沖縄21世紀ビジョン基本計画(案)に対する意見(沖縄BD)

2011年12月19日/ パブコメ

沖縄県が策定中の、沖縄21世紀ビジョン基本計画(仮称)(案)とそれに関する基本プロジェクト(案)への沖縄BDのパブリックコメントを提出しました。

一般の締め切りは来年の1月13日なのですが、自然保護課が環境団体の意見をとりまとめたい、ということでこの時期での提出です。

みなさんも、関心のある方は、提出した沖縄BDのコメント等を参考にして、パブコメを提出してみて下さい。
このサイトで基本計画(案)を含めた情報が見れます。

http://www3.pref.okinawa.lg.jp/site/view/contview.jsp?cateid=28&id=25707&page=1
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沖縄県環境生活部 自然保護課長様                       2011年12月13日
沖縄県企画部企画調整課様                      

                                       沖縄・生物多様性市民ネットワーク 
                                       事務局長 吉川秀樹
                                      
沖縄21世紀ビジョン基本計画(仮称)(案)及び基本プロジェクト(案)に対する意見書


沖縄・生物多様性市民ネットワークは、生物多様性条約(CBD)を、沖縄という地域で読み解き、実践していくため、「環境」「平和」「人権」の繋がりを重点に活動を行っているNGOである。その立場から、以下の意見を述べる。

Part I 沖縄21世紀ビジョン基本計画(仮称)(案)への意見

1)県民へのアンケート調査の結果等を基盤にして策定された沖縄21世紀ビジョン。その21世紀ビジョンに基づいて、包括的に、そして多様な部局にまたがる形で基本計画(案)策定の努力がなされていることは、大いに評価されるべきだと考える。また21世紀ビジョンの存在が、県の努力により、県民に認識されつつあることも評価されるべきだと考える。

2)21世紀ビジョンで示された基本理念が、基本計画の第1章総説の部分で十分に反映されているとはいえないのではないか。例えば21世紀ビジョンの基本理念には、「平和と豊さ」と示されているが、「1 計画策定の意義」において、「安全保障問題」という文言はあるが、「平和」という文言がない。「3計画の目標」には「平和」という文言が出ていることもあり、整合性という視点からも、「計画策定の意義」において言及することは必要だと考える。また現代社会の普遍的理念とも言える「人権尊重」という概念が、21世紀ビジョンでは「21世紀に求められる人権尊重と共生の精神を基に」と明記されているが、「人権尊重」という文言は基本計画では出てこない。21世紀ビジョンで示された基本的理念は、第1章、第2章で特に明確に反映されるべきであると考える。

3) 基本計画全体として、計画を支える財源についての言及が欠けていると考える。数カ所で財源確保への言及があるが(例えばP25の海岸漂着物の「処理費用の財源確保」)、唐突感が否めない。少なくとも基本計画実現のための財源確保について(確保するという姿勢へ)の言及は、第1章か、第2章で必要だと考える。

4)自然環境に対する認識や位置付けが弱いと考える。生命の基盤としての自然環境、という捉え方が必要であり、明確に記述されるべきであると考える。例えば、陸域・水辺環境の保全(p21)の部分で「野生生物にとって住みよい環境や県民の憩いの場としての自然環境を確保するため、森林・河川・干潟・藻場等の陸域・水辺環境を保全します。」とあるが、「憩いの場」だけではなく、「生命の基盤」(「生態系サービス」の提供)としての環境の認識を明確に示すべきだと考える。

5)「ア 生物多様性の保全」(P21)において、また「北部圏域」「ア 環境共生型社会の構築」(P123)においても、マングースの防除が強調されているが、現在使用されているマングース防除のわなによる希少種の混獲も大きな問題である。「希少種の混獲を避けながら」という趣旨の文言も入れるべきだと考える。

6) 「琉球諸島の世界自然遺産登録に向けて、やんばる地域の国立公園化や外来種対策に取り組むとともに、地域住民への普及啓発を図るなど世界自然遺産の登録に向けた条件整備等に務めます」(P21)の部分で、北部訓練場を使用する米軍との調整についても言及するべきだと考える。また、沖縄県がイニシアチブをとって、IUCNやUNESCO機関への働きかけることが重要であり、それゆえの「国際的にも働きかける」という趣旨の文言も入れるべきだと考える。

7)「ウ 自然環境の再生」(P22)の部分の記述が弱い。もう少し具体的に書くべきだと考える。特に現在環境破壊が進行している地域と、その地域における環境再生の関連について言及すべきだと考える。また最後の文の意味自体が非情に分かりにくいので、もっと丁寧に書くべきであると考える。

8)「オ 県民参画と環境教育の推進」(P23)において、「自然環境の次世代継承に向けた環境醸成を図る」とあるが、「自然環境」と「環境醸成」の文言が類似していて、混乱を招く恐れがある。「環境醸成」は制度やしくみといった社会環境を指すものと考えられるが、もしその意味ならが、異なる表現にしたほうが分かり易いのではないか。

9)「イ クリーンエネルギーの推進」において「島しょ地域の特性を生かした海洋エネルギー」とあるが、海洋エネルギーにもいろいろあるので、具体的な例をあげて説明するべきだと考える。

10) 「ア 沖縄の文化の源流を確認できる環境づくり」(P26)において、「沖縄文化の基層であり文化遺産として世界的な価値を有する“しまくとぅば”については」とあるが、そこで「世界的な価値を有しながら、消滅の危機にある」という形で、現状の説明を併記するかたちで表したほうがよいのでないか。また「“”」が使われているが、本計画案の他の部分では見られないので、統一した表記を使用すべきだと考える。

11)「(5) 米軍基地から派生する諸問題及び戦後処理問題の解決」[基本施策の展開方向](P45)において、沖縄が米国政府と調整を図るための独自の機関/制度の設置への検討について言及すべきだと考える。これは「1 基地問題の解決と駐留軍用地跡地利用(3) 解決への道筋」(P110−111)でも言及されるべきだと考える。

12) 基本計画ではNPOという文言だけが使われ、NGOという文言がないが、NGOも併記するべきだと考える。NPOとNGOは、必ずしも同じものではなく、NPOがNGOを含むものではない。意識的に、NGOとして活動しているグループがあることを考慮するべきである。また世界のウチナーンチュとのネットワーク構築を考え、この基本計画が海外でも読まれることを考えた場合、市民社会を表すグループの表記として国際的により浸透しているNGOという文言をいれるほうが分かりやすいと考える。

13) アルファベット表記がでてきた場合は、その意味が日本語で記載されているが、MICE(P55)には日本語の説明表記がない。会議やイベント等であることを説明表記するべきだと考える。

14)「ウ 海洋資源調査・開発の支援拠点形成」(P67)において、「我が国」の資源開発であることが言及されるのは分かるが、他国との共生的関係についての視点も示されるべきだと考える。

15)「カ 亜熱帯・島しょ性に適合した農林水産業の基盤整備」(P71〜72)において、森林・林業の新たな方向性として、森林の「調査」「保全」を明確に打ち出すこと、そしてそれ自体が雇用創出となる可能性があることを示すべきだと考える。

16)「(13)駐留軍用地跡地の利用促進」(P88)において、土地引取前の「原状回復措置の徹底」を国に要求しているが、「回復措置」を事業として行い、県内の雇用促進と結びつける、という方向性を示すことも必要だと考える。またそこで習得された環境回復の知見や技術は、県外、海外にも輸出できるのではないか。同様のことを、「1 基地問題の解決と駐留軍用地跡地利用」(P108−111)においても、示す必要があると考える。

17)「ウ 国益に資する平和・人権協力外交の展開」(P95)とあるが、この文言は分かりにくい。「国益に資する」という文言があるために、ここでの文言全体が限定的な印象を与えると同時に、では「県益」はどうなるのだろうかという疑問がでてくる。むしろ、「平和・人権協力外交の展開」としたほうが、国際的にも開かれた沖縄の立場を示すと考える。

18)「6 多様な能力を発揮し、未来を拓く島を目指して」全体において、特に「(1)沖縄らしい個性を持った人作りの推進」(P97)において、「人権」を尊重する、守る、ということについての言及が必要だと考える。沖縄の近代史や現状において、「人権」を尊重する、守るということの大切さは常に問われてきたはずである。また、「人権」は、人類の普遍的な概念として位置づけられており、「人作り」には不可欠であると考える。

19)「域別展開の基本方向」「中部圏域」(P129—134)において、沖縄最大の干潟である泡瀬干潟への言及がなく、中城湾港が「産業支援港湾」として強調され(P130)、泡瀬地域が「スポーツコンベンション拠点の形成」(P131)としてのみ強調されている印象を受ける。少なくとも、泡瀬干潟への言及と、泡瀬干潟と「スポーツコンベンション拠点の形成」の関係について言及されるべきだと考える。また、中城湾近郊においても、モズクの養殖などによる水産業への言及も必要だと考える。

20)「域別展開の基本方向」「南部圏域」(P135〜140)において、ラムサール条約に指定された漫湖公園/湿地への言及がない。都市地域におけるラムサール条約に認定された漫湖/湿地の存在は非常に重要であり、環境と経済の豊さを持つ地域発展の方向性を象徴するものであり、その存在と重要性は言及されるべきあると考える。
Part II: 沖縄21世紀ビジョン基本計画(仮称)(案)に係る基本プロジェクト(案)に対する意見

1)沖縄21世紀ビジョン基本計画(仮称)(案)では、施策展開の基軸的な考えとして「沖縄らしい優しい社会の構想」が最初にあり、その後に「強くしなやかな経済の構築」が位置づけられている。しかし、基本プロジェクト(案)ではその順番が逆になっており、なぜそのような構成になったのかについての説明がない。基本計画(案)と基本プロジェクト(案)の構成に整合性を持たすか、そうでなければ、なぜ順番が逆なのかの説明が必要であると考える。

2)自然環境に関係するプロジェクトの記載は、概して具体性に乏しく、基本計画の内容を書き写しただけのものも多い(例えば46、47など)。もう少し具体性が見えるような記述が出来ないものか。
また、自然環境の調査や保全活動と雇用が結びつくようなプロジェクトの提案ができないものかと考える。

旧態依然の、環境保全は経済活動に結びつかない、あるいは妨げる、という発想が、この基本プロジェクト(案)の根底にあり、それが自然環境に関係するプロジェクトの記載内容の乏しさに反映されているのではないか。発想の転換が必要であると考える。

3)環境生活部も関わるべきだと思われるプロジェクト(49、50、51)に、環境生活部が担当部局になっていない。これまでの縦割り行政の延長でしかないような印象を受ける。環境生活部が関わるべきだと考える。
「49 再生可能エネルギー研究開発・普及推進プロジェクト」は、普及推進にも踏み込む わけであり、そこには環境生活部が担当する環境アセスとの関係が生じる。

「「50 沖縄らしい風景・まちなみ創生プロジェクト」では、自然環境の保全や再生なども 関係している。

「51花と緑と香りの美ら島づくりプロジェクト」では、都市緑化、道路緑化、郊外・農山村緑 化が行われることになっている。自然保護課はCOP10において、都市における生 物多様性についての会議に参加しており、その知見が活用できるのではないかと考え る。

4)「46 琉球諸島世界自然遺産プロジェクト」には、教育庁も担当部局として関わるべきであると考える。沖縄に生息する希少種には県の天然記念物になっているものがあり、天然記念物の指定は県の教育庁が関わっているからである。

5)文言の整合性が欠けているような箇所が幾つかある。例えば、「47 沖縄らしい自然再生プロジェクト」「自然環境の利用に関するルールづくり」において、「沖縄らしい環境影響評価制度の検討」とあるが、その下位の文章では、「制度を再構築する」となっている。これは「検討」なのか、それとも制度構築まで踏み込むのか明確ではない。

これまでの環境影響評価制度の形骸化を考えると、「沖縄らしい環境影響評価制度の再構築と推進」という方向で取組むべきだと考える。

6)概して、記載されているプロジェクトが、これまでの継続プロジェクトなのか、それとも新しいものなのかが分かりにくい。特に自然環境に関わるプロジェクトはそうである。違いを明確に表記すべきだと考える。

7)「47 沖縄らしい自然再生プロジェクト」において、「野生生物にとって住みよい(棲みよい?)環境や県民の憩いの場としての自然環境の確保」とあるが、これでは、自然再生プロジェクトは人間にとっては「憩いの場」を作るためのプロジェクトだとしか受け止められない。上記でも示したように、「生命の基盤」(「生態系サービス」の提供)としての自然環境、という認識を明確に示す、その認識をもってプロジェクトを計画、実行していくべきだと考える。


以上。

意見のご検討をよろしくお願いします。
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沖縄21世紀ビジョン基本計画(案)に対する意見(沖縄BD)
執筆者、事務局長吉川さん環境省那覇自然環境事務所主催「いちむぬんうはなし会」でのするどい質問風景。

一方、事務局次長のわたしといったら、まーや(イリオモテヤマネコ)、くいちゃん(ヤンバルクイナ)、あまくろ(あまみのくろうさぎ)といっしょに写真をとっていました。
沖縄21世紀ビジョン基本計画(案)に対する意見(沖縄BD)


「沖縄21世紀ビジョン基本計画(仮称)(案)とそれに関する基本プロジェクト(案)への沖縄BDのパブリックコメント」
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Posted by 沖縄BD at 17:11│Comments(0)
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