沖縄市サッカー場:ドラム缶たまり水専門家意見2)池田こみち①排水口のダイオキシン

2015年04月09日/ 沖縄市サッカー場/ 日米地位協定/ 環境協定/ 枯れ葉剤/ 基地返還跡地/ 汚染/ 沖縄県環境政策/ 沖縄防衛局

沖縄市サッカー場のドラム缶が埋設されていた場所、周辺にたまっていた水や底面土壌についての沖縄防衛局の調査・分析が妥当なものであるか、環境総合研究所の池田こみちさんにも意見をいただいています。

 池田こみちさんの意見は、2回に分けて記事にします。まず、宮田先生への意見書との関連から、まずダイオキシン汚染関係の部分を紹介します。
 意見書は下に貼り付けてありますので、ぜひ全体通して読んでみてください。

 ここで問題にするのは、沖縄防衛局の報告書の排水口の水のダイオキシン類の報告部分です。排水口からのダイオキシン類のデータは、これまで沖縄県環境保全課が測っており(沖縄市サッカー場周辺環境調査の結果について)、今回のたまり水の調査では、沖縄防衛局が計測しています。
計測地はこちら: 
沖縄市サッカー場:ドラム缶たまり水専門家意見2)池田こみち①排水口のダイオキシン

沖縄防衛局HPより切り取り、加工
http://www.mod.go.jp/rdb/okinawa/07oshirase/kanri/houkokusyo6/2.pdf


 沖縄防衛局は、今回、たまり水のダイオキシン類のデータと、排水口のダイオキシン類のデータをあわせて評価・分析しています。
 この評価・分析の問題は、大きく2つ指摘されています。
1)1.3pg-TEQ/Lのダイオキシンが検出されていることを、沖縄防衛局が重視してないこと
池田さんは、これについて、まず
この場所はサッカー場予定地であり、ダイオキシン類の水質規制、大気汚染規制などが適用される施設ではない。その場所で排水口からとはいえ、1.3pg-TEQ/Lのダイオキシンが検出されることがそもそも重大な問題である。沖縄防衛局の報告書では、これについて次のように結論づけている。排水基準である10pg-TEQ/Lを満たしているからとして、安易に片付けるべきではない。」
と、ダイオキシン類がサッカー場で検出されること自体が問題で、防衛局が、環境基準以下であることで安易に片付けようとしていることを問題視しています。

沖縄市サッカー場:ドラム缶たまり水専門家意見2)池田こみち①排水口のダイオキシン

沖縄防衛局HPより切り取り、加工
http://www.mod.go.jp/rdb/okinawa/07oshirase/kanri/houkokusyo6/14.pdf


2)排水口でのダイオキシン類の検出は、「ドラム缶発掘工事の影響がある」と結論づけているにもかかわらず、「たまり水の影響は排水口に及んでいないと判断される」という結論で終わらせ、検出の原因解明をしていないこと。
 
 排水口のダイオキシン類のデータをみて、たまり水のこの部分の防衛局の報告はとてもわかりにくい記述になっています。

 まず、その部分を抜き出してみます。
 
5.2 排水口の水質調査結果について(『旧嘉手納飛行場(26)土壌等確認調査(その2)嘉手納飛行場返還跡地内報告書 平成27年1月 沖縄防衛局調達部/中央開発株式会社』 p.34)

“沖縄県の平成25年10月調査および平成26年2月調査の毒性等量は、今回の調査結果と比べて小さく、異性体組成が異なっているが、原因としては、平成26年1月末から2月初めにかけて実施したドラム缶発掘工事の影響が考えられる。工事以前の平成25年10月の排水のダイオキシン類は小さく、工事直後の平成26年2月排水のダイオキシン類は平成25年10月排水より大きくなり、平成26年3月・平成26年7月にダイオキシン類はピーク値を示し、今回調査では平成26年3月調査の1/3になっている。
なお、図5.2.2には、今回調査したたまり水と前回(平成26年6月調査)のたまり水の異性体割合を併記したが、排水口の毒性等量割合とは明らかに異なっていることから、ドラム缶発掘工事の影響はあるものの、たまり水の影響は排水口に及んでいないと判断される。”
(イタリック、赤字は引用者による)

 (ひとつ指摘しておきますが、池田先生から「毒性等量割合」という語彙は専門用語でないそうです。このようなところからも調査レベルに関して、疑義が持たれるところではあります。)
 
 文章ではわかりにくいので、下のような時系列の表にしてみました。

沖縄市サッカー場:ドラム缶たまり水専門家意見2)池田こみち①排水口のダイオキシン
(旧嘉手納飛行場(26)土壌等確認調査(その2)嘉手納飛行場返還跡地内報告書、沖縄県環境保全部HP)より沖縄・生物多様性市民ネットワーク作成)
 
 こうしてみると、発掘工事の後に、排水口でのダイオキシン類の検出がピークとなり、その後、小さくなっていることがわかります。つまり、発掘工事が排水口の水に影響を与えているということです。防衛局も「実施したドラム缶発掘工事の影響が考えられる」「ドラム缶発掘工事の影響はあるものの」と工事の影響を認めてはいます。
 しかし、たまり水の異性体ごとの組成が異なっているので(たまり水のダイオキシンとは違うので)、たまり水の影響は排水口に及んでいない、とたまり水との関係だけで、結論づけています。たまり水でないなら、何が影響を与えているのでしょうか。

 池田さんは以下のように問題を指摘し、この排水口の水の汚染の原因を明らかにすべきであるとしています。

”ここでは、溜まり水と排水口のダイオキシン類について、異性体ごとの毒性等量割合がことなっていることから、「ドラム缶発掘工事の影響があるものの、溜まり水の影響は排水口に及んでいない」としているが、両者の間には物理的な距離と共に、到達するまでの時間、さらに、ドラム缶掘削作業の何によってどのような媒体を通して影響が及んだかといった問題も重要となるが、いずれも明確に示されていないまま、「溜まり水の影響は及んでいない」と結論づけている。
 溜まり水の影響でないとした場合、具体的にどのような経路、メカニズムによってこの排水口の水が汚染されたのかについて説明する必要があるだろう。むしろ、排水溝の水はサッカー場利用者により近いものであることから、その汚染原因や経路を明らかにする必要があるだろう。”

 つまり、排水口のダイオキシンの検出は、ただ「環境基準値以上/以下」ということで終わらせてはいけないということです。
検出されているのが、サッカー場であることを認識すること。そして排水口に流れ出ているダイオキシン類はたまり水が原因でないのならば、何が原因なのかを調査し、過去の汚染、今後の汚染拡散の可能性を考察し、汚染範囲をどう確定するのか再考するべきでしょう。そして、掘削時にどのように汚染が動くのか、沖縄の経験値としていく必要があります。
 
 池田さんの意見書は、調査や評価のあり方についても指摘しています。次の記事に続きます。

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旧嘉手納飛行場(26)土壌等確認調査(その2)
嘉手納飛行場返還跡地内報告書 平成27年1月 沖縄防衛局調達部/中央開発株式会社
についてのコメント


2015年2月15日
池田 こみち
(株式会社 環境総合研究所 顧問)


1.調査結果の評価体制について
 本調査は、報告書冒頭にあるように、前回までと同様、愛媛大学農学部森田昌敏客員教授の監修のもと取りまとめられている。しかし、何故、一連の調査報告書の監修を森田氏一人に依頼しているのか、人選の経緯、理由などは明らかにされていない。少なくとも、議論が分かれる汚染原因の究明などの問題が関わる以上、複数の専門家の議論を踏まえて評価を行うことが望ましい。また、開かれた場での議論、市民への適切な情報提供と説明が行われるべきであると考える。

2.調査の目的について
 本調査の目的は、報告書によれば、前回調査を踏まえて汚染範囲の特定を行い、「嘉手納飛行場返還跡地内において,ドラム缶が埋設されていた場所または周辺 のたまり水の水質およびドラム缶底面土壌について調査を実施し,有害物質による汚染の有無を把握するものである。」とあるが、汚染の有無が最終的な目的ではなく、汚染原因の究明や汚染の拡散の可能性など、地域住民の視線や立場に立って調査が行われる必要がある。汚染の有無だけが議論され、汚染の程度、質によって掘り出されたドラム缶や土壌等の処理・処分が行われても、地域住民の不安の払拭にはつながらないからである。
 サッカー場として再開することが最終的な目的であるとすれば、子どもたちの利用が前提となっていることからより慎重な対応が求められる。

3.溜まり水のダイオキシン類について
 今回の調査では、前回の調査により、ドラム缶発掘現場に溜まった水から高濃度のダイオキシン類が検出されたことを受け、再度調査を行ったものである。前回の調査では、沖縄市、沖縄防衛局の両者の調査でほぼ同レベルの高濃度のダイオキシンが検出されたが、評価結果は、大きく分かれた。「枯れ葉剤問題」に関しては、沖縄防衛局では「オレンジ剤」との関係の評価のみ行ったが、沖縄市の依頼した専門家、愛媛大学の本田克久教授は、枯れ葉剤の複数の種類の可能性を示唆した。
 こうした議論の分かれた重大な調査の追加調査として位置づけられた今回の調査結果の評価はより慎重に行われる必要がある。
 今回の調査では、未ろ過水から170pg-TEQ/L、ろ過水から33pg-TEQ/Lが検出され、前回の調査結果と大きな差が見られていない。

表1 溜まり水のダイオキシン類測定結果 
沖縄市サッカー場:ドラム缶たまり水専門家意見2)池田こみち①排水口のダイオキシン

これについて、報告書では、つぎのように評価している。

「今回のたまり水は前回実施(平成26年6月調査)のたまり水に比べ,1,2,3,7,8-PeCDDの割合がやや多く(今回:27.6%,前回:21.3%),2,3,4,7,8-PeCDFの割合がやや少なく(今回:2.5%,前回:8.4%)なっているが,その他の異性体割合は概ね類似しており,たまり水のダイオキシン類は,前回実施(平成26年6月調査)分と同一なもの(2,4,5-T中不純物,PCP中不純物,およびPCBに由来するダイオキシン類が混合して存在していた)と考えられる。」(p.30より抜粋)

 また、周辺土壌の粒子を分析し、排水口のダイオキシン類分析結果と照らし合わせ、次のように結論づけている。
「以上の結果より,たまり水については,地盤の透水係数が小さいことから地下浸透の可
能性は低いこと,排水口の水は排水基準に適合していたこと,窪地周囲の床掘りの結果,
たまり水の存在は認められなかったことから,ドラム缶発掘場所である窪地にとどまって
いると判断され,窪地内のたまり水を土壌とともに処理すれば問題ないと考えられる。」(p.31より抜粋)

 果たして、この評価、結論に基づいた対策で、サッカー場としての再開に向け、市民は安心できるのだろうか。ドラム缶が埋め立てられてから数十年以上が経過していることが予測されることから、長い時間を経てドラム缶は腐食し、内容物の多くは土壌中に流出・浸出していると考えられる。一連の調査で明らかになったのは調査を行ったサンプルについてのみで有り、広大な嘉手納基地跡地サッカー場にどれほどの汚染が浸透しているのかは定かではない。現に、今回の調査の過程(磁気探査調査)で新たにドラム缶が発見されている。
ごく一部のサンプルの分析結果を持って全体が安全であるかのような結論づけ、処分の仕方のみを示した評価は、市民の立場からすれば必ずしも十分とは言えないだろう。
 前回調査の際に、ドラム缶付着物やドラム缶底面土壌のダイオキシン類についてその由来が枯葉剤(オレンジ剤をはじめとする各種枯葉剤)に起因するかどうかが議論となり、沖縄市の報告書の慣習を行った本田氏や第三者の立場からコメントした宮田氏によりダイオキシン類の毒性等量濃度に占める2,3,7,8-TeCDDの割合が解析された。
 今回の溜まり水について異性体ごとの毒性等量濃度に占める割合を見ると、沖縄防衛局がとりまとめた報告書の評価では触れられていないが、2,3,7,8-TeCDDは15%を占めていた。最も多いのは報告書に示されているように1,2,3,7,8-PeCDD(5塩素化ダイオキシン)で28%を占めるが、2,3,7,8-TeCDDの15%は決して小さい割合ではない。この点について議論を深める必要があるだろう。何よりも、ダイオキシン類の異性体、同族体の詳細分析は、ダイオキシン類の由来を特定する上で鍵となるからである。沖縄防衛局は、あえて、その部分を避け、発掘されたドラム缶やその周辺の土壌、水の処理処分のことにのみ焦点を当てているのは、現場の汚染がかかえる本質的な問題から目を背けていることに他ならない。

4.排水口の水のダイオキシン類について
 先にとりまとめた意見書でも述べたが、この場所はサッカー場予定地であり、ダイオキシン類の水質規制、大気汚染規制などが適用される施設ではない。その場所で排水口からとはいえ、1.3pg-TEQ/Lのダイオキシンが検出されることがそもそも重大な問題である。
沖縄防衛局の報告書では、これについて次のように結論づけている。排水基準である10pg-TEQ/Lを満たしているからとして、安易に片付けるべきではない。

「今回の排水口の水質については,沖縄県の平成26年3月および平成26年7月調査の毒性等量割合と概ね類似しており,毒性等量は1,2,3,4,6,7,8-HpCDD,OCDD,1,2,3,6,7,8-HxCDDの順に高い割合を示す。沖縄県の平成25年10月調査および平成26年2月調査の毒性等量は,今回の調査結果と比べて小さく,異性体組成が異なっているが,原因としては,平成26年1月末から2月初めにかけて実施したドラム缶発掘工事の影響が考えられる。工事以前の平成25年10月の排水のダイオキシン類は小さく,工事直後の平成26年2月排水のダイオキシン類は平成25年10月排水より大きくなり,平成26年3月・平成26年7月にダイオキシン類はピーク値を示し,今回調査では平成26年3月調査の1/3になっている。なお,図5.2.2には,今回調査したたまり水と前回(平成26年6月調査)のたまり水の異性体割合を併記したが,排水口の毒性等量割合とは明らかに異なっていることから,ドラム缶発掘工事の影響はあるものの,たまり水の影響は排水口に及んでいないと判断される。」(p.34より抜粋)

 ここでは、溜まり水と排水口のダイオキシン類について、異性体ごとの毒性等量割合がことなっていることから、「ドラム缶発掘工事の影響があるものの、溜まり水の影響は排水口に及んでいない」としているが、両者の間には物理的な距離と共に、到達するまでの時間、さらに、ドラム缶掘削作業の何によってどのような媒体を通して影響が及んだかといった問題も重要となるが、いずれも明確に示されていないまま、「溜まり水の影響は及んでいない」と結論づけている。
 溜まり水の影響でないとした場合、具体的にどのような経路、メカニズムによってこの排水口の水が汚染されたのかについて説明する必要があるだろう。むしろ、排水溝の水はサッカー場利用者により近いものであることから、その汚染原因や経路を明らかにする必要があるだろう。

5.ヒ素及びフッ素について
 今回の調査の結果、ヒ素及びフッ素の汚染はいずれも「自然由来」と結論づけられた。
しかし、前回の調査では、ヒ素、フッ素とも溶出試験では土壌汚染対策方の基準を超過しているサンプルもあったことから、慎重な対応が必要であろう。
 そもそも、土壌汚染対策方の各種基準は、土地利用の改変に伴って対策が必要であるかどうかを判断する目安であり、その基準値や指針値以内であるからといって、検出された汚染を軽く考えることはよくない。由来は何であれ、汚染があることは間違いなく、なおかつ、サッカー場であることから子どもたちの利用が前提となっていることを考慮すれば、より安全側にたった評価が行われるべきである。

6.さいごに
 沖縄防衛局は、これらの調査結果を踏まえ、各種汚染に適した処理施設へ搬入後、処分するとし、処理については、「処分方法、処分時期、処理施設について沖縄市等と協議が整い次第実施」するとしている。
 汚染物質の適切な運搬、処理、処分は広域にまたがる可能性もあることから、関係自治体との協議のとどまらず、市民、県民に対しても情報を提供するとともに、意見を求めるなど十分な協議が必要と思われる。
 また、総じて、沖縄防衛局の調査結果の評価は、本調査も含め、出来る限り汚染のレベルや範囲を限定的に捉えようとしているが、果たしてそうした対応で十分なのかどうか、疑問のあるところである。ダイオキシン類、有害金属類、農薬類、油分(TPH)などについて諸外国に比べて基準が甘かったり定められていない項目も多いことから、単に費用対効果の面からのみ汚染物の処理を決定するのではなく、得られた情報からどのような結論を導き出すのか、対策を検討するのか、一方的な決めつけではなく、開かれた議論に基づいた検討が必要である。
 沖縄市が行った調査も含めれば、対策費も含めて全体として数億円~10億円近くもの税金を投じた業務であることを踏まえ、単なる調査のための調査や市民、県民に国の見解を押しつけるようなことがないよう、慎重な対応を求めるものである。
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Posted by 沖縄BD at 22:38│Comments(0)
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