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北谷土壌汚染:BD検証結果2 住民説明会を検証しました~ポイントと検証全文をアップ

2016年02月24日/ 沖縄防衛局/ 基地返還跡地/ 汚染/ 沖縄市サッカー場/ 沖縄県環境政策/ 日米地位協定/ 環境協定/ ダイオキシン/ 北谷町

   

記者レクいれてくださいと沖縄防衛局の方に交渉中の図。画像提供:記録同人


 北谷土壌汚染の住民説明会(2016年1月31日)の記者ブリーフィングに参加し、説明会と調査を検証しました。この結果は、2月17日に沖縄防衛局、北谷町、沖縄県に送付しています。
 
 大変長いものですが、アップしました。専門的なこともあり難しく、サクッとわかるまではいかないかもしれませんが、ポイントは以下のとおりです。
開催形式
・住民や町議、メディアの要求にも関わらず、非公開で行われた。
・沖縄防衛局、沖縄県、北谷町の位置づけが不明。
 北谷町が最初に対応したのになぜ町の説明はなし?
・一次データが公開されず、調査結果の検証が実質的に不可能な状態での開催は問題。

説明内容
イメージ操作が行われているという印象を持たれても仕方ない内容。
・あくまでも地権者のための調査であり、汚染調査が主目的ではない調査の説明なのに、それを説明していない。
・2地点という限定的な調査であるのに、安全性や掘削の影響の結論まで説明している。
・有害物質項目が基準値以下だとして非公開としている。その理由についても不明で国と県と業者の言いぶんはバラバラ。
・ダイオキシンのみに問題を矮小化させるイメージ操作をしている。

対策・追加調査方針
・「不安を払拭する」という目的がそもそもおかしい。
・資料等調査、表層土壌調査とも妥当性に欠ける。

説明会全文はこちらこちらです。
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「旧嘉手納飛行場(上勢頭)における土壌等調査に関わる説明会 検証


沖縄・生物多様性市民ネットワーク 共同代表 河村 雅美


 2016年1月31日、北谷の土壌汚染の問題で住民説明会が北谷商工ホールで開催された。

 沖縄・生物多様性市民ネットワークは住民説明会のありかたに、沖縄BDも要望書を提出してきたが、要望は聞き入れられず住民以外は非公開の形で行われた。

しかし、住民への説明会を開いたことにより、この問題が地権者の問題だけでなく、公けの議論になったという共通認識が持てたことは意味がある。 
 
今回、住民説明会後に行われた記者ブリーフィングに参加の機会を得ることができたため、開催形式、説明内容、今後の対策について池田こみち氏(環境総合研究所顧問)、桜井国俊氏(沖縄大学名誉教授)に意見を求めながら、説明会についての検証を行った。また、池田こみち氏から、入手した調査データにもとづく意見書が既に提出されており(「北谷町住宅建設地における調査結果について」(2015.12.1)、以下「池田意見書」)、調査自体の問題もここに含めることとした。

ダイオキシンに特化した形でこの汚染問題が展開されることは望ましいことではないが、川尻要氏(埼玉県立がんセンター臨床腫瘍研究所客員研究員)が述べるように(2015年12月17日 「沖縄タイムス」論壇)ダイオキシンは「低濃度であるから健康に影響ない」のではなく、「生活空間にあってはならない化学物質である」ことを、この問題に関わる者の共通認識としてまず確認しておきたい。

以下、その検証報告である。

1. 住民説明会の開催形式について
-非公開の問題
-一次データなき説明の問題
 沖縄防衛局は住民のみに説明会を行った。理由は公開にすると、率直な意見交換が妨げら れるためということであったが、琉球新報(2016.1.31)が指摘しているとおり、記者クラブ、 北谷町議、自治会長が公開を要望していたのにも関わらず、非公開の説明会となった。
その結果、琉球新報(2016.2.1)、沖縄タイムス(2016.2.1)、琉球朝日放送(「悲鳴を上げる土 地 北谷土壌汚染問題から見える沖縄の課題」2016.2.10)などが指摘しているとおり、この 説明会により住民の不信は増すことになったといえる。

 この形式の開催を追認し、住民側の公開の要望をメディアなどを通じて知った後、北谷町がどのように対処したのか、追求する必要がある。沖縄県、北谷町は住民、県民の意向を汲み、動く責任があることを認識し、次回の説明会の開催形式については、住民、県民の意思を尊重するオープンな形での開催が実現できるように働きかけるべきである。あるいは、問題発生の最初に対応したのは北谷町であるため、調査報告に特化した沖縄防衛局の説明会ではなく、北谷町が経緯を含めた説明会の開催を検討することも必要ではないかと考える。

 また、一次データが何も公開されず、当日の防衛局の配布資料が正しいものであるか、恣意的にデータが切り取られていないかを検証する材料がないという状態で説明会を行うことも問題であった。

2. 説明会開催の前提問題
-調査の射程、限界についての言及なし
-3者(沖縄防衛局、沖縄県、沖縄市)の責任の所在不明
 2-1 調査の限定性について言及がない。
 報告内容以前に、説明対象の調査が、目的も範囲も限定的なものであることを全く述べていなかったことは問題である。
 調査には調査を実施する目的があり、調査で知り得るものの範囲はその目的で決められる。範囲以外の結論をそこから導き出してはならない。
そもそもこの調査は、経緯、データ、資料から検証すると、地権者の住宅建設のための地盤強の調査、およびその中で発見された廃棄物調査を地権者の土地内で実施したものであり、土壌汚染の状態の把握を主たる目的に実施された調査ではない。

赤嶺政賢国会議員の防衛省への聞き取り(2016年2月10日)でも、「(今回は通常の土質調査とは性格が違うではないか。2箇所だけでは何が埋まっているかはわからないではないか、に対して)私どもとしては、廃棄物の確認というよりも、沈下と土質の調査が目的だった。」と述べており、そのことが確認されている。

したがって、報告された調査は、沈下と土質の状態を地権者に報告することが目的の調査であり、調査範囲も内容も非常に限定された調査である。この調査結果から、近隣住民に対して報告できること、結論として提示できることが限定的であることを、説明者は住民に対してまず、述べるべきである。

また、この説明会が何を目的として開催されているかどうかも述べられていないことも問題である。説明会は、まず事実を伝えることが目的である。防衛局の説明で頻出する「不安を払拭するため」という言葉は、住民の抱える疑問に対して誠実に答えるというよりは、住民に結論ありきで説明をしていると受けとめざるをえない。

以上のことから、住民に対しての調査に関する印象操作がなされていると受け取られてもいたしかたない説明をしているといえる。

2-2同席している沖縄県、北谷町はどのような役割なのか不明である
 住民説明会は以下のような次第で沖縄防衛局の広報担当により進行された。

1 開会
2. 挨拶 北谷町 玉那覇総務部長
3. 挨拶 沖縄防衛局 玉榮管理部次長
4. 土壌等調査の状況と今後の対応について
  (1)これまでの経緯について 沖縄防衛局 重政返還対策課長 
  (2)土壌等調査の中間報告について 沖縄県環境科学センター 古家部長
  (3)今後の対応について 沖縄防衛局 重政返還対策課長 
5. 質疑応答
6. 閉会

沖縄防衛局、沖縄県、北谷町が説明の席にあったが、以下の件が不明瞭である。
①沖縄県、北谷町は防衛局とともに、前列で説明の席についているが、防衛局の報告内容を全て了承し、合意したものとして、説明会の席にいるということを意味しているのか。
②沖縄県、北谷町はどのような役割を果たしているのか。責任の所在が不明である。
③頻出する「北谷町との調整」という言葉は何を意味するのか。
 
沖縄市サッカー場の件でも、3者の議論を公開せず、議事録も残っていないため、誰がどのような責任で判断を行ったかがわからない状態となっている。沖縄県も、沖縄防衛局に助言したといいながら、その後のチェックを怠ったために濁水対策の失敗が見逃された経緯がある(2015年8月)。今回も、沖縄県がデータ非公開の理由に関して混乱を招く発言をしている(後述)。また、以下に述べるような、問題のある説明会の内容を合意の上で沖縄防衛局に報告させていることは、大変問題であると私たちは認識している。いずれにせよ、専門性を持つ行政機関としての役割は、沖縄県は果たせないと考えることが妥当である。よって、役割の明確化、協議の透明化に関しては急務の課題と考えられる。

3. 「土壌等調査の状況と今後の対応について」の説明内容について
現在、限定的ではあるが、沖縄BDで入手している調査データを用いて、報告内容について検証する。

「これまでの経緯について」沖縄防衛局 重政返還対策課長
(1)経緯についての事実が不正確で省略が多い。
今回の土壌汚染問題の発端は、2010年の地権者の土地で廃棄物や、異臭が確認されたことであったが、異臭の件については経緯の中で触れておらず、調査結果の中にも異臭原因について言及されていない。
また、各ボーリング調査の経緯などが省略されている。これは、今回報告された調査結果が適切な手順で行われているかを知るために必要な情報であるので、省略するべきではない。説明会後、沖縄BDで、現在入手した資料や、聞き取りなどで経緯をまとめた【別紙】。これによって発覚した北谷町の返還跡地問題に関しては別途問題化する。
「2-1」で述べたような、調査が限定的であることも、ここで述べるべきである。それを述べずに、あたかも住民のために土壌汚染調査を実施してきたかのように受けとめられる説明の仕方は、誤解を招く。

(2)北谷町もこの経緯についての説明責任がある
 繰り返しになるが、地権者からの相談を最初に受けたのは北谷町であり、町としての対応の経緯、隣接地への対応、北谷町が担当した調査などについては北谷町が説明し、今回の調査内容については調査を実施している沖縄防衛局が説明をするべきであったのではないかと考えられる。今後の説明会の構成については検討が必要である。
2)土壌等調査の中間報告について沖縄県環境科学センター 古家部長


説明会資料

(1)地盤沈下の調査目的、土壌汚染の状況の調査についての説明が不十分である
 地盤沈下の調査が、住民にどのように関係があるのかが、明確に述べられていない。また、これまでの調査も含め、土壌汚染の調査が、沈下調査の付帯調査なのかどうかも明確に述べられていない。
 特に、「土壌汚染の状況」については、池田氏は「土壌汚染の状況とは何を指すのか。汚染物質、汚染の範囲、深さ、原因、影響などいろいろあると思うが」と、説明の不十分さを指摘している。

(2)廃棄物層の説明が不十分である。

 構成比の説明についても、防衛局の説明について、池田氏は、「ボーリングの結果概ねの廃棄物の構成比はどうだったのか。例えば、石・土が80%、金属2%、プラスチック10%、木片8%など」と不十分な説明を問題視している。
これについては図1「池田意見書」の表4を参照されたい。


(3)「土壌汚染」調査2地点の問題
①2地点での結論は問題
専門家からは、調査地点2地点での結論は問題であると指摘されている。
-桜井氏「ボーリング2地点のみのデータでは、まさに『群盲象をなでる』の観がある。かつてあったというゴミ捨て場のどこを調べたことになるのか、これではわからない。」「ダイオキシン類以外の特定有害物質25項目の数値は環境基準値以下ということで公表しない予定とのことだが、ゴミ捨て場全体を把握しないでのその結論は早計と言わざるを得ない。」(筆者へのメール:報告書の一部データを見て)
-池田氏「ダイオキシン類が検出されたのは廃棄物層の深い部分であること、その下の層からは低い濃度しか検出されていないので地下水等への影響はなく、深く掘削する工事を行わなければ問題ないとしているが、わずか2地点のボーリング調査からそのように言い切れるのか。」(「池田意見書」p.6)

②調査地点2地点の選択理由が不明瞭
 2地点の選択の理由が不明瞭である。最初の説明では「先ほど言いました東側の廃棄物層が厚いと考えられる調査対象地の東側のH26B-1地点とH26B-2地点のこの2つの地点で調査を行いました」とあるが、以前に実施したどの調査で、いかなる結果がでて、その結果、この調査地点でとった、という、2地点の必然性を示す説明がされていない。これについては、先述のとおり、これまでの調査経緯が説明されていないためでもある。
 沖縄BDが質問し、そこで初めて言及したが、その答えは以下のとおりであり、これも廃棄物層があることがわかっていてそこをやった、という説明で終始しており、根拠となる過去のデータもない。【別紙】の調査の順に沿って、廃棄物層はどこでどれだけ確認されたのか、何をもって今回の調査手順が決められ、調査地点を決定したかを明瞭に述べ、調査の妥当性について示すことができるようにするべきである。
“古家:2地点についてだが、さきほどの資料の4ページの上の図1というところで緑色で示しました点かつて調査が行われている地点であることを説明しましたけれど、その緑色で示した地点においてボーリングしてどこで廃棄物層が◎◎しているか(きれている?)わかっているんですけれども、そこをすでにわかっていましたので、その辺りでまず一点、この東側の、ここらへんで廃棄物層がボーリングして◎◎していることがわかっていましたのでひとつはそこを選んでいます。ここを選んで土壌汚染対策法で土壌汚染があるところは10m区画で調査しなさいと法律上マニュアルがあるので、その敷地内で10メートル離れるといったら、まあこの部分、廃棄物層がかつてのボーリングでわかっていて、この地点からなるべく10m離すというところで1点選んでいる。”(◎◎は聞き取れず)

 一方、先述した赤嶺議員の防衛省へ聞き取りによると、沈下と土質調査を目的とすることを前提とした上で、「今回、ボーリング調査の実施箇所を2箇所として理由は何か)30m四方で1ポイントで実施するのが普通であり、2ポイントは妥当と考えている。」と防衛省側は回答しており、これまでの調査結果との連続性での結果としての2ポイントという説明会での回答と齟齬があることが明らかになっている。

(4)ボーリングのコアの取り方が問題である
説明会では、説明されていなかったが、池田氏はボーリングのコアの取り方を以下のとおり問題視している。
池田氏「ボーリングのコアから6カ所を採取しているとのことだが、何を基準に6か所を選んでいるのか。誰が判断したのか。2つのボーリングコアからの採取カ所にずれがあるのは、なぜか。コアが連続していないのはなぜか。」
詳しくは、「池田意見書」を参照されたい。

(5)特定有害物質25項目の調査の非公開 
①非公開という問題とその理由
 土壌汚染対策法特定有害物質25項目の調査結果を非公開にしており、非公開にする理由を沖縄防衛局、沖縄県、沖縄県環境科学センターは説明していたが、どれも非公開にする理由に乏しく、説得力はない。
沖縄防衛局、沖縄県、沖縄県環境科学センター、のそれぞれの言い分も異なっていることも信頼性を失わせている。特に沖縄県からは、問われることがなかったにもかかわらず、速報値と最終の報告値が異なる事例があるということを述べ、それがなぜ起きるかの説明はせず、最終値公開までの作業過程に不信感を抱かせる発言があった。このような発言をしたからには、この速報値から最終報告値までに3者がどのような作業をしたか、説明することが必要になると考える。

[3者の見解の相違]
・沖縄防衛局重政「25項目の分析結果の公表については今の報告書は中間報告書で速報値になるので、北谷町、地権者と調整しつつ、公表について検討させてもらいたい。」

・沖縄県基地環境特別対策室松田「中間報告ということで沖縄防衛局から直接我々に受けており、いわゆる分析をした後に、いろいろチャートとしてデータがでてくるが、速報値として沖縄防衛局に提出してもらっている。その後、分析機関の方で、そういった自分たちの計算方法とかチャートの記載方法とかそういったものが、決められた手順にそってちゃんとやっているかチェックし直す。速報値というのが、正しい計算でだされているかどうかが最終的に出されてくるので、中には速報値と最終の報告値が違うということがこれまでの事例としてある。我々も全てのデータをもらっているわけではない。我々の方でもクロスチェックをするし、そういう意味でその段階ではデータとしては確定できるので、公表できるのではないかと、県としては考えている。

・沖縄県環境科学センター古家:「今回の中間報告でこういった値を出したのは、ダイオキシン類の値が高かったので、すぐにお伝えした方がいいという局の判断だった。25項目については実際私たちは分析しているんだが、確かに速報ではあるが、そこから大きく逸脱して、例えば表層の土壌から実際は25項目の値が非常に高いというようなことになることは考えづらいと思う。」

②「基準値」の問題
住民に対する説明会で、住民に対して「土壌汚染対策法とは何か」「基準値とは何か」について、沖縄防衛局が説明したのかについては不明である。しかし、配布資料には「すべて環境基準値以下」とのみ書かれ、配布された資料は、ダイオキシン類のパンフレットのみである。ダイオキシン類のみに問題を限定する恣意的な意図があると受け取られてもいたしかたない。

「基準値内」として、数値を発表しないことについて、池田氏は「基準値内でもどのような範囲にあるのかは重要な情報である。」と指摘している。
 「池田氏意見書」では、未汚染地域の土壌との比較で、下記、図2のような、見解を示しており、このような事実を住民が知ることは重要であると考える。



(6)ダイオキシン類
ダイオキシンの値については2箇所中1箇所の1800pg-TEQ/gのみの記述としているが、下記、図3の池田氏意見書「表2」にあるとおり、2点で調査基準値(250pg-TEQ/g)を越えている(サンプル2の320pg-TEQ/g)。少なくとも、調査基準値超のものは報告するべきである (*1)
池田氏は、この報告を受け、「スポット的に1800pg-TEQ/gがあったとは考えにくいのではないか。ダイオキシンの由来については、分析結果の詳細を公開してもらわないと第三者的に評価出来ないので即刻公表すべきである」と、問題視している。

 ダイオキシン類の由来は「農薬PCP(ペンタクロロフェノール)由来のものと、焼却由来のものであるということが確認されている」と、しているが、池田氏は「由来の検討のために、何を分析したのか、農薬類はなんと何を分析したのか。油分については分析していないのか」とこの報告にも情報の不十分さを指摘している。
 
PCPが何であるかについても、「農薬」とのみ説明しているが、米軍が持ち込んで民間に払いさげていた事実、毒性についての言及がない。これは、沖縄市サッカー場の駐車場側から発見されたドラム缶の内容物からも検出されており、(3)に記す投棄の実態、汚染の本質的な由来も射程にいれて、沖縄におけるPCPの意味についての言及があってしかるべきであると考える。


(7)汚染拡大、健康被害リスク
「現状では飛散等による汚染拡大や直接摂取による健康被害のリスクはない」という説明がされているが、池田氏は「ダイオキシン類の汚染分布がどうなっているか分からない段階で、健康被害は無いと断定することは問題ではないか」とこの説明を問題視している。

(8)地下水汚染の可能性
資料・説明では、「ダイオキシン類は水に溶けにくく、廃棄物層下部のダイオキシン類濃度は低いことから地下水汚染の可能性はない」と述べられているが、1か所による調査での断言、またダイオキシン類に限定していることを専門家は以下のように問題視している。

・池田氏コメント「たった1回、1カ所の調査で地下水への汚染がないと断定はできない。
沖縄市のサッカー場と同様に、浸出水(溜まり水)の分析を行ってみる必要があるのではないか。」

・桜井氏「「ダイオキシン類が水に溶けにくいことを根拠に問題は限定されていると沖縄防衛局は主張しているが、他の汚染物質はそれぞれ挙動が異なるので、問題を矮小化するためのイメージ操作と言える。」

3)今後の対応について 沖縄防衛局 重政返還対策課長

(1)専門家、愛媛大学森田客員教授の位置づけ
 沖縄市サッカー場の沖縄防衛局の調査でも森田氏が専門家として助言を行っているが、この位置づけが常に曖昧である。これまでの報告書でも、どこまでが調査会社の見解で、森田氏の意見や助言がどの部分なのかが示される形となっていない。まだ、これまでも森田氏の助言によって報告された調査結果は、正確性に疑義が唱えられている (*2)
 上述のように、「環境基準値内であれば問題ない」とするのか、「環境基準値以下でも注意するべきものがある」と、データを「評価」する専門家の役割は大きい。専門家の位置づけについて、これまでの対応からみても、北谷町はより重要性を認識すべきであると考える。

(2)調査方針


説明会資料


①「資料等調査」について
 「過去の航空写真、地形図等から米軍に起因する汚染が存在すると考えられる範囲を特定し、安全性を確認するため、平成8年の嘉手納飛行場一部返還地において資料等調査(調査方法(廃棄物の調査含む)、調査場所、汚染が発見された場合の対策等)を実施し、その結果を踏まえ、必要に応じて追加調査を実施する予定」と説明している。

 沖縄BDの質疑応答によって、この「資料等調査」の意味するところを確認したところ、2014年に公開された「キャンプ瑞慶覧(西普天間住宅地区)(25)支障除去措置に係る資料等調査」と同様のものであることが確認された。
 この資料等調査では、”資料調査において廃棄物の投棄や埋設に関する情報は把握されず、地形図による調査結果からも谷の埋立てや不自然な盛り土など廃棄物の埋設を疑う地形変化は確認されませんでした。ただし、廃棄物の投棄や埋設がなかったことを客観的に説明できる情報は得られませんでした。” と報告されていた(2014.8.13)。しかし、その直後に行われた文化財調査でダイオキシンが検出されたドラム缶が18本発掘され、土壌からは鉛が基準値の3倍検出され、その地点は「土壌汚染のおそれが比較的多い区画」に変更されている。その場でも指摘したが、これまでの防衛局の資料等調査では汚染の予想、汚染範囲の特定には限界がある。

 また、「安全性を確認するため」という文言には、「不安を払拭するため」と同様の結論ありきのニュアンスが感じられるため、このような文言は用いるべきではない。調査の目的は事実を把握することであり、安全性の確認ありきで進めるべきではない。

さらに、質疑応答の中の沖縄防衛局の回答からも、調査の妥当性等に疑義が唱えられている。

“重政:資料等調査においては、昔の地形図を調べて、米軍が使用していたところは標高何メートルだったのか、そして返還された平成8年以降の標高は何メートルだったのか、を比較し、米軍が埋め立てしているのであればそこに廃棄物があるかもしれない、それでその範囲を特定し、その範囲においてどのような方法で調査を行って安全を確認していく必要があるのかということはまずしっかりと検討していきたい。化学的調査については、資料等調査を行って必要があれば実施していきたいと考えている。”

との説明に、池田氏は「標高差から埋立の有無を確認し埋め立てていたら汚染があるかもしれないというのは極めて甘い考え方ではないか。埋立をしていなくても汚染物質を垂れ流したり、捨てたりしている可能性があるのでは」と防衛局の見通しの甘さを指摘している。また、「トレンチ調査を行うつもりはないのか。いずれにしてもボーリング調査では埋め立てられた廃棄物の実態は分からないのではないか。」と、廃棄物の実態を把握する調査方法のさらなる検討の必要性について提案している。

 以下の沖縄防衛局の回答では、ダイオキシン汚染に限定した調査方針であることも疑われるので、調査設計の確認が必要である。

“重政「今回はダイオキシンが検出されたということで内容についてはダイオキシンの汚染土壌対策マニュアルというのがあって、その中でまずは資料等調査をやるということという規定があるので内容についてはマニュアルに沿って調査していきたいというふうに考えている。」”

 沖縄の基地汚染の特徴は、1)投棄による2)「複合汚染」3)連続性がない (*3)
ということが、嘉手納基地跡地であり、窪地でゴミ捨て場であったという当該地と共通性のある沖縄市サッカー場の調査で明らかになりつつある。
 このような経験値と知見に基づいた追加調査設計を行うべきである。

②「(2)周辺住民の不安を払拭するため、隣接する民家(5棟)において表層土壌(ダイオキシン類)の調査をする予定」について

池田氏は、まず、調査目的について「そもそも『不安を払拭するため』というのが間違っている。『汚染の実態と原因』を解明するために調査を行うのが本筋ではないのか。不安を払拭するためということでは、危ないものは最初から調べない、調査が表層的になりやすいと言うことにもなりかねない。」と問題を指摘している。

表層土壌が表層からどれほどの距離なのかということについても、説明会で触れておらず、質疑応答で初めて5cmという数値に言及しており、住民に正しい事実を伝えているかどうかも疑われる。

池田氏は、この調査についても、「表層土壌は、風や人の移動などによって攪乱されているため、そこだけ調査しても安全性や汚染の実態などはわかるはずがない。」と有効性について疑問視している。

よって、調査方針として挙げられている2つの調査については追加調査として問題が多い。調査設計の段階から第3者、住民を含めて協議すべきである。

その他  住民との質疑応答などから

・「掘削しなければ問題はない」という説明
 「住宅建設のための基礎工事において、地表から5m以上掘削しない場合、特段の影響はない」というような説明をしているようだが、2点の調査でそのような結論を導きだすことはできないと思われる。これまでのどのような事例、経験値をもってそのような判断をしているのか不明であり、地権者にもどのような説明をしているのか、懸念が持たれる。
 沖縄BDは、独立行政法人土木研究所に民間地、住宅地での5mの深さでのダイオキシンの検出の経験があるかの問い合わせを行ったが、公共工事が主な事例なために、そのような事例は手元にない、その事例が集まっている機関なども知らないという回答であった。また、「止めよう!ダイオキシン汚染・東日本ネットワーク」「止めよう!ダイオキシン汚染・東日本ネットワーク・関西ネットワーク」にも問い合わせたが、そのような事例は扱ったことがないとのことであった。
 このように、全国的にも稀有な例であり、調査地点が2地点という調査結果を持って、掘削の影響を導きだすことは問題であると考える。

*1  情報筋によれば、沖縄県は、2箇所の調査指標値超過があるため、汚染は広範囲ないし複数地点存在することが想定されるという所見を北谷町に提供している(2015年11月)。なぜ沖縄防衛局にこのような報告を沖縄県と北谷町が許しているのか検証の必要がある。

*2 宮田秀明氏「旧嘉手納飛行場(26)土壌等確認調査(その2)嘉手納飛行場返還跡地内報告書 平成27年1月 沖縄防衛局調達部/中央開発株式会社についての意見書」(2015年2月27日)

*3 宮田氏は、2015年2月27日の「旧嘉手納飛行場(26)土壌等確認調査(その2)嘉手納飛行場返還跡地内報告書 平成27年1月 沖縄防衛局調達部/中央開発株式会社についての意見書」において、廃棄物の埋め立て地の汚染の性質の「不連続性」についての見解を“廃棄物の埋め立て地における有害物の種類や濃度は、均一ではなく、全くの不連続性を特徴とする。そのため、少し離れた地点における有害物質の種類や濃度は、水平的にも垂直的にも極めて大きく相違する。このような実態があるため、埋立地における汚染調査は、適切な間隔の適切な深さのボーリング調査を原則としている。”と示している。サッカー場でもフィールド側は枯れ葉剤由来のダイオキシン汚染、駐車場側はPCP、PCB由来のダイオキシン汚染と、連続性がない。

                                                                 以上
  

Posted by 沖縄BD at 01:01Comments(0)

沖縄県の基地環境行政要請-みえない沖縄県の役割と責任 2015年9月3日

2015年09月10日/ 辺野古/ 基地返還跡地/ 汚染/ 西普天間/ 沖縄市サッカー場/ 沖縄県環境政策/ 日米地位協定/ 環境協定

[お断り]記事の更新は2016年1月になっておりますが、記事の検索上の都合もあり、2015年9月の投稿にしています。

 9月3日、沖縄・生物多様性市民ネットワークは、沖縄県に基地環境行政全般に関する要請を行いました。
 沖縄市サッカー場の件、西普天間の件、新設された「基地環境特別対策室」の件、環境補足協定など、県の役割や動向が明確でないのでそこを確認したいこと、そして沖縄市議、宜野湾市議といった、現場を抱える自治体の議員が県に意見を述べる場がないので、私たちが設定することが必要だと思ったことからこの要請を行いました(ただ、市議たちは自分たちでそういう場を設定してもいいと思いますが)。 


photo:Osamu Makishi

要請者と対応者は以下のとおりです。窓口となった環境部環境政策課基地環境特別対策室長松田了さんには複雑な^^;要請に対応していただき、また要請後も文書の提供など対応いただき、感謝しています。

沖縄県における基地環境行政について(要請)記録
日時 9月3日(木)午後1時30分
場所 14階商工労働部会議室
要請者:沖縄・生物多様性市民ネットワーク共同代表 河村雅美、吉川秀樹、牧志治、真喜志好一、沖縄市議・池原秀明、沖縄市議・桑江直哉、宜野湾市議桃原功、
沖縄県県議新垣清涼

沖縄県対応者:環境部環境保全課長 仲宗根 一哉、環境部環境整備課長 棚原 憲実
知事公室基地対策課 副参事 久貝 仁、企画部企画調整課 主幹 花城 安博
環境部環境政策課基地環境特別対策室長 松田 了 (要請窓口)


要請文と県の用意した回答については、以下のとおりです。ただ回答部分はそんなに面白くありません。相変わらずの予測できる県行政っぽい回答ぶりだと思います。 
その後の、県とBD、市議のやりとりの部分が、県の姿勢が明らかにわかり、意味のある部分だと思います。折りたたんだ部分にBDの共有報告記録用に文字起こししたものをはりつけてありますので(PDFでも読めます)、長いですが、興味のある方はどうぞ読んでください。

特に、池原沖縄市議と県とのやりとりは注目していただきたいと思います。
沖縄県の役割が曖昧であり、結果的に沖縄県が「防衛局に要請した」「防衛局に指導した」後に、無責任状態になっていることがよくわかります。
台風9号の濁水対策の件では、県は沖縄防衛局に指導をしたが、防衛局の施工のやり方が少し甘かったということは思っている、ということを認めています。それに対して、池原市議は「指導したといっても検証はしっかりしているのか。ないからこういうことになっているのではないか。『指導した、きちっとやっているだろう』、と『だろう』の概念でやられているのではないか。」と厳しく追求しています。

県がどのような指導をし、防衛局はどのように対応していったのか、また、防衛局の調査の方法、調査結果、対策に対して県や市が承認し、同意しているのかが現在、議事録がないため検証できません。また、防衛局の報告書や対策に、ゴーサインを出す県や市の責任はどのように問われるのか、という問題も曖昧です。

このような体制を放置してはいけないので、私たちは3者の議事の公開、議事録の公開を要求していたのですが、この時点で、県は「議事録つくっていないのが実情」といっていました。
この後、沖縄BDが3者協議の件で国会議員を通じて調査した結果がでてきました。また後日記事をあげてリンクつけます。

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【要請文と県対応】
2015年9月3日
沖縄県知事 翁長 雄志殿

沖縄・生物多様性市民ネットワーク
共同代表/ディレクター 河村 雅美
共同代表 吉川秀樹
沖縄県宜野湾市志真志4-24-7 セミナーハウス304
 NPO法人「奥間川流域保護基金」事務所内
 TEL/FAX:098-897-0090 
 
沖縄県における基地環境行政について(要請)

日頃の沖縄県の環境行政への取り組みに対し、感謝申し上げます。

沖縄市サッカー場の汚染調査、キャンプ瑞慶覧の西普天間住宅地区返還など、ここ近年の基地環境行政における沖縄県の役割はより重要になっていると私たちは認識しています。
2014年に新設された「基地環境特別対策室」で、基地環境に関する知見が蓄積され、沖縄県の基地環境政策が推進されていくことを期待しています。

一方、基地環境政策は、日本政府、沖縄県、各市町村、米国政府、在沖米軍、そして市民との関係の中で遂行されるものであり、沖縄県だけで完結するものではありません。現在、その関係性の中での沖縄県、及び市町村の責任や、主体的な役割が見えてこないというのが現状です。
また、「基地環境特別対策室」と現在の案件における沖縄県環境行政との関係や、実効性、今後の展望についても不透明な部分があります。
県民との実質的なコミュニケーションの充実もまだ図られていない状況です。

環境行政は、「情報公開」と「市民参加」「環境正義(environmental justice)」であるという原則をふまえ、以下の点について、要請いたします。
1. 沖縄市サッカー場の汚染調査・汚染拡散防止対策・浄化について
1)現在のサッカー場調査における沖縄県の役割について、あらためて説明をしてください。
県:
沖縄市サッカー場の調査は沖縄防衛局により実施されている。沖縄防衛局、沖縄県、沖縄市の3者で調査の手法等について協議を行う中で県は指導的役割を担っている。

①土壌汚染対策法、水質汚濁防止法、廃棄物処理法等に則り、適正な調査、汚染除去、廃棄物処理を行う事について、沖縄防衛局を指導する立場にあると考えており、これまで、調査の手法、汚染除去の手法などについて、沖縄防衛局に対し必要な指導、助言を行っている。
②また、地下水の水質測定等を実施し周辺環境の状況把握に努めているところ。

2)沖縄防衛局、沖縄県、沖縄市で開かれている3者協議の内容が非公開のため、不透明です。また、沖縄防衛局から沖縄市への事前連絡のないままでの調査入札(2015.5.1)や、台風9号の雨水・濁水対策などの例から、3者協議が、形骸化し、機能不全になっているのではないかとの疑念が持たれています。

沖縄防衛局によれば、「自由な意見交換が妨げられる」との理由で議事を公開しない(沖縄防衛局返還対策課重政課長2015.8.21聞き取り)ということですが、議事録は行政の政策遂の検証のためにも必要であるので、これまでの議事録の公開を沖縄県が沖縄防衛局へ働きかけてください。

また、今後、3者協議は、調査を実施する沖縄防衛局でなく、調査の監視や評価をする意味でも、沖縄県が主導的役割を果たすように体制を整え直し、協議の内容を公開するようにしてください。
県:
3者の「素直な意見」を損なわないように非公開にして協議は実施してきている。協議を踏まえて行われる調査過程、調査結果等についてはできるだけ速やかにわかりやすい形で県民や市民に公表するよう沖縄防衛局に働きかけている。

3)汚染拡散防止対策、排水口の調査、河川を含む周辺環境調査については、沖縄県が主体となり、専門家から指摘されている問題点(「沖縄市サッカー場調査結果に対する専門家意見について」(要請)2015年3月19日付)を改善し、県が責任を持つ防止対策・調査体制としてください。また、調査の結果や分析については、メディアや県民が理解できるように平易な言葉で丁寧な説明をしてください。 
県:
汚染拡散防止対策については、沖縄防衛局の責任でなされると理解している。沖縄県はそれについての助言を行っていく。地下水についてはこれまでのところ6回、サッカー場に隣接する河川の河口の底質については4回、暗渠排水についてはこれまで4回実施している。
5月の最終時点までの調査結果については、いずれも基準値の超過はない。
直近のものでは8月31日に採取して地下水、底質の調査があるが現在分析中。ご指摘の公表の仕方に対しては、今後検討していきたい。

4)台風9号による雨水対策の経緯については、県民からその事前、事後の対策についての懸念が強く示されています。誰がいつ、どのような対策を検討し、沖縄県は誰がどのような知見を持って、沖縄防衛局の案に合意したのかについて説明してください。
県:
全面調査でドラム缶に高濃度のジクロロメタンが残存しており、掘削部の汚染が懸念されていたこと、県道側の法面の崩落の危険があったこと、赤土流出防止対策の観点から掘削部を全面ブルーシートで覆い、雨水については排出するという方針を3者で確認していた。 
しかしながら台風9号でブルーシートがめくれ、一部濁水を排水することになった。今後は赤土防止条例に排水基準を守るように現状でたまっている水についても条例を所管する立場から条例を遵守するように3者協議で発言をしているところである。

5)これまでの沖縄防衛局の調査では、投棄されたドラム缶がこれまでの工事で作業員に見逃されて埋め戻されている可能性も示唆されます。米軍人以外の作業者の被害や、廃棄物発見時における制度の不備なども見据え、ドラム缶が投棄された経緯について、また、沖縄県内での同様な事例の可能性について精査し、沖縄県の基地汚染の特徴を把握する取り組みを行ってください。
県:
米軍施設環境対策事業において、在沖米軍基地の土地の使用・改変履歴、環境事故歴等を調査することとしている。同調査により基地内の環境汚染の可能性等について把握して参りたい。

6)作業員の作業時の安全についても懸念されています。作業員の安全確保、情報提供、健康管理の責任体制はどのような体制となっているのか、説明してください。
県:
作業員の安全確保については、労働安全衛生法等に基づき発注者及び被雇用者等において為されていると考えている。

7)沖縄防衛局から調査結果報告などがメディアへのレクチャー、ウエブでの公表などに限られ、市民へのコミュニケーション過程を構築する努力が一向にみられません。沖縄県がこの状況をどのように認識しているのかについて説明してください。
県:
情報公開のあり方については、各行政主体により判断されており、要請事項については沖縄防衛局、沖縄市に伝えたい。

2.西普天間住宅地区の支障除去調査について
1) 「キャンプ瑞慶覧(西普天間住宅地区)の跡地利用に関する協議会支障除去作業部会」における沖縄県の役割について説明してください。
県:調査の手法、汚染除去の手法などについて、沖縄防衛局に対し必要な意見を述べることにより適正な調査及び支障除去対策の実施を確保する役割を有していると考えている。

2)沖縄防衛局の制定した「返還実施計画」案に対する沖縄県知事意見や宜野湾市長意見の沖縄防衛局の回答は、曖昧なものであり、「返還実施計画」最終案にきちんと反映されていません。しかし、知事意見・宜野湾市長意見として要求したことは、協議過程で実現するために、交渉していくべきだと考えます。沖縄県はこの件に関して、どのような働きかけをしているか、説明してください。
県:
県及び宜野湾市の意見については、支障除去作業部会等での調整を踏まえて沖縄防衛局に対応させた又は対応に向けて協議を進めているところである。

3)宜野湾市まち未来課は、沖縄防衛局の調査の妥当性について判断をするのは沖縄県環境部の専門家であるとしています(2015年8月26日調べ)。沖縄防衛局が行う土壌・水質調査結果やその評価、浄化方法など、沖縄防衛局の判断の妥当性を判断できる専門家が誰であるか説明してください。
県:
沖縄防衛局が行う調査の手法等については、支障除去作業部会等において関係機関で協議を行うことにより、その妥当性を判断している状況にある。なお、支障除去作業部会の協議結果については、協議会に報告することを行っている。評価基準については各種環境基準等を参照して判断している。また、宜野湾市の発言内容については県は現時点で承知していないが、県環境部においては、環境法令を熟知した職員が調査の内容等について審査している状況である。

4)撤去予定の建物のアスベスト調査や、PCBのデータについて、沖縄県、宜野湾市は生データが沖縄防衛局から共有されていませんでした(2015年8月26日調べ)。沖縄防衛局の調査データは全て沖縄県、宜野湾市も共有し、主体的な調査結果の精査、評価をするようにしてください。
県:
アスベスト及びPCB調査の結果については、平成27年5月13日に沖縄防衛局から結果概要について説明を受けたところ。沖縄防衛局が行った調査の結果については、関係法令に則り判断していくこととする状況。

5)沖縄防衛局の計画では、支障除去期間はトータルで約3年を予定しています。しかし既に「キャンプ瑞慶覧(西普天間住宅地区)(25)支障除去に係る資料等調査報告書」(2015年8月)で予測されなかった投棄物や鉛の汚染が発覚しています。また、沖縄県基地環境特別対策室の「米軍施設環境対策事業報告書」では、「汚染場所の特定及び浄化計画の策定には十分な時間が必要であるとの助言を海外の基地汚染に関する実務担当者から得ており、実際の情報収集結果からもそのことが伺えた」(p.205)とあります。このようなことを踏まえ、支障除去期間の見直しを行う提言が沖縄県から必要だと考えられますが、その点についての見解を聞かせてください。
県:
支障除去に要する期間については、文化財調査や環境調査等の結果を踏まえて異なってくるものと考えている。跡地利用推進法に基づき徹底した支障除去が講じられるよう沖縄防衛局へ求めていくが、まだ文化財調査や環境調査が終了していないので、現時点で直ちに期間の延長を求めることは考えていない状況にある。

3. 基地環境特別対策室の役割について
1)基地環境特別対策室は3年間の一括交付金事業と理解していますが、事業終了後はどのような位置づけになるのか説明してください。
県:現時点では、平成29年度以降も組織を継続し、基地に関連する環境問題の解決に向けた取り組みを強化したいと考えている。なお、組織の問題については今後、庁内担当部と調整を行って決定するプロセスになっている。

2)現在、策定中の基地環境調査ガイドライン(仮称)及び基地環境カルテ(仮称)は、事業終了後に適用されるようですが、いつどのような形で実効性を持つのか、その展望について、また、沖縄防衛局が実施する調査などでガイドラインを適用するかについての日本政府との交渉についての進捗状況を説明してください。 
県:
県では平成28年度末に「基地環境調査ガイドライン(仮称)」と「基地環境カルテ(仮称)」を作成することを目標に作業を進めているところ。また、同作業は国(防衛省、外務省、環境省)へ適宜説明を行いならが進めている状況である。
現在でも国に県の考えを伝えている。同ガイドライン及びカルテ策定後は、その活用について国に提言して参りたい。

3)現在の沖縄市サッカー場などの進行中の事例を扱う県の担当部署や市町村課長会議などで説明している。基地環境特別対策室の情報交換などの関係はどのようになっているのか説明してください。
県:
基地環境特別対策室の設置目的、あるいは現在進行中の案件については市町村担当者
進行中の個別の事案については、適宜、県関係課や市町村担当部署との間で協議や意見交換の場を設けることにより情報交換等を行っている。

4.「環境補足協定」について
1)2014年10月20日の「日米共同報道発表」で提示された日米地位協定を補足する環境協定の件は、「基地負担軽減」に含ませるべきではない、特に政治的取引の材料とするべきではないと私たちは考えています。環境補足協定は、日米地位協定の欠陥の問題であり、それを補うための協定であり、「負担軽減」ではありません。また、この問題は、沖縄県の問題だけでなく、国民的な議論でもあり(日本弁護士会連合「日米地位協定(環境条項)の改正問題に関する会長声明」2015.1.7)、渉外知事会で要求してきた問題でもあります。沖縄県は、環境条項については政治的取引にすることなく、毅然とした態度で、これまでの地位協定の不備を日本政府に指摘し、沖縄県の環境を実質的に守る協定として要求するべき事項を交渉してください。
県:
地位協定に関しては沖縄だけではなくて全国民的な課題であると考えている。沖縄県では渉外知事会と連携し、地位協定の早急な見直しができない場合には環境法令の適用や環境調査等の規定を盛り込んだ「環境補足協定」を締結するよう求めてきたところである。平成26年10月に日米両政府間で実質合意された環境補足協定に関しては、基地を抱える地方公共団体の意見を十分反映し、実効性のある協定となるよう引き続き求めて行きたいと考えている。
その他軍転協など県内の機関を通じて、要請を行ってきたところであり、所用で上京した際には、外務省、防衛省にも要請を行ってきた。

2)「環境補足協定」が実効性をもつものとなるべく、沖縄県が政府にどのような交渉をしてきたか説明してください。 
県:
2015年2月に軍転協、7月に渉外知事会で要請してきた。
環境部では、10月20日の翌日、外務省と防衛省に実質合意の内容を確認するとともに県の考えを伝えた。4月8日、5月15日、8月7日、基地環境特別対策室の事業を説明する際にも環境補足協定が実効性をもつものになるよう要請をしてきた。

以上 

要請文のPDFファイルはこちら。
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記録のPDFファイルはこちら
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沖縄市サッカー場:掘削部にたまった濁水排水の件 その後 

2015年08月16日/ 沖縄防衛局/ 基地返還跡地/ 汚染/ 沖縄市サッカー場/ 沖縄県環境政策/ 日米地位協定/ 環境協定/ 枯れ葉剤/ ダイオキシン

[お断り]記事の更新は2016年1月になっておりますが、記事の検索上の都合もあり、2015年8月の投稿にしています。




「沖縄市サッカー場:台風対策の件で沖縄市長が防衛局要請&防衛局調査実施」(2015年8月2日)の記事の後の8月4日、沖縄防衛局は同局サイトで調査結果を発表しました。
「嘉手納飛行場返還跡地内(現沖縄市サッカー場)に係るお知らせ」

この「お知らせ」では、調査の目的や採水の状況などが「お知らせ」と調査報告に明確に書かれておらず、調査の意味が曖昧な書き方となっています。
「7月16日、汚染の有無を確認するため、サンプリングを行い」と書かれていますが、ポンプアップして濁水を排水していた事実、排水中断までの濁水の値については測定できていないことが記述されていません。限定された目的の調査であるにもかかわらず、全ての懸念が払拭された印象操作をしているように見られるような書き方は問題です。

 また、通常、防衛局の調査報告の発表はメディアへのレクチャーを伴うのですが、自分たちの危機管理政策の件であるにも関わらず、説明を自らする機会を設けずに、ウェブだけのお知らせとしたことも、発表の方法として適切なものではありません。
 排水のタイミングも、この「お知らせ」と同日にすることが書いてあるのですが、市議会への説明会もなく、その日に行う予定としたのも問題です(琉球新報記者によると実際の排水は8月5日、6日であったとのこと)。




この経緯、県の対応については、9月3日の沖縄県への要請で明らかになりましたので、その記事を後ほどアップします。それを参照していただければと思います。

問題点を書きだしたメモを以下に貼り付けます。

PDFファイルはこちら
%E9%9B%A8%E6%B0%B4%E5%AF%BE%E7%AD%96%E5%95%8F%E9%A1%8C%E7%82%B9.pdf (PDF: 563.11KB)  続きを読む

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8月10日ベトナム・ダイオキシンデー@東京「沖縄の枯れ葉剤を追跡する」

2015年08月02日/ 沖縄防衛局/ 基地返還跡地/ 汚染/ 西普天間/ 沖縄市サッカー場/ キャンプ瑞慶覧/ 沖縄県環境政策/ 日米地位協定/ 環境協定

8月10日、東京で行われるベトナム・ダイオキシン・デーニッポンの集会があります。
 
  *ベトナム・ダイオキシンデーニッポンとは?*
    1961年8月10日、アメリカ合衆国はケネディ大統領の命令でベトナムに枯れ葉剤の空中散布が開始しました。ベトナム政府はこの8月10日を「枯れ葉剤被害者支援の日」と制定し、発がん物質ダイオキシンの枯れ葉剤被害者の救済と化学併記枯れ葉剤の残虐さを世界に訴えています。日本でもこの呼びかけに応えて2011年から毎年同じ日にベトナム・ダイオキシンデーニッポンの集会を開催してきました。
     
 今年は「沖縄の枯れ葉剤を追跡する」というテーマで、シンポジウムが行われ、沖縄市サッカー場の件では、沖縄BDからわたしがシンポジウムでジョン・ミッチェルさんと中村梧郎さんとお話します。

 東京近郊の方でお時間あれば、ぜひお誘いあわせのうえ、いらしていただければと思います。







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2015年8月10日(月)
17時30分開場 18時開会

会費 前売り2,000円 当日2,200円 (学生1,000円)
申込み振込先
郵便振替 00180-4-292090 宮原千佳子
140-0011 東京都品川区東大井5-18-1

JR京浜東北線・東急大井町線・りんかい線 大井町駅徒歩1分
電話 03-3295-3415
品川区きゅりあん
小ホール定員282名(先着順)

1.映画 18:10
『枯れ葉剤を浴びた島:ベトナムと沖縄・元米軍人の証言』

2.シンポジウム 19:20
☆ジョン・ミッチェルさん ジャーナリスト『追跡・沖縄の枯れ葉剤』(高文研2014年11月刊行)の著者
☆河村雅美さん 沖縄・生物多様性市民ネットワーク ディレクター
☆中村梧郎さん フォト・ジャーナリスト
【主 催】 ベトナムダイオキシンデー第5回ニッポン2015実行委員会 【後 援】 ベトナム大使館
【事務局】 170-0005 東京都豊島区南大塚2-17-10 日本ベトナム友好協会内
【連 絡】 阿原成光 090-1607-3749  Eメール 鈴木芳博 suzuki.y0001[アットマーク]gmail.com
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ちらしのPDFはこちらからダウンロードできます。
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Posted by 沖縄BD at 13:50Comments(0)

沖縄市サッカー場:台風対策の件で沖縄市長が防衛局要請&防衛局調査実施

2015年08月02日/ 沖縄防衛局/ 基地返還跡地/ 汚染/ 沖縄市サッカー場/ 沖縄県環境政策/ 日米地位協定/ 環境協定

 台風対策の件で、沖縄市長が沖縄防衛局に「沖縄市サッカー場における汚染拡散防止策について」の要請を7月16日に行いました。

 下に要請文のタイプアウトしたものとPDF文書を貼り付けてあります。
 文書として粗く、文章としておかしいものもいくつか見受けられます。現状がどのような状態であり、なぜそれを要請するのかが、わかるように書かれていません。
 要請文1の「1.ブルーシートでは耐久性が弱く、市ゴミ山で使用されている遮水シート等の耐久性の高いシートを使用すること。」の「市ゴミ山」も何のことを指しているのか、一般にはわからないでしょう。これは、沖縄市北部地区にあるゴミ山問題の、旧管理型最終処分場頂上部で用いられている遮水シートのことを指しています(たまたま6月11日に行われた住民説明会に筆者が出席していた)。

 また、「4. 搬出スケジュールが長期に渡り、今後の被害が予測されるため、予算増額を測り搬出プログラムを早期に終結を図ること。(除染・除去・原状回復の目処が立っていない) 」というのは、大変無責任で、誤解を招く文章だと思います。何の搬出なのかも明記されておらず、「搬出プログラムを早期に終結を図ること」という、文章としても体をなしておらず、汚染の除去は「終結を図る」というものではないでしょう。「政府が金をつけてさっさと終わらせてもらいたい」ととらえられるような文章です。この過程に市として主体的に関わっていく姿勢があるのか、政府任せでとにかく終わらせたいのか、疑問が持たれる要請文になっています。
 
 その中で、「これまでも国、県、市の3者において雨季や台風シーズンに備えるべく、協議を行い対策がとられてまいりましたが」とありますが、どのような協議を行い、対策がとられてきたのか、なぜこのような市民からも疑問を持たれるような対応になっているのか、3者は公表すべきでしょう。3者協議の緩みは、防衛局がドラム缶の入札を沖縄市と協議せずに行っていたことからも指摘されています。
 
 これまで、協議の公開については要求してきましたが、応えられてきていません。何を協議して誰がどのような根拠を持って判断しているのかを明確にするため、ひいては行政が各々の責任を果たしているかを可視化するため、公開してほしいと思います。

 QABの報道にありますが、防衛局は16日から現場に溜まった雨水のサンプルを採取し、その調査結果は8月上旬ごろに発表するとのことです。
 
 この後、7月24日に沖縄防衛局から沖縄市議への説明会が行われました。
 
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沖市基第0716001号
平成27年7月16日

沖縄防衛局
局長 井上 一徳様

沖縄市長 桑江朝千夫
 

沖縄市サッカー場における汚染拡散防止策について(要請)


沖縄市サッカー場の調査業務につきましては、日頃よりご尽力頂き真に感謝申し上げます。さて去る台風9号の来襲時に沖縄防衛局をはじめ沖縄県の協力をえながら進めさせて頂いているところです。特に沖縄防衛局管理部におかれましては、調査業務のほか、本市議会の現地説明会の対応を頂き丁寧な説明を頂いているところです。これまでも国、県、市の3者において雨季や台風シーズンに備えるべく、協議を行い対策がとられてまいりましたが、台風9号の襲来により雨水対策用のシートが大幅に剥離し、廃棄物混じり土や窪地の排水等、汚染の可能性がないか、市民や議会からも不安の声が出ております。

 つきましては、今後の早期対策について現段階での懸念事項を別紙にまとめておりますので、一刻も早く対策を講じられますようお願い申しあげます。

(別紙)

1.ブルーシートでは耐久性が弱く、市ゴミ山で使用されている遮水シート等の耐久性の高いシートを使用すること。

2. 養生手法については、シートの継ぎ目が剥離せず、且つ隙間から雨水の進出が無いよう十分な対策をとること。

3. 廃棄物まじり土(仮置き)については、野積み形態からフレコン(浸出防止)保管へ変更すること。

4. 搬出スケジュールが長期に渡り、今後の被害が予測されるため、予算増額を測り搬出プログラムを早期に終結を図ること。(除染・除去・原状回復の目処が立っていない) 

5. 廃棄物まじり土周辺及び掘削地にたまった雨水については、早期にサンプルを採水し安全が確認されてから放出すること。

6. 市民の安全で安心な雨水(防風)対策を早期に図ること。 
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要請書PDF
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以下、報道です。




QAB: 土壌汚染拡大防ぐよう要請 (2015.7.17)



"108本のドラム缶が見つかった沖縄市のサッカー場で、汚染の可能性がある土壌に雨水が溜まっているのが確認された問題で、沖縄市は16日、防衛局に対し、汚染拡散の防止を求めました。
現場では、台風の影響で設置されていたブルーシートが剥がれ、汚染の可能性がある土壌に雨水が溜まっているのが確認され、この水が近隣の河川に排出されたのではという疑いも浮上しています。
16日、防衛局を訪ねた沖縄市の桑江市長は、耐久性の高いシートを使うなどして汚染を拡大させないよう対策を講じてほしいと求めました。
防衛局は16日から現場に溜まった雨水のサンプルを採取し調査をしていて、調査結果は8月上旬ごろに発表する予定です。"

○NHK沖縄:沖縄市ドラム缶汚染問題で対策要請



"沖縄市のアメリカ軍基地の跡地から大量のドラム缶が見つかりダイオキシンなどが検出された問題で、掘り起こした土砂を覆っていたシートが、台風9号の強風ではがれ、きょう、沖縄市の桑江市長が沖縄防衛局に対し、早急に対策を講じるよう求めました。
この問題は、沖縄市のアメリカ軍基地の跡地にあるサッカー場の地中から100本以上の古びたドラム缶が見つかりダイオキシンなどが検出されたもので、沖縄防衛局は、ドラム缶と一緒に掘り起こした土を現場に仮置きし、雨や風で拡散しないようシートで覆っていました。
しかし、先週、沖縄地方に接近した台風9号の強風でシートがはがれ、現場に水たまりができているのが確認されたということです。
これを受けて、16日、沖縄市の桑江朝千夫市長が防衛局を訪れ、井上一徳局長に対し、耐久性の高いシートの使用や、現場にたまった水の調査など早急に対策を講じるよう求めました。
これに対し井上局長は、「市民に不安を与えたことを真摯に受け止め、要請内容をふまえて早急に対応する」と述べました。
要請のあと、桑江市長は、「あのシートでは、台風の時に危険だと以前から指摘していたのに、防衛局は認識が甘かったのではないか。
二度とこうしたことがないようしっかりと対策を講じてもらいたい」と話していました。(7月16日 19時16分)"   

Posted by 沖縄BD at 00:23Comments(0)

沖縄市サッカー場:台風9号の来襲にサッカー場は..

2015年07月29日/ 沖縄防衛局/ 基地返還跡地/ 汚染/ 沖縄市サッカー場/ 沖縄県環境政策/ 日米地位協定/ 環境協定

 台風9号が7月10日、沖縄を襲いましたが、その間に沖縄BDのメンバーがサッカー場を通りかかったところ、元駐車場部分のブルーシートが剥がれた窪地に溜まった水がポンプで吸い上げられ、外にそのまま排水されていたとのことです。


2015年7月10日撮影

ブルーシートが剥がれ、窪地にたまった水をポンプですいあげているのがわかります。ブルーシートは報道で池原市議が指摘しているように、雨水対策のためのものでした。しかし、台風のせいでブルーシートは剥がれ、土壌がむき出しになってしまっています。写真でみるように、水が濁っていますので、たまって排水した水は、雨水のみではないことがわかります。 



 





 








 (左の写真は5月10日、右の写真は5月12日の写真です。ビニールパイプの状態を比較できるように並べてあります。)


(これは後日撮影したものですが、ビニールパイプの排水先です。)
 
 7月13日に沖縄防衛局返還対策課長に電話で聞き取りをしたところ、事前の県、市との3者で決めた対策ではブルーシートが剥がれたらパイプでの汲み出しは止めるということになっていたそうですが、そうなっていなかったようです。
 
 7月13日に、防衛局、県、市で現場視察と3者協議が行われ、16日に沖縄市長から沖縄防衛局に汚染拡散防止対策の要請がされました。市長要請についてはまた別記事にします。
 
 以下は、この件についての報道です。

QAB:沖縄市サッカー場・汚染可能性ある土壌浸水(2015.7.13)



”先週県内を直撃した台風9号は大きな被害をもたらしましたが、こんな心配も出てきました。地中から108本のドラム缶が見つかり、ダイオキシン汚染が発覚した沖縄市のサッカー場では汚染の可能性のある土壌が水に浸かっているのが確認されました。
先週11日に撮影された沖縄市サッカー場。汚染された土壌や水の拡散を防ぐために敷き詰められていたブルーシートが破れたり、ずり落ちたりして土壌がむき出しになっていました。
一方、7月13日の現場では、深さおよそ8メートルの谷間からは溜まった雨水を排水するためのビニールパイプがそばを流れる川に延びているのが確認できます。
11日の写真ではビニールパイプがパンパンに膨れているのがわかります。
この場所では108本のドラム缶が見つかり内容物や土壌がダイオキシン類や、発がん性物質などに汚染されていることがわかっています。
現場を見た沖縄市議会の池原秀明議員は「なぜこのブルーシートを敷いたかというと、雨水対策だと」「汚染土壌が浸水されないようにという防止のために、シートを敷いているということだったんですけど」「今回の台風によって、汚染土壌がむき出しになって、雨水に晒されてきた」と話していました。
県内では今後も、台風の影響などが考えられることから、汚染された土壌や水が広がるのではと心配されています。”

○沖縄タイムス


○琉球新報



  

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沖縄市サッカー場:沖縄市議現地視察で示された懸念 (2015年6月29日)

2015年07月26日/ 沖縄防衛局/ 基地返還跡地/ 汚染/ 沖縄市サッカー場/ 沖縄県環境政策/ 日米地位協定/ 環境協定

 6月29日、沖縄防衛局からドラム缶やたまり水の結果発表があった日に、沖縄市議会の現地視察が防衛局の説明会を兼ねておこなわれました。

 この日、議員からは現場の管理の仕方に懸念の声が挙げられていました。

 ”サッカー場の駐車場付近はおよそ8メートルの深さまで掘削されドラム缶を始め様々な廃棄物が見つかっています。視察した市議会議員からは今の管理の仕方では汚染された土や水が周囲に広がるのではという懸念やより詳細な調査を求める声があがりました。”

 QAB 沖縄市サッカー場 汚染可能性の土処理課題に (2015年6月29日)

 この問題に詳しい池原市議(写真一番右)の指摘です。




琉球新報2015.6.30



 この後、台風により、雨水対策が万全ではなかったのではないかという事態になりました。
 この市議からの指摘にどのように、3者(沖縄県、沖縄市、沖縄防衛局)が対応したのか、問われているところです。
 
 続報は、サッカー場の台風対策の今後の記事に続きます。

沖縄防衛局の配布資料をこちらにあげておきます。
沖縄市(基地に関する調査特別委員会)現地視察資料 
・沖縄市サッカー場に係るこれまでの経緯
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沖縄市(基地に関する調査特別委員会)現地視察資料(添付資料)
・ドラム缶発見位置図
・ドラム缶確認調査実施状況(3次調査)
・普通土及び廃棄物混じり土の仮置き状況
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ちなみにサッカー場の積み上げられている土はこのように仮置きされています。



  

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沖縄市サッカー場:ドラム缶17本、たまり水の調査結果など発表 

2015年07月18日/ 沖縄防衛局/ 基地返還跡地/ 汚染/ 沖縄市サッカー場/ 沖縄県環境政策/ 日米地位協定/ 環境協定

  高濃度で揮発性有機物の検出が先に報告された、ドラム缶17本分の調査結果が、6月29日、沖縄防衛局から発表されました。

  調査結果は沖縄防衛局のウェブにあがっています。
 
旧嘉手納飛行場(26)土木その他工事(平成27年2月に西側駐車場から発掘したドラム缶他関連調査)調査報告書

  以下は報道まとめです。今回は、たまり水の高濃度のダイオキシン類が注目されています。 

◯琉球新報
 





























◯沖縄タイムス
 コメントしました。
 


 




















































沖縄市のサッカー場で大量のドラム缶が見つかり土壌汚染が発覚した問題で29日市議会が現地視察を行いました。これまでに発掘されたドラム缶は108本。現場には汚染の可能性がある土が山のように盛られ、それらをどう処理するかについても課題となっています。現地視察は沖縄市議会が求めたもので市や沖縄防衛局からおよそ50人が参加しました。サッカー場からは2013年6月以降、108本のドラム缶が発掘されていて、ドラム缶の内容物や土壌はダイオキシン類やヒ素、発がん性物質などによる汚染が発覚しています。島袋夏子記者は「ドラム缶が見つかっている沖縄市のサッカー場です。ご覧のようにこの辺りこんな風に変わっています。そしてあちらブルーシートに覆われているのは汚染の可能性がある土だということなんです」とリポートしました。
サッカー場の駐車場付近はおよそ8メートルの深さまで掘削されドラム缶を始め様々な廃棄物が見つかっています。視察した市議会議員からは今の管理の仕方では汚染された土や水が周囲に広がるのではという懸念やより詳細な調査を求める声があがりました。
また現場には大量の汚染の可能性のある土の山も。今後はその処理方法も課題です。沖縄市・桑江市長は「まあこう何とかバッグで包んでいるんで安全だとは言うんですけど、我々からするとやはり不安ですよ。58ですからなるべく早く汚染された土をどっかに持って行ってもらいたいのが正直な気持ちですね」と話します。
沖縄防衛局は108本のうち2015年2月に発見された17本のドラム缶について検査結果を公表しました。全てのドラム缶からダイオキシン類が検出され、さらに枯れ葉剤と同じ245Tと24Dも検出されていますが、「ドラム缶中に枯れ葉剤が存在した証拠は見つからない」としています。この他、周辺のたまり水からは環境基準の1万4000倍から2万1000倍ものダイオキシンが検出されていて、環境団体からは、「枯葉剤は関係ないと事態を収束させようとしていることが問題」と指摘の声が上がっています。


◯NHK沖縄:沖縄市ドラム缶から有害物質
沖縄市のアメリカ軍基地の跡地から見つかった大量のドラム缶からダイオキシンなどの有害物質が検出された問題で、ことし2月に新たに見つかった17本のドラム缶などからもダイオキシンや基準を上回るヒ素などが検出されたことが沖縄防衛局の調査でわかりました。
この問題は、沖縄市のアメリカ軍基地の跡地にあるサッカー場の地中から見つかった大量の古びたドラム缶からダイオキシンなどの有害物質が検出されたもので、沖縄防衛局は、ことし2月、新たに見つかった17本のドラム缶の分析結果を29日公表しました。
それによりますと、17本すべてのドラム缶から、微量のダイオキシンが検出されたほか、一部のドラム缶からは機械の洗浄液などに使われるジクロロメタンや、ヒ素など、複数の有害物質が法律の基準を上回る高い濃度で確認されたということです。
このほか、ドラム缶の周辺にたまった水からも高い濃度のダイオキシンが検出されたということです。
沖縄防衛局は「見つかったドラム缶や水は、すべて回収し、周囲の土壌や地下水の調査でも異常はなく、汚染の拡散は確認されていない」と説明しています。
このサッカー場の地中からはおととし以降、合わせて108本のドラム缶が見つかっていて、防衛局が調査を進めています。
 6月29日 19時19分


◯RBC THE NEWS
「サッカー場ドラム缶 基準値超えるダイオキシンなし」(2015/06/29) リンク切れ
  

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西普天間:利用と汚染浄化に働く力学--沖縄タイムス記事 

2015年06月28日/ 沖縄防衛局/ 基地返還跡地/ 汚染/ 西普天間/ 沖縄市サッカー場/ キャンプ瑞慶覧/ 沖縄県環境政策/ 日米地位協定/ 環境協定

 3月31日に返還された西普天間住宅地区。
 
 返還時には、様々な報道がありました。文化財調査でのドラム缶発見があったため、手放しのお祝いムードの報道とはなっていませんでした。

 その後、沖縄タイムスが利用を急ぐ政治経済的力学に、汚染浄化がおざなりにされる懸念がでているという記事をまとめてくれました。跡地利用の報道では、「利用」と「浄化」を離して報じがちなのですが、利用計画段階での「異例」の完成度にも触れられ、汚染問題が抱える本質的な問題をつく、全体像がわかる記事となっていると思います。
 
 米軍基地跡地、特に汚染の問題は、環境基準値超えなど、センセーショナルな部分がメディアではとりあげられがちなのですが、ローカルの構造的な問題をメディアには、しっかりおさえてもらうことが、重要だと思います。返された土地が、安心して使えるようにするために、私たちがローカルなレベルで何をしなければいけないかを県全体で共有していかなければならないので。



 沖縄・生物多様性市民ネットワークは、沖縄市サッカー場の経験から私が以下のコメントをしています。 
”基地汚染の問題に詳しい沖縄・生物多様性市民ネットワークの河村雅美共同代表も「沖縄の特徴は、米軍の投棄に起因するものが多く、予測もつかない汚染に直面すること」と解説。「米国でも十数年かかっており、沖縄で2~3年の浄化はかなり難しい」とみる。
 加えて、沖縄は「汚染拡散の調査経験値がなく、作業員や住民の安全確保も課題だ」と強調。市民への説明会や意見を聞く機会も予定がなく「市民の声を聞きながら、制度の不備を整えるべきだ」と求めた。”

 市民が汚染調査に関与しはじめたのは、沖縄市のケースからに過ぎません。その少し積んだ経験値を西普天間で生かせるかどうか、市民と沖縄の行政にかかってきていると思います。  

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沖縄市サッカー場:議員配布になると思うけど沖縄市議会への陳情

2015年06月22日/ 沖縄防衛局/ 基地返還跡地/ 汚染/ 沖縄市サッカー場/ 議会陳情/ 沖縄県環境政策/ 日米地位協定/ 環境協定

沖縄市議会に陳情書を出しました。議員配布になると思いますが。

今、沖縄市は監視的役割を担うことについては消極的で、防衛局や県との協議も形骸化(もとからかもしれませんが)しているように見えます。
沖縄市には調査当初の緊張感を再度持ってもらいたいと思います。

それから、調査の目的について、県民を交えて、行政に議論をしなおしてもらいたいです。
ドラム缶の有無、ドラム缶の内容物が環境基準超えか否かだけでなく、汚染の本質の部分--なぜここにドラム缶があるのか、健康、安全、環境を守るにはどうするべきなのか-を捉えていくことが調査の重要な目的だと思います。




 以下、陳情書です。
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 2015年6月13日

沖縄市議会議長 普久原 朝健殿
 
沖縄・生物多様性市民ネットワーク
共同代表/ディレクター 河村 雅美
沖縄県宜野湾市志真志4-24-7 セミナーハウス304
 NPO法人「奥間川流域保護基金」事務所内
 TEL/FAX:098-897-0090 

 
沖縄市サッカー場調査についての陳情

                
 2013年6月の沖縄市諸見里サッカー場で米軍遺棄物と考えられるドラム缶が発掘されてから、沖縄防衛局、沖縄市、沖縄県の3者で調査が実施されてきました。

 2013年6月の予備的調査、10月からの全面調査の過程を経て、現在、調査は汚染範囲の確定といった問題を検証する、新たな段階に入ってきたといえます。
 
 調査分析や専門家の評価により、サッカー場汚染の実態が明らかになり、そこに付随する新たな問題も浮かび上がってきました。

 ドラム缶発見時から、調査を評価してきた環境NGOとして、専門家の知見などをもとに、沖縄市に以下の点を要請いたします。
             
1. 沖縄市は2015年2月に公開された沖縄防衛局の実施したたまり水の調査結果・分析の妥当性について、独自の評価・見解を示すこと。
 今後の調査結果についても同様にすること。


 予備的調査から、全面調査までは、沖縄市の沖縄防衛局へのカウンター調査が実施されており、防衛局調査への監視的役割を市が果たしてきたところもあります。
しかし、2015年2月10日に公開された、たまり水についての沖縄市サッカー場調査結果・分析「旧嘉手納飛行場(26)土壌等確認調査(その2)嘉手納飛行場返還跡地内報告書 平成27年1月 沖縄防衛局調達部/中央開発株式会社」からは、カウンター調査も行われず、第3者意見も出されていません。
沖縄・生物多様性市民ネットワークは、沖縄防衛局のたまり水の調査で、沖縄防衛局が汚染を限定的であるという結論を出していることが問題であることを、3名の専門家の意見をもとに指摘し、関係諸機関で対応することを要求した要請書を2015年3月19日に沖縄市長宛に送付しています[参照:添付文書]。
たまり水のダイオキシン濃度の高さ、雨水等によって埋め立て物(ドラム缶)から異常な濃度のダイオキシン類が持続して溶出していることなどを、専門家は指摘していますが、沖縄防衛局がそのような事実に触れず、結果の矮小化をはかっているようにみえる分析を行っていることは問題であると考えます。
沖縄市は、調査の妥当性について専門家の知見をもとに独自の評価を行い、見解を述べることが必要だと考えます。市当局でできない場合は、外部委託し、第3者の意見を持って、防衛局の調査を評価するべきだと思います。

2. 沖縄防衛局、沖縄県との協議の形骸化が、沖縄防衛局の協議なき入札(2015.5.1)で明らかになっている。協議を、調査設計などを3者で話し合う実質的な場とする具体的な政策を検討すること。
 また、市民に協議の内容を公開すること。


 沖縄防衛局の2015年5月1日のドラム缶調査の入札は、沖縄市も知り得ることなく行われ、調査設計など、3者の協議が形骸化していることが明らかになっています。
 協議を実質的なものとするために沖縄市は対策をとることが必要です。また、市民に協議の内容を公開し、それぞれの機関が責任を果たしているかどうかを、チェックする体制にすることが必要だと考えます。

3. 沖縄県と汚染の本質的な原因究明(米軍投棄以後からドラム缶発見までの経緯)を行うこと。

なぜこのサッカー場に100 本以上のドラム缶が埋め立てられて、長期間存在し、異常な濃度のダイオキシン類が持続して溶出することに至ったのか、その原因を究明してください。
 沖縄市の聞き取りによって得られた米軍人の埋設(1964年)以降の事実が確認されていないことは重要視すべきであると考えます。地歴調査からみると、サッカー場整備時にドラム缶が見逃され、業者などが埋め戻しをしている可能性は強く示唆されると思います。過去の汚染、汚染経路、作業員などの被曝の可能性の洗い出しも含め、本格的な調査を沖縄県と共同で行い、県内にこのような事例がないか、なぜこのようなことが起こってしまったのか、またこのような再開発での汚染等の発覚にいかに対処するかを検討することが必要です。 

4. 掘削の影響についての調査・分析を防衛局と沖縄県と沖縄市で協議の上実施し、排水口で検出されているダイオキシン類の発生源について結論を出すこと。
 
2月10日に公開された報告書では、ドラム缶発掘工事の影響でダイオキシン類が移動し、排水口で検出されていることが確認されています。環境基準値以下であるということで、防衛局は軽視していますが、汚染の影響を検証するために、ダイオキシン類の移動の経路、掘削の影響については、把握する必要があると考えます。
掘削の影響については、これまでの掘削方法の妥当性についても検証して下さい。

5. 作業員の安全確保を徹底すること。
 
 3月23日の中間報告発表では、ドラム缶から、これまでには検出されなかった高濃度の揮発性有機化合物も検出されたことが確認されています。どのような汚染物質が検出されるかわからない状態での作業において、あらゆる可能性を考慮して作業員の安全性を確保することが必要です。調査の仕様に作業員の安全項目も含めるなど、具体的な方策を、沖縄県と共同で沖縄防衛局に要求し、沖縄市としても行政として可能な方策を検討してください。

6. 掘削物の養生について検証し、対応策をとること。
 
 掘削物の養生方法について、市民から不安の声が届いています。沖縄防衛局の説明も、養生方法についての根拠が明確に述べられていません。沖縄市は地域への責任もあることからも、これまでの養生方法が適当な方法であったかなどを検証して沖縄防衛局と協議し、今後の対策を検討してください。

7. 説明会を実施すること。

 ドラム缶発掘から2年が経過しているにもかかわらず、予備的調査後、教育委員会が実施した説明会以後、全く説明会が開催されていません。メディアの情報だけでは不十分であり、調査実施者から直接説明をする場、そして市民とのコミュニケーションの場が必要です。
 沖縄防衛局と沖縄県と協議し、質疑応答の時間を十分にとった説明会を、合同で、あるいは沖縄市単独であっても、早急に実施してください。
 また、今後の調査スケジュールについても、防衛局と協議した際は、市民に公開・説明してください。

8. 市民等へのヒアリングを実施すること。
 
 揮発性有機化合物が検出された際、沖縄タイムス(2015.3.24)の記事では市民の怒りと不安の声が取り上げられています。
 市民が、このサッカー場汚染についてどう考えているか、市民から市への要望は何か、過去も遡って、健康被害を受けていないかなどのヒアリングをする必要があると考えます。

9. 浄化・利用についての決定過程について検討すること

 防衛大臣はサッカー場としての利用ということを想定して発言していますが、安全宣言、浄化方法の決定、サッカー場として利用するのかどうか、についての決定過程は明らかになっていません。
 十分な市民参加の上、政治的決着ではなく、安全性を確保した納得した決定となるような意思決定プロセスを今から検討してください。

                                   
以上

  

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沖縄市サッカー場:沖縄市から市議への説明(2015.6.3)

2015年06月22日/ 沖縄防衛局/ 基地返還跡地/ 汚染/ 沖縄市サッカー場/ 沖縄県環境政策/ 日米地位協定/ 環境協定

 記録としての記事です。 
 
 サッカー場の調査について、沖縄市から市議への説明が6月3日にあったとのことです。その記録と資料をあげておきます。
   
8本のドラム缶の説明です。







初めて、サッカー場部分においてある土の説明と、今後の計画に触れていますね。




  

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沖縄市サッカー場:記事翻訳----嘉手納基地の汚染調査報告問題

2015年06月12日/ 沖縄防衛局/ 基地返還跡地/ 汚染/ 沖縄市サッカー場/ 沖縄県環境政策/ 日米地位協定/ 環境協定

沖縄市サッカー場の汚染調査報告は、ジョン・ミッチェルやエージェント・オレンジのサバイバー、ヘザー・バウザーさんの報道により嘉手納空軍基地内の人々が知ることになりました。そのため、嘉手納基地は、嘉手納基地内の人々向けにサッカー場の調査について、英語のアナウンスを出すようになりました。
 →Okinawa City Soccer Field Excavation
 
 このアナウンスには問題があるので、私たちは嘉手納基地に問題点を指摘する手紙を出しました。嘉手納基地の人々に正確な情報を知らせるためでもあります。Letter to Kadena Air Base from Okinawa environmental NGO「沖縄市サッカー場調査・評価プロジェクト」2nd ラウンド:嘉手納基地への手紙

 その後も沖縄防衛局の調査結果がでると、嘉手納空軍基地も続けてアナウンスを出しています。たまり水、VOCの調査報告の件でも出していますが、2014年の報告書が公開された時のようなアナウンスにもなっていません。報告書の概要の翻訳をつけず、一次データの数字も出しておらず、簡単なアナウンスの手紙で終わらせるようになりました。また、沖縄県、防衛局との情報共有や安全宣言の協力体制の描写も、沖縄県に確認したところ、嘉手納基地の手紙は、正確なものではありませんでした。
 安易な安全宣言をしてしまっていることが、何よりも問題です。


嘉手納基地の2月11日の手紙

 
 海外でサッカー場を注視している人も増えているので、アップデートの意味も含め、Okinawa Outreachに”Okinawa Defense Bureau's Report on Okinawa City Soccer Field Raises Questions(沖縄防衛局の沖縄市サッカー場汚染調査の報告に疑問)”の記事を書きました。
 


 その翻訳をこちらに掲載します。多くは日本語で既出の情報ですが、嘉手納基地のアナウンスの問題指摘は初出ですので、その部分を抜き出しておきます。
 
”1. 嘉手納基地は沖縄防衛局のたまり水の調査に関する詳細についての情報をほとんど提供していない。
嘉手納基地が、沖縄防衛局のたまり水についての報告の、重要な一次資料をお知らせの中に入れていないので、嘉手納基地のコミュニティはサッカー場で採取されたたまり水が高濃度のダイオキシンで汚染されていたことは知らされていない。このような重要な情報を省くことは、嘉手納コミュニティをミスリードし、安全に関する誤った感覚を持たせ、嘉手納基地のお知らせの信用性に疑義が持たれることになってしまう。嘉手納基地は防衛局の一次資料も提供するべきである。

2. 嘉手納基地は大気についての自らの調査の詳細についての情報をほとんど提供していない。
嘉手納基地が自ら行っている大気の調査に関して、嘉手納基地は「サンプルは、サッカー場掘削地から大気を通じて物質が動いていることはないことを示している」と記している。嘉手納基地はこの主張の裏付けとなる一次データや分析を提供していない。また、「物質」がなんであるかも言及していない。このような情報を省略することは、嘉手納コミュニティと私たちから嘉手納基地の調査が適切に実施されたのか、分析が正確か否かをチェックする機会を奪うこととなる。嘉手納基地のコミュニティは嘉手納基地の調査を精査する公式報告書を公開することを要求すべきである。

3.嘉手納基地の防衛局と沖縄県との連携関係の描写は不正確である。
嘉手納基地のお知らせでは、嘉手納基地は沖縄防衛局と沖縄県の連携を「嘉手納の健康と環境の専門家は、各報告書に関してお互いの理解を確かめあうために、この結果の話し合いを継続している」と描写している。しかし、沖縄県によると、嘉手納基地はこれらの結果について、第2ラウンドの報告書が公開された時のように報告を話し合う会合は開いていない。この描写はミスリードである。

嘉手納基地のお知らせの問題に加え、ボブ・ホープ小学校とアメリアイヤーハート中学校側の発掘現場の方に防塵ネットがないことを懸念している。沖縄市の要望によって、沖縄防衛局は発掘現場の外へ粉塵が出ないように防塵ネットを道路側に設置した。私たちは粉塵ネットが必要なのかどうかはわからない。嘉手納基地はこの問題を沖縄防衛局と話し合い、嘉手納コミュニティに説明するべきである。”

 
 この記事が影響を持たなくとも、防衛局の調査が結果を矮小化していること、その調査についてのさらに不完全な情報がフェンスを超えて基地内に伝わっていること、そして私たちはそれを伝えようとしたこと、は残しておきたいと思いました。

----------------------------以下、記事の翻訳です。
Okinawa Defense Bureau's Report on Okinawa City Soccer Field Raises Questions
沖縄防衛局の沖縄市サッカー場汚染調査の報告に疑問

2015年2月10日、沖縄防衛局は沖縄市サッカー場調査報告の報告書を新たに公開した。沖縄防衛局の報告書はフェンスの向こうに届けられた—嘉手納空軍基地に基地内コミュニティの安全宣言のために用いられたのだ。しかし、3人の専門家は「たまり水」の調査結果を矮小化していると主張し、防衛局のさらなる分析と調査を提案している。

背景
2013年6月、26本のドラム缶—ダウ・ケミカルの印章つきのものもあった—が米軍基地跡地の沖縄市サッカー場で発見された。この発見により、沖縄防衛局、沖縄県、沖縄市はドラム缶や周辺土壌の調査に着手した。現在まで、100本以上のドラム缶が発見され、追加調査が実施されている。

これまで実施されている調査は、3ラウンドに分けることができる。第一ラウンドに2013年6月に第1ラウンドに開始され、26本のドラム缶に焦点が当てられた[訳注:調査対象は埋め戻ししていない22本のドラム缶]。
沖縄市議、NGO、沖縄県民のプレッシャーで、沖縄防衛局のサッカー場全面調査が実施されることとなり、調査の第2ラウンドが2013年10月から始まった。それは、磁気探査や地元住民への聞き取りを含むものであった。発掘されたドラム缶の数は83にのぼった。沖縄市は沖縄防衛局の調査をクロスチェックし、サッカー場の汚染はPCP,PCB、ヒ素、フッ素を含む「複合汚染」として理解される必要があると結論づけた。3人の専門家はサッカー場に「枯れ葉剤成分を含む除草剤」が過去に存在したと述べている。

調査の第3ラウンド
2014年10月に開始された第3ラウンドは、新たな方向に一歩踏み出したものであった。第2ラウンドまでは、調査はドラム缶の内容物と周辺土壌の汚染の分析に焦点が置かれていた。第3ラウンドでは焦点はダイオキシン汚染の範囲の決定に置かれた。そのため、沖縄防衛局は昨年10月、83のドラム缶が発掘された周囲の4箇所からたまり水の検体を採取した。たまり水は、ドラム缶が掘り出された土壌から滲みだし、窪地に溜まったものである。

2月10日、沖縄防衛局はたまり水の調査の分析についての報告書を公開し、汚染範囲は限定的であるという結論を出した。

沖縄防衛局の報告書に対する専門家意見
たまり水に関する沖縄防衛局の調査と報告書の評価を行うため、沖縄・生物多様性市民ネットワーク(沖縄BD)は、3名の専門家にコンタクトし、沖縄防衛局の報告書に意見書を依頼した。3名の専門家全てが、沖縄防衛局は調査結果とダイオキシン汚染の範囲について矮小化していると主張した。沖縄BDは3月12日記者会見を行い、専門家意見を発表した。また、沖縄BDは沖縄防衛局と関係4機関にその意見書を送付し、専門家意見を精査し議論するように要請した。

以下が専門家意見の要約である。
1. ダイオキシンの著名な専門家宮田秀明氏は、沖縄防衛局の報告書を精査した。たまり水のダイオキシンの状態についてのデータに焦点を当てている。

宮田氏はたまり水は高濃度のダイオキシンで汚染されていると指摘した。未ろ過のたまり水では170pg/TEQ/Lのダイオキシンが検出され(環境基準値の170倍)、ろ過後は33pt-TEQ/Lのダイオキシンが検出された(環境基準値の33倍)。
宮田氏はまた、これらのダイオキシンが粒子状ではなく、溶存体の状態で存在していることを示した。宮田氏によれば、これは高濃度のダイオキシンがドラム缶から雨水などにより長期間滲出し続けていることを意味している。沖縄防衛局の調査報告書はそれについて言及しておらず、ドラム缶からのダイオキシンの滲出の可能性についての評価もしていない。

また、宮田氏は沖縄防衛局の報告の中でダイオキシンの異性体分析を含むいくつかの分析が妥当でないことも指摘している。これは沖縄防衛局の報告書が、汚染の原因の正確な評価を行っていないことを示唆している。

2. ダイオキシン汚染の専門家池田こみち氏は、沖縄防衛局と沖縄県はサッカー場の排水口の排水からダイオキシンが検出されたことについて深刻に注意を払うべきであると主張している。排水から検出されたダイオキシン3pgTEQ/Lは、環境基準値(10pg TEQ/L)を下回っているが、沖縄防衛局はこの問題に慎重に取り組むべきであったと述べている。ダイオキシンは工業施設や産廃処理施設ではなく、子どもたちが遊んだ/遊ぶサッカー場で検出されたからである。

池田氏はまた、たまり水の、最強ダイオキシン2,3,7,8-TCDDの割合の15%は決して低い数字ではなく、沖縄防衛局と沖縄県はこの結果を軽視するべきではないと強調した。

また、沖縄防衛局は排水のダイオキシンの汚染源を特定していないと、池田氏は指摘している。沖縄防衛局の報告書では沖縄防衛局は排水で検出されたダイオキシンのデータを時系列で分析し、排水のダイオキシンの存在が2014年1月から2月に行われた沖縄防衛局の掘削の影響によるものであることを認めている。ドラム缶の掘削によって、ダイオキシンが排水に異動したことを言及している一方で、沖縄防衛局は排水のダイオキシンの汚染源について論じておらず、ダイオキシンが排水に動いた経路を検証していない。

池田氏と宮田氏は、なぜダイオキシンが排水に存在していたかを特定する調査が次の調査課題であると述べている。

3.カリフォルニアマーチ空軍基地の環境浄化プログラムに従事していた地質学者の國吉信義氏は、地下水を通じての汚染の範囲が限定的だという沖縄防衛局の調査結果の評価と、ドラム缶が発見されたシルト層と直下の粘土層が非浸透性であり、ダイオキシンを含む地下水が下に動いて地層に拡がる可能性は小さいとしているその理由付けに疑問を呈している。

國吉氏はシルト粘土は全くの非浸透性ではなく、地下水は粘土のないところまでシルト質地層をゆっくり横に動くであろうと指摘した。水が粘土層まで達したら、粘土のないところまで行くまで横に動き、次は下に動くだろう。故に、國吉氏は沖縄防衛局は地下水分布図と嘉手納帯水層の図を用いて汚染範囲を決定し、説明するべきであると主張している。

嘉手納空軍基地の軍へのコミュニティへのお知らせについて
沖縄防衛局の2月の報告書公開後、嘉手納空軍基地は「嘉手納基地、沖縄防衛局、沖縄県の専門家は、掘削地から発生する地元の人々への健康に対するリスクはない; 私たちの子供たちは安全です」とコミュニティに保証するお知らせを同サイトで出した。

しかし沖縄BDは、2014年10月に嘉手納基地への手紙で既に伝えた時のように、嘉手納基地は正確、十分かつ透明性のある情報をコミュニティに提供するべきであると、再度言わざるをえない。

今回は、嘉手納基地のお知らせは以下のような問題があると考えている。

1. 嘉手納基地は沖縄防衛局のたまり水の調査に関する詳細についての情報をほとんど提供していない。

嘉手納基地が、沖縄防衛局のたまり水についての報告の、重要な一次資料をお知らせの中に入れていないので、嘉手納基地のコミュニティはサッカー場で採取されたたまり水が高濃度のダイオキシンで汚染されていたことは知らされていない。このような重要な情報を省くことは、嘉手納コミュニティをミスリードし、安全に関する誤った感覚を持たせ、嘉手納基地のお知らせの信用性に疑義が持たれることになってしまう。嘉手納基地は防衛局の一次資料も提供するべきである。

2. 嘉手納基地は大気についての自らの調査の詳細についての情報をほとんど提供していない。

嘉手納基地が自ら行っている大気の調査に関して、嘉手納基地は「サンプルは、サッカー場掘削地から大気を通じて物質が動いていることはないことを示している」と記している。嘉手納基地はこの主張の裏付けとなる一次データや分析を提供していない。また、「物質」がなんであるかも言及していない。このような情報を省略することは、嘉手納コミュニティと私たちから嘉手納基地の調査が適切に実施されたのか、分析が正確か否かをチェックする機会を奪うこととなる。嘉手納基地のコミュニティは嘉手納基地の調査を精査する公式報告書を公開することを要求すべきである。

3.嘉手納基地の防衛局と沖縄県との連携関係の描写は不正確である。

嘉手納基地のお知らせでは、嘉手納基地は沖縄防衛局と沖縄県の連携を「嘉手納の健康と環境の専門家は、各報告書に関してお互いの理解を確かめあうために、この結果の話し合いを継続している」と描写している。しかし、沖縄県によると、嘉手納基地はこれらの結果について、第2ラウンドの報告書が公開された時のように報告を話し合う会合は開いていない。この描写はミスリードである。

嘉手納基地のお知らせの問題に加え、ボブ・ホープ小学校とアメリアイヤーハート中学校側の発掘現場の方に防塵ネットがないことを懸念している。沖縄市の要望によって、沖縄防衛局は発掘現場の外へ粉塵が出ないように防塵ネットを道路側に設置した。私たちは粉塵ネットが必要なのかどうかはわからない。嘉手納基地はこの問題を沖縄防衛局と話し合い、嘉手納コミュニティに説明するべきである。

他のドラム缶から揮発性有機化合物が検出
3月23日、沖縄防衛局は、2月に発掘された17缶のドラム缶の調査の中間報告を公表した。この報告書はPCE、TCEも含む揮発性有機化合物(VOC)がドラム缶から検出されたことを示している。
特筆すべきは、ドラム缶の内容物の一つから9100mg/Lのジクロロメタンが検出され、土対法における環境基準の46000倍の値であったことである。VOCについての防衛局の調査についての記事はまたアップロード予定である。

河村雅美 (博士)
沖縄・生物多様性市民ネットワーク
ディレクター/共同代表 

(翻訳:河村雅美) 
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英文は以下です。  続きを読む

Posted by 沖縄BD at 16:18Comments(0)

沖縄市サッカー場:ドラム缶発見で沖縄市から市議へ説明

2015年05月28日/ 沖縄防衛局/ 基地返還跡地/ 汚染/ 沖縄市サッカー場/ 沖縄県環境政策/ 日米地位協定/ 環境協定

 5/1の沖縄防衛局の入札公告がでていることをブログの記事でお知らせしましたが、その後、沖縄タイムスの取材(記事は下に貼り付け)で、防衛局がドラム缶を数本発見していることが明らかにされています。
 
 その報道を受け(その報道で知り、といったほうが正確ですが)、5月12日、沖縄市が沖縄防衛局から受けている説明を、臨時会の後、市議に行ったということです。
 記事では数本となっていますが、この説明では8本と説明されたのこと。経層探査は7.5メートルまで実施するが、現在は6.5メートルまでの実施であり、終了後、防衛局から報告を受けるということが市から報告されたとのことです。
 防衛局と県と市の協議、進捗状況の情報共有について、以前よりも緊張感がない状態ではないでしょうか。
 これは防衛局がメディアリリースをして、そこでこの問題が盛り上がり、その後はまたリリースを待つ、というこの問題の展開の仕方に起因することかもしれません。この点(リリース)と点を結ぶ線の部分にもっと目を向けなければならないと思います。

 それから、私も防衛局で同じ対応を受けていますが、「枯れ葉剤の存在を示唆するものは確認されていない」という対応は問題です。
 調査は枯れ葉剤の存在の有無を確認するために行われているわけではない、ということは、調査の実施者や市民と、確認する必要があります。
 
 汚染問題が一つの場所でこれだけ長く展開し続けるのも、沖縄の経験としては初のことです。NGOとしても経験値が浅く、海外の例を活かすのも文脈的に非常に難しいところがありますが、そこで見えてきたことを一つ一つ記録していくことはしていくつもりです。

 写真も何枚か共有されていました。
 






 



































沖縄市の説明は以下のとおりです。



沖縄タイムスの報道は以下のとおりでした。









  

Posted by 沖縄BD at 12:15Comments(0)

沖縄市サッカー場:ドラム缶でてるみたいです

2015年05月07日/ 沖縄防衛局/ 基地返還跡地/ 汚染/ 沖縄市サッカー場/ 日米地位協定

 連休前の5/1、沖縄防衛局の入札ページに新しい調査の入札公告がでていました。

5月7日、返還対策課に確認したところ、100本の発見以降もドラム缶は発見されているとのことです。この公告の検体の数字は、まだ調査途中であるため、幅を持たせての数字で、この入札公告の検体数が発見されたドラム缶の数ではないとのことです。続報はまた後日。




最近のサッカー場の様子です。上はピッチ、下は駐車場側。


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Posted by 沖縄BD at 23:21Comments(0)

沖縄県の実施する「周辺環境調査」の問題:これはレポートではない

2015年05月01日/ 沖縄防衛局/ 基地返還跡地/ 汚染/ 沖縄市サッカー場/ 沖縄県環境政策

 沖縄市サッカー場の調査では、ドラム缶の高濃度のダイオキシン汚染が発覚したため、ドラム缶の付着物の調査内容や、その調査を実施する沖縄防衛局に目が向けられがちです。
 そのため、沖縄県が周辺環境調査という名前で嘉手納基地内の井戸水や、暗渠排水などの水の調査を実施していることは、あまり着目されていません。
 
 しかし、専門家からは、沖縄市サッカー場周辺環境調査という名前で実施されている沖縄県の調査にも以前から、問題が指摘されています。
    
 今回の記事では、その専門家の意見をもとに、調査自体だけでなく、調査の報告の仕方にも射程を拡げ、沖縄県の調査への姿勢という本質的な問題も記しておきたいと思います。




 現在の沖縄県の周辺環境調査調査結果は以下のとおりです。2013年6月25日からの調査が掲載されています。昨年度から、時系列でまとめて掲載するようになったことは評価できるとおもいます。
沖縄県環境保全課HP 「沖縄市サッカー場周辺環境調査の結果について(お知らせ)」

 1.平成27年2月18日、20日実施分
   調査地点:大道川河口底質、嘉手納基地内井戸水
   調査結果:別表のとおり(PDF:106KB)

2.平成27年2月20日実施分
  調査地点:嘉手納基地内井戸水
  調査結果:別表のとおり(PDF:514KB)

3.平成26年7月9日実施分
  調査地点:サッカー場暗きょ排水からの排出水
  調査結果:別表のとおり(PDF:117KB)

4.平成26年3月13日実施分
  調査地点:サッカー場暗きょ排水からの排出水
  調査結果:別表のとおり(PDF:464KB)

5.平成26年2月5日、7日及び19日実施分
  調査地点:サッカー場暗きょ排水からの排出水、嘉手納基地内井戸水、大道川河口底質
  調査結果:別表のとおり(PDF:568KB)

6.平成25年10月23日実施分
  調査地点:サッカー場暗きょ排水からの排出水
  調査結果:別表のとおり(PDF:569KB)

7.平成25年6月25日実施分
  調査地点:サッカー場周辺運動公園、嘉手納基地内井戸水、大道川河口底質
  調査結果:別表のとおり(PDF:1,424KB)
 

沖縄県の調査については、これまで、池田こみちさん(『嘉手納基地返還跡地(沖縄市サッカー場)ドラム缶発掘追加調査に関する意見書』、意見書の記事はこちらのpp.25ー28)と國吉信義さんから意見をいただいていますので、整理してみました。

総じて「おざなり」「お粗末」な調査
 まず、沖縄県の周辺環境調査の全体としての評価は厳しいものになっています。池田さんは「総じて沖縄県の周辺環境調査は、極めておざなりなものであり、地域住民に安心材料を与えるには不十分と言わざるを得ない。」(意見書p28)、國吉さんも「沖縄県は独自に地下水や排水の水質調査をしたとあるが、その調査はお粗末である」(筆者へのメールでのコメント)と、2人の専門家に調査の質の低さが指摘されています(太字は引用者)。

調査内容の問題点
 調査の内容について、池田さんは、問題点を以下のように、指摘しています。調査地点についてはポイントが少ないことを指摘し、実施時期、頻度についてもそれが果たして適当なものであるか、疑問を投げかけています。
”(5)沖縄県の調査の問題点
以上、沖縄県による周辺環境調査結果を概括した結果、次のような課題が浮かび上がった。
(ア) 調査地点について
今回の調査では、周辺環境調査といいながら、地下水は運動公園内が2カ所、嘉手納基地内が2カ所と極めて調査ポイントが少ない。その理由について沖縄県環境部環境保全課水環境・赤土対策班に確認したところ、地下水については、調査のための観測井戸を設置した訳ではなく、既存の井戸あるいは湧き水のあるところから採取したため、地点が限られたとのことだった。周辺環境調査として十分な調査地点数であったかどうか課題が残る。
(イ) 調査実施時期について
調査実施時期については、ドラム缶の掘削前と掘削後に行いその変化を見るのが調査の目的からして妥当な方法であると思われるが、今回の試料採取の時期は必ずしもドラム缶掘削作業の進捗と対応したものではなく、作業による影響を把握するという目的からして適当かどうかという問題がある。なぜその日を試料採取日として選定したかについての説明がないのは問題である。
(ウ) 調査頻度について
地下水の測定について、運動公園が1回だけとなっている理由を確認したところ、結果が問題なかったからとの回答であったが、地下水は季節によってまた気象によっても変動を受けるため、1回の調査で問題がなかったからとして調査を終えるのは、今回の調査の目的からして妥当ではない。”(pp.27-28)(太字は池田さんによるもの)

國吉さんも、「調査の目的、方法、サンプル地点、結果の比較分析、結論など不十分である。」と述べていました(筆者へのコメント)。

不十分な解析
調査結果の解析についても、池田さんは問題を指摘しています。

1).暗渠排水の調査結果からの踏み込んだ解析が必要
 排水口で、サッカー場という場所としてはダイオキシン類が高い値を示したこと、沖縄防衛局のたまり水の調査でも明らかになった掘削工事の排 水への影響などについて、池田さんは、より踏み込んだ解析が必要であったという指摘をしています。

(エ) サッカー場の暗渠排水の調査について
東西2カ所の排水を調査しているが、西側が4回、東側が2回の調査となった理由が説明されていない。
サッカー場暗渠排水(西側)の調査で、3回目の調査の際に、ダイオキシン類の濃度が3.9pg-TEQ/Lと前2回の調査結果(0.26pg-TEQ/Lと0.95pg-TEQ/L)から大幅に上昇している。排水基準(10pg-TEQ/L)はクリアしているが、サッカー場は、いわゆるダイオキシン類の排水基準が適用されるような施設ではないため、3.9pg-TEQ/Lや3.1pg-TEQ/Lといった高い値が検出されたことに対する解析評価が行われなければならない。ドラム缶付着物やドラム缶底面土壌からは、高濃度のダイオキシンが検出されていることから、掘削作業に伴ってその影響が暗渠排水にも及んだ可能性もあることから、より踏み込んだ解析が必要であったと思われる。
暗渠排水の配水管の敷設状況やネットワークなどを確認し、ダイオキシン類の分析結果と併せて解析する必要があったのではないか。また、ドラム缶掘削場所との位置関係なども明らかにする必要がある。(p.28)

 この件は、沖縄防衛局のたまり水の報告書で報告されていることと関係があります(ブログ記事:「沖縄市サッカー場:ドラム缶たまり水専門家意見2)池田こみち①排水口のダイオキシン」参照)。沖縄防衛局は、沖縄県のデータを用い、掘削の影響が排水に及んでいることを認めています。また、たまり水と排水のダイオキシン類の関係はないことと、排水でのダイオキシン類の値は環境基準値以下であることで幕引きをしようとしています。
 沖縄県のデータを用いた沖縄防衛局のこの評価が妥当であるかどうかについて、沖縄県は踏み込んだ解析を行い、自らの見解を示すべきだと思います。

2)調査全体を通じての解析がない
 これは、1)で指摘されていることと重なりますが、沖縄県は、調査1回ごとには、一応の評価はしていても、それをつなぎあわせ、総合的にみる評価はしていません(池田さんには、「これらは、いずれも調査ごとの解析・評価であり、調査全体を通じての解析は行われていない。」と指摘されています)。
 1)を解決することにより、2)の問題に部分的に応えることになります。定点観測の意味は1回ごとの評価だけではなく、時間的経過の中でそれを分析することです。調査全体の、科学的裏付けのある解析が必要であるにも関わらず、それがされていないということです。

調査の報告・記述の方法の問題
 沖縄県の調査・報告はそれを市民に伝える方法にも問題があります。これは往々にして、調査設計の問題であることもあります。

 國吉信義さんは、この沖縄県の調査報告をみて、「これはニュースリリースに過ぎず、レポートになっていない。」とおっしゃっていました。
 調査は、科学的な手法で実施されるべきもので、それがわかるように報告されなければならないものです。

 調査を報告するならば、まず、その調査の目的、その目的を達するための調査手段、調査の場所、手順などを、それについてのそれぞれの必然性(なぜこの方法なのか、なぜこの調査場所を設定したのか)とともに、説明する必要があります。そして、実施過程の記述、結論、考察、考察に至る学術的知見は何か、などを明確に示す必要があります。それが科学的レポートの基本要件です。
 
 國吉さんは、前回紹介したコメントで、「まず、運動公園内の地下水採取の場所、ドラム缶発掘場所との位置関係、井戸から採取したのか、井戸の深さや水位、井戸のスクリーンの位置、過去にも採取して調べたのか、など知りたいです。」とコメントされています。科学的なレポートであればそれがわかりやすく書いてあるはずのものです。

 先述の池田さんの指摘の中でも、池田さんが不明な点を沖縄県に問い合わせていることがわかりますが、それは問い合わせなくても書かれていて然るべきものです。

 考察についても、記述が不完全です。暗渠排水のpH値が10を上回る強度なアルカリ性を示し、排水基準(5.8~8.6)の範囲外であった原因についての考察「人工芝の張り替え工事に伴い、グランドに再生クラッシャーRC(再生路盤材)を使用したことからその影響によるものと考えられる」は、どのような可能性があるかの言及もなく、考察の裏付けとなる科学的知見も示されていません。

 これは「レポート」にはなっていない、という國吉さんのコメントが意味していることは、このようなことで理解できると思います。
 
 また、市民が理解できるようにわかりやすい報告にすることも大切です。米国では、難しい内容を市民向けにわかりやすく書くライターを雇って報告書をつくっています。沖縄防衛局の報告書にも要求すべきことですのでこの部分は、稿を改めることとしたいと思います。

 ところで沖縄県は、サッカー場の件から基地特別対策室を設立し(一括交付金事業の3年計画)、外国でたくさん資料を集めているようです。そこではこのような市民への質の高い報告書も収集されていることでしょう。
 対策室で蓄えている知識は、すぐに現場に反映してもらいたいと思います。
 
 米国では、汚染や浄化に関わる調査や資料をだれでもアクセスできるようにしています。私たちもそのようなものを参考にし、海外の人にも聞きながら文書を読んだりしています。
 こちら↓は、Fort Ordという元陸軍施設の浄化プロセスで市民向けに作られた地下水についての資料です。「地下水」とはなにか、の定義から説明されており、地下水の概念図もビジュアルに示されています。
 将来、防衛局へ提示するガイドラインやカルテも必要ですが、今行っている調査で、市民に向けてどう、科学的知見に根ざした説得力のある生きた調査、報告ができるかということを、沖縄県は考えてもらいたいと思います。県民が期待しているのはその部分です。


 
こちらのPDFでみることができます。
http://docs.fortordcleanup.com/ar_pdfs/factsheets/03-09/FINAL%20FS-03-09%20FINAL%20Fact%20Sheet%20Fort%20Ord%20GW%20Overview%20v3FEB15.pdf

  

Posted by 沖縄BD at 23:43Comments(0)

沖縄市サッカー場:17本のドラム缶から新たに有害物質検出の発表と報道

2015年04月19日/ 沖縄防衛局/ 基地返還跡地/ 汚染/ 沖縄市サッカー場/ 沖縄県環境政策/ 日米地位協定/ 環境協定

 3月23日、沖縄防衛局は「 嘉手納飛行場返還跡地内(現沖縄市サッカー場)において2月6日から2月19日までの間 で発見されたドラム缶(17本)の付着物や底面土壌等について(中間報告)」[2015.03.23]を発表しました。

 
目が...

http://www.mod.go.jp/rdb/okinawa/07oshirase/kanri/kanri-info/270323okinawashisakkadoramu.pdfより抜粋
 
その報道を下にまとめました。

報道は、下にみられるとおり、基準値のとり方による混乱がありましたが、その件については、報道の中でもコメントくださった池田こみちさんがブログ記事で説明してくださっています。この記事には、発見された有害物質についての説明もありますので、リンクをたどってみてください。

沖縄の基地返還跡地で 今度は高濃度のVOC汚染発覚 池田こみち(環境総合研究所 顧問)(2015.3.25)
"・・・注意を要するのは、①のドラム缶付着物については、評価を廃掃法に基づく産廃の埋立基準を用いて判定し、②の底面土壌については、土対法(土壌汚染対策法)の特定有害物質の溶出基準を用いている点である。そのため、この発表を受けて翌24日の各紙の記事では、基準値の何倍かについて取り上げ方が分かれて読者の間に混乱が広がった。
 琉球新報は、①についても土対法に準拠し45万倍としたのに対し、沖縄タイムスは①は廃棄物なので4万5500倍とした。それぞれ間違いではないが、発見された場所がこれまで同様、嘉手納基地返還跡地で沖縄市がサッカー場として整備している場所であること、また、ドラム缶付着物といっても数十年前に埋められたものが掘り起こされた結果明らかになった物であり、付着物とそれが周辺にこぼれ落ちた土壌との明確な区分が出来ないことから判断し、より安全側にたった評価を行うことが今後の対策の検討の上からも望ましい。
 環境基準や判定基準はあくまでも汚染のレベルを判断し、行政上の判断、措置等を検討するためのものであり、住民にとっては廃棄物であれ、土壌であれ高濃度の汚染が、由々しくも、子どもたちが走り回るサッカー場で発見されたという事実である。”
  
 ここにあるとおり、ドラム缶付着物と底面土壌が別の基準でとられています。それについては、調査の目的が何なのか、汚染の実態を踏まえ、議論の必要があると思われます。
 防衛局の発表内容については、他にも問題がありますので、これはリリースを聞くメディアへの意識喚起も含め、改めて問題化したいと思います。

◯沖縄タイムス


こちらは沖縄市の声を拾っています。


◯琉球新報




◯QAB サッカー場ドラム缶に極めて濃度の高い有害物質 (2015.3.23)
"沖縄市のサッカー場で地中から発見されたドラム缶について、沖縄防衛局は、きわめて濃度の高い揮発性の有害物質が新たに検出されたと発表しました。
沖縄市のサッカー場では先月新たに17本のドラム缶が発掘され、沖縄防衛局がこのドラム缶の付着物や土壌を調査していました。
その結果、このうち地表面から3.2メートルの地点にあったドラム缶の下の土壌から、揮発性の有害物質ジクロロメタンが1リットルあたり100ミリグラム、環境基準値の5000倍という非常に高い濃度で検出されました。
沖縄防衛局では25日にも、より深い部分の土壌の調査を再開しますが、すべての調査結果が出るには半年以上かかる見通しで、その間、掘り起こした土は飛散防止の処置をしたうえでサッカー場に仮置きする状態が続くということです。"
  

Posted by 沖縄BD at 21:50Comments(0)

沖縄市サッカー場調査結果に対する専門家意見について (要請文)

2015年04月19日/ 沖縄防衛局/ 基地返還跡地/ 汚染/ 沖縄市サッカー場/ 沖縄県環境政策/ 環境協定

 たまり水の調査報告に関する専門家の意見を踏まえ、3月19日に要請文を関係機関に送付しました。



---------------------------------------------------------------------------
2015年3月19日
 
沖縄防衛局長 井上 一徳殿
沖縄市長 桑江朝千夫殿  
沖縄市教育長 狩俣 智殿
沖縄県知事 翁長 雄志殿
嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会
会長 嘉手納町長 當山宏殿

沖縄・生物多様性市民ネットワーク
共同代表/ディレクター 河村 雅美
沖縄県宜野湾市志真志4-24-7 セミナーハウス304
 NPO法人「奥間川流域保護基金」事務所内
 TEL/FAX:098-897-0090 

沖縄市サッカー場調査結果に対する専門家意見について
(要請

2015年2月10日、沖縄防衛局は主に2014年10月2日に採水したたまり水についての沖縄市サッカー場調査結果・分析「旧嘉手納飛行場(26)土壌等確認調査(その2)嘉手納飛行場返還跡地内報告書 平成27年1月 沖縄防衛局調達部/中央開発株式会社」を公開しました。

この調査は、2014年7月にたまり水やドラム缶底面土壌から、ダイオキシン類、DDT類、油分等が検出されたことから、汚染範囲の特定等のために実施された調査です。
今回の調査は、沖縄市はカウンター的調査は実施していません。

沖縄・生物多様性市民ネットワークは、「沖縄市サッカー場調査監視・評価プロジェクト」の一環として3名の専門家、宮田秀明氏(摂南大学名誉教授)、池田こみち氏(環境総合研究所顧問)、國吉信義博士(元マーチ基地環境保全官)から沖縄防衛局の調査、分析、評価が妥当なものであるかなどについて評価を求めました。

3意見書は共通して、沖縄防衛局は汚染を限定的にみていることを指摘しています。この指摘に対し、関係諸機関は考慮、対応するべきであると考えます。

主に、以下の点が指摘されています。

1. たまり水のダイオキシン濃度は高い。しかし、危険性/安全性を認識するために明示すべき数値を、報道資料等で触れていない。
-未ろ過水: 170pg/-TEQ/L、ろ過水: 33pg-TEQ/Lは、環境基準値の170倍、33倍であり、極めて高い。これに触れていないことは問題である。
 -ダイオキシン類の危険性を知る上で重要な数値である2,3,7,8-TCDDの割合は、市民に示すべきデータであるが、わかりやすく数字として示されていない。
15%は決して小さい割合でない。水試料で、2.3.7.8-TeCDDの毒性等量濃度の割合が15%程度というのはかなり高く、土壌ではほとんど見られない数字である。

2. 雨水等によって埋め立て物から異常な濃度のダイオキシン類が持続して溶出している。
 -今回のろ過水に含まれているダイオキシン類は粒子に吸着しているものではなく、たまり水に「溶存体」という存在形態で溶解しており、極めて高率で存在している。
-ダイオキシン類の溶解性を増加させる物質がたまり水に含まれており、雨水によって容
易に溶出される状況である。長期間にわたって持続していたものと判断される。 (宮田秀明氏意見書)

3. ドラム缶発掘工事の影響が、排水で検出されたダイオキシンで確認されていることは認めているが、その原因については追求していない。
 -報告書では、「平成26年1月末から2月初めにかけて実施したドラム缶発掘工事の影響が考えられる」「ドラム缶発掘工事の影響はあるものの」”(p.34)と、工事の影響があったこと自体は認めているにも関わらず、「たまり水の影響は排水口に及んでいないと判断される」と、たまり水と排水口の関係のみで結論づけている。工事の影響を受け、ダイオキシンがどのような媒体で、どのように移動したのかの原因について追求していない。また、この部分の記述も、わかりにくいものになっており、用語も専門用語では用いられない用語(「毒性等量割合」)も見受けられ、報告の記述として問題もある。 (池田こみち氏意見書) [参照別紙1]
                                                             
4. 沖縄防衛局の調査は汚染範囲を限定的にみている 
- 上記3項目について考慮している分析になっていないがゆえに、汚染範囲を限定的にみている。
-國吉信義氏の以下のコメントも考慮すべきである。
“ドラム缶はシルト質の地層に埋められていた。シルト質は全くの非浸透性ではない。たまり水はドラム缶を掘り出したとき、周囲のシルト質粘土の壁から、じわじわとにじみ出て、窪地にたまった水であろう。
  防衛局は、たまり水が出た周辺は浸透性の低い地層なので、ダイオキシンを含む水が直下の地板に浸透する可能性は小さいと結論しているが、シルト質地層に含まれている水は粘土層で遮られているので直下には浸透しにくいが、横にはゆっくりだが、動くはずである。横に動いて、粘土のないところにきたら、水は下に動く。ドラム缶が埋もれていたシルト層がどの程度広がっているか、ダイオキシンを含む水が拡散していないか知りたい。“

5. 沖縄防衛局の調査は明らかに不正確な分析がある
-沖縄防衛局の調査分析は次の2点で不正確な分析がある。[別表2]
 ①たまり水の主な異性体割合 
1,2,3,7,8-PeCDDが多く、これは焼却関連物(焼却灰、焼却飛灰など)に含まれる代表的ダイオキシン類異性体である。これを含まない、「….(2,3,5-T不純物、PCP不純物、およびPCBに由来するダイオキシン類が混在して存在していたと考えられる)(「報告書」、p.30)との内容は正確ではない。
 ②ダイオキシン類の溶解性を増加させる物質
防衛局の調査では一般土壌に存在する腐植物であるフミン酸やフルボ酸がたまり水に含まれており、ダイオキシン類の溶存体を増加させたものと記載しているが、腐植物以外の埋め立て物(ドラム缶)に起因によるものと推測される。 (宮田秀明氏意見書)

このような分析は、これまでの調査結果の範囲内に納めることによって、これ以上問題が拡散しないこと、処理処分についてもできるだけ限定的にしたい意図があるように疑念を持たれる可能性がある。

6. 「監修」する専門家の位置づけ
-沖縄防衛局は報告書を「愛媛大学農学部森田昌敏感客員教授監修の下、とりまとめた」としているが、森田氏の「監修」の位置づけが曖昧である。 (池田こみち氏意見書)

沖縄防衛局によれば、調査報告のアドバイザー的な役割とのことであるが、報告書内で、どの部分が調査会社の記述・分析で、どの部分が専門家の見解なのか明確でなく、評価の責任の所在が不明である。

7. 埋め立て物は「ドラム缶」とは限らない
-当該地域の埋立物は、全てが金属製のドラム缶であったのか、ポリ袋やダンボール等の非磁気性の容器のものである可能性が示唆されている。 (宮田秀明氏意見書)

8, 沖縄県の水質調査は問題がある。
-調査報告の記述が十分でない。 (國吉信義氏コメント)

この問題は、環境総合研究所『嘉手納基地返還跡地(沖縄市サッカー場)ドラム缶発掘追加調査に関する意見書』(2014年12月16日付けで関係機関に送付済み)でも、「沖縄県の地下水などの周辺環境調査はおざなりなものであり、地域住民に安心材料を与えるには不十分である。(p.28)」と指摘されている。

以上を踏まえ、関係機関に以下を要請します。

【要請】
1.沖縄市と沖縄県は、今回の調査が妥当であるか独自に評価すること。また、関係諸機関は、汚染範囲の確定、浄化方法に関する開かれた協議の場を設定すること。
  このように複数の専門家から問題が指摘されている沖縄防衛局の調査報告について、沖縄市と沖縄県は調査分析が妥当であるかどうか、安全面から独自の評価をするべきであると考える。
  同時に、汚染範囲の確定、浄化方法決定過程において、誰が何をどのような基準で決定したかのプロセスが検証できるシステムをつくり、各機関の説明責任を担保すること。
 汚染に関しては、国内のダイオキシン汚染対策にみられる「技術検討委員会」などを参考にし、検討する第三者機関を設置すること。サッカー場の汚染はヒ素汚染なども含む「複合汚染」のため、まずは、専門性が担保された協議が必要であることを関係機関で確認すること。

2 ダイオキシンの溶出などについて、沖縄防衛局の調査報告では言及されていない専門家の見解を踏まえ、関係諸機関で評価・対処を再検討すること。 
また、ドラム缶発掘工事の影響がどのように排水口に及ぶこととなったのか、さらなる調査を実施すること。
理由は上記の問題指摘にあるとおり。

3. 発掘工事による汚染の拡散、作業者や住民への安全確保、環境への影響について慎重に検討し、事前に市民/住民に必要な情報を説明すること。

4. 汚染の本質的な原因究明を行うこと。
なぜこのサッカー場に100 本以上のドラム缶が埋め立てられて、長期間存在し、異常な濃度のダイオキシン類が持続して溶出することに至ったのか、その原因を究明すること。
  沖縄市の聞き取りによって得られた米軍人の埋設(1964年)以降の事実が確認されていないことを重要視すべきである。地歴調査からみると、サッカー場整備時にドラム缶が見逃され、埋め戻しをされている可能性も強く示唆される。過去の汚染、汚染経路、作業員などの被曝の可能性の洗い出しも含め、本格的な調査を行い、県内にこのような事例がないかを検討することが必要である。

5. 沖縄防衛局の調査報告の分析・記述・「監修」の問題を解決すること。
  不正確な分析や矮小化の懸念が持たれる報告書は問題である。今回の調査結果評価を再検討し、見解をあらたに公開することが必要であると考える。また、今後、環境基準値との比較や重要な数値の記述に努め、専門家の責任の所在の不明確さも解決に努めること。

6. ボーリング調査を基本とすること。
  埋め立て物はドラム缶とは限らないことが指摘されている。「廃棄物の埋め立て地における有害物の種類や濃度は均一ではなく、全くの不連続性を特徴とする。そのため、少し離れた地点における有害物質の種類や濃度は、水平的にも垂直的にも極めて大きく相違するため、ボーリング調査を基本とした調査設計をすること」という宮田氏の意見を検討すること。
  
7. 沖縄県の水の調査/分析の改善に努めること。
 複数の専門家から沖縄県の水の調査/分析については問題指摘がある。その改善に努めること。まずは、調査報告の記述(調査地点の選定理由など)について改善すること。

8. 調査の目的を明確にし、市民/県民のための報告をすること。
誰のために調査を行っているのかが曖昧である。国、県、市は税金を用いて、誰のために何のために調査を行い、評価し、報告しているのかをより明確にすべきである。汚染の有無が最終的な目的でなく、汚染原因の究明や汚染の拡散の可能性など、地域住民の視線や立場に立って調査が行われる必要である。
また、報告書も調査会社の報告をそのまま出すのではなく、市民/県民が理解できる報告書を作成すべきである。

                                           以上 

<専門家コンタクト>
◯宮田秀明(摂南大学名誉教授)
e-mail: miyata@m3.dion.ne.jp
Tel/Fax: 072-852-8233
携帯電話:090-3860-9501
◯池田こみち (環境総合研究所顧問)
ikeda@eritokyo.jp
080-1093-8754
◯國吉信義(元マーチ基地環境保全官)
skuni18@gmail.com


写送付先:宜野湾市長

要請文と別紙1
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別表2
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沖縄市サッカー場:ドラム缶たまり水専門家意見3)國吉信義氏①地質から汚染をみる

2015年04月19日/ 沖縄防衛局/ 基地返還跡地/ 汚染/ 沖縄市サッカー場/ 沖縄県環境政策/ 日米地位協定/ 環境協定

國吉信義さんのたまり水についての意見書を紹介します。これまでは、ドラム缶内容物の汚染がどのようなものであるかに焦点が当てられてきましたが、たまり水の調査から、汚染の範囲の確定にどのような要素が必要かということが、具体的になってきました。
 汚染の拡散や汚染範囲の確定に地質学の面からの要素が必要であることを、國吉さんの意見書からみることができます。
 なぜそのような要素が必要なのか?それは汚染の拡がりは、地層の性質や、地層図、地下水分布図などをみて確定しなければならないからです。











嘉手納基地帯水層の境界線を示す國吉さん



 
 國吉さんの意見書は下に貼り付けてあるのでそちらを見てください。

たまり水とは/ドラム缶が埋められていた地層とは
 まず、たまり水とは何か、そしてドラム缶が埋められていた地層がどのような性質を持っているのかについて述べています。
“たまり水とはサッカー場西側でドラム缶を掘り出したときの窪地にたまった水です。ドラム缶があった付近3箇所で3.8mの深さまで、ボーリングをしており、その柱状図が示されています。柱状図によると、地表から2m位まではシルト質粘土で、その下1.8m位は粘土質の地層です。粘土は水を通さない非浸透の地層です。その上にあるシルト質とは非常に細かい砂で、水を含むが浸透性は低い。全くの非浸透性ではない。たまり水はドラム缶を掘りだしたとき、周囲のシルト質粘土の壁から、じわじわとにじみ出て、窪地にたまった水でしょう。ドラム缶はシルト質の地層に埋められていました。

土は、もともと水分を含んでおり、たまり水は、ドラム缶が掘り出された時に周辺の土壌からにじみ出たものがたまり水である(雨水とは違うもの)ということがまず説明されています。

 この中にある柱状図とは、沖縄防衛局の調査報告書にある以下の図です。詳しくは、リンクをたどってみてください。


「旧嘉手納飛行場(26)土壌等確認調査(その2)」調査報告書 巻末資料ボーリング柱状図 http://www.mod.go.jp/rdb/okinawa/07oshirase/kanri/houkokusyo6/3.pdfより抜粋

 ここから、ドラム缶が埋められていた層はシルト質粘土という層であるということがわかります。そして、
國吉さんはそのシルト質粘土の性質について、「浸透性は低い。」が、「全くの非浸透性ではない」と説明しています。

沖縄防衛局の調査報告の問題
 そして、地層の性質と水の動き(横にはゆっくりと動く)を鑑み、沖縄防衛局の調査報告の問題を以下のように指摘しています。
”防衛局は、たまり水が出た周辺は浸透性の低い地層だから、ダイオキシンを含む水が直下の地盤に浸透する可能性は小さいと結論しています。ドラム缶が発見された所ではシルトの下に1.8m位までは粘土層があります。この粘土層はどの程度まで深く、広く分布しているかわかりません。シルト質地層にふくまれている水は粘土層で遮られているから直下には浸透しにくいが、横にはゆっくりだが、動くはずです。横に動いて、粘土のないところにきたら、水は下に動くでしょう。ドラム缶が埋もれていたシルト層がどの程度広がっているか、ダイオキシンを含む水が拡散していないか知りたいです。”

 つまり、たまり水の直下の動きのみで浸透の可能性や範囲を結論づけることは問題で、シルト質地層の広がりと横への動きを考慮に入れた上で、汚染の拡散の可能性を考えなければならない、ということです。

嘉手納帯水層の境界線は?
また、この粘土層がどこまで広く分布しているかを、上にある写真の米軍の地下水分布図などで調べる必要があるということです。意見にある「嘉手納帯水層の境界線」というのは、粘土層が切れている線です。粘土層は永遠に続いているわけではなく、切れている場合はそこから(水などは)横に動くということです。粘土層は沖縄で「クチャ」と呼ばれている土です。
"米国地質調査所が軍の依頼で、1965年に嘉手納基地の地下水を調べました。その地下水分布図によると、サッカー場あたりがKadena Aquifer(帯水層)の境界線あたりになっています。防衛局のボーリングで見つかった粘土層がどこまで広く分布しているか知りたいです。“"

 國吉さんは、サッカー場現地もご覧になり、掘り起こしてある土が褐色であることから、あれは埋め立てのために他所から持ってきた土であろう、もともとの土壌もみるべきであるとおっしゃっていました。

地質学も含めた専門家チームを
 このように、地質学的な観点から調査を見るのは非常に重要なことがわかります。
 國吉さんは、化学だけでなく、地質学の面、健康の面からの専門家も含め、チームを作って調査にあたるべきであるとおっしゃっていました。

 ※わかりやすいように、少し米国の例から引いてみます。少し年代としては古いですが、エージェント・オレンジの点からも沖縄ととりまく環境がよく似たグアムのTCE(トリクロロエチレン)の地下水汚染の例からひいてみます。1978年に、飲料水のTCE汚染がグアムのアンダーソン空軍基地で発覚しました。米軍が調査をしましたが、議会の要請により、その調査の精査を、米国のGeneral Accounting Office(現Government Accountability Office、以下GAO) が行いました。その報告書(GAO Report to Congress (May 1987)  HAZARDOUS WASTE Abandoned Disposal Sites May Be Affecting Guam's Water Supply)の一部を切り取りました。
 この文書をみると、米国環境保護庁、グアム環境保護庁とともに米国地質調査所(United States Geological Survey, USGS)が、基地の汚染調査照会・精査に関わっていることがわかります。


GAO Report to Congress (May 1987)  HAZARDOUS WASTE Abandoned Disposal Sites May Be Affecting
Guam's Water Supply


 沖縄県の水の調査については、他の専門家からの意見でもでているので、また別記事にします。
沖縄市サッカー場周辺環境調査の結果について(お知らせ)

 國吉さんの意見にある”防衛局が、環境を守る目的でない”、という件については私も調査の最初の時点で問題化しており、だからこそより監視の目が必要であり、監視は制度化し、予算化していく必要があると思います。

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たまり水について
“たまり水とはサッカー場西側でドラム缶を掘り出したときの窪地にたまった水です。ドラム缶があった付近3箇所で3.8mの深さまで、ボーリングをしており、その柱状図が示されています。柱状図によると、地表から2m位まではシルト質粘土で、その下1.8m位は粘土質の地層です。粘土は水を通さない非浸透の地層です。その上にあるシルト質とは非常に細かい砂で、水を含むが浸透性は低い。全くの非浸透性ではない。たまり水はドラム缶を掘りだしたとき、周囲のシルト質粘土の壁から、じわじわとにじみ出て、窪地にたまった水でしょう。ドラム缶はシルト質の地層に埋められていました。
防衛局は、たまり水が出た周辺は浸透性の低い地層だから、ダイオキシンを含む水が直下の地盤に浸透する可能性は小さいと結論しています。ドラム缶が発見された所ではシルトの下に1.8m位までは粘土層があります。この粘土層はどの程度まで深く、広く分布しているかわかりません。シルト質地層にふくまれている水は粘土層で遮られているから直下には浸透しにくいが、横にはゆっくりだが、動くはずです。横に動いて、粘土のないところにきたら、水は下に動くでしょう。ドラム缶が埋もれていたシルト層がどの程度広がっているか、ダイオキシンを含む水が拡散していないか知りたいです。
米国地質調査所が軍の依頼で、1965年に嘉手納基地の地下水を調べました。その地下水分布図によると、サッカー場あたりがKadena Aquifer(帯水層)の境界線あたりになっています。防衛局のボーリングで見つかった粘土層がどこまで広く分布しているか知りたいです。“

沖縄県環境保全課の調査について
“この報告書によると、嘉手納基地内の井戸2箇所と運動公園2箇所で地下水を採取しています。4箇所とも分析結果は健康に害する成分は基準以下だったと報告しています。
まず、運動公園内の地下水採取の場所、ドラム缶発掘場所との位置関係、井戸から採取したのか、井戸の深さや水位、井戸のスクリーンの位置、過去にも採取して調べたのか、など知りたいです。県の環境保全課は基地の環境汚染を調べているのか、専門家がいるのか。“

環境省の役割について
防衛局は国を敵からまもるのが本職でしょう。環境を守るのは本職でないと思う。アメリカのEPAは”to protect human health and environment”といって両方を本職としています。沖縄の基地の環境問題でなぜ日本の環境省が関与していないのか。環境省には基地汚染の専門家がいるはずです。私が嘉手納基地の環境保全部で働いていたとき、東京の環境省の人たちが定期的に嘉手納基地に来て、排水口のサンプリングをしていました。私が案内しました。

(沖縄・生物多様性市民ネットワーク河村雅美へのメールより抜粋)

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沖縄市サッカー場:ドラム缶たまり水専門家意見3)専門家國吉信義さんについて

2015年04月17日/ 沖縄防衛局/ 基地返還跡地/ 汚染/ 沖縄市サッカー場/ 沖縄県環境政策/ 日米地位協定/ 環境協定

今回、たまり水の件で意見を書いてくださった國吉信義さんは、昨年嘉手納基地に書いた手紙の中でもコメントをいただいていますが、意見書解説の前に、詳しいバックグラウンドやご経験について、あらためてこの記事でご紹介したいと思います。
 

今回の来沖時に沖縄市サッカー場にお連れしました


 國吉さんは、米国カリフォルニア州、マーチ空軍基地で環境浄化プログラムに15年従事していらっしゃった地質学の専門家です。嘉手納基地にも3年間いらっしゃったことがあります。下に、沖縄タイムスの國吉さんについての記事(2014.3.18)がありますので、詳しくはそちらを参考にしてください。米国L.Aに在住されており、北米沖縄県人会の会長でもいらっしゃいます。

 マーチ空軍基地は1918年開設以来、訓練基地、爆撃機や給油機の基地として継続的に使用されてきた基地で、1980年代に汚染調査が始められました。1989年には米国の汚染地リストの一つ(National Priority List Sites)に指定されています。
 マーチ空軍基地の汚染調査・浄化作業の進行状況は米国環境保護庁のPacific Southwest, Region 9: Superfund  March Air Force Baseでみることができます。直近の包括的なレポートは、昨年の9月に第3次5カ年レビューのレポートが公開されています。
 
 ここでは米国の基地汚染に関する環境法制度については詳しく触れませんが、タイムスの記事にあるように、米国では初期調査から汚染除去までのプロセスに、徹底した監視体制があります。
 
 マーチ基地でも、以下の4者が関与し、軍が勝手に汚染調査、浄化作業をしないような監視体制がとられていました。
    ・マーチ基地
   ・環境保護庁 US EPA
   ・カリフォルニア州環境保護庁 California EPA
   ・カリフォルニア州水質管理局 Regional Water Quality Control Board
 國吉さんは、マーチ基地の環境保全官のポジションとして、監督官庁(EPAなど)の監視を受けながら、調査や浄化を担当する会社(contractor)に指示を与える任務に携わっていました。
 
 下の図は、國吉さんからご提供いただいた調査と浄化の過程の図です。




 マーチ基地は土壌汚染と地下水汚染が発見され、その浄化に長い年月がかかっています。地下水は、 テトラクロロエチレン(PCE)、トリクロロエチレン(TCE)などの揮発性有機化合物(VOC)や、ジェット燃料、土壌はVOCや重金属に汚染されていました。
 調査の結果を受け、TCEが問題となり、飲料水に用いられた基地内の井戸は1980年代後半に閉鎖されています。

 このような経験から、2014年10月9日に嘉手納空軍基地に沖縄BDから出した手紙に、國吉さんから、以下のコメントと提言が寄せられています。
「汚染土壌に人体が直接触れる可能性は非常に低いものの、雨水が地下に浸透して、汚染を溶かし、地下水に入る可能性があります。沖縄の地下水は現在は主たる飲料水源にはなっていません。しかし、地下水は農業用及び家庭用の貯水池にたどり着きます。ゆえに、人体が汚染された地下水に接する可能性を除外することはできません。カリフォルニアでは全ての地下水は飲料水になるという仮定で保護しています。マーチ基地では、汚染された地下水の浄化に一番お金と時間がかかりました。」

 地下水の浄化は、地下水をくみあげ、地上で活性炭のフィルターを用いて浄化する(Pump & Treat) という方法を用いるのですが、初期は効果があっても、時間がたつにつれ、TCEの値は環境基準値には近づくが、そこから下がらなくなるとのこと。地下水の汚染は、大変時間もコストもかかる問題であることがうかがわれます。

 VOCは、3月23日の沖縄防衛局発表にあるとおり沖縄市のサッカー場で新たに発見された17缶のドラム缶からも検出されています。この発表があった日がちょうど今回来沖時の國吉さんにお会いした日でした。これについてはまた記事をあげますが、まずは、たまり水の調査報告の意見について次にご紹介します。


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Posted by 沖縄BD at 20:04Comments(0)

沖縄市サッカー場:ドラム缶たまり水専門家意見2)池田氏②調査の目的・評価の体制

2015年04月15日/ 沖縄防衛局/ 基地返還跡地/ 汚染/ 沖縄市サッカー場/ 沖縄県環境政策/ 日米地位協定/ 環境協定

 沖縄市サッカー場調査監視・評価プロジェクト、ドラム缶たまり水の専門家意見、池田こみちさんの意見書のpart 2です。
 池田さんの意見書は、データの科学的分析だけでなく、常に、調査のあるべき姿を、調査者に、そして調査を見る市民に示してくれるものです。

 こちらの記事では、その調査体制から指摘されている点についてのポイントをまとめました。

   主にこの部分。

  
沖縄防衛局HP調査報告書から抜粋・加工
   http://www.mod.go.jp/rdb/okinawa/07oshirase/kanri/houkokusyo6/2.pdf

 
1)「監修者」の問題
 サッカー場の調査では、前回同様、愛媛大学農学部森田昌敏客員教授の「監修の下」、取りまとめられています。

 西普天間で発掘されたドラム缶等についての沖縄防衛局による調査報告書も森田氏が「監修」していますが、この「監修」の作業は具体的に何を指すのか、ひいては「監修者」の位置づけが非常に曖昧です。 
 池田さんは「何故、一連の調査報告書の監修を森田氏一人に依頼しているのか、人選の経緯、理由などは明らかにされていない」点も問題視しています。

 沖縄防衛局返還対策課によると、環境省へ専門家の推薦を頼んだところ、森田氏が推薦されたとのことでした。「監修」の作業とは、沖縄防衛局と調査会社と森田氏が集まり、報告書の作成や書き方に助言を行うということで、監修者の役割としては、調査報告書作成のためのアドバイザー的な役割とのことでした。
 
 しかし、これでは報告書内で、どの部分が調査会社の記述・分析で、どの部分が専門家の見解なのか明確でなく、評価の責任の所在が不明です。 これまでのサッカー場の調査経過をみても、調査結果をどう分析・解釈するか、評価するのか(汚染の由来や原因はなんであるのか、汚染の範囲はどこまで広がっている可能性があるのか、どのような対処が必要であるのかなど)は、重要な作業ということがわかります。専門家は、どのような科学的知見をもって調査結果を評価したかを明確に示す説明責任があるにも関わらず、調査会社の作成した調査報告書の中に監修者の評価はまぎれ、専門家の評価の責任を追求できる体制となっていません。

第1回目の調査では、森田氏の見解は、調査報告書とは別に、専門家の意見として別に発表されていましたし、沖縄市も専門家の意見は調査報告とは別立てにしています。沖縄防衛局は、改悪されている専門家の位置づけや評価体制を再考するべきでしょう。
 
 池田さんは
 ”少なくとも、議論が分かれる汚染原因の究明などの問題が関わる以上、複数の専門家の議論を踏まえて評価を行うことが望ましい。また、開れた場での議論、市民への適切な情報提供と説明が行われるべきであると考える。”
 と、評価体制について提言しています。

2.調査の目的について 
 また、池田さんの意見書の以下の部分では、調査の目的がどのように設定されなければいけないかを、改めて確認する必要があることを認識させてくれます。

 「本調査の目的は、報告書によれば、前回調査を踏まえて汚染範囲の特定を行い、『嘉手納飛行場返還跡地内において,ドラム缶が埋設されていた場所または周辺 のたまり水の水質およびドラム缶底面土壌について調査を実施し,有害物質による汚染の有無を把握するものである。』とあるが、汚染の有無が最終的な目的ではなく、汚染原因の究明や汚染の拡散の可能性など、地域住民の視線や立場に立って調査が行われる必要がある。汚染の有無だけが議論され、汚染の程度、質によって掘り出されたドラム缶や土壌等の処理・処分が行われても、地域住民の不安の払拭にはつながらないからである。
 サッカー場として再開することが最終的な目的であるとすれば、子どもたちの利用が前提となっていることからより慎重な対応が求められる。」

 私たちは、つい、枯れ葉剤報道に引きずられ、ドラム缶の中身や、環境基準超えかそうでないか、という調査結果の発表を聞いて終わらせてしまいがちですが、調査は、汚染の影響を受けるコミュニティや作業者をめぐる環境、安全、安心を真に確保するためのものでなければならない、ということを、調査結果を受け取る私たちが、まず認識しなければならないと思います。
 安全、安心のために、なぜドラム缶がここにあるのかまで遡った原因を究明すること、過去、これからの汚染の拡散の可能性を示すことが必要である、という調査のあるべき姿を、調査を見る側の私たちが再確認する必要があるでしょう。

 また、池田さんはその観点からも、前回の評価で由来の見解がわかれた、ヒ素とフッ素についての件(沖縄防衛局は自然由来、沖縄市は人為由来)で、今回「自然由来」とした防衛局の報告書について、安易な結論づけをすることがないように、以下のように意見を述べています。

 ”今回の調査の結果、ヒ素及びフッ素の汚染はいずれも「自然由来」と結論づけられた。
しかし、前回の調査では、ヒ素、フッ素とも溶出試験では土壌汚染対策方の基準を超過しているサンプルもあったことから、慎重な対応が必要であろう。
 そもそも、土壌汚染対策方の各種基準は、土地利用の改変に伴って対策が必要であるかどうかを判断する目安であり、その基準値や指針値以内であるからといって、検出された汚染を軽く考えることはよくない。由来は何であれ、汚染があることは間違いなく、なおかつ、サッカー場であることから子どもたちの利用が前提となっていることを考慮すれば、より安全側にたった評価が行われるべきである。”

 
 池田さんが意見書で指摘しているように、現段階まで沖縄防衛局と沖縄市、沖縄県がどのように協議を行っているのかも見えておらず、曖昧な「監修者」の位置づけでまとめられた報告書の評価が閉じられた体制で行われていくことは、問題です。
 多額の税金を投入していることも踏まえ、「単なる調査のための調査」にすることなく、「市民、県民に国の見解を押しつけるようなことがないよう、慎重な対応」を求めていかなければなりません。

 あらためて調査とは何か、専門家とは何か、をサッカー場の件だけでなく、あらゆる行政の調査で考えていかなければならないことを思い起こさせる意見書であると思います。
   

Posted by 沖縄BD at 23:49Comments(0)