められました。1989年には米国の汚染地リストの一つ(National Priority List Sites)に指定されています。
 マーチ空軍基地の汚染調査・浄化作業の進行状況は米国環境保護庁のPacific Southwest, Region 9: Superfund  March Air Force Baseでみることができます。直近の包括的なレポートは、昨年の9月に第3次5カ年レビューのレポートが公開されています。
 
 ここでは米国の基地汚染に関する環境法制度については詳しく触れませんが、タイムスの記事にあるように、米国では初期調査から汚染除去までのプロセスに、徹底した監視体制があります。
 
 マーチ基地でも、以下の4者が関与し、軍が勝手に汚染調査、浄化作業をしないような監視体制がとられていました。
    ・マーチ基地
   ・環境保護庁 US EPA
   ・カリフォルニア州環境保護庁 California EPA
   ・カリフォルニア州水質管理局 Regional Water Quality Control Board
 國吉さんは、マーチ基地の環境保全官のポジションとして、監督官庁(EPAなど)の監視を受けながら、調査や浄化を担当する会社(contractor)に指示を与える任務に携わっていました。
 
 下の図は、國吉さんからご提供いただいた調査と浄化の過程の図です。




 マーチ基地は土壌汚染と地下水汚染が発見され、その浄化に長い年月がかかっています。地下水は、 テトラクロロエチレン(PCE)、トリクロロエチレン(TCE)などの揮発性有機化合物(VOC)や、ジェット燃料、土壌はVOCや重金属に汚染されていました。
 調査の結果を受け、TCEが問題となり、飲料水に用いられた基地内の井戸は1980年代後半に閉鎖されています。

 このような経験から、2014年10月9日に嘉手納空軍基地に沖縄BDから出した手紙に、國吉さんから、以下のコメントと提言が寄せられています。
「汚染土壌に人体が直接触れる可能性は非常に低いものの、雨水が地下に浸透して、汚染を溶かし、地下水に入る可能性があります。沖縄の地下水は現在は主たる飲料水源にはなっていません。しかし、地下水は農業用及び家庭用の貯水池にたどり着きます。ゆえに、人体が汚染された地下水に接する可能性を除外することはできません。カリフォルニアでは全ての地下水は飲料水になるという仮定で保護しています。マーチ基地では、汚染された地下水の浄化に一番お金と時間がかかりました。」

 地下水の浄化は、地下水をくみあげ、地上で活性炭のフィルターを用いて浄化する(Pump & Treat) という方法を用いるのですが、初期は効果があっても、時間がたつにつれ、TCEの値は環境基準値には近づくが、そこから下がらなくなるとのこと。地下水の汚染は、大変時間もコストもかかる問題であることがうかがわれます。

 VOCは、3月23日の沖縄防衛局発表にあるとおり沖縄市のサッカー場で新たに発見された17缶のドラム缶からも検出されています。この発表があった日がちょうど今回来沖時の國吉さんにお会いした日でした。これについてはまた記事をあげますが、まずは、たまり水の調査報告の意見について次にご紹介します。


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Posted by 沖縄BD at 20:04Comments(0)

沖縄市サッカー場:ドラム缶たまり水専門家意見2)池田氏②調査の目的・評価の体制

2015年04月15日 / 枯れ葉剤/ 沖縄防衛局/ 基地返還跡地/ 汚染/ 沖縄市サッカー場/ 沖縄県環境政策/ 日米地位協定/ 環境協定

 沖縄市サッカー場調査監視・評価プロジェクト、ドラム缶たまり水の専門家意見、池田こみちさんの意見書のpart 2です。
 池田さんの意見書は、データの科学的分析だけでなく、常に、調査のあるべき姿を、調査者に、そして調査を見る市民に示してくれるものです。

 こちらの記事では、その調査体制から指摘されている点についてのポイントをまとめました。

   主にこの部分。

  
沖縄防衛局HP調査報告書から抜粋・加工
   http://www.mod.go.jp/rdb/okinawa/07oshirase/kanri/houkokusyo6/2.pdf

 
1)「監修者」の問題
 サッカー場の調査では、前回同様、愛媛大学農学部森田昌敏客員教授の「監修の下」、取りまとめられています。

 西普天間で発掘されたドラム缶等についての沖縄防衛局による調査報告書も森田氏が「監修」していますが、この「監修」の作業は具体的に何を指すのか、ひいては「監修者」の位置づけが非常に曖昧です。 
 池田さんは「何故、一連の調査報告書の監修を森田氏一人に依頼しているのか、人選の経緯、理由などは明らかにされていない」点も問題視しています。

 沖縄防衛局返還対策課によると、環境省へ専門家の推薦を頼んだところ、森田氏が推薦されたとのことでした。「監修」の作業とは、沖縄防衛局と調査会社と森田氏が集まり、報告書の作成や書き方に助言を行うということで、監修者の役割としては、調査報告書作成のためのアドバイザー的な役割とのことでした。
 
 しかし、これでは報告書内で、どの部分が調査会社の記述・分析で、どの部分が専門家の見解なのか明確でなく、評価の責任の所在が不明です。 これまでのサッカー場の調査経過をみても、調査結果をどう分析・解釈するか、評価するのか(汚染の由来や原因はなんであるのか、汚染の範囲はどこまで広がっている可能性があるのか、どのような対処が必要であるのかなど)は、重要な作業ということがわかります。専門家は、どのような科学的知見をもって調査結果を評価したかを明確に示す説明責任があるにも関わらず、調査会社の作成した調査報告書の中に監修者の評価はまぎれ、専門家の評価の責任を追求できる体制となっていません。

第1回目の調査では、森田氏の見解は、調査報告書とは別に、専門家の意見として別に発表されていましたし、沖縄市も専門家の意見は調査報告とは別立てにしています。沖縄防衛局は、改悪されている専門家の位置づけや評価体制を再考するべきでしょう。
 
 池田さんは
 ”少なくとも、議論が分かれる汚染原因の究明などの問題が関わる以上、複数の専門家の議論を踏まえて評価を行うことが望ましい。また、開れた場での議論、市民への適切な情報提供と説明が行われるべきであると考える。”
 と、評価体制について提言しています。

2.調査の目的について 
 また、池田さんの意見書の以下の部分では、調査の目的がどのように設定されなければいけないかを、改めて確認する必要があることを認識させてくれます。

 「本調査の目的は、報告書によれば、前回調査を踏まえて汚染範囲の特定を行い、『嘉手納飛行場返還跡地内において,ドラム缶が埋設されていた場所または周辺 のたまり水の水質およびドラム缶底面土壌について調査を実施し,有害物質による汚染の有無を把握するものである。』とあるが、汚染の有無が最終的な目的ではなく、汚染原因の究明や汚染の拡散の可能性など、地域住民の視線や立場に立って調査が行われる必要がある。汚染の有無だけが議論され、汚染の程度、質によって掘り出されたドラム缶や土壌等の処理・処分が行われても、地域住民の不安の払拭にはつながらないからである。
 サッカー場として再開することが最終的な目的であるとすれば、子どもたちの利用が前提となっていることからより慎重な対応が求められる。」

 私たちは、つい、枯れ葉剤報道に引きずられ、ドラム缶の中身や、環境基準超えかそうでないか、という調査結果の発表を聞いて終わらせてしまいがちですが、調査は、汚染の影響を受けるコミュニティや作業者をめぐる環境、安全、安心を真に確保するためのものでなければならない、ということを、調査結果を受け取る私たちが、まず認識しなければならないと思います。
 安全、安心のために、なぜドラム缶がここにあるのかまで遡った原因を究明すること、過去、これからの汚染の拡散の可能性を示すことが必要である、という調査のあるべき姿を、調査を見る側の私たちが再確認する必要があるでしょう。

 また、池田さんはその観点からも、前回の評価で由来の見解がわかれた、ヒ素とフッ素についての件(沖縄防衛局は自然由来、沖縄市は人為由来)で、今回「自然由来」とした防衛局の報告書について、安易な結論づけをすることがないように、以下のように意見を述べています。

 ”今回の調査の結果、ヒ素及びフッ素の汚染はいずれも「自然由来」と結論づけられた。
しかし、前回の調査では、ヒ素、フッ素とも溶出試験では土壌汚染対策方の基準を超過しているサンプルもあったことから、慎重な対応が必要であろう。
 そもそも、土壌汚染対策方の各種基準は、土地利用の改変に伴って対策が必要であるかどうかを判断する目安であり、その基準値や指針値以内であるからといって、検出された汚染を軽く考えることはよくない。由来は何であれ、汚染があることは間違いなく、なおかつ、サッカー場であることから子どもたちの利用が前提となっていることを考慮すれば、より安全側にたった評価が行われるべきである。”

 
 池田さんが意見書で指摘しているように、現段階まで沖縄防衛局と沖縄市、沖縄県がどのように協議を行っているのかも見えておらず、曖昧な「監修者」の位置づけでまとめられた報告書の評価が閉じられた体制で行われていくことは、問題です。
 多額の税金を投入していることも踏まえ、「単なる調査のための調査」にすることなく、「市民、県民に国の見解を押しつけるようなことがないよう、慎重な対応」を求めていかなければなりません。

 あらためて調査とは何か、専門家とは何か、をサッカー場の件だけでなく、あらゆる行政の調査で考えていかなければならないことを思い起こさせる意見書であると思います。
   

Posted by 沖縄BD at 23:49Comments(0)

県知事の海上作業停止の「指示」をめぐって Part II

2015年04月10日 / 辺野古/ 議会陳情/ 辺野古・大浦湾/ ボーリング調査

「岩礁破砕の許可」「臨時制限区域」「ボーリング調査」「協議」:混乱
沖縄防衛局は、「岩礁破砕の許可」区域外で最大45トンの巨大コンクリートブロックを投入し、サンゴを破砕したにもかかわらず、自らの正当性を主張し、逆に翁長知事による海上作業の停止の「指示」を「違法」だと主張した。そして農林水産相へ、翁長知事の作業停止「指示」の「無効」を求める審査と、審査期間中には知事の「指示」の執行を停止するように、国(農林水産相)に申し立てた。農林水産相は、防衛局の申立て内容を全面的に受け入れる判断を下し、現在ボーリング調査が強行されている。

なぜこのような状況になっているのであろうか。

勿論この状況を、沖縄防衛局や日本政府の暴挙とみなし、防衛局や政府のみを批判することも可能だ。しかし、2013年12月に仲井真弘多前県知事が埋立てを承認した後、防衛局と沖縄県の「岩礁破砕の許可」やボーリング調査の「協議」の手続きについても検証が必要であるはずだ。

沖縄防衛局は、沖縄県からの「許可」や「協議」、または確認の「手続きを経て」、「岩礁破砕の許可」区域外で巨大コンクリートブロックを投入し、その結果サンゴが破砕したと主張している。このような主張がなされること自体、沖縄防衛局だけの問題ではなく、沖縄県側にも何らかの問題があった可能性を意味するからだ。

翁長知事は、仲井真前知事の下での県の対応を自己浄化しながら、沖縄防衛局の主張/見解を崩していかなければならない。政治的にも、行政的にも非常に高い能力が要求されている。Part IIでは、この沖縄県側の問題の可能性も踏まえて、沖縄防衛局の「手続きは経てきた」という主張/見解の問題点を検証していく。

「岩礁破砕の許可」とのリンク:
沖縄防衛局は、今回の巨大コンクリートブロックの投入や、サンゴの破砕は、沖縄県からの「岩礁破砕の許可」の手続きのなかで、県からの確認を経て行われており、それゆえ正当性をもつと主張している(産経新聞 3月23日)。

この主張/見解は、平和市民連絡協議会の北上田毅さんらが追求してきた

「工事の施行区域」(「臨時制限区域」)に沿って設置された、オイルフェンスや浮標(フロート)や、そしてそれを固定する巨大コンクリーブロックについては、沖縄防衛局は沖縄県に対して申請を行っていない(チョイさんの沖縄日記 2015年2月7日)。

という手続き不備の指摘に、真っ向から対抗するものである。

実際、以下をみると、沖縄防衛局がこれまで行ってきた関連する申請や協議の手続きは、1) 基地建設のための埋立てが行われる区域と作業ヤード設置のため埋立てが行われる区域の「岩礁破砕の許可」の手続きと、2)「ボーリング調査に」の「協議」の手続きのみであることが確認できる。「工事の施工区域」(臨時制限区域)における岩礁破砕の許可の手続きはとっていない。

2013年12月27日  仲井真知事が公有水面埋立申請を承認

2014年07月11日  沖縄防衛局が「岩礁破砕等許可申請書」を沖縄県に送付
          沖縄防衛局が「ボーリング調査」に係る「協議書」を沖縄県に送付

2014年08月14日  沖縄県は「岩礁破砕の許可必要なし」と判断
         
2014年08月28日  沖縄県が「岩礁破砕を許可」

*「申請書」「協議書」が送られてから「許可必要なし」の判断や「岩礁破砕の許可」がでる間、補正の手続きも行われている。

しかし沖縄防衛局は、サンゴ破砕の問題が発覚して以来、巨大コンクリートブロックの投入を、沖縄県の「岩礁破砕等の許可」の手続きとリンクさせ、以下のような論理で正当化しようとしている。

1) 沖縄防衛局は「岩礁破砕の許可」の申請手続きのなかで、「アンカーを含む浮標」の設置箇所を示し、「アンカーを含む浮標の設置」の手続きの必要性を沖縄県に確認した。
2) 沖縄県は「他の事例を踏まえれば、浮標の設置は同手続きの対象にはならない」「アンカーを含む浮標の設置に関する部分の記載は不要」と回答した。
3) 沖縄県の回答を踏まえて、沖縄防衛局はアンカーを含む浮標の設置の手続きを行っていない。
4) 沖縄県が今さらアンカーを伴う浮標の設置の手続きを問題にするのは違法だ。
(沖縄防衛局から農林水産相に提出された「申請書」等を参照に作成)

しかしこの論理は、あまりも乱暴なものといえる。なぜなら、次のような指摘ができるからだ。

1)確かに、沖縄防衛局の「岩礁破砕の許可」の申請書では、防衛局の主張どおり、浮標やアンカーの設置箇所として2つの範囲が示されいると解釈できる。一つは「岩礁破砕の許可」の対象となっている範囲、つまり基地建設のための埋立て予定地と作業ヤードである。そしてもう一つは、岩礁破砕の許可」の対象の外側の「工事の施行区域」の範囲で、それは実質的には日米政府が新たに定めた「臨時制限区域」と重なる範囲である。


*沖縄防衛局の「岩礁破砕等の許可」申請書(2014年7月11日)の「行為の面積及び容積の計算書」では、基地建設のための埋立予定地や作業ヤードの「消失面積」と「工事区域(海上)面積」として表記されている。

2)しかし「岩礁破砕の許可」の対象区域で設置する浮標やアンカーについては、そこはもともと岩礁が破砕される予定の場所なので、極端に言えば、どのような巨大なアンカーを投入しても、結果的にはかわらない。それゆえ、浮標やアンカーについて、細かい詳細の情報を提供する必要はいらない、ということができる。つまり、沖縄県が言う「他の事例を踏まえれば、浮標の設置は同手続きの対象にはならない」「アンカーを含む浮標の設置に関する部分の記載は不要」は論理的に成り立つ。

3) 一方、「工事の施工区域」(「臨時制限区域」)で設置する浮標やアンカーについては、「岩礁破砕の許可」の申請文書のなかで示したからといって、それで手続きが成されたとは決して言えない。なぜなら、この申請書自体はあくまで「岩礁破砕の許可」の申請であり、「岩礁破砕の許可」区域よりはるかに広い「工事の施工区域」(「臨時制限区域」)に設置する浮標やアンカーに関わる手続きを代用するものではないからだ。それゆえ、アンカーや浮標についての細かい情報はいらない、と県が回答したとしても不思議ではない。沖縄県の「他の事例を踏まえれば、浮標の設置は同手続きの対象にはならない」「アンカーを含む浮標の設置に関する部分の記載は不要」という回答は論理的に成り立つのである。

なおこの問題と関連して気になるのは、上記した「「行為の面積及び容積の計算書」における「消失面積」(基地建設のための埋立予定地や作業ヤード)と「工事区域(海上)面積」の表記が、沖縄防衛局が漁協等に提示した「岩礁破砕等の許可」に関する書類(2014年4月頃)の「岩礁破砕面積図」では、「岩礁破砕等実施範囲(埋立部分)」と「岩礁破砕実施範囲」と異なる形で表記されていることだ。この違いについても検証が必要がある。




4) いずれにしても、沖縄防衛局が行わなければならなかったのは、沖縄県の「漁業調整規則」の第39条と「岩礁破砕等の許可に関する取扱方針」(平成19年9月25日)第8条に照らし合わせた、「工事の施工区域」(「臨時制限区域」)における浮標やアンカーの設置を対象にした別途の「協議」等の手続きである。

勿論、2014年7月と8月の「岩礁破砕の許可」の手続きにおいて、沖縄県と沖縄防衛局がどのようなやり取りを行ったかは詳細には分からない。しかし、閲覧できる沖縄県と沖縄防衛局が提出した同手続きに関する資料や、翁長知事の海上作業停止の「指示」をめぐり沖縄県と沖縄防衛局から提出された資料には、沖縄防衛局の主張(沖縄県が手続きは要らないといったのでやっていない)を裏付けるものは見当たらない。

ここで注目すべきは、巨大コンクリートブロックの投入がなされた「工事の施行区域」(「臨時制限区域」)の法令的位置づけと、それに関わる諸々の手続きの問題だ。この「工事の施行区域」(「臨時制限区域」)は、「漁業調整規則」やその中に位置づけられる「岩礁破砕の許可」の本来の趣旨とは直接関係なく、むしろ1) 米軍基地の建設の目的で、米軍との協議により設定され、2)実際の機能としては、基地建設反対の抗議者が作業区域内に入ってくることを防ぐため、のものである(琉球新報 2014年6月21日)。米軍基地建設との関わりのなかで生じてきた独特のものであり、それを「岩礁破砕の許可」の手続きのなかに位置づけるのは無理があるのではなかろうか。仮に位置づけられたとしても、この「工事の施行区域」(「臨時制限区域」)の特性を反映させるかたちで、沖縄防衛局と沖縄県の「協議」等(文書)の手続きが必要だったはずだ。

なぜ、そのような手続きが仲井真前県知事の下で行われなかったのか。あるいは行われていたのか。翁長知事が、沖縄防衛局による「岩礁破砕の許可」の手続きを経て、巨大コンクリートブロックが投入された、という主張を問題とするならば、これらの問いに対する沖縄県としての答えを明確にしておく必要がある。

ボーリング調査とのリンク1:巨大コンクリートブロック投入
さて「岩礁破砕の許可」の手続きと巨大コンクリートブロック投入をリンクさせ、その正当性を主張してきた沖縄防衛局だが、今ここにきて「ボーリング調査」の「協議」の手続きともリンクさせ、コンクリートブロック投入の正当性を主張し始めている。

この防衛局の主張を検証するために、まずボーリング調査とその「協議」の手続きについて述べてみる。

ボーリング調査とは、掘削機を使ってロッドを地面に押し込み、地盤や地質を調査することである。陸でも海でも行われるが、海底面の岩礁をボーリング調査する場合は、単管足場やスパッド台船が使われ、その上に掘削機を設置して調査が行われる。その際、掘削機器からのオイル等による海水の汚濁を防ぐためにオイルフェンスが台船の回りに張られる。


ボーリング調査のイメージ図:沖縄防衛局が「協議」の際に提出した資料より(2014年7月11日)



写真は辺野古でのボーリング調査の写真。共同通信より(日本経済新聞 2014年8月17日

通常、ボーリング調査による掘削作業とスパッド台船の脚部の海底面設置による岩礁破砕の規模は、埋立てそのものと比べて非常に限られたものである。それゆえボーリング調査は、一応岩礁を破砕するので「岩礁破砕等の許可」の手続きの中に位置づけられているが、「水産動植物の保護培養への影響が軽微である」という理由で、ボーリング調査自体に「岩礁破砕の許可」は必要とされていない(沖縄県「岩礁破砕の許可に関する取扱方針」8条「許可を要しない行為」。同8条の3項目目に「地質調査等のため海底をボーリングする行為」が記載されている)。

そのかわり、ボーリング調査の内容について事業者が資料等を提出し、説明がなされる「協議」という手続きが行われることになっている。実際、沖縄防衛局は、2014年7月から8月に沖縄県とボーリング調査について「協議」を行い、沖縄県は8月14日にボーリング調査に「岩礁破砕の許可は必要ない」と判断を下している。

巨大コンクリートブロックの投入によるサンゴ破砕の問題が指摘されて以来、また「岩礁破砕等の手続き」の不備を市民団体に指摘されて以来、沖縄防衛局はこの問題を「ボーリング調査」に関わる「協議」の手続きとリンクさせて説明するようになっている。

例えば、ジュゴン保護キャンペーンセンターとの2月16日の交渉のなかで、沖縄防衛局は浮標やオイルフェンスが設置された理由(コンクリートブロック投入の理由)は、ボーリング調査のためだと明言した。

また同局が3月24日に農林水産相に提出した「審査請求書」(申し立て)でも、「当該理由において言及された「コンクリート製構造物等」とは、埋立て等の工事に必要な地質状況を確認するための海上ボーリング調査に当たり、作業の安全を確保する措置の一つとして、作業区域等を明示するために本年1月から2月までにかけて当局が設置したコンクリートブロック等の浮標のアンカー(以下「本件アンカー」という。)である」(防衛局:審査請求資料 3月24日」としている。

つまりボーリング調査の実施場所から離れた「工事の施行区域」(「臨時制限区域」)を示す浮標やオイルフェンスを固定するために投入されたコンクリートブロックも、ボーリング調査の一環として位置づけているのである。




そこには、沖縄防衛局や日本政府の、以下のような論理が見えてくる。

1) 巨大コンクリートブロックを投入したのは「ボーリング調査」を安全に行うために設置した浮標やオイルフェンスを固定するためである。
2) ボーリング調査については県とすでに「協議」がなされ、「岩礁破砕の許可」は必要ない、と県から回答されている。
3)よって「岩礁破砕の許可」区域外に投入した巨大コンクリートブロックも沖縄県からの承諾を得ている。

勿論このような論理や主張も、乱暴なものである。

そもそも、「ボーリング調査」を安全に行うために設置される浮標の固定に、なぜ最大45トンのコンクリートブロックが「工事の施行区域」に沿って投入されなければならなかったのかという問題がある。

また、なぜ「ボーリング調査」による海水の汚濁を防ぐためのオイルフェンスが、「工事の施行区域」(臨時制限区域)まで拡張されなければならないのか、これは、もし汚濁がそれだけ広範囲に広がるのであれば、それ自体が問題であろう、とも指摘できる。

さらにこれまで述べてきたように、「工事の施工区域」(「臨時制限区域」)の設置を、「ボーリング調査」を行うための「協議」の手続きのなかに位置づけるのは無理があるといえる。設定された「工事の施工区域」(「臨時制限区域」)は、「ボーリング調査」自体とは直接関係なく、むしろ1) 米軍施設建設の目的で、米軍との協議により設定され、2)実際の機能としては、基地建設への抗議者が作業区域内に入ってくることを防ぐため、のものだ。仮に位置づけるのであれば、なおさら、「工事の施行区域」(「臨時制限区域」)の設置と「ボーリング調査」の関係を議論する「協議」が必要だったはずだ。

勿論、2014年7月と8月の「ボーリング調査」に係る「協議」の手続きにおいて、沖縄県と沖縄防衛局がどのようなやり取りを行ったかは詳細には分からない。しかし、閲覧できる沖縄県と沖縄防衛局が提出した同手続きに関する資料や、翁長知事の海上作業停止の「指示」をめぐり沖縄県と沖縄防衛局から提出された資料からは、「ボーリング調査」と「工事の施行区域」(「臨時制限区域」)の設置にの関係について「協議」がなされた跡は見当たらない。

仲井真前県知事の下で行われた「ボーリング調査」の「協議」手続きのなかで、「工事の施行区域」(「臨時制限区域」)の設置と「ボーリング調査」の関係について議論がなされたのか。もしなされていたのならば、どのような内容なのか。もし、なされていなかったのならば、なぜ沖縄防衛局は「協議」したと主張するのか。翁長知事が、沖縄防衛局の「ボーリング調査」に係る「協議」と巨大コンクリートブロック投入のリンクを問題とするならば、これらの問いにも沖縄県としての答えを明確にしておく必要がある。

ボーリング調査とのリンク2:仮設桟橋の設置
最後に沖縄防衛局が「ボーリング調査」とリンクをさせる形で近々に強行する可能性のある、約300mの「仮設桟橋」(仮設岸壁)の設置について指摘しておきたい。

「仮設桟橋」(仮設岸壁)設置については、メディアでも、「環境監視等委員会」に提出された資料のなかで設置予定の仮設桟橋が3つから1つに「改ざん」されたという形で取り上げられたため、多くの人が注目していた(沖縄タイムス 2015年3月10日)。これは、当初沖縄防衛局は、ボーリング調査のために3つの仮設桟橋を設置すると「岩礁破砕弄の許可」の手続きで当初示していたが、後になり1つで足りるとし変更が行われたが、その変更について報告がなされていなかったという問題であった。


2014年6月20日に沖縄防衛局が「環境監視等委員会/第2回委員会」に配布した「仮設桟橋」の資料


2015年3月9日の時点で、沖縄防衛局がHPで「環境監視等委員会/第2回委員会」に配布したとする「仮設桟橋」の資料

確かに資料の「改ざん」は大きな問題だ。しかし「仮設桟橋」設置の問題の本質は、「3つから1つへの改ざん」ではなく、1)この「仮設桟橋」の設置が、ボーリング調査とリンクされ(ボーリング調査のための仮設桟橋)「手続きは経ている」という形で、強行される可能性が高いこと、2) この仮設桟橋の設置は、仮設という名前とは裏腹に、実質的には埋立てによる岸壁の設置工事となる、ということである。実際、沖縄防衛局も当初は「仮設桟橋」ではなく、「仮設岸壁」と表現していた。

ちなみに4月後半に安倍首相は訪米することになっているが(毎日新聞 3月19日)、その前に、仮設桟橋を設置し、沖縄県民には「仮設」であり、ボーリング調査が終われば「撤去する」と説明しながら、米国議会や政府には「埋立て本工事開始」と宣伝することも可能性としてある。(うがった見方をすれば、3本から1本の変更がニュースになったのも、政府の情報戦略かもしれない)。

沖縄防衛局の「仮設桟橋」とボーリング調査のリンクの論理は以下の通りだ。

1) ボーリング調査を行うには「スパッド台船」の設置が必要である。
2) スパッド台船を設置するためには、「仮設桟橋」を設置することが必要である。
3) ボーリング調査については県とすでに「協議」がなされ、「岩礁破砕の許可」は必要ない、と県から回答されている。
4) よって仮設桟橋設置の承諾も受けている。

この「仮設桟橋」の設置と「ボーリング調査」をリンクさせる沖縄防衛局の主張も乱暴であり、かつ不明な点が多い。

まず沖縄県と沖縄防衛局の「ボーリング調査」についての「協議」の文書のなかでは、スパッド台船のために「仮設桟橋」を設置するとは記されていない。

ボーリング調査の「協議」文書のなかでは、
「スパッド台船については、曳船でスパッド台船を調査地点まで曳航し、アンカーで台船を安定させて、スパットをジャッキで海底におりして固定する。海底に固定する時は、作業ダイバーにより、サンゴ及び藻場に影響のない箇所に設置する。また、浅瀬で使用するスパッド台船についても同様に設置する。」

となっており、仮設桟橋が必要であるとは読み取れない。


(沖縄防衛局がボーリング調査との「協議」において沖縄県に提出した資料(2014年8月11日)より)

実際、これまでの辺野古・大浦湾で行われているボーリング調査をみれば分かるが、仮設桟橋のような施設がなくても、スパッド台船は設置できており、ボーリング調査も行えている。そもそも実質的埋立てを伴う仮設桟橋の設置が、ボーリング調査に必要かどうかも疑わしい。

また「仮設桟橋」についての記載(図面)がなされているのは、沖縄防衛局が提出した「岩礁破砕の許可」の申請書においてであるが、「岩礁破砕の許可」の申請手続きは、ボーリング調査の「協議」とは異なる手続きである。「岩礁破砕の許可」申請書に「仮設桟橋」の図面を記載をしたからといって、それが、ボーリング調査の「協議」に関わる手続きに流用できるとは考えにくい。もし流用されていたのなら、その旨を説明する文書等が必要なはずだ。

勿論、2014年7月と8月の「ボーリング調査」に係る「協議」の手続きにおいて、沖縄県と沖縄防衛局がどのようなやり取りを行ったかは詳細には分からない。しかし、閲覧できる沖縄県と沖縄防衛局が提出した同手続きに関する資料では、「ボーリング調査」と「仮設桟橋」の設置にの関係について「協議」がなされた跡は見当たらないのだ。

一方、翁長知事の海上作業停止の「指示」後行われている沖縄県と沖縄防衛局のやり取りでは、「仮設桟橋」についての質疑応答が行われている。その中で県は、桟橋の強度や、仮設桟橋をボーリング調査終了後どのように撤去するのか、等の技術的な質問を行っている。沖縄防衛局の回答は、撤去に関わる問題は、非常にいい加減な形でしか回答できていない。仮設桟橋が必要なのかどうか、という根本的な疑問は議論されていない。

仲井真前県知事の下で行われた「ボーリング調査」の「協議」手続きのなかで、「仮設桟橋」の設置と「ボーリング調査」の関係について議論がなされたのか。もしなされていたのならば、どのような内容なのか。もし、なされていなかったのならばなぜ沖縄防衛局は、「協議」したと主張するのか。翁長知事が、沖縄防衛局の「ボーリング調査」に係る「協議」と巨大コンクリートブロック投入のリンクを問題とするならば、これらの問いに対しても沖縄県の答えを明確する必要がある。
  

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県知事による海上作業停止の「指示」をめぐって Part I

2015年04月10日 / 辺野古/ 議会陳情/ 辺野古・大浦湾/ ボーリング調査

去った3月23日に翁長雄志沖縄県知事は、沖縄防衛局に対して、同局が行っている辺野古・大浦湾における米軍新基地建設ための海上作業(ボーリング調査)を停止するように「指示」した(沖縄タイムス 3月24日琉球新報 3月23日)。それを受けて沖縄防衛局は、翌24日、翁長知事の作業停止「指示」の「無効」を求める審査と、審査期間中には知事の「指示」の執行を停止するように、国(農林水産相)に申し立てた(朝日新聞 3月25日)。そして30日、農林水産相は、防衛局の申立て内容を全面的に受け入れる判断を下している。

ボーリング調査が現在も強行されるなか、知事の作業停止「指示」をめぐる沖縄県と日本政府の対立がより鮮明になっている(東京新聞 3月31日)。その対立は、県内外だけではなく、国外のメディアからも注目されている(例えば、ニュヨークタイムズ 2015年3月24日)。

しかし対立の内容については、法制度的な部分が中心ということもあり、非常に分かりにくいのが実状だ。メディアがこの問題を包括的に追えない部分もあり、情報が断片的なものになりがちだ。また沖縄県自体が、県の立場やこの状況を、HP等を使って明確に説明しきれていないことも、この対立の問題の分かりにくさに繋がっている(沖縄県HPはこちら)。

辺野古・大浦湾の豊かな環境と人々の暮らしを守るためには、多くの市民がこの対立の内容をきちんと理解し、またそこから見えてくる翁長県政の基地建設阻止の手法や問題点を理解することことが必要であろう。なぜならそれらを理解してこそ、より効果的な市民の運動が展開できるからだ。

以下、この対立の状況と背景の説明と沖縄BDのメンバーとしての見解を、メディア情報や、行政資料、そして沖縄BDやその他の市民団体のこれまでの活動から得た情報をもとに、3回に分けて整理してみたい。


      サンゴの上に投入されたアンカー/コンクリートブロック ©牧志治

翁長知事の「指示」
まず、翁長知事の海上作業停止の「指示」とは何か、なぜ「指示」を行ったのかについて振り返ってみよう。

翁長知事は、沖縄防衛局長に宛てた作業停止を「指示」する文書(沖縄県達農第281号)で、言葉を選びながら、問題を次のように指摘している。

「(岩礁破砕等の許可をした)区域外にて行われた、コンクリート製構造物等の設置については、当該許可に係る申請外の行為と認められ、許可を得ずに岩礁破砕行為が成さ蓋然性(可能性)が高いと思量されることから、県が必要とする調査を実施する」

そして
「本書受領後、県の調査が終了し、改めて指示をするまでの間、当該許可区域を含め、当該工事に係る海底面の現状を変更する行為の全てを停止すること」と「指示」している。

ここで知事が言う「岩礁破砕等の許可」区域とは、基地建設のために埋立てが行われる区域と、作業ヤードのために埋立てが行われる地域を指している。埋立てられる場所であり、よってその区域の海底岩礁の破砕については許可がなされているのである。(「岩礁破砕の許可」は仲井真弘多前知事が2014年8月28日に行っている。その8ヶ月前の2013年12月27日には仲井真前知事は「公有水面埋立て」を承認している)

「コンクリート製構造物等」とは、沖縄防衛局が2015年1月27日以降ボーリング調査のために設置した浮標やオイルフェンスを固定するために投入した最大45トンの巨大コンクリートブロックを指している。

そして「岩礁破砕等が行われている」ということは、投入された巨大コンクリートブロックによりサンゴが破砕している、ということを意味している。

つまり、許可した埋立て予定地以外で、巨大コンクリートブロックが投入され、サンゴを破砕している、ということである。


           (沖縄タイムス 4月11日より

翁長知事は、この状況が「岩礁破砕等の許可」を規定する沖縄県の「漁業調整規則」に「違反している懸念が払拭できないとし」とし、全ての海上作業を停止するように「指示」したのである。(沖縄タイムス 3月24日琉球新報 3月23日

ここで留意しておきたいのは、報道等では「ボーリング調査停止」や「海上作業の停止」が強調されがちだが、知事の「指示」は、幾つもの事項を含む慎重な対応となっていることだ(知事のコメント 琉球新報 3月28日)。

停止指示の文書からも分かるように、作業を一旦「停止」するのは、サンゴの破砕状況について、沖縄県が独自の調査・検証を行うためであり、この「指示」の行政法的位置づけも、処分の伴わない「行政指導」となっている。

しかしその調査結果によっては、破損したサンゴの「現状回復を求めていく」場合もある、さらにこれらの指示に従わなければ「岩礁破砕の許可」を取り消す場合もあるとし、「腹を決めた」としているのである。

なぜ45トンのブロックを投入したのか
ではなぜ、沖縄防衛局は、岩礁破砕の許可された区域外で、最大45トン級の巨大コンクリートブロックを投入し、その結果サンゴを破砕してしまったのだろうか。そしてなぜ、その行為を問題ないと防衛局は主張し、農林水産相はその主張を認めたのだろうか。

それを理解するには、まず巨大コンクリートブロック投入の判断の直接の理由と考えられる、2014年10月の台風19号の影響について理解する必要がある。(なぜ「岩礁破砕の許可」区域以外で投入したのかについては、後のほうで説明)

2014年7月1日の「工事着手」の後から、このサンゴ破砕が確認されるまでの経緯は以下の通りだ (沖縄BDの関連ブログ記事はこちら)。

工事着手(2014年7月1日)
↓ 
「臨時制限区域」を示す浮標(フロート)の設置(2014年8月14日)

浮標(フロート)固定のための鋼板アンカー248個投入

台風19号襲来 (2014年10月10日~12日)

鋼板アンカーやワイヤーロープによるサンゴや藻場の損傷が市民団体により発覚(2014年10月15日、17日)

鋼板アンカー120個消失、またワイヤーロープ等がサンゴ、藻場を傷つけたことが発覚

第三回「環境監視等委員会」(2015年1月6日)
*鋼板アンカーの消失やサンゴの損傷についても協議

海上での工事再開(2015年1月15日)
「臨時制限区域」を示す浮標(フロート)やオイルフェンスを沖に広げるように設置(2015年1月19日)

浮標(フロート)やオイルフェンス固定のために最大45トンのコンクリートブロックを海中に投入(2015年1月27日)

市民団体によりコンクリートブロックによるサンゴ破損の問題の指摘 (2015年2月8日)。

この経緯からも分かるように、2014年10月の台風により、それまで浮標(フロート)やオイルフェンスを固定するために使用していた鋼板アンカーが120個消失した後、同じような問題の再発を防ぐ措置として、より巨大なコンクリートブロックが投入されている。

実際、2015年1月6日に開催された環境監視等委員会/第3回委員会では、「今後同規模、それ以上の台風の通過も考えられるということもあるので、必ずしもアンカーの重量を重くする等のハード的な対策だけでなく、事前にうまく避難する等のソフト的な対応も含めて対応すべし」としている(環境監視等委員会委員長のブリーフィングより)。

さらに4月9日の環境監視等委員会/第4回委員会では、巨大コンクリートブロックをアンカーとして投入したのは沖縄防衛局の判断であったことを確認している。そして同委員会はサンゴの生態系全体への影響は「それほど大きくない」としながらも、サンゴの破砕に至った防衛局の対応を批判をしている(琉球新報 4月10日 沖縄タイムス 4月11日)。

環境監視等委員会の議論を経たにも関わらず、浮標(フロート)やオイルフェンスを固定する際に通常使われるアンカーとは数段規模が数段違う巨大コンクリートブロックが「岩礁破砕の許可」の区域外で投入され、それがサンゴを破砕していたのが実態である。

巨大コンクリートブロックの投入に対する沖縄防衛局の見解
沖縄防衛局は、その実態を認めながらも、翁長知事による海上作業停止「指示」は違法であると主張している。そして農林水産相に対して、翁長知事の「指示」の「無効」を求めて、違法性の審査をすることと、審査の間は知事の作業停止「指示」の執行を停止するように申し立てた(毎日新聞 3月27日)。

沖縄防衛局は3月24日付けで翁長知事に送った文書で、以下のような見解を示している。

1) 沖縄県は「岩礁破砕についての理解を誤っている」
水産資源法の規定を根拠とする「都道府県漁業調整規則」に基づくと、「岩礁」とは、海域における地殻の隆起形態であり、地殻の隆起形態を変化させる行為が「岩礁破砕」である。本件アンカーの設置は、地殻そのものを変化させる行為ではなく、岩礁破砕にあたらない。(サンゴの破砕は岩礁破砕にならない、という見解)。

2) 沖縄県は「アンカー設置等について許可を不要としていた」
アンカーを含む浮標の設置については、2014年7月17日、8月28日に許可を受けた岩礁破砕等の許可手続きに当たって、沖縄県から、他の事例を踏まえれば、浮標やそのアンカーの設置には許可はいらない、と示された。(巨大コンクリートブロックは、あくまでアンカーであり、その設置については許可はいらない、という見解)。

3) 沖縄県の対応は「他の事業との公平性に欠ける」
沖縄県における他の同様な事業においては、アンカー設置について岩礁破砕の許可は必要ないとしているのに、今回は許可を必要としており、「公平性を欠き」、「平等原則に反する」。

4) 沖縄県知事の対応は「著しい権限濫用であること」
仮に本件のアンカー設置が岩礁破砕に当たるとしても、許可区域内を含めた全ての工事区域で、全ての現状変更の行為、つまり作業工事の停止を指示していることは、「比例原則に反し」、「著しい権限濫用」である。

5) 「行政手続法に違反していること」
弁明の機会が与えられておらず、必要な教示がなされていない。

また3月24日付けで沖縄防衛局が農林水産相に提出した審査請求書(申し立て)では、以下のような追加の見解も記載されている。

「海域における地殻そのものを変化させない行為やサンゴ礁にまで発達したとは認められないサンゴ類をき損する行為は規制の対象にはならない」「(本件のアンカー設置行為は)、サンゴ礁まで発達したサンゴ類をは損するような行為を行っていない」

沖縄防衛局の見解の問題点
沖縄BDとしては、沖縄防衛局の示しているこれらの見解/主張は、非常に無理があると考える。防衛局は、法制度や手続きに対しての独自の定義や解釈を持ち出し、翁長知事の「指示」が違法であると判断しているとしかみえない。そしてその沖縄防衛局の定義や解釈を受け入れる形で翁長知事の「指示」の執行停止を判断したのが、農林水産相である。以下、沖縄BDとしての沖縄防衛局の見解/主張の問題点を具体的に示していきたい。

まず1点目の「岩礁」の定義や認識の問題だ。確かにサンゴは腔腸動物物であり、沖縄防衛局が主張するように「地殻」という概念の中には含まれていない。しかし、沖縄の海岸の生態系を形づくるイノーにおけるやサンゴ、サンゴ礁の実態を踏まえて、サンゴ、サンゴ礁と海底の地殻を別のものとして、物理的に分けて、破砕作業を行えるのかどうかを考えると、防衛局の見解/主張には無理があることがみえてくるはずだ。

今回、翁長知事による作業停止「指示」の法制度的根拠は、沖縄県の「岩礁破砕等の許可に関する取扱方針」(平成19年9月25日制定)であり、その前文では「サンゴ礁は地形的にも生態的にも砂浜、干潟、藻場などの浅海域と一体となり、本県における海洋生産の基盤を成している」としている。サンゴという生物やサンゴ礁が、沖縄県の沿岸における重要な環境の一部であることを位置づけている。この「取扱方針」は、沖縄県漁業調整規則における「漁場内の岩礁破砕等の許可」第39条に対応している(沖縄県漁業調査委規則)。また同漁業調整規則はサンゴの採捕を禁止している。

さらに沖縄防衛局の「サンゴ礁まで発達したサンゴ類をは損していない」という見解/主張も、沖縄県自体が独自の調査を行えない状態で(琉球新報 3月12日)、どのように確認できるのかという問題がある。

沖縄防衛局の「岩礁」や「サンゴ」に関する主張/見解は、沖縄の海岸環境の実態と沖縄県の法制度を無視したものだといえる。

次に2点目の、投入した最大45トンの巨大コンクリートブロックは、あくまでアンカーであり、許可はいらないという見解/主張の問題だ。まず自らがアンカーと定義すれば、すべてがアンカーとして認められるのか、という常識的なレベルでの問題がある。そして、仮に防衛局が主張するように、沖縄県は「アンカー設置等について許可を不要としていた」としていたとしても、2014年夏の「岩礁破砕等の許可」や「協議」の段階で、防衛局自身と沖縄県が45トンのコンクリートブロックがアンカーとして投入されることを合意、あるいは想定していたことは考えられない。

さらに、平和市民連絡協議会の北上田毅さんらが指摘してきたように(チョイさんの沖縄日記 2015年2月7日)、問題となっている巨大コンクリートブロックは、「岩礁破砕の許可」区域の外、つまり「作業の施行区域」(「臨時制限区域」)を示す浮標の固定を目的にアンカーとして投入されている。この「作業の施行区域」「臨時制限区域」の浮標やアンカーの設置については、最低でも「協議」等の手続きが行われるべきべきものだ(沖縄県の「岩礁破砕等の許可に関する取扱方針」(平成19年9月25日)第8条を参照)。(この「沖縄県はアンカー設置等について許可を不要としていた」とする問題についてはさらに詳しくPart IIで述べる。)


沖縄タイムス 2015年4月11日

3点目の公平性の問題についても、2点目と同じことが言える。沖縄防衛局は、他の同様な事業においては、アンカー設置について「岩礁破砕の許可」は必要ない、と主張するが、他の同様な事業では「岩礁破砕の許可」区域以外に設置された浮標やオイルフェンスを固定するのに、45トン級のコンクリートブロックを使っていないはずだ。「公平性がない」「平等原則に反する」と主張するならば、防衛局は、まず、他のボーリング調査において、あるいは「岩礁破砕の許可」区以外でこのような巨大コンクリートブロックが投入された事例を示すことが必要であるはずだ。

沖縄防衛局の4点目と5点目の見解/主張についても、以上の議論を踏まえると問題があるのは明白であろう。

Part IIに続く。

  

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沖縄市サッカー場:ドラム缶たまり水専門家意見2)池田こみち①排水口のダイオキシン

2015年04月09日 / 枯れ葉剤/ 沖縄防衛局/ 基地返還跡地/ 汚染/ 沖縄市サッカー場/ 沖縄県環境政策/ 日米地位協定/ 環境協定

沖縄市サッカー場のドラム缶が埋設されていた場所、周辺にたまっていた水や底面土壌についての沖縄防衛局の調査・分析が妥当なものであるか、環境総合研究所の池田こみちさんにも意見をいただいています。

 池田こみちさんの意見は、2回に分けて記事にします。まず、宮田先生への意見書との関連から、まずダイオキシン汚染関係の部分を紹介します。
 意見書は下に貼り付けてありますので、ぜひ全体通して読んでみてください。

 ここで問題にするのは、沖縄防衛局の報告書の排水口の水のダイオキシン類の報告部分です。排水口からのダイオキシン類のデータは、これまで沖縄県環境保全課が測っており(沖縄市サッカー場周辺環境調査の結果について)、今回のたまり水の調査では、沖縄防衛局が計測しています。
計測地はこちら: 

沖縄防衛局HPより切り取り、加工
http://www.mod.go.jp/rdb/okinawa/07oshirase/kanri/houkokusyo6/2.pdf


 沖縄防衛局は、今回、たまり水のダイオキシン類のデータと、排水口のダイオキシン類のデータをあわせて評価・分析しています。
 この評価・分析の問題は、大きく2つ指摘されています。
1)1.3pg-TEQ/Lのダイオキシンが検出されていることを、沖縄防衛局が重視してないこと
池田さんは、これについて、まず
この場所はサッカー場予定地であり、ダイオキシン類の水質規制、大気汚染規制などが適用される施設ではない。その場所で排水口からとはいえ、1.3pg-TEQ/Lのダイオキシンが検出されることがそもそも重大な問題である。沖縄防衛局の報告書では、これについて次のように結論づけている。排水基準である10pg-TEQ/Lを満たしているからとして、安易に片付けるべきではない。」
と、ダイオキシン類がサッカー場で検出されること自体が問題で、防衛局が、環境基準以下であることで安易に片付けようとしていることを問題視しています。


沖縄防衛局HPより切り取り、加工
http://www.mod.go.jp/rdb/okinawa/07oshirase/kanri/houkokusyo6/14.pdf


2)排水口でのダイオキシン類の検出は、「ドラム缶発掘工事の影響がある」と結論づけているにもかかわらず、「たまり水の影響は排水口に及んでいないと判断される」という結論で終わらせ、検出の原因解明をしていないこと。
 
 排水口のダイオキシン類のデータをみて、たまり水のこの部分の防衛局の報告はとてもわかりにくい記述になっています。

 まず、その部分を抜き出してみます。
 
5.2 排水口の水質調査結果について(『旧嘉手納飛行場(26)土壌等確認調査(その2)嘉手納飛行場返還跡地内報告書 平成27年1月 沖縄防衛局調達部/中央開発株式会社』 p.34)

“沖縄県の平成25年10月調査および平成26年2月調査の毒性等量は、今回の調査結果と比べて小さく、異性体組成が異なっているが、原因としては、平成26年1月末から2月初めにかけて実施したドラム缶発掘工事の影響が考えられる。工事以前の平成25年10月の排水のダイオキシン類は小さく、工事直後の平成26年2月排水のダイオキシン類は平成25年10月排水より大きくなり、平成26年3月・平成26年7月にダイオキシン類はピーク値を示し、今回調査では平成26年3月調査の1/3になっている。
なお、図5.2.2には、今回調査したたまり水と前回(平成26年6月調査)のたまり水の異性体割合を併記したが、排水口の毒性等量割合とは明らかに異なっていることから、ドラム缶発掘工事の影響はあるものの、たまり水の影響は排水口に及んでいないと判断される。”
(イタリック、赤字は引用者による)

 (ひとつ指摘しておきますが、池田先生から「毒性等量割合」という語彙は専門用語でないそうです。このようなところからも調査レベルに関して、疑義が持たれるところではあります。)
 
 文章ではわかりにくいので、下のような時系列の表にしてみました。


(旧嘉手納飛行場(26)土壌等確認調査(その2)嘉手納飛行場返還跡地内報告書、沖縄県環境保全部HP)より沖縄・生物多様性市民ネットワーク作成)
 
 こうしてみると、発掘工事の後に、排水口でのダイオキシン類の検出がピークとなり、その後、小さくなっていることがわかります。つまり、発掘工事が排水口の水に影響を与えているということです。防衛局も「実施したドラム缶発掘工事の影響が考えられる」「ドラム缶発掘工事の影響はあるものの」と工事の影響を認めてはいます。
 しかし、たまり水の異性体ごとの組成が異なっているので(たまり水のダイオキシンとは違うので)、たまり水の影響は排水口に及んでいない、とたまり水との関係だけで、結論づけています。たまり水でないなら、何が影響を与えているのでしょうか。

 池田さんは以下のように問題を指摘し、この排水口の水の汚染の原因を明らかにすべきであるとしています。

”ここでは、溜まり水と排水口のダイオキシン類について、異性体ごとの毒性等量割合がことなっていることから、「ドラム缶発掘工事の影響があるものの、溜まり水の影響は排水口に及んでいない」としているが、両者の間には物理的な距離と共に、到達するまでの時間、さらに、ドラム缶掘削作業の何によってどのような媒体を通して影響が及んだかといった問題も重要となるが、いずれも明確に示されていないまま、「溜まり水の影響は及んでいない」と結論づけている。
 溜まり水の影響でないとした場合、具体的にどのような経路、メカニズムによってこの排水口の水が汚染されたのかについて説明する必要があるだろう。むしろ、排水溝の水はサッカー場利用者により近いものであることから、その汚染原因や経路を明らかにする必要があるだろう。”

 つまり、排水口のダイオキシンの検出は、ただ「環境基準値以上/以下」ということで終わらせてはいけないということです。
検出されているのが、サッカー場であることを認識すること。そして排水口に流れ出ているダイオキシン類はたまり水が原因でないのならば、何が原因なのかを調査し、過去の汚染、今後の汚染拡散の可能性を考察し、汚染範囲をどう確定するのか再考するべきでしょう。そして、掘削時にどのように汚染が動くのか、沖縄の経験値としていく必要があります。
 
 池田さんの意見書は、調査や評価のあり方についても指摘しています。次の記事に続きます。

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旧嘉手納飛行場(26)土壌等確認調査(その2)
嘉手納飛行場返還跡地内報告書 平成27年1月 沖縄防衛局調達部/中央開発株式会社
についてのコメント


2015年2月15日
池田 こみち
(株式会社 環境総合研究所 顧問)


1.調査結果の評価体制について
 本調査は、報告書冒頭にあるように、前回までと同様、愛媛大学農学部森田昌敏客員教授の監修のもと取りまとめられている。しかし、何故、一連の調査報告書の監修を森田氏一人に依頼しているのか、人選の経緯、理由などは明らかにされていない。少なくとも、議論が分かれる汚染原因の究明などの問題が関わる以上、複数の専門家の議論を踏まえて評価を行うことが望ましい。また、開かれた場での議論、市民への適切な情報提供と説明が行われるべきであると考える。

2.調査の目的について
 本調査の目的は、報告書によれば、前回調査を踏まえて汚染範囲の特定を行い、「嘉手納飛行場返還跡地内において,ドラム缶が埋設されていた場所または周辺 のたまり水の水質およびドラム缶底面土壌について調査を実施し,有害物質による汚染の有無を把握するものである。」とあるが、汚染の有無が最終的な目的ではなく、汚染原因の究明や汚染の拡散の可能性など、地域住民の視線や立場に立って調査が行われる必要がある。汚染の有無だけが議論され、汚染の程度、質によって掘り出されたドラム缶や土壌等の処理・処分が行われても、地域住民の不安の払拭にはつながらないからである。
 サッカー場として再開することが最終的な目的であるとすれば、子どもたちの利用が前提となっていることからより慎重な対応が求められる。

3.溜まり水のダイオキシン類について
 今回の調査では、前回の調査により、ドラム缶発掘現場に溜まった水から高濃度のダイオキシン類が検出されたことを受け、再度調査を行ったものである。前回の調査では、沖縄市、沖縄防衛局の両者の調査でほぼ同レベルの高濃度のダイオキシンが検出されたが、評価結果は、大きく分かれた。「枯れ葉剤問題」に関しては、沖縄防衛局では「オレンジ剤」との関係の評価のみ行ったが、沖縄市の依頼した専門家、愛媛大学の本田克久教授は、枯れ葉剤の複数の種類の可能性を示唆した。
 こうした議論の分かれた重大な調査の追加調査として位置づけられた今回の調査結果の評価はより慎重に行われる必要がある。
 今回の調査では、未ろ過水から170pg-TEQ/L、ろ過水から33pg-TEQ/Lが検出され、前回の調査結果と大きな差が見られていない。

表1 溜まり水のダイオキシン類測定結果 


これについて、報告書では、つぎのように評価している。

「今回のたまり水は前回実施(平成26年6月調査)のたまり水に比べ,1,2,3,7,8-PeCDDの割合がやや多く(今回:27.6%,前回:21.3%),2,3,4,7,8-PeCDFの割合がやや少なく(今回:2.5%,前回:8.4%)なっているが,その他の異性体割合は概ね類似しており,たまり水のダイオキシン類は,前回実施(平成26年6月調査)分と同一なもの(2,4,5-T中不純物,PCP中不純物,およびPCBに由来するダイオキシン類が混合して存在していた)と考えられる。」(p.30より抜粋)

 また、周辺土壌の粒子を分析し、排水口のダイオキシン類分析結果と照らし合わせ、次のように結論づけている。
「以上の結果より,たまり水については,地盤の透水係数が小さいことから地下浸透の可
能性は低いこと,排水口の水は排水基準に適合していたこと,窪地周囲の床掘りの結果,
たまり水の存在は認められなかったことから,ドラム缶発掘場所である窪地にとどまって
いると判断され,窪地内のたまり水を土壌とともに処理すれば問題ないと考えられる。」(p.31より抜粋)

 果たして、この評価、結論に基づいた対策で、サッカー場としての再開に向け、市民は安心できるのだろうか。ドラム缶が埋め立てられてから数十年以上が経過していることが予測されることから、長い時間を経てドラム缶は腐食し、内容物の多くは土壌中に流出・浸出していると考えられる。一連の調査で明らかになったのは調査を行ったサンプルについてのみで有り、広大な嘉手納基地跡地サッカー場にどれほどの汚染が浸透しているのかは定かではない。現に、今回の調査の過程(磁気探査調査)で新たにドラム缶が発見されている。
ごく一部のサンプルの分析結果を持って全体が安全であるかのような結論づけ、処分の仕方のみを示した評価は、市民の立場からすれば必ずしも十分とは言えないだろう。
 前回調査の際に、ドラム缶付着物やドラム缶底面土壌のダイオキシン類についてその由来が枯葉剤(オレンジ剤をはじめとする各種枯葉剤)に起因するかどうかが議論となり、沖縄市の報告書の慣習を行った本田氏や第三者の立場からコメントした宮田氏によりダイオキシン類の毒性等量濃度に占める2,3,7,8-TeCDDの割合が解析された。
 今回の溜まり水について異性体ごとの毒性等量濃度に占める割合を見ると、沖縄防衛局がとりまとめた報告書の評価では触れられていないが、2,3,7,8-TeCDDは15%を占めていた。最も多いのは報告書に示されているように1,2,3,7,8-PeCDD(5塩素化ダイオキシン)で28%を占めるが、2,3,7,8-TeCDDの15%は決して小さい割合ではない。この点について議論を深める必要があるだろう。何よりも、ダイオキシン類の異性体、同族体の詳細分析は、ダイオキシン類の由来を特定する上で鍵となるからである。沖縄防衛局は、あえて、その部分を避け、発掘されたドラム缶やその周辺の土壌、水の処理処分のことにのみ焦点を当てているのは、現場の汚染がかかえる本質的な問題から目を背けていることに他ならない。

4.排水口の水のダイオキシン類について
 先にとりまとめた意見書でも述べたが、この場所はサッカー場予定地であり、ダイオキシン類の水質規制、大気汚染規制などが適用される施設ではない。その場所で排水口からとはいえ、1.3pg-TEQ/Lのダイオキシンが検出されることがそもそも重大な問題である。
沖縄防衛局の報告書では、これについて次のように結論づけている。排水基準である10pg-TEQ/Lを満たしているからとして、安易に片付けるべきではない。

「今回の排水口の水質については,沖縄県の平成26年3月および平成26年7月調査の毒性等量割合と概ね類似しており,毒性等量は1,2,3,4,6,7,8-HpCDD,OCDD,1,2,3,6,7,8-HxCDDの順に高い割合を示す。沖縄県の平成25年10月調査および平成26年2月調査の毒性等量は,今回の調査結果と比べて小さく,異性体組成が異なっているが,原因としては,平成26年1月末から2月初めにかけて実施したドラム缶発掘工事の影響が考えられる。工事以前の平成25年10月の排水のダイオキシン類は小さく,工事直後の平成26年2月排水のダイオキシン類は平成25年10月排水より大きくなり,平成26年3月・平成26年7月にダイオキシン類はピーク値を示し,今回調査では平成26年3月調査の1/3になっている。なお,図5.2.2には,今回調査したたまり水と前回(平成26年6月調査)のたまり水の異性体割合を併記したが,排水口の毒性等量割合とは明らかに異なっていることから,ドラム缶発掘工事の影響はあるものの,たまり水の影響は排水口に及んでいないと判断される。」(p.34より抜粋)

 ここでは、溜まり水と排水口のダイオキシン類について、異性体ごとの毒性等量割合がことなっていることから、「ドラム缶発掘工事の影響があるものの、溜まり水の影響は排水口に及んでいない」としているが、両者の間には物理的な距離と共に、到達するまでの時間、さらに、ドラム缶掘削作業の何によってどのような媒体を通して影響が及んだかといった問題も重要となるが、いずれも明確に示されていないまま、「溜まり水の影響は及んでいない」と結論づけている。
 溜まり水の影響でないとした場合、具体的にどのような経路、メカニズムによってこの排水口の水が汚染されたのかについて説明する必要があるだろう。むしろ、排水溝の水はサッカー場利用者により近いものであることから、その汚染原因や経路を明らかにする必要があるだろう。

5.ヒ素及びフッ素について
 今回の調査の結果、ヒ素及びフッ素の汚染はいずれも「自然由来」と結論づけられた。
しかし、前回の調査では、ヒ素、フッ素とも溶出試験では土壌汚染対策方の基準を超過しているサンプルもあったことから、慎重な対応が必要であろう。
 そもそも、土壌汚染対策方の各種基準は、土地利用の改変に伴って対策が必要であるかどうかを判断する目安であり、その基準値や指針値以内であるからといって、検出された汚染を軽く考えることはよくない。由来は何であれ、汚染があることは間違いなく、なおかつ、サッカー場であることから子どもたちの利用が前提となっていることを考慮すれば、より安全側にたった評価が行われるべきである。

6.さいごに
 沖縄防衛局は、これらの調査結果を踏まえ、各種汚染に適した処理施設へ搬入後、処分するとし、処理については、「処分方法、処分時期、処理施設について沖縄市等と協議が整い次第実施」するとしている。
 汚染物質の適切な運搬、処理、処分は広域にまたがる可能性もあることから、関係自治体との協議のとどまらず、市民、県民に対しても情報を提供するとともに、意見を求めるなど十分な協議が必要と思われる。
 また、総じて、沖縄防衛局の調査結果の評価は、本調査も含め、出来る限り汚染のレベルや範囲を限定的に捉えようとしているが、果たしてそうした対応で十分なのかどうか、疑問のあるところである。ダイオキシン類、有害金属類、農薬類、油分(TPH)などについて諸外国に比べて基準が甘かったり定められていない項目も多いことから、単に費用対効果の面からのみ汚染物の処理を決定するのではなく、得られた情報からどのような結論を導き出すのか、対策を検討するのか、一方的な決めつけではなく、開かれた議論に基づいた検討が必要である。
 沖縄市が行った調査も含めれば、対策費も含めて全体として数億円~10億円近くもの税金を投じた業務であることを踏まえ、単なる調査のための調査や市民、県民に国の見解を押しつけるようなことがないよう、慎重な対応を求めるものである。
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Posted by 沖縄BD at 22:38Comments(0)

沖縄市サッカー場:ドラム缶たまり水専門家意見1)宮田秀明氏~ダイオキシンは溶出

2015年04月08日 / 枯れ葉剤/ 沖縄防衛局/ 基地返還跡地/ 汚染/ 沖縄市サッカー場/ 沖縄県環境政策/ 日米地位協定/ 環境協定

 沖縄・BDは、沖縄市サッカー場のドラム缶が埋設されていた場所、周辺にたまっていた水や底面土壌についての沖縄防衛局の調査・分析が妥当なものであるか、専門家に評価していただいています。

 
沖縄防衛局HP 調査結果現場写真より切り取り(http://www.mod.go.jp/rdb/okinawa/07oshirase/kanri/houkokusyo6/13.pdf

この記事では、ダイオキシンの専門家の宮田秀明氏(摂南大学名誉教授)の意見を紹介します。
宮田先生は、池田こみちさんと同じく、サッカー場の調査の最初から、意見書を書いてくださっています。
 沖縄市サッカー場調査評価:ダイオキシン専門家宮田秀明氏からの意見書をリリース
 [沖縄市サッカー場汚染]ダイオキシン専門家宮田秀明氏意見書についての報道
 沖縄市サッカー場監視・評価プロジェクト2nd ラウンド:宮田秀明氏意見書

意見書のオリジナルについては下に貼り付けているので、詳細はそちらを参照してください。

宮田先生の意見書で重要なポイントは、ダイオキシン類がどのような状態で存在しているのかの分析です。
たまり水をフィルターでろ過をし、ろ過前と、ろ過後のダイオキシン類の濃度の測定をすることにより、ダイオキシン類がどのような状態で存在しているか---ダイオキシンが粒子に吸着している状態(懸濁体)か、あるいは液体として溶けている状態(溶存体)---かがわかります。
 参考:「ダイオキシン類挙動モデルハンドブック」(平成16年3月環境省環境管理局総務課ダイオキシン対策室)
 
この分析から、宮田先生は、高濃度のダイオキシン類が長期間持続して溶出しているという結論を出しています。沖縄防衛局の「汚染範囲は限定的である」という見解は、汚染の影響を矮小化していることがみてとれます。

また、沖縄防衛局の調査結果の分析が正確でないことを2点指摘しています。 

 以下、ポイントをまとめてみました。
  
1)たまり水のダイオキシン濃度は高い
 未ろ過水 170pg/-TEQ/L (環境基準値水質、1pg-TEQ/L以下、の170倍)、ろ過水 33pg-TEQ/L(33倍)とダイオキシン濃度として高い値を示していることが、まず指摘されています。(環境基準値:水質 1pg-TEQ/L以下)。
 また、環境総合研究所の池田こみちさんの意見書でも、「(猛毒ダイオキシン類である)2,3,7,8-TCDDの15%は決して小さい割合でない。水試料で、 2.3.7.8-TeCDDの毒性等量濃度の割合が15%程度というのはかなり高い。土壌ではほとんどでない)」とコメントなさっていました。

2)雨水等によって埋め立て物から異常な濃度のダイオキシン類が持続して溶出していることを示唆している。 
 ダイオキシンは「溶存体」という存在形態で溶解(粒子に吸着している状態ではない)しており、”当該地域の埋立物に起因するダイオキシン類が雨水等によって容易に溶出される状況にある。その状況は長期間にわたって持続していたものと判断される。”と結論づけられています。
 ダイオキシン類の汚染がそこにとどまらず、溶け出していたという、大変、危険な状態が続いていたことがわかります。

3)沖縄防衛局の調査は明らかに不正確な分析がある
 沖縄防衛局の調査の以下の2点が不正確であると指摘しています。 
①ダイオキシン異性体分析で焼却由来の分析がされていない。
沖縄防衛局は、ダイオキシン異性体分析で
“今回のたまり水は前回実施(平成26年6月調査)のたまり水に比べ,1,2,3,7,8-PeCDDの割合がやや多く(今回:27.6%,前回: 21.3%), 2,3,4,7,8-PeCDFの割合がやや少なく(今回:2.5%,前回:8.4%)なっているが,その他の異性体割合は概ね類似しており,たまり水のダイオキシン類は,前回実施(平成26年6月調査)分と同一なもの(2,4,5-T中不純物,PCP中不純物,およびPCBに由来するダイオキシン類が混合して存在していた)と考えられる。“(p.30)
と考察していますが、
宮田先生は、
”溜まり水に検出される主なダイオキシン類化合物は、2,3,7,8- TeCDD、1,2,3,7,8-PeCDDおよび1,2,3,4,6,7,8-HpCDDである。特に、1,2,3,7,8-PeCDDは、焼却関連物(焼却灰、焼却飛灰など)に含まれる代表的なダイオキシン類異性体であることを考慮すると、沖縄防衛局の本報告書の30頁に記載されている”「2,4,5-T中不純物、PCP中不純物、およびPCBに由来するダイオキシン類が混合して存在していた」と考えられる“との内容は、正確ではない。おそらく、焼却関連物も埋立物に含まれており、それらからの溶出物も混在していたものと判断される

と、沖縄防衛局の分析を否定しています。

また、意見書にはありませんが、1,2,3,7,8-PeCDDが一般的な焼却関連物としては高く、他の化学物質があったのかもしれないが、それを知る研究結果やこれまでの知見はない、と宮田先生はおっしゃっていました。

 これについては、池田こみちさんから、「これまでの調査結果の範囲内に納めることによって、これ以上問題の射程が拡がらないことこと、処理処分についてもできるだけ限定的にしたい意図があるようにみえるも仕方がない書き方ではないか」と追加の説明がありました。
 確かに、これによって、焼却関連物がドラム缶の中にあったこと、灰の処分、沖縄でよく見られる風景であった野焼きによる被害の可能性など、問題の射程は、広がります。

②ダイオキシン類の溶解性を増加させる物質を一般土壌に存在する腐植物としている。
 ポイント2で示されているダイオキシン類の溶解性を増加させる物質について、沖縄防衛局は、
 ”これらのことから,ろ過水のダイオキシン類は,水中のフミン酸やフルボ酸などに保持されて,ろ液中に通常より多く存在していた可能性が考えられる。(p.30)”
と、一般土壌に存在するものと考察していますが、
宮田先生は、
“今回の調査結果では、溜まり水に含まれていた170 pg-TEQ/Lのダイオキシン類の中、約1/5に相当する33 pg-TEQ/Lも溶存体として存在しる。このような極めて高率で溶存体として存在するためには、ダイオキシン類の溶解性を増加させる物質が溜まり水に含まれていたと考えられる。本報告書の30頁には、一般土壌に存在する腐植物であるフミン酸やフルボ酸が溜まり水に含まれており、ダイオキシン類の溶存体を増加させたものと記載されている。しかし、溜まり水は着色しており、土壌由来であればほとんど着色しないものと思われる。遺棄・埋設物にはいろいろな廃棄物が含まれており、特に、界面活性剤のような油性物質と水性物質の両者を熔解できるような物質が溜まり水に溶けていたものと思われる。産廃の埋め立て地などでは、溜まり水の色が褐色や赤色のものもあり、明らかに埋め立て物を反映している。溜まり水にダイオキシン類が異常に高い濃度で存在していることは、当然のことながら埋め立て物に起因するものである。当然のことながら、着色物質も埋め立て物に起因するという考え方が、適切であると判断される。”
と、ダイオキシン類の溶解性を増加は、ドラム缶の中身に起因すると見解を述べています。

 これも、やはり問題の射程が広がらないように、自然由来、一般的な条件にとどめておきたいという意図があるように考えられても仕方がないと書き方であるといえます。

4)埋め立て物は「ドラム缶」とは限らない
 これまでの調査では、「ドラム缶」を前提として行われてきましたが、”一方、当該地域の埋立物は、全てが金属製のドラム缶であったのであろうか。ポリ袋や段ボール等の非磁気性の容器のものはなかったのであろうか。”と、問題を提起しています。
 そして、廃棄物の埋め立て地における有害物の種類や濃度は、均一ではなく、全くの不連続性を特徴とする。そのため、少し離れた地点における有害物質の種類や濃度は、水平的にも垂直的にも極めて大きく相違する。このような実態があるため、埋立地における汚染調査は、適切な間隔の適切な深さのボーリング調査を原則としている。と、磁気探査に頼らない調査を提言なさっています。
 
 このような問題点の指摘から、やはり調査の結果のみでなく、調査結果からの分析、評価が大事であることがわかります。
 
 本来ならば、沖縄防衛局は、ダイオキシン類の状態がどのような状態であるのか/あったのか、そしてそれはどのような影響を及ぼし、汚染範囲を推測する点でどのような意味があるかを、報告書で説明しなければならないはずです。しかし、そのような報告になっていません。

 私たちはやはり調査を監視する姿勢を強くもった市民となって、調査・報告体制を整え、環境・安全・安心を守っていかなければならないことを改めて認識させられる意見書です。防衛局の見解を聞きたいと思います。
 
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旧嘉手納飛行場(26)土壌等確認調査(その2)嘉手納飛行場返還跡地内報告書 
平成27年1月 沖縄防衛局調達部/中央開発株式会社についての意見書


平成27年2月28日

摂南大学名誉教授
宮田秀明


1. 溜まり水のダイオキシン類について
 今回の調査結果では、溜まり水のダイオキシン類濃度は、未ろ過水で170 pg-TEQ/Lおよびろ過水で33 pg-TEQ/Lであり、極めて異常に高い。今回の検出濃度は、平成26年6月の沖縄防衛局の調査結果(未ろ過水:150 pg-TEQ/L;過水で55 pg-TEQ/L)および沖縄市の調査結果(未ろ過水:190 pg-TEQ/L;過水で64 pg-TEQ/L)と同様なレベルである。これら一連の結果は、旧嘉手納飛行場のコザ運動公園においては、雨水等によって埋立物から異常な濃度のダイオキシン類が、持続して溶出していることを示唆するものである。
 溜まり水の未ろ過水とろ過水に含まれているダイオキシン類は、ポリ塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン(PCDDs)、ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDFs)およびコプラナーPCB(Co-PCBs)の多様な異性体から構成されているが、ほぼ類似した異性体割合を示している。この結果は、埋立物から溜まり水に移行するダイオキシン類は、溶出量だけでなく、溶出成分もほぼ類似していたことを示唆するものである。
 溜まり水に検出されるダイオキシン類の濃度は、PCDDs>>PCDFs>Co-PCBsの順であり、圧倒的にPCDDs濃度が高い。
 表1に示すように、溜まり水に検出される主なダイオキシン類化合物は、2,3,7,8-TeCDD、1,2,3,7,8-PeCDDおよび1,2,3,4,6,7,8-HpCDDである。特に、1,2,3,7,8-PeCDDは、焼却関連物(焼却灰、焼却飛灰など)に含まれる代表的なダイオキシン類異性体であることを考慮すると、沖縄防衛局の本報告書の30頁に記載されている”「2,4,5-T中不純物、PCP中不純物、およびPCBに由来するダイオキシン類が混合して存在していた」と考えられる“との内容は、正確ではない。おそらく、焼却関連物も埋立物に含まれており、それらからの溶出物も混在していたものと判断される。

    表1. 溜まり水に存在しているダイオキシン類の主な異性体



 一方、今回の調査においては、通常の分析では使用しない極めて小さい孔経(0.1μm)のメンブランフィルターを用いて、溜まり水をろ過している。前回は通常使用する0.5μmのフィルターを使用していた。一般に、水中のダイオキシン類の大半は、浮遊粒子に吸着して存在していると言われている。そのため、今回は可能な限り浮遊粒子に吸着したダイオキシン類をろ過時に除去する目的で、通常使用しない極微細孔のフィルターが使用された。
その結果、溜まり水のダイオキシン類濃度は、未ろ過水では、今回の濃度(170 pg-TEQ/L)は、前回(150 pg-TEQ/L)よりも若干高かったにも係わらず、ろ過水にでは、今回の濃度(33 pg-TEQ/L)は、前回(55 pg-TEQ/L)よりも大幅に低下している結果となっている。
今回の調査結果において、溜まり水には0.1μmよりも微小の浮遊粒子が存在していないことが明らかにされている。従って、今回のろ過水に含まれているダイオキシン類は、粒子に吸着しているものではなく、溜まり水に「溶存体」という存在形態で溶解しているものである。
上述したように、今回の調査結果では、溜まり水に含まれていた170 pg-TEQ/Lのダイオキシン類の中、約1/5に相当する33 pg-TEQ/Lも溶存体として存在しる。このような極めて高率で溶存体として存在するためには、ダイオキシン類の溶解性を増加させる物質が溜まり水に含まれていたと考えられる。本報告書の30頁には、一般土壌に存在する腐植物であるフミン酸やフルボ酸が溜まり水に含まれており、ダイオキシン類の溶存体を増加させたものと記載されている。しかし、溜まり水は着色しており、土壌由来であればほとんど着色しないものと思われる。遺棄・埋設物にはいろいろな廃棄物が含まれており、特に、界面活性剤のような油性物質と水性物質の両者を熔解できるような物質が溜まり水に溶けていたものと思われる。産廃の埋め立て地などでは、溜まり水の色が褐色や赤色のものもあり、明らかに埋め立て物を反映している。溜まり水にダイオキシン類が異常に高い濃度で存在していることは、当然のことながら埋め立て物に起因するものである。当然のことながら、着色物質も埋め立て物に起因するという考え方が、適切であると判断される。
本調査結果、前回の調査結果および沖縄市の調査結果を考慮すると、当該地域の埋立物に起因するダイオキシン類が雨水等によって容易に溶出される状況にある。その状況は長期間にわたって持続していたものと判断される。従って、その汚染原因となる埋立物等の完全な除去が緊急課題である。

2. 調査方法について
 今回の調査報告書は2015年2月10日に公表されている。しかし、沖縄防衛局は、それ以降の2月13日に4本、2月19日に2本のドラム缶が新たに検出されたことを発表した。これで当該地域では合計100本のドラム缶が見つかったことになる。
前回の調査(旧嘉手納飛行場(25)土壌等確認調査8その2)調査報告書概要板、平成26年6月)においては、磁気探査結果を主体とした調査によってドラム缶を検出している。
 一方、当該地域の埋立物は、全てが金属製のドラム缶であったのであろうか。ポリ袋や段ボール等の非磁気性の容器のものはなかったのであろうか。
  廃棄物の埋め立て地における有害物の種類や濃度は、均一ではなく、全くの不連続性を特徴とする。そのため、少し離れた地点における有害物質の種類や濃度は、水平的にも垂直的にも極めて大きく相違する。このような実態があるため、埋立地における汚染調査は、適切な間隔の適切な深さのボーリング調査を原則としている。
 今回の調査は、これまでの調査結果において最高濃度を示したドラム缶を対象として、その下方への調査を実施している。上述したように、この最高濃度を示したドラム缶の検出後に新たなドラム缶が検出された。その分析は、今後、実施される予定となっている。もし、新たなドラム缶がさらに高い濃度の結果であったならば、今回の調査方法は、不適切と言わざるを得ないことになる。
 また、全ての埋立物がドラム缶であったとの確証はあるのだろうか?もし、確証がないとすれば、磁気探査による調査自体が不適切となる。
 従って、当該地域における汚染範囲の確定は、ボーリング調査結果を基礎とすることが基本であり、その結果に基づいて、汚染対策を実施することが原則である。


 
宮田秀明氏意見書PDF
2015.02.28s%E5%AE%AE%E7%94%B0%E6%84%8F%E8%A6%8B%E6%9B%B8s%E6%97%A7%E5%98%89%E6%89%8B%E7%B4%8D%E9%A3%9B%E8%A1%8C%E5%A0%B4sfinal.pdf (PDF: 197.94KB)
  

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沖縄市サッカー場: たまり水調査に対する専門家意見キーポイント(会見)

2015年03月29日 / 枯れ葉剤/ 沖縄防衛局/ 基地返還跡地/ 汚染/ 沖縄市サッカー場/ 沖縄県環境政策/ 日米地位協定/ 環境協定

 3月12日、この日は辺野古のボーリング調査再開の日でしたが、沖縄・生物多様性市民ネットワークは沖縄市サッカー場のたまり水調査結果・分析に対しての3人の専門家の意見を記者会見で発表しました。「沖縄市サッカー場監視・評価プロジェクト」が続いています。
  

QAB報道より

❏沖縄防衛局のたまり水の調査報告とは何か
 3人の専門家が書いた意見書は、2015年2月10日に沖縄防衛局が発表した報告書に対するものです。この報告書は、2014年7月にたまり水やドラム缶下の土壌から、ダイオキシン類、DDT類、油分等が検出されたことから計画され、実施された調査の報告書です。2014年10月2日にたまり水を採取し、調査分析を沖縄防衛局が行っています。
 今回の調査は、沖縄市はカウンター的調査は実施していません。

 時系列的な位置づけについては、2013年からの調査の簡単な経緯表をみてください。現在、3rd ラウンドに入ったということにしてみようと思います。

❏今回の調査報告は何を意味しているのか~汚染範囲の確定
 これまではドラム缶の内容物のみが着目されていましたが、今回はドラム缶が埋設されていた場所、あるいは周辺のたまり水の水質の分析、たまり水の移動が主なものとなります。その他、ドラム缶下の土壌(底面土壌)などについても調査しています。
 ここで課題となるのが、汚染がどこまで広がっているのかという、汚染範囲の確定です。
 
 汚染範囲をどう確定するか、という問題にあたり、それを確定する材料はこれで十分なのか、その分析、結論は妥当なのかということを検証する必要があります。

 ダイオキシン関係でいえば、具体的には、ダイオキシンがどのような形態で地中に存在しているのか、どのようにダイオキシンが動くのか、どのように汚染が拡散する/した/している可能性があるのかなどをみる必要があります。

 また、地質の性質から拡散の可能性を判断することも必要です。
 
❏沖縄防衛局はどのような結論を出しているのか
 沖縄防衛局は、「調査報告書の概要」のたまり水の部分の調査結果で、
 ”「窪地の下の地盤の透水係数が小さく地下浸透の可能性が低いこと、排水口の水は排水基準に適合していたこと、窪地の周囲にはたまり水の存在は認められなかったことから、たまり水は窪地内にとどまっていると判断。」
 「したがって、たまり水から上記ダイオキシン類が検出されたものの、周囲の環境に影響を及ぼす量の放出はないと判断でき、窪地内のたまり水を処理すれば問題無いと判断。」”
 と、汚染は限定的であるという結論を出しています。

❏専門家からの意見~沖縄防衛局の報告・評価は妥当か
 沖縄BDは、「沖縄市サッカー場調査監視・評価プロジェクト」の一環として3名の専門家宮田秀明氏(摂南大学名誉教授)、池田こみち氏(環境総合研究所顧問)、國吉信義博士(元マーチ基地環境保全官)から沖縄防衛局の調査、分析、解釈が妥当なものであるかなどについて評価を求めました。

 3専門家とも、防衛局の、汚染は限定的である、という評価に対しては問題を指摘し、批判的な見解を提示しています。

 3専門家の意見書は、一つずつ記事にまとめますが、ポイントを以下のようにまとめました。専門的なところは難しいと思いますが、太字のポイントをみていただけると、専門家が何を指摘しているかご理解いただけると思います。

Keypoint
 
1. たまり水のダイオキシン濃度は高い。しかし、危険性/安全性を認識するために明示すべき数値を、報道資料等で触れていない。
-未ろ過水: 170pg/-TEQ/L、ろ過水: 33pg-TEQ/Lは、環境基準値の170倍、33倍であり、極めて高い。これに触れていないことは問題である。
-ダイオキシン類の危険性を知る上で重要な数値である2,3,7,8-TCDDの割合は、市民に示すべきデータであるが、わかりやすく数字として示されていない。
-15%は決して小さい割合でない。水試料で、2.3.7.8-TeCDDの毒性等量濃度の割合が15%程度というのはかなり高く、土壌ではほとんど見られない数字である。

2. 雨水等によって埋め立て物から異常な濃度のダイオキシン類が持続して溶出している。
-今回のろ過水に含まれているダイオキシン類は粒子に吸着しているものではなく、たまり水に「溶存体」という存在形態で溶解しており、極めて高率で存在している。
-ダイオキシン類の溶解性を増加させる物質がたまり水に含まれており、雨水によって容易に溶出される状況である。長期間にわたって持続していたものと判断される。 (宮田秀明氏意見書)

3. ドラム缶発掘工事の影響が、排水で検出されたダイオキシンで確認されていることは認めているが、その原因については追求していない。
-報告書では、「平成26年1月末から2月初めにかけて実施したドラム缶発掘工事の影響が考えられる」「ドラム缶発掘工事の影響はあるものの」”(p.34)と、工事の影響があったこと自体は認めているにも関わらず、「たまり水の影響は排水口に及んでいないと判断される」と、たまり水と排水口の関係のみで結論づけている。工事の影響を受け、ダイオキシンがどのような媒体で、どのように移動したのかの原因について追求していない。また、この部分の記述も、わかりにくいものになっており、用語も専門用語では用いられない用語(「毒性等量割合」)も見受けられ、報告の記述として問題もある。(池田こみち氏意見書)
                            
4. 沖縄防衛局の調査は汚染範囲を限定的にみている 
- 上記3項目について考慮している分析になっていないがゆえに、汚染範囲を限定的にみている。
- 國吉信義氏の以下のコメントも考慮すべきである。
“ドラム缶はシルト質の地層に埋められていた。シルト質は全くの非浸透性ではない。たまり水はドラム缶を掘り出したとき、周囲のシルト質粘土の壁から、じわじわとにじみ出て、窪地にたまった水であろう。
  防衛局は、たまり水が出た周辺は浸透性の低い地層なので、ダイオキシンを含む水が直下の地板に浸透する可能性は小さいと結論しているが、シルト質地層に含まれている水は粘土層で遮られているので直下には浸透しにくいが、横にはゆっくりだが、動くはずである。横に動いて、粘土のないところにきたら、水は下に動く。ドラム缶が埋もれていたシルト層がどの程度広がっているか、ダイオキシンを含む水が拡散していないか知りたい。“

5. 沖縄防衛局の調査は明らかに不正確な分析がある
-沖縄防衛局の調査分析は次の2点で不正確な分析がある。
①たまり水の主な異性体割合 
1,2,3,7,8-PeCDDが多く、これは焼却関連物(焼却灰、焼却飛灰など)に含まれる代表的ダイオキシン類異性体である。これを含まない、「….(2,3,5-T不純物、PCP不純物、およびPCBに由来するダイオキシン類が混在して存在していたと考えられる)(「報告書」、p.30)との内容は正確ではない。
②ダイオキシン類の溶解性を増加させる物質
防衛局の調査では一般土壌に存在する腐植物であるフミン酸やフルボ酸がたまり水に含まれており、ダイオキシン類の溶存体を増加させたものと記載しているが、腐植物以外の埋め立て物(ドラム缶)に起因によるものと推測される。(宮田秀明氏意見書)
                         
このような分析は、これまでの調査結果の範囲内に納めることによって、これ以上問題が拡散しないこと、処理処分についてもできるだけ限定的にしたい意図があるように疑念を持たれる可能性がある。

6. 「監修」する専門家の位置づけ
-沖縄防衛局は報告書を「愛媛大学農学部森田昌敏感客員教授監修の下、とりまとめた」としているが、森田氏の「監修」の位置づけが曖昧である。(池田こみち氏意見書)
   
沖縄防衛局によれば、調査報告のアドバイザー的な役割とのことであるが、報告書内で、どの部分が調査会社の記述・分析で、どの部分が専門家の見解なのか明確でなく、評価の責任の所在が不明である。

7. 埋め立て物は「ドラム缶」とは限らない
-当該地域の埋立物は、全てが金属製のドラム缶であったのか、ポリ袋やダンボール等の非磁気性の容器のものである可能性が示唆されている。 (宮田秀明氏意見書)
                              
8, 沖縄県の水質調査は問題がある。
-調査報告の記述が十分でない。 (國吉信義氏コメント)
                         
この問題は、環境総合研究所『嘉手納基地返還跡地(沖縄市サッカー場)ドラム缶発掘追加調査に関する意見書』(2014年12月16日付けで関係機関に送付済み)でも、「沖縄県の地下水などの周辺環境調査はおざなりなものであり、地域住民に安心材料を与えるには不十分である。(p.28)」と指摘されている。


報道についてはまたまとめてアップします。
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QAB たまり水のダイオキシン類「尋常な濃度ではない」(2015.3.13)

QAB ニュース
"沖縄市のサッカー場で発掘されたドラム缶は100本になりましたが、12日、環境団体が現場周辺のたまり水のダイオキシン濃度がかなり高いとする専門家の評価を発表しました。
生物多様性ネットワークの河村雅美ディレクターは「たまり水のダイオキシン濃度は尋常な値ではない」と話します。
会見では沖縄防衛局の調査結果が妥当なものかどうか、3人の専門家に評価を求めた結果が報告されました。
その結果、専門家からはドラム缶周辺のたまり水のダイオキシン類の濃度が「非常に高い」という指摘があがったということです。
また、雨水などによってこの現場に残ったダイオキシン類が今も持続して溶け出している可能性があること、また防衛局の発掘工事によってダイオキシンが土壌や大気で移動し拡散している可能性があることを示しました。
"
  

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西普天間環境アセス配慮書への意見書を宜野湾市に提出しました

2015年03月28日 / 基地返還跡地/ 汚染/ 西普天間/ キャンプ瑞慶覧/ 沖縄県環境政策/ 日米地位協定/ 環境協定

 
 西普天間住宅地区が3月31日に返還予定ですが、その前に環境影響評価の手続きが始まりました。配慮書の公告縦覧が2月18日に県内紙と宜野湾市基地政策部まち未来課、およびそのHPで行われました。 

 これは、沖縄県環境影響評価条例改正後、初の条例適用ケースであり、返還跡地利用特措法改正後の初の事例でもあります。沖縄BDでも、沖縄市の経験やこれまで西普天間でおきている問題を踏まえ、3月20日(〆切日)に宜野湾市に提出しました。
 
 米軍基地跡地という特性を反映していない配慮書であること、また、各機関で予定している調査や支障除去、このアセス手続きなど調査手続きが錯綜していることなど、多くの問題があると思います。
 
 以下、意見書を貼りつけます。沖縄防衛局、沖縄県、北谷町などにも後日、写しを送付する予定です。 
 途中で挿入している図は意見書にはありませんが、わかりやすいように配慮書から引用しています。
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「(仮称)西普天間住宅土地区画整理事業計画段階環境配慮書」に対する意見書


2015年3 月20 日
宜野湾市長殿
 
沖縄・生物多様性市民ネットワーク
共同代表/ディレクター 河村 雅美
共同代表        吉川 秀樹
沖縄県宜野湾市志真志4-24-7 セミナーハウス304
                    NPO法人「奥間川流域保護基金」事務所内
                            TEL/FAX:098-897-0090 

 沖縄・生物多様性ネットワーク(沖縄BD)は、元米軍跡地沖縄市サッカー場の汚染問題など、米軍跡地の調査の問題に監視・評価・アドボカシーグループとして取り組んでいます。また、辺野古新基地建設や、恩納村通信所跡地の環境影響評価などにも関わり、環境影響評価制度の問題にも取り組んできました。
 その観点から、意見書を提出します。

意見1. 対象地が米軍跡地であるという固有の問題が大前提で書かれていないことは、環境影響評価の配慮書として体をなしていない。よって、土壌汚染の予測が杜撰である。これまでの米軍基地跡地で、予測がつかない投棄がされ、汚染が広範囲に拡がる可能性があるという沖縄での経験が反映されていない。支障除去調査のためにもこれまでの経験をレビューし、環境影響評価に反映させること。

理由:
(2)地域特性の概要
「計画地は、沖縄島中部の駐留軍用地の返還跡地である」と概要書4-2には書かれているものの、土壌汚染について、「事業活動に伴って発生する悪臭原因物の排出(漏出を含む)を規制する地域の規制基準が悪臭防止法に基づいて定められている。また、計画地及び周辺には土壌汚染源となるような鉱山跡地は存在しない」と評価されている。まずここが、汚染の可能性の高い米軍基地跡地であり、米軍の施設目的からは予想しにくい投棄があるという固有の状況を前提としておらず、「鉱山跡地」という一般的な汚染源を前提に予想していることは問題である。
既に、西普天間跡地の文化財調査でも環境基準値の3倍の鉛が検出され、追加調査が提案されている。沖縄市のサッカー場も、発見されたドラム缶のたまり水のデータから、ダイオキシンが移動し、長期間の溶出している可能性も示唆されている。北谷町桑江伊平地区土地区画事業では、土壌汚染が発覚し、沖縄防衛局「桑江土壌調査調査報告書」(平成25年3月)によると、油汚染、ベンゼン、鉛、調査地付近では過去に六価クロム、ヒ素といった重金属類による汚染も確認されている。また、地下水と共に移動されることも懸念されている。このような実情の反映がない配慮書は問題である。



意見2. 汚染の影響なども含め、隣接市町村等の行政機関の長の意見も配慮すべきである。宜野湾市は、北谷町域への影響を配慮書で記述しているが配慮していない。

理由:
配慮書概要書では「なお、計画地及び隣接地域は宜野湾内であるとともに、一般の意見を聴取するため公告・縦覧の機会を設けることから、隣接市町村等の関係する行政機関の長の意見は求めないこととする。」(2-5)と書かれているが、まずこの文自体、なぜ「一般の意見を聴取するため公告・縦覧の機会を設けること」が、「隣接市町村等の関係する行政機関の長の意見は求めないこととする」理由となるか、わかりづらい。行政機関の長が一般の意見の中で意見を述べるとは考えにくいし、意見を述べるならば、隣接地域の自治体の長として意見を述べるべきであろう。「第 3 章 対象事業実施想定区域及び配慮書対象事業に係る環境影響を受ける範囲であると想定される地域の概況」では、「対象事業実施想定区域及び配慮書対象事業に係る環境影響を受ける範囲であると想定される地域については、図 3.1 に示す宜野湾市域と北谷町域の一部を範囲とする。」と記述されており、少なくとも北谷町には宜野湾市と同様の機会を設けるべきである。
また、計画地、隣接地域は宜野湾内であっても、掘削、解体による大気汚染、地下水の影響の範囲などの不確定要素が多い。沖縄市サッカー場でも、その問題が指摘されている。また、「キャンプ瑞慶覧(西普天間住宅地区)の跡地利用に関する協議会」議事録6回では、水道管の問題も指摘されており、隣接市町村には様々な機会を通して、情報共有、意見聴取をすべきであると考える。


意見3. 調査設計が錯綜していることは問題である。各々の調査設計や調査結果を踏まえた全体のフローチャートがなく、協議会内でも問題が指摘されているところ、8月に文化財発掘で汚染が発見され、鉛汚染の追加調査が提案されている事態となっている。このような錯綜した状態でさらにアセスが開始されており、今後の全体設計、支障除去過程で発覚した問題とアセスの進行がどうなるのかが不明の状態であることは問題である。

理由:
支障除去調査と環境アセスの関係等については、沖縄BDも沖縄県への要請、陳情などで確認を求めてきたが、明確な回答は得られなかった。
協議会でも整理がされておらず、「キャンプ瑞慶覧(西普天間住宅地区)の跡地利用に関する協議会」第6回議事録では、以下のようなやりとりがされている(2014年8月12日)。
“【宜野湾市:伊佐部長】「支障除去のスケジュールとうちの文化財の調査がいま一つかみ合っていないような気がいたします。表面調査とですね。かみ合うように一つよろしくお願いいたします。
」【沖縄防衛局:三沢課長】「そこはおつしやるとおり、まだかみ合っていません。我々も今回、ある程度の調査計画は立案したものの、まだ細かいところが検討できていないところがありますので、そこは1つずつきちんと整理しながら調整していきたいと思っています。そこは逆にこちらからもよろしくお願いします。」” 

このように整理がされていない中、2014年6月24日に返還前の掘削を伴う埋蔵文化財調査について日米合意がなされ、沖縄防衛局が「返還実施計画」を発表し、沖縄防衛局HPで支障除去調査の事前調査にあたる調査報告書「キャンプ瑞慶覧(西普天間住宅地区)(25)支障除去措置に係る資料等調査報告書」(以下、「資料等調査報告」)が公開され、8月15日から、宜野湾市による立入り及び調査が可能となって、文化財試掘調査が開始された。しかし、試掘調査中(18~22日)に、ドラム缶、土中の3地点での異臭が確認され、調査は中止となった。その後、沖縄防衛局による汚染調査が実施され、「資料等調査報告」では予見できなかった埋め立て物や、鉛の汚染が発覚している。鉛の汚染は、調査報告書でも深度を伴う追加調査が提案されており、その実施については返還後に予定されるとのことである。作業員の安全が確保されないまま、スケジュールの遅れをとりもどすかのように2015年2月には文化財調査が再開されている。このように未整理のまま、錯綜した調査体制で環境アセスがさらに進められているが、他の調査の結果も踏まえ、どのようにアセスを実施していくのかが不明であることは、問題である。現に、文化財発掘調査で発覚した汚染調査(これ自体問題があることは沖縄BDは市長に指摘している(「キャンプ瑞慶覧西普天間住宅地区返還予定地の汚染について(要請)」(2015.2.10)の配慮書への組み込み方はおざなりであり、協議会の議論も反映されていない。
早期の利用ありきのスケジュール内で環境アセスを進めることは問題である。

意見4. 配慮書の作成者、作成過程、関わった専門家などが不明であり、透明性、説明責任が担保されていない

理由:誰がどのように配慮書における案を策定したのか、専門家として誰が関わっているのか明示されていない。コンサルタント会社が関わったのか、宜野湾市が書いたのか、策定過程の透明性や、説明責任が担保されていない。依拠した使用資料や調査者などのリストも調査の信頼性の確保のためにもきちんと掲載すべきである。

意見5. 環境影響評価制度の趣旨を踏まえ、説明のわかりやすさ、意見提出の方法に配慮し、双方向性のあるコミュニケーション過程を実現してほしい。

理由:
環境影響評価制度は、コミュニケーション過程が重要であり、市民の情報入手の方法や、、意見提出の方法に対しての配慮が必要とされる。
しかし、前文から「法改正などもその趣旨を踏まえ、電子縦覧を義務化するなど、情報の。沖縄県環境影響評価条例(平成十二年沖縄県条例第七十七号)第四十一条の二第三項の規定により読み替えて適用される同条例第四条の三第一項の規定により計画段階環境配慮書(以下「配慮書」という。)を作成しましたので、下記の事項を公告します。」と公告の法的根拠から始まり、その後、読み替えについてのわかりやすい説明などもない。 
 また、公告縦覧時は意見提出方法について、全く記載がなく、沖縄BDからの問い合わせに応えて意見提出方法を課で協議し、「直接窓口へ提出又は郵送による提出」の記載がアップされたという経緯がある。当初は意見を広く募ることを意図せず、意見を提出する立場に立って提出方法を考えることも行われていなかったのではないかと考えられるような姿勢であった。
より広く意見を募るように市としては姿勢を改め、電子縦覧を行っているのであれば、メールによる受付なども検討し、儀式としての公告縦覧ではなく、双方向性のコミュニケーション回路を備えた実質的な制度となることが必要である。

意見6. 本アセスについて、配慮書実施前の議論や、説明などが必要であったのではないか。説明会については努力義務規程ではあるが、事後でも自主的に実施するべきである。

理由:
本アセスは、沖縄県環境影響評価条例改正後初のアセス、つまり初の「配慮書」過程であること、跡地利用特措法改正後、返還跡地に適用される初のアセスであり、行政や県民にとって、初めでの事項が多く、議論すべきこともあったのではないかと考えられる。法制度の問題についても、市民が独自で理解することも難しい。アセス実施の前に議論もなく、説明もなかったことは問題ではないか。特に米軍からの返還前の跡地で立ち入りや調査、情報入手が制限されている状態で、配慮書を実施することの妥当性については議論が必要であったといえる。ただでさえ、事業アセスメントの欠陥を是正するための、真の意味での戦略的環境アセス(SEA)になりえないとして批判されている日本のSEAの問題と、利用優先の制度設計になっていると見受けられる跡地利用計画の現状を踏まえ、県レベルでの議論が必要であったといえる。特に、汚染の問題で環境・安全面で配慮しなければならない問題が発生する可能性の高い場で、限られた情報で方向性を決定することについては、慎重な議論が必要ではないか。
また、説明会の開催は県条例4条の6-2(配慮書についての意見の聴取)の努力義務規程になっているが、努力義務規程であるからやらなくてもよい、と考えずにアセスの趣旨を踏まえ、事後であっても市民が参加しやすい日時を設定し、開催すべきである。また方法書では説明会開催は義務となっているので、市民が参加しやすい日時で複数回設定することを望む。

総じて、このように、不備の多い配慮書であるため、今後のアセス過程では、市民や専門家の意見を踏まえ、環境・安全を第一義的に考え、場合によってはデュープロセスによらない対処をすることも検討するべきであると考える。
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%E8%A5%BF%E6%99%AE%E5%A4%A9%E9%96%93%E7%92%B0%E5%A2%83%E3%82%A2%E3%82%BB%E3%82%B9%E9%85%8D%E6%85%AE%E6%9B%B8%E6%84%8F%E8%A6%8B%E6%9B%B8s%E6%B2%96%E7%B8%84BD.pdf (PDF: 292.55KB)

キャンプ瑞慶覽(西普天間住宅地区)の跡地利用に関する協議会の会議録は「キャンプ瑞慶覧(西普天間住宅地区)及び周辺地域の環境調査浄化問題を考える勉強会」に提供いただきました。 

  

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沖縄市サッカー場:2/10防衛局追加調査たまり水などの結果とドラム缶発見の報道発表

2015年03月27日 / 枯れ葉剤/ 沖縄防衛局/ 基地返還跡地/ 汚染/ 沖縄市サッカー場/ 沖縄県環境政策

 ブログにアップするのが遅すぎですが、宜野湾市への要請の日(2月10日)、沖縄防衛局から2つのリリースがでていました。 
 
 新たなドラム缶発見と、たまり水の調査結果の発表です。ドラム缶はこの後、まだ発掘が続き、今回の発掘では計17本が発見され、合計100本となりました。

 沖縄防衛局のお知らせリンクはこちらです。
 「旧嘉手納飛行場(26)土壌等確認調査(その2)」調査報告書及び新たなドラム缶発見のお知らせ

 たまり水の調査では、高い濃度のダイオキシンが報告されていますが、沖縄防衛局は汚染範囲を限定的にみています。
 
 これに対して、沖縄BDは専門家の意見をまとめ、問題を指摘し、記者会見と文書要請を行いました。それについてまた別記事で報告します。
 
 報道は下にまとめました。
 





QAB サッカー場から新たにドラム缶2本(2015.2.10)

  

Posted by 沖縄BD at 23:12Comments(0)

環境監視等委員会からの辞任表明:東清二先生を支持する声明

2015年03月19日 / 沖縄防衛局/ 辺野古/ 環境監視等委員会

3月17日、沖縄・生物多様性市民ネットワークは、他の18の環境・市民グループとともに、「普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境監視等委員会」(環境監視等委員会)から辞任を表明した東清二琉球大学名誉教授を支持する声明を発表しました。そして同日、沖縄県庁の記者クラブにおいて、声明発表の記者会見を開きました。



  記者会見の模様 photo by K. Nakamura-Huber


声明文では、東先生の辞任表明を支持するとともに、東先生が「環境保全はできない」と批判した環境監視等委員会の問題点を、私たちが沖縄防衛局との交渉を通して得た情報を含めた様々な情報をもとに、整理・指摘しています。また、環境監視等委員会、沖縄防衛局に対してはもちろん、県議会や知事に対しても、早急な対応を求めています。

以下、声明文をはりつけます。またダウンロードできるように声明文と配布資料をpdfファイルでも添付しています。配布資料は、環境監視等委員会の役割や位置づけの問題を浮き彫りにする資料になっています。声明文とともに資料も活用してもらえればと思います。



2015年3月17日

東清二氏の「環境監視等委員会」の辞任表明を支持し、
環境監視等委員会の問題を指摘し、関係機関に対応を求める声明

 2015年3月9日、東清二琉球大学名誉教授が「普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境監視等委員会(以下、環境監視等委員会)からの辞任を表明した。東氏はその理由として、環境監視等委員会では「環境保全ができない」(琉球新報、2015年3月11日)とし、同委員会は「基地造る前提」で「専門家からのお墨付きをもらうための意味がないもの」(沖縄タイムス、2015年3月12日)、と述べている。

 環境監視等委員会の役割や責務が内部からも問題視される(琉球新報、2015年1月31日)なか、環境監視等委員会の副委員長であり、沖縄出身者の昆虫の専門家として、沖縄の生態系を広い視野で研究し続けてきた東氏による辞任表明。それは、環境監視等委員会が、環境保全の担保として機能しておらず、そのような委員会に責任は持てないという科学者・専門家としての東氏の明確な意思表示であり、責務を果たした選択であると、私たちは考える。そして辞任表明の背景にある「自然が生きてこそ昆虫が生かされる。信念として沖縄の自然を後世に残したい」(琉球新報、2015年3月11日)とする東氏の信念と姿勢に私たちは強く共感する。

 私たちはここに、東氏の環境監視等委員会からの辞任表明を強く支持するとともに、環境監視等委員会が抱える問題を訴える。

 そして私たちは、環境監視等委員会に対して、同委員会の責務と機能について再検証し、その検証に基づいて、適切な対応をとることを強く訴える。

 私たちは、沖縄防衛局に対して、東氏の意思を尊重し、辞意表明を受けいれ、環境監視等委員会が機能していないことを認め、委員会を停止させることを求める。

 私たちは、沖縄県議会に対して、県が課した公有水面埋め立て承認の留意事項である環境監視等委員会が機能していない状況を、2014年の県議会「百条委員会」における議論とつき合わせ、早急に検証し、知事による埋立て承認の取り消し・撤回にむけて、議会として適切な対応をとることを求める。

 私たちは、翁長雄志沖縄県知事に対して、県が課した公有水面埋め立て承認の留意事項である環境監視等委員会が機能不全となっている状況を受け、埋立て承認の取り消し・撤回の判断を早急に行うことを求める。


以下、環境監視等委員会の問題点を整理する。

1. 環境監視等委員会の役割と位置づけ
 環境監視等委員会は、2013年12月に仲井真弘多前沖縄県知事が普天間飛行場代替施設建設のための辺野古・大浦湾での公有水面埋立を承認した際、留意事項の一つとして前知事により掲げられ、沖縄防衛局により設置された。しかし、環境監視等委員会の役割や位置づけの認識において、沖縄県と沖縄防衛局の間に大きな乖離が存在し続けている。

 沖縄県は、留意事項で「環境保全対策等について、各分野の専門家から構成される環境監視等委員会(仮称)を設置し助言を受けるとともに、特に、外来生物の侵入防止対策、ジュゴン、ウミガメ等海生生物の保護対策の実施について万全を期すこと」と環境監視等委員会を位置づけている。そして沖縄県は、2014年1月の沖縄県議会百条委員会(同委員会報告書、2014年7月15日)や環境NGOとの交渉において、辺野古・大浦湾の豊かな環境に多大な影響を及ぼす同事業に対する数少ない「環境保全の担保」としての委員会である、という認識を示してきた。

 しかし沖縄防衛局は、環境監視等委員会の目的を同委員会運営要綱(2014年4月11日付け)で「建設事業を円滑かつ適正に行うため、環境保全措置及び事後調査等に関する検討内容の合理性・客観性を確保するため、科学的・専門的助言を行うこと」とし、基地建設を前提とした委員会に変えていった。

 今回の東清二氏の、環境監視等委員会では、「環境保全ができない」(琉球新報、2015年3月11日)、「基地造る前提」で「専門からのお墨付きをもらうため」(沖縄タイムス、2015年3月12日)という理由による辞任表明は、同委員会の役割や位置づけの認識について沖縄県と沖縄防衛局の間に乖離があったことを反映したものである。さらには環境監視等委員会の委員の間でも認識に乖離があったことを示唆している。これでは環境監視等委員会が機能しているとは言えない。

2. 環境監視等委員会の不透明性
 普天間飛行場代替施設建設事業のように政治性が非常に強い事業において、環境や環境保全措置を扱う委員会がきちんと、「合理性・客観性を確保」し、「科学的・専門的助言」を行えているかどうかを確認するには、委員会の透明性が不可欠である。しかし環境監視等委員会はあまりにも不透明な部分が多い。

 これまで3度開催されてきた委員会は、非公開で行われ、「議事要旨」等で公開される内容も限定的であると言える。それゆえ委員会にどの専門家からどのような助言がなされ、その助言が沖縄防衛局の保全措置にどのように反映され、どのような結果となったかについて、外からの検証が難しいものとなっている。限定的な公開により、委員の専門家としての自由な意見表明を保証するという議論もあるが、同環境監視等委員会の状況は「不透明」さにより、委員会の信頼を損ない、委員の専門家としての立場を難しくさせているとも言える。

 例えば、2015年1月/2月に沖縄防衛局により、浮標やオイルフェンスを設置するために岩礁破砕許可区以外で巨大コンクリートブロックが投入され、サンゴ等が破壊された問題である。巨大コンクリートブロックの投入は、2015年1月6日開催の第3回委員会で、2014年10月の台風19号により防衛局が設置していたアンカーが消失したことについて議論がなされた後に行われている。しかし現在公開されている「議事要旨」のみでは、同委員会いおける委員からの提言や議論が、どのように沖縄防衛局の巨大コンクリートブロック投入の判断そして実施へと結びついていったのか分からない。

 東清二氏は、第1回目の委員会への参加の後「『専門家の意見を聞かない』印象を受けた」とし、第2回、第3回目への委員会を欠席したとしている(沖縄タイムス、2015年3月12日)。さらには「防衛局から議事内容を秘密にするように求められた」とも言われている(Ibid)。事実、沖縄防衛局は、環境NGOからの第2回と第3回環境監視等委員会の議事録や資料の公開の再三の要請にも関わらず、「公開事項の調整」「マスキングの作業」を理由に公開を遅らせてきた。2014年6月に行われた第2回委員会の議事要旨に関しては、9ヶ月後にしか公開されていない。

 なぜ「公開事項の調整」「マスキングの作業」にそれだけ長い時間が掛かるのか。公開されると問題となる議事内容があるのか。公開されていない議事内容があるのではないか。これらの疑問が解決されないまま、環境監視等委員会が環境保全の担保としての機能を果すことは困難である。

3. 環境監視等委員会への沖縄防衛局からの情報提供の問題
 環境監視等委員会は13名の委員から構成されているが、沖縄在住で沖縄の環境に詳しい委員はその3分の1しかいないと言える。それゆえ、環境監視等委員会が機能していくには、事業者であり、環境アセスや事後調査を行ってきた沖縄防衛局から、必要かつ正確な、そして出来るだけ詳細な情報が提供されることが不可欠である。しかし沖縄防衛局がそのような情報を提供してきたのかどうか疑問視される状況にある。

 例えば、2014年5月から7月にかけて環境NGOによって、辺野古・大浦湾の基地建設予定地やその近辺で150本以上のジュゴンの食み跡が確認されているが(日本自然保護協会、2014年7月9日)、公開された環境監視等委員会の議事要旨からは、この件について検証、議論されたのかが確認できない。絶滅危惧種であり国の天然記念物であるジュゴンの保全は重要課題であり、また辺野古・大浦湾におけるジュゴンの食み跡の確認は、沖縄防衛局の同海域でのジュゴンの「利用は限定的」という環境アセスの予測と乖離しており、検証は不可欠なはずである。

 さらには、沖縄防衛局が第2回環境監視等委員会(2014年6月20日)で配布した「仮桟橋」の資料が一部書き換えられて2015年3月9日に防衛局のHPで公開され、それが委員には知らされていないことが明らかになっている(沖縄タイムス、2015年3月10日)。防衛省は書き換えを認め「今後は適切に対処する」(琉球新報、2015年3月11日)としている。

 環境監視等委員が必要かつ正確な情報を得られずに議事が進んでいる状況では、環境監視等委員会が環境保全の担保としての機能を果せているとは言い難い。

声明賛同団体
沖縄・生物多様性市民ネットワーク
奥間川流域基金
琉球諸島を世界遺産にする連絡会
沖縄リーフチェック研究会
公益財団 日本自然保護協会
ヘリ基地いらない二見以北十区の会
ジュゴン保護キャンペーンセンター
米軍基地に反対する運動をとおして沖縄と韓国の民衆連帯をめざす会
西表をほりおこす会
ジュゴンネットワーク沖縄
民宿ヤポネシア
New Wave to HOPE
わんから市民の会
憲法9条メッセージ・プロジェクト沖縄
宮森630を伝える会
ジュゴン保護基金
「ヘリパッドいらない」住民の会
Okinawa Outreach
北限のジュゴンを見守る会
なはブロッコリー
(順不同)

連絡:沖縄・生物多様性市民ネットワーク
共同代表 吉川秀樹 
090-2516-7969
yhidekiy@gmail.com 
    
沖縄県宜野湾市志真志4-24-7
ぎのわんセミナーハウス 304
NPO法人奥間川流域保護基金事務所内
Tel/Fax 098-897-0090


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%E6%9D%B1%E5%85%88%E7%94%9F%E8%BE%9E%E4%BB%BB%E8%A1%A8%E6%98%8E%E3%82%92%E6%94%AF%E6%8F%B4%E3%81%99%E3%82%8B%E8%B3%87%E6%96%99%EF%BC%9A.pdf (PDF: 94.29KB)配布資料
  

Posted by 沖縄BD at 07:24Comments(0)

在沖米軍への非難と要求の書簡:不当逮捕と拘束

2015年03月05日 / 辺野古/ 抗議声明/ 日米地位協定

プレスリリースより

沖縄の市民社会30団体から在沖米軍へ
不当逮捕・拘束に対する非難と要求の書簡を送付

2015年3 月3 日、私たち沖縄の市民社会の30 団体/グループは、2 月22 日の米軍キャンプ・シュワブでの在沖米軍による沖縄平和運動センター議長の山城博治氏と宮古島の谷本大岳氏の不当逮捕・拘束を非難し、説明と正義を要求する書簡を在沖米軍に送りました。(下に書簡原文(英文)と和訳文をpdfファイルで添付しています)

シュワブのゲート前のフェンス:「入口」の貼紙

(3月3日のシュワブゲート前のフェンスに貼られた沢山の「入口」のサイン。「ここからフェンスを越えて、基地の中に入れるよ」というサインは、辺野古新基地建設に反対する人々の強い想いを表しています)


私たちは書簡のなかで、
1)目撃者とメディアの情報をもとに、逮捕・拘束の状況を記述し

2)今回の逮捕と拘束が、不当であり、日本国憲法と市民的及び政治的権利に関する国際規約で保証された山城氏と谷本氏の言論・表現の自由の権利を侵害していると訴え、非難し、

3)米軍に対して、
○逮捕・拘束についての説明と、二名が被った不当行為と侵害を正すこと
○沖縄の民意が辺野古新基地建設反対であることを理解・尊重すること
○ 私たちの言論・表現の自由に対する権利を理解・尊重すること、を要求しました。

日本政府が辺野古基地建設を強行し、沖縄の反対運動を権力と暴力をもって排除、弾圧するなか、これまで「傍観」していた基地建設の当事者である米軍も排除,弾圧へと動きだしました。沖縄の市民社会は、これに屈することなく、むしろこれを米軍と直接対峙し、「基地建設反対」の沖縄の民意と私たちの反対運動の正当性を伝える機会だと捉え、この書簡を米軍に送りました。

連絡先:沖縄・生物多様性市民ネットワーク
吉川秀樹 yhidekiy@gmail.com



LettersofsCondemnationsandsDemandkMar-03-15k%E8%8B%B1%E8%AA%9E.pdf (PDF: 48.28KB)在沖米軍への非難と要求の書簡/英語原文

LettersofsCondemnationsandsDemandkMar-03-15k%E6%97%A5%E8%A8%B3.pdf (PDF: 137.21KB)在沖米軍への非難と要求の書簡/和訳文
  

Posted by 沖縄BD at 05:53Comments(0)

琉球新報&沖縄タイムスから。トンブロック投下によるサンゴの破壊。

2015年02月25日 / 辺野古

サンゴの破壊について、県内2紙が大きく報じています。

(画像をクリックすると拡大できます。)

沖縄タイムス2015年2月25日(1面)



沖縄タイムス2015年2月25日(31面)



琉球新報2015年2月25日


ダイビングチーム・レインボーの牧志治さんと、日本自然保護協会の安部真理子さんのコメントが掲載されています。お二人の日々のご活躍に感謝します。

取り急ぎ、ご報告まで。

瀬長修

  


Posted by 沖縄BD at 23:19Comments(0)

キャンプ瑞慶覧・西普天間:公開されない現場写真(2)環境補足協定の面から

2015年02月23日 / 沖縄防衛局/ 基地返還跡地/ 汚染/ 西普天間/ キャンプ瑞慶覧/ 沖縄県環境政策/ 日米地位協定/ 環境協定

  キャンプ瑞慶覧・西普天間:公開されない現場写真(1)に続いての記事です。
 
沖縄県への要請
 この公開されない現場写真については、米軍が公開しない、ということで米軍を非難するのみでなく、沖縄県を動かしていく必要があるということを、沖縄県の環境政策を見ていくNGOとして考えていきたいと思います。

 それは、沖縄県が米軍基地への立ち入り調査を要請しているわりには、実際、コトがおこった時に具体的で積極的な姿勢がみえないからです。

 宜野湾市への要請書の写しを沖縄県に送る時に、以下のような要請を書きました。
「また、沖縄県におきましては、市への要請でも言及している、米軍の許可がおりないために公開されていない現場写真について、沖縄県が日米政府に要請している「環境条項」の面から取り組んでいただきたいと思います。
 本件は、立ち入り調査が実施されても、米軍の裁量で提供される情報が制限され、調査に支障が発生するという問題が炙りだされた事例であると考えます。立ち入り調査が実質的な目的を果たすものとなるよう、沖縄は、要請事項をより明確にし、関係諸機関に働きかけてくださるよう要請いたします。
沖縄県の米軍との情報交換に関しては、沖縄県は「平成 26 年度 第 2 回 米軍施設環境対策事業検討委員会 議事概要」において委員の指摘に対し、「米軍環境部門と情報交換をはじめられるよう、調整していきたい」と見解を述べています。このような具体的な機会を活かし、米軍と恒常的な交渉を行い、沖縄県と米軍の情報交換の回路を構築していくことが必要だと思われます。」

沖縄県と環境条項
 環境条項の面からの取り組みとは何か?
 沖縄県は、基地への立ち入りや汚染調査に関する、日米地位協定の見直しを要求してきた経緯があります。
  沖縄県サイト 「日米地位協定の見直しに関する主な経緯」 (2014年8月14日までの更新)

 環境条項が地位協定に含まれていないことが問題視され、軍転協、渉外知事会などでも要請事項となってきました。
 特にこの1,2年、政治的な文脈--前県知事の辺野古の埋め立て承認の問題--と絡めて、西普天間の返還、そしてそれに伴う立ち入り調査の件は「基地負担軽減」の一つとして扱われてきました。
 
 2013年10月3日の「日米安全保障協議委員会共同発表「より力強い同盟とより大きな責任の共有に向けて」では、「2013年11月末までに,返還を予定している米軍の施設及び区域への立入りに関する枠組みについての実質的な了解を達成することを決定した。」と発表され、同年10月24日に行われた第2回 駐留軍用地跡地利用推進協議会では仲井真知事(当時)が掘削を伴う返還前の立ち入り調査を要請しています。
 この件に関しては、立ち入りの枠組みを決めるための検討が必要であると沖縄BDから要請書を出しています。[返還跡地問題]2+2:立入り調査の枠組みについての要請(2013.11.22)

 それが非常に露骨な形で現れたものが、当時の仲井真県知事による辺野古新基地建設のための埋め立て承認の直前、2013年12月に政府に提出した沖縄県の要請書です。2.の基地負担軽減の部分が立ち入り調査などの件が要請事項として記されている部分です。
 そもそも、このような調査の権利は、当然あるべき権利としてみなすべきで、その権利を要求することは、「負担軽減」の範疇にいれてはいけないことだと考えます。また、政治的取引の材料として議論されるべき問題でもありません。

その沖縄県要請書はこちら。

沖縄県要請書 by BDOkinawa



 この後、2014年6月24日返還前の掘削を伴う埋蔵文化財調査についての日米合意があり、8月15日から、宜野湾市による立入り及び調査が可能となります。(この経緯についてはキャンプ瑞慶覧西普天間住宅地区の汚染調査などに関するこれまでの経緯の記事参照)  
  
 そして、この問題は、2014年11月の県知事選前に再び浮上します。10月20日、日米共同合同発表で米軍基地内の環境調査や日本側の立ち入りや環境基準などを定める補足協定を実質合意したと発表します。これは当時の現職、仲井真知事への後押しであると解釈されています。

 日本の環境基準維持 基地内調査で合意発表 (沖縄タイムス 2014.10.21)

 この合意書全体についての問題は、ここでは言及しませんが、立ち入りに関する原文の該当部分を切り出しておきます。

 



 語彙も非常に曖昧ですし、具体性に欠け、米軍の裁量によって左右されるという問題が解決される保証はないい、ということは明白です。
 
 これに対して、QABニュースでコメントしました。県内紙でも桜井国俊さんや砂川かおりさんがコメントなさっていましたがクリッピングがおぼつかず。

QAB環境協定で実質合意(2014.10.21)
”アメリカ軍基地で環境汚染が発生した場合などに日本側の立ち入りを認める新協定について日米政府は20日、実質合意したと発表しました。しかし、県内の専門家からは疑問の声も上がっています。
20日に開かれた普天間基地負担軽減推進会議で仲井眞知事は「環境補足協定につきましては、日米地位協定から54年を経て、初めての成果であります。新たな枠組みを作られたことは、沖縄を始め、全国の米軍基地所在自治体から高く評価されるものだと思います」と新しい環境協定を高く評価しました。
返還軍用地の汚染が次々と発覚し、嘉手納より南の大規模な土地の返還を控える中、新しい協定では基地内で環境汚染が発生した場合や返還に向けて調査が必要になった場合、日本の関係者の立ち入りを認めることが明記されました。
しかしこの発表について早くも疑問の声が上がっています。沖縄市のドラム缶問題などに取り組んでいる沖縄生物多様性市民ネットワークの河村雅美さんは「評価はできないと思っています。これまでとどこがどう違うのか全くわからないし」と指摘。実はアメリカ軍基地への立ち入りについては今から40年以上前既に合意されていました。
1973年の合意では、県や市町村が現場を直接視察したり、必要と考えた場合にはサンプルを入手することができると書かれています。しかしこの合意事項は2003年まで、その存在自体を沖縄県は知らされず実際制度が活用されていなかったのです。
河村さんは「制度としてはあるんだけど、米軍の裁量で全てが決まってしまう、そういう状態だったというのが現状です。市町村とか沖縄にとって適切なものになっているかどうかが不透明であると、そこが解決されていないんじゃないかという懸念がありますよね」と指摘し、今回もアメリカ軍や日米両政府の裁量に委ねられ、実際には意味のないものにならないかと懸念しています。”

朝日新聞でもコメントしました。
朝日新聞「米軍基地に新環境基準 地位協定補足、自治体調査ルール化へ」(2014年10月21日)
 
”日米両政府は20日、日米安保条約に基づいて米軍による施設、土地の利用などを定めている「日米地位協定」を補足する新たな協定(環境補足協定)を結ぶことで大筋合意した、と発表した。基地内により厳しい環境基準を適用し、土壌汚染などの事故が起きた際、自治体が立ち入り調査するルールなどを今後定める。
 1960年の地位協定には環境保護の規定がなく、仲井真弘多知事ら沖縄県側は、土壌や水質の汚染が指摘されてきた米軍基地内の環境調査を可能にする補足協定をつくるよう求めていた。11月の沖縄県知事選を控え、安倍政権側には、米側との合意を通じて、3選をめざす仲井真氏を後押しする狙いもある。
 新協定には、日米双方の環境基準のうち厳しい方を採用した「日本環境管理基準」(JEGS)の適用を明記。在日米軍は95年からJEGSを自主的な規制としてきたが、運用実態は不透明だった。日本側には、明文化によって米側に順守を義務づける狙いがある。
 新協定は日本側による米軍基地内の環境調査について、(1)環境事故が起きた際の立ち入り調査(2)基地返還前の現地調査――を盛り込む。これまでは基地内の立ち入りには米側の許可が必要だったが、地元自治体による調査も容易になるという。
 岸田文雄外相は「協定の正式署名をできるだけ早期に実現する」と述べ、新協定締結に向けた協議を急ぐ考えを示した。
 20日午後に首相官邸で説明を受けた仲井真氏は、記者団に「しっかり使える形で仕上げていただければ。難しいものを頑張られて、高く評価する」と述べた。
 一方、基地内の環境汚染問題に取り組む「沖縄・生物多様性市民ネットワーク」の河村雅美ディレクターは、新協定について「実効性があるのか疑問」と指摘した。 (村松真次、山岸一生)”

県政のやるべきことは?
 結局、知事選はこの後押しも効力はなかったのか翁長雄志氏が知事選に勝利しました。骨抜きの環境協定は提示されたままの状態で、まだ仕切り直されていません。

 翁長県政でこの部分を仕切りなおすことは、嘉手納より南の返還計画とともに「基地負担」の部分を問いなおすこととともにやっていかなければならないことでしょう。

 沖縄市サッカー場問題が政治問題として利用されてしまった面があることは忸怩たる思いがありますし、一つ一つ声をあげきれていないことは反省点です。しかし、翁長県政に変わったことをきっかけに具体的に県政に問題提起をしていくことは重要だと思っています。

 この間、沖縄県は何をしていたかといえば、2014年度から沖縄県基地環境特別対策室を一括交付金事業として立ち上げています。その中で、米軍施設環境対策事業検討委員会を設置し、”基地返還予定地及び返還跡地における環境問題や在沖米軍の活動に起因する環境問題に対応するため、米軍施設における環境情報の構築と環境対策方針を策定し、国と連携した新たな環境保全のしくみ及び米軍施設とその周辺における環境情報をまとめた環境カルテを作成する予定”しているそうです。
  沖縄県HP:米軍施設環境対策事業検討委員会 
  QAB 米軍施設環境対策事業検討委員会 (2015.2.7)
 
 この会議の中でも、委員から「環境に関する基本的な事項については、米軍との間で情報交換ができるような仕組みを作って欲しい。」という(いまさらの)意見がでています。県の回答は「ご指摘の趣旨を踏まえ、米軍環境部門と情報交換をはじめられるよう、調整していきたい。 」という行政お得意の「調整」回答です。

 しかし、現実は元跡地で、返還予定跡地の文化財調査で汚染が発覚しています。実際は現実に起こっている問題で交渉力を鍛えていくこと、米軍との交渉を防衛局任せにせず、日本政府との庇護的・パターナリスティックな関係を断ち切っていくことが県の環境政策には必要であるのではないか、と思います。

 写真を出す交渉くらい、カルテとかしくみとか出来上がる前にできるでしょう。そして、これを材料に実質的な内容を伴う環境補足条項の締結を日米に要請し、その要請をタイムリーに日英できちんと公開することが、沖縄県の今するべき、できる仕事ではないでしょうか。
 要請で書いたように、立ち入り調査が実施されても、米軍の裁量で提供される情報が制限され、調査に支障が発生するという事例です。これは、安全、健康、そして枯れ葉剤問題にも関係する問題です。
 実質的に意味をなす立ち入り調査とはなにかを明確にし、一つ一つ実をとっていく政策を実行していってもらいたい、 ということで、沖縄県には、上述のような要請をしたということです。
 
 そして、米軍にも奪われた土地への投棄に対して抗議の意思表示を示さなければ、さらに返還予定地への投棄は止むことがないと思います。米軍の原状回復義務がなくとも、意思表示は必要だと思います。それに関しては、宜野湾市に要請をしています。

 米軍は確かに汚染源であり、投棄という酷いことをしています。しかし、それに対して本当にきちんとした抗議の意思表示を、適切なタイミングで、伝わる言葉で正式な回路でしているか、ということは考えなければならない。それが沖縄で私たちがやらなければならないことではないか、と思います。
 
 
---------------------------------------------
こちらは環境条項などの参考リンクです。
渉外知事会
  日米地位協定の改正についての要請を行っています。

・日本弁護士連合会 
  日米地位協定に関する意見書 (2014年2月20日)
 意見書全文、現行日米地位協定と意見の趣旨との対照表、英語版もあります。

 日米地位協定(環境条項)の改正問題に関する会長声明(2015年1月7日)も出しています。

こちらは、2014年10月の日米共同合同発表文書原文です。

日米共同合同発表20141020_j by BDOkinawa


英文

Japan-U.S. Joint Press Release20141020 by BDOkinawa


   

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