枯れ葉剤: レッドハット作戦(1971年毒ガス移送)と枯れ葉剤

2013年01月11日/ 枯れ葉剤

 外務省が、沖縄県と名護市に
「71年の『レッドハット作戦』の一環として枯葉剤が沖縄からジョンストン島に移送されたとする報道に関しては、米側が同作戦についての記録を再度確認した結果として、同作戦に枯葉剤は含まれていなかったことは明らかであるとしています」
 と回答してる件について、主に退役軍人省の文書をもとに以下の要求をしました。

枯れ葉剤: レッドハット作戦(1971年毒ガス移送)と枯れ葉剤

6)「71年の『レッドハット作戦』の一環として枯葉剤が沖縄からジョンストン島に移送されたとする報道に関しては、米側が同作戦についての記録を再度確認した結果として、同作戦に枯葉剤は含まれていなかったことは明らかであるとしています」と、日本政府は回答しています。この”米側”が確認した「枯葉剤が含まれていなかったことは明らかである」ことを示す記録が何であるかを照会したかお答えください。照会した場合は、その記録についての具体的情報(文書名など)を示してください。していない場合は米国に照会、確認してください。

7)2009年の退役軍人省の審決文書(Citation Nr:0941781(Decision Date:11/02/09 Archive Date:11/09/09)には、退役軍人の補償請求の追加証拠書類として“a summary of the use of Agent Orange in Operation Red Hat(Okinawa)”があげられています。
この追加証拠書類について、日本政府は独自に調査、あるいは米国に照会しているかお答えください。していない場合は、調査、照会をしてください。

8)上記文書には、以下のような記述がありますが、この記述と米国の説明についての乖離について日本政府はどのような見解を持っているかお答えください。

“The records pertaining to Operation Red Hat show herbicide agents were stored and then later disposed in Okinawa from August 1969 to March 1972,...”

レッドハット作戦(Operation Red Hat)についての回答に関しても日本政府は米国政府の回答をくり返すのみになっています。

レッドハット作戦は、ご存知のとおり1971年に行われた知花弾薬庫から毒ガスをジョンストン島に移送する作戦として知られています。1969年に知花弾薬庫でガス漏れ事故が発生し、軍人、民間人ら25人が病院に運ばれたことから、致死性の高い毒ガスが沖縄に持ち込まれていることが発覚し、真相究明と撤去が沖縄住民と琉球政府から要求され、2年2ヶ月後にその移送が実現されたものです。

このレッドハット作戦と、沖縄での枯れ葉剤の関係を示唆する部分が、これまでの文書に存在しています。
例えば、
 
・7)の質問にある退役軍人省の審決文書では補償請求の追加証拠書類として記されている「レッドハット 作戦(沖縄)における 枯れ葉剤の使用についての要約」という文書名。
 ・8)の質問にある同文書の「レッドハット作戦に関係した[複数の]記録には枯れ葉剤が貯蔵され、その 後1969年8月から1972年3月まで沖縄で廃棄されたことが示されている」という記述

 これらは、退役軍人ではなく、退役軍人省(=米国政府)の記述です。
 
 また、前記事にある「ジョンストン島における生態レポート」でも、枯れ葉剤との関係の記述はありませんが、沖縄のレッドハット作戦についての記述があります。

 さらに、レッドハット作戦をこれまでとは違う枠組みでとらえた新たなアプローチが、沖縄の枯れ葉剤の真相を追究しつづけているジョン・ミッチェルさんの記事で行われています「(Were we marines used as guinea pigs on Okinawa?(われわれ海兵隊は沖縄でのモルモットだったのか?)”The Japan Times, Dec.4, 2012)。この記事は、Project112という米軍の生物・化学兵器実験プロジェクトの展開の真相に迫るものですが、その実験場の1つが沖縄であることを示しています。そして、このプロジェクトに関する新しい証拠(沖縄の枯れ葉剤問題に関わるジョン・オーリンさん、ドン・ヒスコートさん、ミシェル・ギャッツさんが発掘・検証しています)はレッドハット作戦が、生物・化学兵器の真の保有量がいかに多かったかを隠蔽するための国防総省が画策した偽装工作という長いゲームにおける最後の段階のものにすぎないことを明らかにした、と同作戦の新たな位置づけを提示しています。

 また、ジョン・オーリンさんによれば、レッドハット作戦の公開文書はまだ2/3は非公開であるとのことです。このような点を考慮し、新たな視角からの検証の必要性も認識すれば、「米側が同作戦についての記録を再度確認した結果として、同作戦に枯葉剤は含まれていなかったことは明らかであるとしています」という米国政府の回答を鵜呑みにすることはできないはずです。「枯れ葉剤は含まれていなかったことが明らかである」という回答がどのような文書や証拠から引き出されたのか、日本政府は米国政府に追及する責任があります。

 こんなふうに「作戦」とか「プロジェクト」という文言が飛び交うと、書いている本人も枯れ葉剤の問題の本質を見誤ってしまいそうなので書いておきますが…。
 上記のジョン・ミッチェルさんの記事には、この実験が原因と考えられる重い疾病に苦しむ退役軍人の証言があります。それは沖縄の人々が同じ被害にあっている可能性を示しており、ジョン・ミッチェルさんはその懸念を記事内で常に示しています。 QABの番組の『枯れ葉剤を浴びた島』でも、番組の最後に退役軍人のジョー・シパラさんは「未だに汚染があると思います。沖縄は土地が返還される前にその土地で何がされたか、調べておく必要があるでしょう。何がされたか聞いておくべきです。」といっています。
 沖縄の枯れ葉剤の問題は、常に退役軍人と沖縄の双方が、お互いに1人1人に、その地に、正義が実現できるようにと歩んでいる道であり、このような取材や調査、政府への要請活動はそのためのものである、ということを今一度、記しておきたいと思います。

レッドハット作戦については以下も参照してください。
・レッドハット作戦で沖縄にもたらされた恐怖、被害、損失については、川平成雄『沖縄 占領下を生き抜く—軍用地・通貨・毒ガス--』(吉川弘文館、2012年)にも詳しく記述されています。
-今日の歴史〈1月13日〉 毒ガス移送始まる沖縄県公文書館
-Wikipedia Operation Red Hat (英語)



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Posted by 沖縄BD at 23:39│Comments(0)
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