沖縄市サッカー場: たまり水調査に対する専門家意見キーポイント(会見)

2015年03月29日/ 沖縄市サッカー場/ 日米地位協定/ 環境協定/ 枯れ葉剤/ 基地返還跡地/ 汚染/ 沖縄県環境政策/ 沖縄防衛局

 3月12日、この日は辺野古のボーリング調査再開の日でしたが、沖縄・生物多様性市民ネットワークは沖縄市サッカー場のたまり水調査結果・分析に対しての3人の専門家の意見を記者会見で発表しました。「沖縄市サッカー場監視・評価プロジェクト」が続いています。
  
沖縄市サッカー場: たまり水調査に対する専門家意見キーポイント(会見)

QAB報道より

❏沖縄防衛局のたまり水の調査報告とは何か
 3人の専門家が書いた意見書は、2015年2月10日に沖縄防衛局が発表した報告書に対するものです。この報告書は、2014年7月にたまり水やドラム缶下の土壌から、ダイオキシン類、DDT類、油分等が検出されたことから計画され、実施された調査の報告書です。2014年10月2日にたまり水を採取し、調査分析を沖縄防衛局が行っています。
 今回の調査は、沖縄市はカウンター的調査は実施していません。

 時系列的な位置づけについては、2013年からの調査の簡単な経緯表をみてください。現在、3rd ラウンドに入ったということにしてみようと思います。
沖縄市サッカー場: たまり水調査に対する専門家意見キーポイント(会見)
❏今回の調査報告は何を意味しているのか~汚染範囲の確定
 これまではドラム缶の内容物のみが着目されていましたが、今回はドラム缶が埋設されていた場所、あるいは周辺のたまり水の水質の分析、たまり水の移動が主なものとなります。その他、ドラム缶下の土壌(底面土壌)などについても調査しています。
 ここで課題となるのが、汚染がどこまで広がっているのかという、汚染範囲の確定です。
 
 汚染範囲をどう確定するか、という問題にあたり、それを確定する材料はこれで十分なのか、その分析、結論は妥当なのかということを検証する必要があります。

 ダイオキシン関係でいえば、具体的には、ダイオキシンがどのような形態で地中に存在しているのか、どのようにダイオキシンが動くのか、どのように汚染が拡散する/した/している可能性があるのかなどをみる必要があります。

 また、地質の性質から拡散の可能性を判断することも必要です。
 
❏沖縄防衛局はどのような結論を出しているのか
 沖縄防衛局は、「調査報告書の概要」のたまり水の部分の調査結果で、
 ”「窪地の下の地盤の透水係数が小さく地下浸透の可能性が低いこと、排水口の水は排水基準に適合していたこと、窪地の周囲にはたまり水の存在は認められなかったことから、たまり水は窪地内にとどまっていると判断。」
 「したがって、たまり水から上記ダイオキシン類が検出されたものの、周囲の環境に影響を及ぼす量の放出はないと判断でき、窪地内のたまり水を処理すれば問題無いと判断。」”
 と、汚染は限定的であるという結論を出しています。

❏専門家からの意見~沖縄防衛局の報告・評価は妥当か
 沖縄BDは、「沖縄市サッカー場調査監視・評価プロジェクト」の一環として3名の専門家宮田秀明氏(摂南大学名誉教授)、池田こみち氏(環境総合研究所顧問)、國吉信義博士(元マーチ基地環境保全官)から沖縄防衛局の調査、分析、解釈が妥当なものであるかなどについて評価を求めました。

 3専門家とも、防衛局の、汚染は限定的である、という評価に対しては問題を指摘し、批判的な見解を提示しています。

 3専門家の意見書は、一つずつ記事にまとめますが、ポイントを以下のようにまとめました。専門的なところは難しいと思いますが、太字のポイントをみていただけると、専門家が何を指摘しているかご理解いただけると思います。

Keypoint
 
1. たまり水のダイオキシン濃度は高い。しかし、危険性/安全性を認識するために明示すべき数値を、報道資料等で触れていない。
-未ろ過水: 170pg/-TEQ/L、ろ過水: 33pg-TEQ/Lは、環境基準値の170倍、33倍であり、極めて高い。これに触れていないことは問題である。
-ダイオキシン類の危険性を知る上で重要な数値である2,3,7,8-TCDDの割合は、市民に示すべきデータであるが、わかりやすく数字として示されていない。
-15%は決して小さい割合でない。水試料で、2.3.7.8-TeCDDの毒性等量濃度の割合が15%程度というのはかなり高く、土壌ではほとんど見られない数字である。

2. 雨水等によって埋め立て物から異常な濃度のダイオキシン類が持続して溶出している。
-今回のろ過水に含まれているダイオキシン類は粒子に吸着しているものではなく、たまり水に「溶存体」という存在形態で溶解しており、極めて高率で存在している。
-ダイオキシン類の溶解性を増加させる物質がたまり水に含まれており、雨水によって容易に溶出される状況である。長期間にわたって持続していたものと判断される。 (宮田秀明氏意見書)

3. ドラム缶発掘工事の影響が、排水で検出されたダイオキシンで確認されていることは認めているが、その原因については追求していない。
-報告書では、「平成26年1月末から2月初めにかけて実施したドラム缶発掘工事の影響が考えられる」「ドラム缶発掘工事の影響はあるものの」”(p.34)と、工事の影響があったこと自体は認めているにも関わらず、「たまり水の影響は排水口に及んでいないと判断される」と、たまり水と排水口の関係のみで結論づけている。工事の影響を受け、ダイオキシンがどのような媒体で、どのように移動したのかの原因について追求していない。また、この部分の記述も、わかりにくいものになっており、用語も専門用語では用いられない用語(「毒性等量割合」)も見受けられ、報告の記述として問題もある。(池田こみち氏意見書)
                            
4. 沖縄防衛局の調査は汚染範囲を限定的にみている 
- 上記3項目について考慮している分析になっていないがゆえに、汚染範囲を限定的にみている。
- 國吉信義氏の以下のコメントも考慮すべきである。
“ドラム缶はシルト質の地層に埋められていた。シルト質は全くの非浸透性ではない。たまり水はドラム缶を掘り出したとき、周囲のシルト質粘土の壁から、じわじわとにじみ出て、窪地にたまった水であろう。
  防衛局は、たまり水が出た周辺は浸透性の低い地層なので、ダイオキシンを含む水が直下の地板に浸透する可能性は小さいと結論しているが、シルト質地層に含まれている水は粘土層で遮られているので直下には浸透しにくいが、横にはゆっくりだが、動くはずである。横に動いて、粘土のないところにきたら、水は下に動く。ドラム缶が埋もれていたシルト層がどの程度広がっているか、ダイオキシンを含む水が拡散していないか知りたい。“

5. 沖縄防衛局の調査は明らかに不正確な分析がある
-沖縄防衛局の調査分析は次の2点で不正確な分析がある。
①たまり水の主な異性体割合 
1,2,3,7,8-PeCDDが多く、これは焼却関連物(焼却灰、焼却飛灰など)に含まれる代表的ダイオキシン類異性体である。これを含まない、「….(2,3,5-T不純物、PCP不純物、およびPCBに由来するダイオキシン類が混在して存在していたと考えられる)(「報告書」、p.30)との内容は正確ではない。
②ダイオキシン類の溶解性を増加させる物質
防衛局の調査では一般土壌に存在する腐植物であるフミン酸やフルボ酸がたまり水に含まれており、ダイオキシン類の溶存体を増加させたものと記載しているが、腐植物以外の埋め立て物(ドラム缶)に起因によるものと推測される。(宮田秀明氏意見書)
                         
このような分析は、これまでの調査結果の範囲内に納めることによって、これ以上問題が拡散しないこと、処理処分についてもできるだけ限定的にしたい意図があるように疑念を持たれる可能性がある。

6. 「監修」する専門家の位置づけ
-沖縄防衛局は報告書を「愛媛大学農学部森田昌敏感客員教授監修の下、とりまとめた」としているが、森田氏の「監修」の位置づけが曖昧である。(池田こみち氏意見書)
   
沖縄防衛局によれば、調査報告のアドバイザー的な役割とのことであるが、報告書内で、どの部分が調査会社の記述・分析で、どの部分が専門家の見解なのか明確でなく、評価の責任の所在が不明である。

7. 埋め立て物は「ドラム缶」とは限らない
-当該地域の埋立物は、全てが金属製のドラム缶であったのか、ポリ袋やダンボール等の非磁気性の容器のものである可能性が示唆されている。 (宮田秀明氏意見書)
                              
8, 沖縄県の水質調査は問題がある。
-調査報告の記述が十分でない。 (國吉信義氏コメント)
                         
この問題は、環境総合研究所『嘉手納基地返還跡地(沖縄市サッカー場)ドラム缶発掘追加調査に関する意見書』(2014年12月16日付けで関係機関に送付済み)でも、「沖縄県の地下水などの周辺環境調査はおざなりなものであり、地域住民に安心材料を与えるには不十分である。(p.28)」と指摘されている。


報道についてはまたまとめてアップします。
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QAB たまり水のダイオキシン類「尋常な濃度ではない」(2015.3.13)
沖縄市サッカー場: たまり水調査に対する専門家意見キーポイント(会見)

QAB ニュース
"沖縄市のサッカー場で発掘されたドラム缶は100本になりましたが、12日、環境団体が現場周辺のたまり水のダイオキシン濃度がかなり高いとする専門家の評価を発表しました。
生物多様性ネットワークの河村雅美ディレクターは「たまり水のダイオキシン濃度は尋常な値ではない」と話します。
会見では沖縄防衛局の調査結果が妥当なものかどうか、3人の専門家に評価を求めた結果が報告されました。
その結果、専門家からはドラム缶周辺のたまり水のダイオキシン類の濃度が「非常に高い」という指摘があがったということです。
また、雨水などによってこの現場に残ったダイオキシン類が今も持続して溶け出している可能性があること、また防衛局の発掘工事によってダイオキシンが土壌や大気で移動し拡散している可能性があることを示しました。
"


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Posted by 沖縄BD at 19:51│Comments(0)
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