国連:日本政府のCERDへの回答に対する3NGOからのコメント

2012年08月31日/ 国連

  2012年3月9日付け人種差別撤廃委員会からの情報提供要請に対する日本政府の回答(2012年7月31日)(沖縄BDブログ記事参照→「人種差別撤廃委員会からの情報提供要請に対する日本政府回答」、2012年8月4日)に対しての3NGOからコメントを、8月15日に委員会と、日本政府代表部に提出しました。

  この回答は、多くの人が怒りを抱き、悔しさを持って読んだと思います。日本政府は、人種差別撤廃に取り組んできた国際社会の努力を理解できていないこと、人々が最大限の力を持って引き出した辺野古アセス評価書への厳しい知事意見も、非常にひどい人権問題である高江のSLAPP訴訟も、さらなる軍事化を強いるオスプレイ配備についても情報提供に含めないという、不誠実さを自らの回答で、国際社会に示しました。

  短期間での対応で、全ての怒りや悔しさを盛り込みきれなかったかもしれませんが、私たちの反論が、国際社会に響くことを信じたいと思います。

  先に提出した、アップデートとフォローアップの和訳もアップしました(→こちらの記事に追加であげてあります)。
 下に本文部分の和訳を貼り付けます。
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1. 「総論」の部分に関して(日本政府回答1ページ)
1)琉球/沖縄の豊かな文化、伝統が日本政府によって認識されていることは歓迎すべきことであるが、わたしたちは、日本政府が文化、伝統の面からだけでなく、言語や歴史の面からも、琉球諸島の民族集団および先住民族として、琉球/沖縄の人々の固有性を認識していないことを大変遺憾に思う。さらに、わたしたちは、日本政府による琉球/沖縄の植民地化、軍事化の歴史について、全く言及されていないこともあわせて遺憾に思う。

2)わたしたちは、琉球王国が1872年に日本に併合されてから、琉球/沖縄の人々が、経験させられた、事実上の様々な形態の差別を日本政府が認識していないこと、あるいは差別を無視しようとしていることを強く遺憾に思う。

3)日本政府は「沖縄の文化と伝統の保存・振興を図って」きたかもしれないが、UNESCOの[世界文化遺産の]登録申請以外に具体的にどのような措置をとったのか明らかでない。また、琉球/沖縄に対する同化政策に関して、日本政府が何の情報も提供していないことも強く遺憾なことである。

4) わたしたちはこの文脈において、そのフォローアップ手続きの過程においてさえ、CERD(CERD/C/JAP/CO/3-6, para21)による勧告の実施について、日本政府により実質的な情報が未だ提供がされていないことも遺憾に思う。

5)また、訪日した「現代的形態の人種主義、人種差別、外国人嫌悪および関連する不寛容に関する特別報告者」の分析や、CERDによる繰り返しの審査や所見にも関わらず、日本政府がICERDの適用範囲、特に1条を理解できずにいるのも残念な事実である。私たちの見解では、琉球/沖縄の人々が直面している差別は、ICERDの1条で定められている民族的起源に基づいた差別である。

6)同様に、日本政府の回答の中で、「日本人」という語が、むしろ日本国籍を持つ人々の集団を指している一方、日本政府が翻訳し、公開しているICERDの1条の日本語訳では、民族的起源に基づく差別と国家的起源に基づく差別の違いが完全に、あるいは正しく反映されていないことも指摘しておかなければならない。このことは、日本政府が、日本国籍を持つ人々の中に様々な民族集団が存在していること、およびその民族集団がしばしば差別に直面していることを正しく認識していない1つの理由なのかもしれない。

7)さらに、沖縄で暮らす、あるいは沖縄で生まれた個人の民族的帰属が問われた時に、日本政府が、なぜ日本での、そのことに関する「見解」が広く存在するかどうか、に言及するのかが明瞭でない。むしろそこでは自己認識/確認の原則が適用されるべきである。この原則に基づいて調査をすれば、CERDの書簡において言及された人々のような民族集団に関する日本政府の疑問に対する答えは、容易に明確になるだろう。

8)日本政府は、CERDへの回答において[辺野古米軍基地と高江ヘリパッド]建設計画は「差別的意図によるものではない」と繰り返し強調している。しかし、このように強調することが、残念なことに条約の適用範囲、特に人権を「享有し又は行使することを妨げ又は害する目的又は効果」について言及している1条1項を日本政府が正しく理解していないことを示している。さらに、条約が差別的な意図による行為だけでなく、差別的な効果を持つ行為も対象にしていることは、一般勧告No.14(1993)あるいは政府報告書審査などを通じ、委員会によって繰り返し強調されている。このような背景に反し、この点において、日本政府が間接的あるいは事実的差別の問題に取り組む義務を未だ果たすことができないでいることは非常に遺憾である。

2. 「辺野古移設計画」の部分に関して(3-7ページ)
9)米国政府とともに、日本政府がいかに辺野古移設計画を推進しているかの過程の部分については、日本政府から情報が提供されているが、決定過程における地元の人々の参加といった[人々の計画への]関わりの件、日本政府による情報隠蔽の事実といった、プロセスの透明性の件、琉球/沖縄における70%以上の人々が反対している件など、重要な側面について、実質的な情報が全く提供されていないことは遺憾である。

10)琉球/沖縄の「振興」のために実施された一定の措置、特にインフラの点については認めるところがあるが、琉球/沖縄の負担「軽減」のための決定的な措置は全く実施されていないことは言及しなければならない。米軍基地の74%がいまだ、日本の0.6%をしめるに過ぎない琉球/沖縄に集中しているという事実は、そのことをはっきりと証明している。琉球/沖縄の人々が被る、人権侵害を含む、他の件での負担はまた、第20回人権理事会の書面による声明やこれまで提出した文書に記されている。

11)さらに、わたしたちは日本政府が安全保障を、琉球/沖縄への差別政策の正当化の手段として用いようとしているように見えることを、深く懸念している。一方で、特に既に琉球/沖縄に存在する膨大な米軍基地とその施設を考えると、辺野古/大浦湾への新基地が真に必要であるかどうかは疑問である。この文脈においては、日本政府の用いている「アジア太平洋地域におけるますます不確実な安全保障環境」という語句は、どの状況をもって言及しているのか不明瞭であるにもかかわらず、不安をあおろうとするものであるといえよう。

12)同様に、この地域における米軍の高いプレゼンスをいかに維持していくかの方策は日米政府間で追及され、考慮されてきたかもしれないが、軍の存在が必要とされないこの地域の平和的な環境を達成する行動については検討されてこなかったようである。

13)わたしたちは、環境影響評価手続きの一部として日本政府が提出した、環境影響評価書への沖縄県知事意見のことを、日本政府が言及していないことは非常に問題であると考える。県知事意見は、新基地の建設と運用は、環境保全の上で深刻な問題があり、評価書で提案されている方法では、社会的環境、自然環境的環境のどちらの保全も保証できないと結論づけている。

14)「沖縄の人々の理解を得るための取組み」は日本政府が行ってきたかもしれない。しかし、むしろそれは計画の変更や取消をする意図の全くない、建設計画に関する日本政府の一方的な「説明」であった。地元の人々との純粋な対話をとおしての相互理解に達するための取組みは全くされていない。

3.「高江ヘリパッド建設計画」の部分に関して(8-9ページ)
15)日本政府は「沖縄県民の負担の軽減」として、米軍が北部訓練場(75km2) のうち約40km2を沖縄に返還することを強調している。また「総論」で高江ヘリパッド建設は、沖縄への土地の返還の条件であるとも述べられている。しかし、残念なことに、ヘリパッドが高江のコミュニティーを取り囲んで建設されること、ヘリパッドのうち2つは高江のコミュニティーから400mしか離れていないところに建設が予定されていることは述べられていない。高江の住民のヘリパッド建設への強い反対にみることができるように、計画は、彼らにとって、「沖縄の人々の負担」の軽減を実現させるものになっていないばかりか、命を危険にさらし、さらなる負担をもたらすことになっている。

16)この文脈でいえば、日本政府が回答文書において、建設が計画されているヘリパッドで実際使用される米軍のMV-22オスプレイの配備や安全性について情報を全く提供しないことは大いに遺憾である。また遺憾なことに、オスプレイの配備計画が最近に至るまで長いこと公けにされず隠蔽されてきたこともわたしたちは強調しておく。日本政府は、いまだにMV22オスプレイの配備について高江のコミュニティーに説明を行っていないのである。

17)日本政府が行った環境影響評価に関しては、この環境影響評価は科学的妥当性に欠けるものであることが専門家から批判されていることは、ここできちんと指摘されるべきである。さらに環境影響評価は、ヘリパッドが現在普天間飛行場に配備されているヘリコプターが使われることを前提としており、MV-22オスプレイによって使用されることを前提として実施されたものではないことも強調されなくてはならない。

18)日本政府は環境影響評価を既に実施し、建設作業も開始している一方で、「2.高江地区及びその周辺に居住する住民の生活環境保護のための施策」(8-9ページ)の節が、未来形で書かれていることは、非常に当惑させられることである。同様に、建設現場に建設機械を搬入するなどの工事作業が早朝に始められることがあるにも関わらず、日本政府が「早朝や夜間、日曜及び祝日の工事は原則として実施しない」(8ページ)と述べていることは、当惑させられるものであり、問題である。

19)また私たちは、小学生や座り込みを行うサポーターまでも含めた高江の住民を巻き込んだ訴訟についての情報を、日本政府が全く提供していないことも遺憾に思う。この訴訟がSLAPP訴訟であると多くの人に考えられていることも指摘されるべきである。

20)「地元の十分な理解と協力を得ることが重要」という件では、沖縄県議会の「北部訓練場の過半の返還の条件である北部訓練場のヘリコプター着陸隊移設工事を着実に実施し、段階的に基地の整理、縮小を図るべきとの見解」、および東村長及び国頭村長の「ヘリコプター着陸隊受け入れ」の表明(9ページ)は、どちらも普天間飛行場に配置されている飛行機がヘリパッドを使用することを前提として得られているものであり、MV22オスプレイが使用する前提でのものではない。この背景に反して、日本政府が「沖縄県を始めとして、地元自治体から理解を得ており」と考えていることは、非常に憂慮すべきことである。

4. 「沖縄振興計画の概要」の部分に関して(10ページ)
21)日本政府が「沖縄振興計画」や関連措置を実施し、沖縄に財政支援をしてきた一方、その中には、沖縄に米軍基地を継続して置くこととリンクしているものがあると考えられていることを述べておくことは重要である。実際に、日本政府は、名護市長選で、基地建設反対を表明する候補者であった稲嶺進が2010年の選挙で当選した時、名護市への基地再編交付金を凍結した。しかし、この重要な点の情報は、日本政府のCERDへの回答で提供されていない。

22)また「沖縄振興計画」や様々な措置がこの40年間、日本政府により実施されてきたのにも関わらず、現在でも、沖縄は47県中、所得は最低であり、高い失業率のままであることも言及するべきことである。
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文書PDFはこちらです。  
Comments on the Response of the GoJ 15 Aug(J)

原文の英文はこちらです。
NGO Comments on GoJ Response to CERD 15 Aug 2012



タグ :国連CERD

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Posted by 沖縄BD at 19:33│Comments(0)
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