沖縄平和学会での発表「調査を監視・評価するという市民の試み」

2013年10月28日/ イベント事後レポート/ 枯れ葉剤/ 基地返還跡地/ 汚染

10月20日に琉球大学で沖縄平和学会が開催されました。私、河村雅美は、阿部小涼さん(琉球大学法文学部)をファシリテーターとする「危機の時代の研究と運動:調査する市民の権利と研究者」のセッションで、宮城秋乃さん(日本鱗翅学会自然保護委員)、渡嘉敷健先生(琉球大学工学部准教授/環境工学)と発表する機会をいただきました。
 セッションの趣旨についてはお知らせのこちらの記事に記してあります。
 
 宮城さんは高江のヘリパッド問題、渡嘉敷先生はオスプレイの問題を、私は、「調査を監視・評価するという市民の試み:沖縄市サッカー場汚染調査の事例から」というテーマで発表しました。
 
沖縄平和学会での発表「調査を監視・評価するという市民の試み」

photo: Reiko Miyajima


調査へ市民が関わるスタイルにはどのようなものがあり、沖縄市サッカー場汚染調査の事例は、「行政の調査を監視する・批判する」という従来の意味に加え、「評価する」「意味づけを周知する」という意味があったことを中心に話しました。パワーポイントを下に貼り付けるのでご参考にご覧ください。

 そもそも、沖縄・生物多様性市民ネットワークが、沖縄市サッカー場汚染調査へ関わっていったのは、「枯れ葉剤」の問題への取り組みの中で、 「調査のあり方」を学び、過去の調査の事例の精査する機会があったことが背景にありました。

 そして、6月13日、沖縄市サッカー場の工事現場でのドラム缶発見から、調査のあり方をメディアや要請で提言していったこと、沖縄市が画期的クロスチェック調査を行ったことは知るとおりです。
  深刻な汚染が発覚したことは報道されましたが、沖縄市の独自調査の意味についてはわかりにくかったため、それを意味づけ、周知していくことをしていったこと、自らが発信するとともに、専門家の意見を裏づけて、「評価」の活動をしていったことを話していきました。 
  さらに、沖縄市一自治体の良例とするだけでなく、評価する調査体制を恒常化、制度化するために、沖縄県の役割を問うていったことや、基地汚染実態・性質がこのケースから学べるという重要性について語りました。
  直面する嘉手納以南の跡地返還の問題への取り組みでも重要なケースであることを最後に強調しました。

 「研究」と「運動」を結ぶ、という点では、私は汚染や化学物質の研究者ではなく基本的には社会学者のため、少し考察が難しかったのですが、「分野」「領域」ではない研究者的な「視点」、混沌の中でフレームワークを提示していく、という役割を果たしているかもしれない、ということを議論の提供材料として投げてみました。「枯れ葉剤」の問題でなく、調査のシステム、調査のあるべき姿に枠組みをつくって進めていく、ということは今回、大変意識していたことだったからです。「枯れ葉剤」があったかないか、だけの問題に焦点化すると、そこだけで幕引きされてしまうことを懸念していました。ですから、このフレームワーク作りは重要であると考えていたのです。
 この点をファシリテーターの阿部さんが、騒音問題を認識論的に書き換えた渡嘉敷さんの話とつなげてくれたと思います。

 質疑応答でも「本当に調査しているのは誰か」というところから、コンサルティング会社の責任という大きい問題をとらえ直す機会を持てました。また、フロアーでの議論でもこのような活動をしていく市民や市民団体の負担、「政治」的な問題から距離をおく「専門家」「研究者」、どのようにこのような活動をする市民や団体を支えられるかなどについても話が及び、様々な考えさせられる課題が挙げられました。
 
 研究者として考えてみたい問題もたくさん出され、フロアーのみなさんにも感謝しています。

 パワーポイントはこちら。

「調査を監視・評価するという市民の試み:沖縄市サッカー場汚染調査の事例から」 by Masami Mel Kawamura



 県内紙も取材にきてくださり、丁寧に報道してくれました。

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Posted by 沖縄BD at 00:45│Comments(0)
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