西普天間環境アセス配慮書への意見書を宜野湾市に提出しました

2015年03月28日/ 日米地位協定/ 環境協定/ キャンプ瑞慶覧/ 基地返還跡地/ 汚染/ 西普天間/ 沖縄県環境政策

 
 西普天間住宅地区が3月31日に返還予定ですが、その前に環境影響評価の手続きが始まりました。配慮書の公告縦覧が2月18日に県内紙と宜野湾市基地政策部まち未来課、およびそのHPで行われました。 

 これは、沖縄県環境影響評価条例改正後、初の条例適用ケースであり、返還跡地利用特措法改正後の初の事例でもあります。沖縄BDでも、沖縄市の経験やこれまで西普天間でおきている問題を踏まえ、3月20日(〆切日)に宜野湾市に提出しました。
 
 米軍基地跡地という特性を反映していない配慮書であること、また、各機関で予定している調査や支障除去、このアセス手続きなど調査手続きが錯綜していることなど、多くの問題があると思います。
 
 以下、意見書を貼りつけます。沖縄防衛局、沖縄県、北谷町などにも後日、写しを送付する予定です。 
 途中で挿入している図は意見書にはありませんが、わかりやすいように配慮書から引用しています。
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「(仮称)西普天間住宅土地区画整理事業計画段階環境配慮書」に対する意見書


2015年3 月20 日
宜野湾市長殿
 
沖縄・生物多様性市民ネットワーク
共同代表/ディレクター 河村 雅美
共同代表        吉川 秀樹
沖縄県宜野湾市志真志4-24-7 セミナーハウス304
                    NPO法人「奥間川流域保護基金」事務所内
                            TEL/FAX:098-897-0090 

 沖縄・生物多様性ネットワーク(沖縄BD)は、元米軍跡地沖縄市サッカー場の汚染問題など、米軍跡地の調査の問題に監視・評価・アドボカシーグループとして取り組んでいます。また、辺野古新基地建設や、恩納村通信所跡地の環境影響評価などにも関わり、環境影響評価制度の問題にも取り組んできました。
 その観点から、意見書を提出します。

意見1. 対象地が米軍跡地であるという固有の問題が大前提で書かれていないことは、環境影響評価の配慮書として体をなしていない。よって、土壌汚染の予測が杜撰である。これまでの米軍基地跡地で、予測がつかない投棄がされ、汚染が広範囲に拡がる可能性があるという沖縄での経験が反映されていない。支障除去調査のためにもこれまでの経験をレビューし、環境影響評価に反映させること。

理由:
(2)地域特性の概要
「計画地は、沖縄島中部の駐留軍用地の返還跡地である」と概要書4-2には書かれているものの、土壌汚染について、「事業活動に伴って発生する悪臭原因物の排出(漏出を含む)を規制する地域の規制基準が悪臭防止法に基づいて定められている。また、計画地及び周辺には土壌汚染源となるような鉱山跡地は存在しない」と評価されている。まずここが、汚染の可能性の高い米軍基地跡地であり、米軍の施設目的からは予想しにくい投棄があるという固有の状況を前提としておらず、「鉱山跡地」という一般的な汚染源を前提に予想していることは問題である。
既に、西普天間跡地の文化財調査でも環境基準値の3倍の鉛が検出され、追加調査が提案されている。沖縄市のサッカー場も、発見されたドラム缶のたまり水のデータから、ダイオキシンが移動し、長期間の溶出している可能性も示唆されている。北谷町桑江伊平地区土地区画事業では、土壌汚染が発覚し、沖縄防衛局「桑江土壌調査調査報告書」(平成25年3月)によると、油汚染、ベンゼン、鉛、調査地付近では過去に六価クロム、ヒ素といった重金属類による汚染も確認されている。また、地下水と共に移動されることも懸念されている。このような実情の反映がない配慮書は問題である。
西普天間環境アセス配慮書への意見書を宜野湾市に提出しました



意見2. 汚染の影響なども含め、隣接市町村等の行政機関の長の意見も配慮すべきである。宜野湾市は、北谷町域への影響を配慮書で記述しているが配慮していない。

理由:
配慮書概要書では「なお、計画地及び隣接地域は宜野湾内であるとともに、一般の意見を聴取するため公告・縦覧の機会を設けることから、隣接市町村等の関係する行政機関の長の意見は求めないこととする。」(2-5)と書かれているが、まずこの文自体、なぜ「一般の意見を聴取するため公告・縦覧の機会を設けること」が、「隣接市町村等の関係する行政機関の長の意見は求めないこととする」理由となるか、わかりづらい。行政機関の長が一般の意見の中で意見を述べるとは考えにくいし、意見を述べるならば、隣接地域の自治体の長として意見を述べるべきであろう。「第 3 章 対象事業実施想定区域及び配慮書対象事業に係る環境影響を受ける範囲であると想定される地域の概況」では、「対象事業実施想定区域及び配慮書対象事業に係る環境影響を受ける範囲であると想定される地域については、図 3.1 に示す宜野湾市域と北谷町域の一部を範囲とする。」と記述されており、少なくとも北谷町には宜野湾市と同様の機会を設けるべきである。
また、計画地、隣接地域は宜野湾内であっても、掘削、解体による大気汚染、地下水の影響の範囲などの不確定要素が多い。沖縄市サッカー場でも、その問題が指摘されている。また、「キャンプ瑞慶覧(西普天間住宅地区)の跡地利用に関する協議会」議事録6回では、水道管の問題も指摘されており、隣接市町村には様々な機会を通して、情報共有、意見聴取をすべきであると考える。
西普天間環境アセス配慮書への意見書を宜野湾市に提出しました


意見3. 調査設計が錯綜していることは問題である。各々の調査設計や調査結果を踏まえた全体のフローチャートがなく、協議会内でも問題が指摘されているところ、8月に文化財発掘で汚染が発見され、鉛汚染の追加調査が提案されている事態となっている。このような錯綜した状態でさらにアセスが開始されており、今後の全体設計、支障除去過程で発覚した問題とアセスの進行がどうなるのかが不明の状態であることは問題である。

理由:
支障除去調査と環境アセスの関係等については、沖縄BDも沖縄県への要請、陳情などで確認を求めてきたが、明確な回答は得られなかった。
協議会でも整理がされておらず、「キャンプ瑞慶覧(西普天間住宅地区)の跡地利用に関する協議会」第6回議事録では、以下のようなやりとりがされている(2014年8月12日)。
“【宜野湾市:伊佐部長】「支障除去のスケジュールとうちの文化財の調査がいま一つかみ合っていないような気がいたします。表面調査とですね。かみ合うように一つよろしくお願いいたします。
」【沖縄防衛局:三沢課長】「そこはおつしやるとおり、まだかみ合っていません。我々も今回、ある程度の調査計画は立案したものの、まだ細かいところが検討できていないところがありますので、そこは1つずつきちんと整理しながら調整していきたいと思っています。そこは逆にこちらからもよろしくお願いします。」” 

このように整理がされていない中、2014年6月24日に返還前の掘削を伴う埋蔵文化財調査について日米合意がなされ、沖縄防衛局が「返還実施計画」を発表し、沖縄防衛局HPで支障除去調査の事前調査にあたる調査報告書「キャンプ瑞慶覧(西普天間住宅地区)(25)支障除去措置に係る資料等調査報告書」(以下、「資料等調査報告」)が公開され、8月15日から、宜野湾市による立入り及び調査が可能となって、文化財試掘調査が開始された。しかし、試掘調査中(18~22日)に、ドラム缶、土中の3地点での異臭が確認され、調査は中止となった。その後、沖縄防衛局による汚染調査が実施され、「資料等調査報告」では予見できなかった埋め立て物や、鉛の汚染が発覚している。鉛の汚染は、調査報告書でも深度を伴う追加調査が提案されており、その実施については返還後に予定されるとのことである。作業員の安全が確保されないまま、スケジュールの遅れをとりもどすかのように2015年2月には文化財調査が再開されている。このように未整理のまま、錯綜した調査体制で環境アセスがさらに進められているが、他の調査の結果も踏まえ、どのようにアセスを実施していくのかが不明であることは、問題である。現に、文化財発掘調査で発覚した汚染調査(これ自体問題があることは沖縄BDは市長に指摘している(「キャンプ瑞慶覧西普天間住宅地区返還予定地の汚染について(要請)」(2015.2.10)の配慮書への組み込み方はおざなりであり、協議会の議論も反映されていない。
早期の利用ありきのスケジュール内で環境アセスを進めることは問題である。

意見4. 配慮書の作成者、作成過程、関わった専門家などが不明であり、透明性、説明責任が担保されていない

理由:誰がどのように配慮書における案を策定したのか、専門家として誰が関わっているのか明示されていない。コンサルタント会社が関わったのか、宜野湾市が書いたのか、策定過程の透明性や、説明責任が担保されていない。依拠した使用資料や調査者などのリストも調査の信頼性の確保のためにもきちんと掲載すべきである。

意見5. 環境影響評価制度の趣旨を踏まえ、説明のわかりやすさ、意見提出の方法に配慮し、双方向性のあるコミュニケーション過程を実現してほしい。

理由:
環境影響評価制度は、コミュニケーション過程が重要であり、市民の情報入手の方法や、、意見提出の方法に対しての配慮が必要とされる。
しかし、前文から「法改正などもその趣旨を踏まえ、電子縦覧を義務化するなど、情報の。沖縄県環境影響評価条例(平成十二年沖縄県条例第七十七号)第四十一条の二第三項の規定により読み替えて適用される同条例第四条の三第一項の規定により計画段階環境配慮書(以下「配慮書」という。)を作成しましたので、下記の事項を公告します。」と公告の法的根拠から始まり、その後、読み替えについてのわかりやすい説明などもない。 
 また、公告縦覧時は意見提出方法について、全く記載がなく、沖縄BDからの問い合わせに応えて意見提出方法を課で協議し、「直接窓口へ提出又は郵送による提出」の記載がアップされたという経緯がある。当初は意見を広く募ることを意図せず、意見を提出する立場に立って提出方法を考えることも行われていなかったのではないかと考えられるような姿勢であった。
より広く意見を募るように市としては姿勢を改め、電子縦覧を行っているのであれば、メールによる受付なども検討し、儀式としての公告縦覧ではなく、双方向性のコミュニケーション回路を備えた実質的な制度となることが必要である。

意見6. 本アセスについて、配慮書実施前の議論や、説明などが必要であったのではないか。説明会については努力義務規程ではあるが、事後でも自主的に実施するべきである。

理由:
本アセスは、沖縄県環境影響評価条例改正後初のアセス、つまり初の「配慮書」過程であること、跡地利用特措法改正後、返還跡地に適用される初のアセスであり、行政や県民にとって、初めでの事項が多く、議論すべきこともあったのではないかと考えられる。法制度の問題についても、市民が独自で理解することも難しい。アセス実施の前に議論もなく、説明もなかったことは問題ではないか。特に米軍からの返還前の跡地で立ち入りや調査、情報入手が制限されている状態で、配慮書を実施することの妥当性については議論が必要であったといえる。ただでさえ、事業アセスメントの欠陥を是正するための、真の意味での戦略的環境アセス(SEA)になりえないとして批判されている日本のSEAの問題と、利用優先の制度設計になっていると見受けられる跡地利用計画の現状を踏まえ、県レベルでの議論が必要であったといえる。特に、汚染の問題で環境・安全面で配慮しなければならない問題が発生する可能性の高い場で、限られた情報で方向性を決定することについては、慎重な議論が必要ではないか。
また、説明会の開催は県条例4条の6-2(配慮書についての意見の聴取)の努力義務規程になっているが、努力義務規程であるからやらなくてもよい、と考えずにアセスの趣旨を踏まえ、事後であっても市民が参加しやすい日時を設定し、開催すべきである。また方法書では説明会開催は義務となっているので、市民が参加しやすい日時で複数回設定することを望む。

総じて、このように、不備の多い配慮書であるため、今後のアセス過程では、市民や専門家の意見を踏まえ、環境・安全を第一義的に考え、場合によってはデュープロセスによらない対処をすることも検討するべきであると考える。
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キャンプ瑞慶覽(西普天間住宅地区)の跡地利用に関する協議会の会議録は「キャンプ瑞慶覧(西普天間住宅地区)及び周辺地域の環境調査浄化問題を考える勉強会」に提供いただきました。 



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Posted by 沖縄BD at 23:23│Comments(0)
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