巨大コンクリート・ブロック投入と「環境監視等委員会」

2015年02月18日/ 環境監視等委員会/ 辺野古/ 辺野古アセス/ 沖縄防衛局

防衛局との交渉からみえてきたこと
先日2月16日、ジュゴン保護キャンペンセンター(SDCC)が辺野古・大浦湾で強行されている米軍基地建設工事について沖縄県と沖縄防衛局と要請・交渉を行った。要請・交渉の全体の内容はSDCCのブログで報告されているが(ここをクリック)、防衛局との交渉で明らかになった重要な一点についてぜひ紹介したい。

巨大コンクリート・ブロック投入と「環境監視等委員会」

              SDCCと沖縄防衛局との交渉

それは沖縄防衛局が、辺野古・大浦湾にはりめぐらせているアンカーやオイル・フェンスを固定するために投入し、その結果サンゴを壊している巨大コンクリート・ブロックと、沖縄防衛局が設置した「環境監視等委員会」の関係性だ。

環境監視等委員会とは
「環境監視等委員会」は、2013年12月に仲井真弘多前沖縄県知事が埋立承認をした際、沖縄県が留意事項として要請し、2014年4月に防衛局が設置した専門家による委員会だ。同委員会の運営要綱によれば、同委員会は「建設事業を円滑かつ適正に行うため、環境保全措置及び事後調査等に関する検討内容の合理性・客観性を確保するため、科学的・専門的助言を行うことを目的」としている(運営要綱はここをクリック)。

同委員会はこれまで3回(2014年4月、2014年6月、2015年1月)開催されている。しかしその位置づけは、基地建設を前提としており、実際環境保全の担保としてどれだけの役割を担えるのかは不透明な部分が多い。またNGOの再三の要求にも関わらず、沖縄県も2月2日に要求したが、第1回の委員会議事録を除いて、第2回、第3回委員会の議事録は未だに公開されておらず、委員会の協議の内容も非常に不透明なものとなっている。

アンカー(巨大ブロック含む)の設置の流れと第3回環境監視等委員会
さて2014年の7月1日に工事の「着手」があり、その後ボーリング調査のための工事が始まり、2015年1月27日から巨大コンクリート・ブロックの投入があった。工事の一連の流れと第3回環境監視等委員会の開催時について以下のように整理してみた。

工事着手(2014年7月1日)
↓ 
臨時制限区域を示すフロートの設置(2014年8月14日)

フロート固定の鋼板アンカー248個投入

台風19号襲来 (2014年10月10日~12日)

鋼板アンカーやワイヤーロープによるサンゴや藻場の損傷が市民団体により発覚(2014年10月15日、17日)

鋼板アンカー120個消失、またロープ等がサンゴ、藻場を傷つける

第三回「環境監視等委員会」(2015年1月6日)
*鋼板アンカーの消失やサンゴの損傷についても協議

海上での工事再開(2015年1月15日)
オイル・フェンスやフロートを沖へ広げる

オイル・フェンスやフロート固定のために20トン級以上のコンクリート・ブロックを海中に投入(2015年1月27日)

市民団体によりコンクリート・ブロックによるサンゴ破損の問題の指摘(2015年2月8日)。


巨大コンクリート・ブロック投入と「環境監視等委員会」

  巨大コンクリート・ブッロクに押し潰れたサンゴ塊(牧志治撮影 2015年2月8日)


巨大ブロックの投入は誰の判断か
2月16日の要請・交渉でSDCCは、誰が何を根拠にして、通常のアンカーよりはるかに大きい巨大コンクリート・ブロックを投入し、フロートやオイル・フェンスを固定することを決めたのか、と沖縄防衛局に追求した。防衛局の担当は、具体的なことは話せない、と何度も繰り返していた。しかし上の経緯で示したように、第3回環境監視等委員会の協議を経て、巨大なブロックが投入されたことは認めた。

事実、1月6日の環境監視等委員会の第3回委員会後に開かれたブリーフィングでは、台風19号によって設置したアンカー等がサンゴや藻場を傷つけ、また120個のアンカーが消失したことに関連して(朝日新聞の記事はこちらをクリック)、

「今後同規模、それ以上の台風の通過も考えられるということもあるので、必ずしもアンカーの重量を重くする等のハード的な対策だけでなく、事前にうまく避難する等のソフト的な対応も含めて対応すべしという意見あった」という委員長のコメントがなされている。

勿論、第3回委員会の議事録は公開されていないので、協議の詳細(誰がどのような発言をしたか)は分からない。ブリーフィングでの委員長のアンカー重量への言及は、事業者である防衛省/防衛局の「アンカー重量を重くする」という提案に対しての発言だったのかも知れない。あるいは、委員の誰かが提案していて、その提案に対しての委員長の発言だったかもしれない。

いずれにせよ、第3回委員会での検討を踏まえ、沖縄防衛局がとった行動が、巨大コンクリート・ブロックをアンカーとして投入したことだったことは明らかになった。そしてそれが環境保全措置とは言い難い結果へと繋がっている。いやむしろこれが、基地建設ありき/基地建設を前提として設置されたこの委員会が出来る最大限の保全措置なのかもしれない。


環境監視等委員会内で疑義
琉球新報は、1月31日の記事で環境監視等委員会の委員の苦悩を報告している。「委員自らが監視委の客観性確保や環境影響判断の難しさに疑問を呈し、第三者委員会を求めていた」というのだ(琉球新報の記事はここをクリック)。

これは同委員会が設置された第1回委員会のにおいて、基地建設を前提とした上で「最大限の環境監視を科学的に実現すること」とした委員会が、その実現の難しさを吐露したものと言えよう(第1回委員会の議事録はここをクリック。p11に注目)。

安倍政権が強権的に基地建設を押し進め、辺野古・大浦湾の豊かな自然環境を今回のような形で壊し続けるならば、県が留意事項として位置づけた環境監視等委員会の位置づけや役割、そしてその責任は幾度も問われていくであろう。

昨年11月に、日本生態学会など自然科学系の19学術団体が、基地建設の見直しを求めて要請書を沖縄県と国に提出した。要請文では「世界の生物多様性のホットスポットとの一つと認識されているわが国の中でも、極めて生物多様性の高い地域」と指摘し、国の環境アセスも問題視している(同要請書はここをクリック)。また2月16日には、日本環境会議理事会が日米両政府に対して米軍基地建設に向けた埋立て工事の即時中止を要請し、環境大臣に対しては辺野古・大浦湾の海を保全するように求めている(同要請書はここをリック)。

基地建設を強権的に押し進める安倍政権、基地に断固と反対する沖縄県民とその県民に選ばれた翁長知事、そして科学的・専門的認識のもと辺野古・大浦湾の自然環境の保護・保全を訴える学術団体等。その間に板挟みになっているのが環境監視等委員会であり、環境保全の担保と成り得ない同委員会が悲鳴をあげているのは当然だといえるのではないか。日米両政府はこの無謀や基地建設計画を即時撤回すべきだ。


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Posted by 沖縄BD at 10:45│Comments(0)
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