沖縄市サッカー場:ドラム缶たまり水専門家意見3)國吉信義氏①地質から汚染をみる
2015年04月19日/ 沖縄市サッカー場/ 日米地位協定/ 環境協定/ 枯れ葉剤/ 基地返還跡地/ 汚染/ 沖縄県環境政策/ 沖縄防衛局
國吉信義さんのたまり水についての意見書を紹介します。これまでは、ドラム缶内容物の汚染がどのようなものであるかに焦点が当てられてきましたが、たまり水の調査から、汚染の範囲の確定にどのような要素が必要かということが、具体的になってきました。
汚染の拡散や汚染範囲の確定に地質学の面からの要素が必要であることを、國吉さんの意見書からみることができます。
なぜそのような要素が必要なのか?それは汚染の拡がりは、地層の性質や、地層図、地下水分布図などをみて確定しなければならないからです。
嘉手納基地帯水層の境界線を示す國吉さん
國吉さんの意見書は下に貼り付けてあるのでそちらを見てください。
たまり水とは/ドラム缶が埋められていた地層とは
まず、たまり水とは何か、そしてドラム缶が埋められていた地層がどのような性質を持っているのかについて述べています。
土は、もともと水分を含んでおり、たまり水は、ドラム缶が掘り出された時に周辺の土壌からにじみ出たものがたまり水である(雨水とは違うもの)ということがまず説明されています。
この中にある柱状図とは、沖縄防衛局の調査報告書にある以下の図です。詳しくは、リンクをたどってみてください。
「旧嘉手納飛行場(26)土壌等確認調査(その2)」調査報告書 巻末資料ボーリング柱状図 http://www.mod.go.jp/rdb/okinawa/07oshirase/kanri/houkokusyo6/3.pdfより抜粋
ここから、ドラム缶が埋められていた層はシルト質粘土という層であるということがわかります。そして、
國吉さんはそのシルト質粘土の性質について、「浸透性は低い。」が、「全くの非浸透性ではない」と説明しています。
沖縄防衛局の調査報告の問題
そして、地層の性質と水の動き(横にはゆっくりと動く)を鑑み、沖縄防衛局の調査報告の問題を以下のように指摘しています。
つまり、たまり水の直下の動きのみで浸透の可能性や範囲を結論づけることは問題で、シルト質地層の広がりと横への動きを考慮に入れた上で、汚染の拡散の可能性を考えなければならない、ということです。
嘉手納帯水層の境界線は?
また、この粘土層がどこまで広く分布しているかを、上にある写真の米軍の地下水分布図などで調べる必要があるということです。意見にある「嘉手納帯水層の境界線」というのは、粘土層が切れている線です。粘土層は永遠に続いているわけではなく、切れている場合はそこから(水などは)横に動くということです。粘土層は沖縄で「クチャ」と呼ばれている土です。
國吉さんは、サッカー場現地もご覧になり、掘り起こしてある土が褐色であることから、あれは埋め立てのために他所から持ってきた土であろう、もともとの土壌もみるべきであるとおっしゃっていました。
地質学も含めた専門家チームを
このように、地質学的な観点から調査を見るのは非常に重要なことがわかります。
國吉さんは、化学だけでなく、地質学の面、健康の面からの専門家も含め、チームを作って調査にあたるべきであるとおっしゃっていました。
※わかりやすいように、少し米国の例から引いてみます。少し年代としては古いですが、エージェント・オレンジの点からも沖縄ととりまく環境がよく似たグアムのTCE(トリクロロエチレン)の地下水汚染の例からひいてみます。1978年に、飲料水のTCE汚染がグアムのアンダーソン空軍基地で発覚しました。米軍が調査をしましたが、議会の要請により、その調査の精査を、米国のGeneral Accounting Office(現Government Accountability Office、以下GAO) が行いました。その報告書(GAO Report to Congress (May 1987) HAZARDOUS WASTE Abandoned Disposal Sites May Be Affecting Guam's Water Supply)の一部を切り取りました。
この文書をみると、米国環境保護庁、グアム環境保護庁とともに米国地質調査所(United States Geological Survey, USGS)が、基地の汚染調査照会・精査に関わっていることがわかります。
GAO Report to Congress (May 1987) HAZARDOUS WASTE Abandoned Disposal Sites May Be Affecting
Guam's Water Supply
沖縄県の水の調査については、他の専門家からの意見でもでているので、また別記事にします。
沖縄市サッカー場周辺環境調査の結果について(お知らせ)
國吉さんの意見にある”防衛局が、環境を守る目的でない”、という件については私も調査の最初の時点で問題化しており、だからこそより監視の目が必要であり、監視は制度化し、予算化していく必要があると思います。
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たまり水について
“たまり水とはサッカー場西側でドラム缶を掘り出したときの窪地にたまった水です。ドラム缶があった付近3箇所で3.8mの深さまで、ボーリングをしており、その柱状図が示されています。柱状図によると、地表から2m位まではシルト質粘土で、その下1.8m位は粘土質の地層です。粘土は水を通さない非浸透の地層です。その上にあるシルト質とは非常に細かい砂で、水を含むが浸透性は低い。全くの非浸透性ではない。たまり水はドラム缶を掘りだしたとき、周囲のシルト質粘土の壁から、じわじわとにじみ出て、窪地にたまった水でしょう。ドラム缶はシルト質の地層に埋められていました。
防衛局は、たまり水が出た周辺は浸透性の低い地層だから、ダイオキシンを含む水が直下の地盤に浸透する可能性は小さいと結論しています。ドラム缶が発見された所ではシルトの下に1.8m位までは粘土層があります。この粘土層はどの程度まで深く、広く分布しているかわかりません。シルト質地層にふくまれている水は粘土層で遮られているから直下には浸透しにくいが、横にはゆっくりだが、動くはずです。横に動いて、粘土のないところにきたら、水は下に動くでしょう。ドラム缶が埋もれていたシルト層がどの程度広がっているか、ダイオキシンを含む水が拡散していないか知りたいです。
米国地質調査所が軍の依頼で、1965年に嘉手納基地の地下水を調べました。その地下水分布図によると、サッカー場あたりがKadena Aquifer(帯水層)の境界線あたりになっています。防衛局のボーリングで見つかった粘土層がどこまで広く分布しているか知りたいです。“
沖縄県環境保全課の調査について
“この報告書によると、嘉手納基地内の井戸2箇所と運動公園2箇所で地下水を採取しています。4箇所とも分析結果は健康に害する成分は基準以下だったと報告しています。
まず、運動公園内の地下水採取の場所、ドラム缶発掘場所との位置関係、井戸から採取したのか、井戸の深さや水位、井戸のスクリーンの位置、過去にも採取して調べたのか、など知りたいです。県の環境保全課は基地の環境汚染を調べているのか、専門家がいるのか。“
環境省の役割について
防衛局は国を敵からまもるのが本職でしょう。環境を守るのは本職でないと思う。アメリカのEPAは”to protect human health and environment”といって両方を本職としています。沖縄の基地の環境問題でなぜ日本の環境省が関与していないのか。環境省には基地汚染の専門家がいるはずです。私が嘉手納基地の環境保全部で働いていたとき、東京の環境省の人たちが定期的に嘉手納基地に来て、排水口のサンプリングをしていました。私が案内しました。
(沖縄・生物多様性市民ネットワーク河村雅美へのメールより抜粋)
(PDF: 150.58KB)
汚染の拡散や汚染範囲の確定に地質学の面からの要素が必要であることを、國吉さんの意見書からみることができます。
なぜそのような要素が必要なのか?それは汚染の拡がりは、地層の性質や、地層図、地下水分布図などをみて確定しなければならないからです。
嘉手納基地帯水層の境界線を示す國吉さん
國吉さんの意見書は下に貼り付けてあるのでそちらを見てください。
たまり水とは/ドラム缶が埋められていた地層とは
まず、たまり水とは何か、そしてドラム缶が埋められていた地層がどのような性質を持っているのかについて述べています。
“たまり水とはサッカー場西側でドラム缶を掘り出したときの窪地にたまった水です。ドラム缶があった付近3箇所で3.8mの深さまで、ボーリングをしており、その柱状図が示されています。柱状図によると、地表から2m位まではシルト質粘土で、その下1.8m位は粘土質の地層です。粘土は水を通さない非浸透の地層です。その上にあるシルト質とは非常に細かい砂で、水を含むが浸透性は低い。全くの非浸透性ではない。たまり水はドラム缶を掘りだしたとき、周囲のシルト質粘土の壁から、じわじわとにじみ出て、窪地にたまった水でしょう。ドラム缶はシルト質の地層に埋められていました。
土は、もともと水分を含んでおり、たまり水は、ドラム缶が掘り出された時に周辺の土壌からにじみ出たものがたまり水である(雨水とは違うもの)ということがまず説明されています。
この中にある柱状図とは、沖縄防衛局の調査報告書にある以下の図です。詳しくは、リンクをたどってみてください。
「旧嘉手納飛行場(26)土壌等確認調査(その2)」調査報告書 巻末資料ボーリング柱状図 http://www.mod.go.jp/rdb/okinawa/07oshirase/kanri/houkokusyo6/3.pdfより抜粋
ここから、ドラム缶が埋められていた層はシルト質粘土という層であるということがわかります。そして、
國吉さんはそのシルト質粘土の性質について、「浸透性は低い。」が、「全くの非浸透性ではない」と説明しています。
沖縄防衛局の調査報告の問題
そして、地層の性質と水の動き(横にはゆっくりと動く)を鑑み、沖縄防衛局の調査報告の問題を以下のように指摘しています。
”防衛局は、たまり水が出た周辺は浸透性の低い地層だから、ダイオキシンを含む水が直下の地盤に浸透する可能性は小さいと結論しています。ドラム缶が発見された所ではシルトの下に1.8m位までは粘土層があります。この粘土層はどの程度まで深く、広く分布しているかわかりません。シルト質地層にふくまれている水は粘土層で遮られているから直下には浸透しにくいが、横にはゆっくりだが、動くはずです。横に動いて、粘土のないところにきたら、水は下に動くでしょう。ドラム缶が埋もれていたシルト層がどの程度広がっているか、ダイオキシンを含む水が拡散していないか知りたいです。”
つまり、たまり水の直下の動きのみで浸透の可能性や範囲を結論づけることは問題で、シルト質地層の広がりと横への動きを考慮に入れた上で、汚染の拡散の可能性を考えなければならない、ということです。
嘉手納帯水層の境界線は?
また、この粘土層がどこまで広く分布しているかを、上にある写真の米軍の地下水分布図などで調べる必要があるということです。意見にある「嘉手納帯水層の境界線」というのは、粘土層が切れている線です。粘土層は永遠に続いているわけではなく、切れている場合はそこから(水などは)横に動くということです。粘土層は沖縄で「クチャ」と呼ばれている土です。
"米国地質調査所が軍の依頼で、1965年に嘉手納基地の地下水を調べました。その地下水分布図によると、サッカー場あたりがKadena Aquifer(帯水層)の境界線あたりになっています。防衛局のボーリングで見つかった粘土層がどこまで広く分布しているか知りたいです。“"
國吉さんは、サッカー場現地もご覧になり、掘り起こしてある土が褐色であることから、あれは埋め立てのために他所から持ってきた土であろう、もともとの土壌もみるべきであるとおっしゃっていました。
地質学も含めた専門家チームを
このように、地質学的な観点から調査を見るのは非常に重要なことがわかります。
國吉さんは、化学だけでなく、地質学の面、健康の面からの専門家も含め、チームを作って調査にあたるべきであるとおっしゃっていました。
※わかりやすいように、少し米国の例から引いてみます。少し年代としては古いですが、エージェント・オレンジの点からも沖縄ととりまく環境がよく似たグアムのTCE(トリクロロエチレン)の地下水汚染の例からひいてみます。1978年に、飲料水のTCE汚染がグアムのアンダーソン空軍基地で発覚しました。米軍が調査をしましたが、議会の要請により、その調査の精査を、米国のGeneral Accounting Office(現Government Accountability Office、以下GAO) が行いました。その報告書(GAO Report to Congress (May 1987) HAZARDOUS WASTE Abandoned Disposal Sites May Be Affecting Guam's Water Supply)の一部を切り取りました。
この文書をみると、米国環境保護庁、グアム環境保護庁とともに米国地質調査所(United States Geological Survey, USGS)が、基地の汚染調査照会・精査に関わっていることがわかります。
GAO Report to Congress (May 1987) HAZARDOUS WASTE Abandoned Disposal Sites May Be Affecting
Guam's Water Supply
沖縄県の水の調査については、他の専門家からの意見でもでているので、また別記事にします。
沖縄市サッカー場周辺環境調査の結果について(お知らせ)
國吉さんの意見にある”防衛局が、環境を守る目的でない”、という件については私も調査の最初の時点で問題化しており、だからこそより監視の目が必要であり、監視は制度化し、予算化していく必要があると思います。
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たまり水について
“たまり水とはサッカー場西側でドラム缶を掘り出したときの窪地にたまった水です。ドラム缶があった付近3箇所で3.8mの深さまで、ボーリングをしており、その柱状図が示されています。柱状図によると、地表から2m位まではシルト質粘土で、その下1.8m位は粘土質の地層です。粘土は水を通さない非浸透の地層です。その上にあるシルト質とは非常に細かい砂で、水を含むが浸透性は低い。全くの非浸透性ではない。たまり水はドラム缶を掘りだしたとき、周囲のシルト質粘土の壁から、じわじわとにじみ出て、窪地にたまった水でしょう。ドラム缶はシルト質の地層に埋められていました。
防衛局は、たまり水が出た周辺は浸透性の低い地層だから、ダイオキシンを含む水が直下の地盤に浸透する可能性は小さいと結論しています。ドラム缶が発見された所ではシルトの下に1.8m位までは粘土層があります。この粘土層はどの程度まで深く、広く分布しているかわかりません。シルト質地層にふくまれている水は粘土層で遮られているから直下には浸透しにくいが、横にはゆっくりだが、動くはずです。横に動いて、粘土のないところにきたら、水は下に動くでしょう。ドラム缶が埋もれていたシルト層がどの程度広がっているか、ダイオキシンを含む水が拡散していないか知りたいです。
米国地質調査所が軍の依頼で、1965年に嘉手納基地の地下水を調べました。その地下水分布図によると、サッカー場あたりがKadena Aquifer(帯水層)の境界線あたりになっています。防衛局のボーリングで見つかった粘土層がどこまで広く分布しているか知りたいです。“
沖縄県環境保全課の調査について
“この報告書によると、嘉手納基地内の井戸2箇所と運動公園2箇所で地下水を採取しています。4箇所とも分析結果は健康に害する成分は基準以下だったと報告しています。
まず、運動公園内の地下水採取の場所、ドラム缶発掘場所との位置関係、井戸から採取したのか、井戸の深さや水位、井戸のスクリーンの位置、過去にも採取して調べたのか、など知りたいです。県の環境保全課は基地の環境汚染を調べているのか、専門家がいるのか。“
環境省の役割について
防衛局は国を敵からまもるのが本職でしょう。環境を守るのは本職でないと思う。アメリカのEPAは”to protect human health and environment”といって両方を本職としています。沖縄の基地の環境問題でなぜ日本の環境省が関与していないのか。環境省には基地汚染の専門家がいるはずです。私が嘉手納基地の環境保全部で働いていたとき、東京の環境省の人たちが定期的に嘉手納基地に来て、排水口のサンプリングをしていました。私が案内しました。
(沖縄・生物多様性市民ネットワーク河村雅美へのメールより抜粋)
(PDF: 150.58KB)
Posted by 沖縄BD at 18:12│Comments(0)
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