枯れ葉剤で沖縄県との交渉:沖縄BDからのレポ

2012年06月04日/ 枯れ葉剤

 6月1日(金)に行った沖縄BDの枯れ葉剤問題に関する要請交渉の報告です。
 
枯れ葉剤で沖縄県との交渉:沖縄BDからのレポ

 対応したのは、沖縄県當銘健一郎基地防災統括監、基地対策課、環境政策課、自然保護課、健康増進課、企画調整課の各課長。
枯れ葉剤で沖縄県との交渉:沖縄BDからのレポ
 
 要請事項は、主に以下の5点です。今回は環境総合研究所の「意見書」(こちらの記事参照)をもとに県に要請事項を実施してもらうということでした。ただ、1)、2)に関しては、これまでに沖縄BDも県に対しての要請や県議会への陳情を行ってきましたので、その取り組み状況について主にやりとりをしました。
1) 沖縄県の自主的な調査への取り組み
2) 日本政府への働きかけ
3) 北谷町が行った町内3地点で行った環境調査の経過、連携方法、今後の対応
4) 2002年に北谷町で発見された約200のドラム缶の調査についての情報公開
5) 改正駐留軍用地返還特措法案(軍転法)についての取り組み

○県の姿勢
県の対応のポイントは以下のとおり。
1)沖縄県の自主的な取り組みはしていない
 こちらは報道もされていますが、とにかく市民側からの要請に応える形では、これまで何もしていない、そして今後も積極的に情報収集してやる予定もないようです。
 マスメディアが米国までいって、退役軍人に話を聞きにいっているのに、県民の命を守るはずの県が何もしていないということの怠慢をわたしたちは指摘しました。

 要求事項3)にある北谷町の調査の件はかなり具体的なケースなのですが、県の軍特委でも細かく指摘されているにも関わらず、環境保全課からは具体的な計画は聞けませんでした。これまでの既存の調査や政策の中から、取り組みにあたるようなものを引っ張り出して回答しています。県民の健康調査の件も、健康増進課は市町村別のがん調査の結果を出してきましたが、枯れ葉剤に関する疾病の件について勉強している気配もなく、比較対照なしの結果だけ出されても、何の意味もありません。
 とにかくこれらは、「意見書」をきちんと読んでもらって適切な取り組みとは何かを認識し、再度対応を検討してもらうしかない。

 問題なのは、「枯れ葉剤が県民の環境や健康に影響があるかないかが重要であり、健康調査や環境調査でもそれはでていない、蓋然性の高い場所を特定できれば別だが、特定されていないのにむやみやたらに調査をすれば、風評被害につながる」という姿勢です。真相解明をしないことが、県民の不安を高め、むしろ風評被害につながることをこちらは主張。蓋然性の高い場所を特定するために調査(疫学調査など)が必要であり、元米軍基地雇用員などの証言の聞き取りなど、県内でできることはたくさんあるのだから、もっと県独自の調査に取り組むべきだと、強く要求しました。

2)沖縄県独自の見解はなし。日本政府の回答をくり返すのみ
 また、沖縄県は、この問題に対する姿勢としては外務省の回答をそのままくり返すだけでした。しかもザ・スクープのサイトにあった(現在はトップページにありません)テレ朝への外務省からの回答と同じもの(こちら)を統括官は読んでいました。
 それを指摘し、外務省の回答は審決文を歪曲したものであるので外務省の回答はおかしいと、沖縄BDがすでにこちらの記事で見解を出していることを述べ、県側が外務省の回答受理後、どの課がどのような作業をしたか、1998年度の審決文の原文にあたったかなどを聞きました。
 県は、結果的にテレビ朝日への回答と県への回答は同じで使いまわされたようだと認めました。
 また、以下の沖縄県軍用地転用促進・基地問題協議会(軍転協、県と県内の基地所在市町村等で構成する協議会。知事が会長)の「基地から派生する諸問題の解決促進に関する要請」に対する、内閣官房沖縄連絡室長(内閣官房副長官)回答(2011年12月24日)(こちら)の枯れ葉剤の件に関する部分(p.29、下記抜粋)の1、2項を読み、県はそれに対して具体的な動きはしていないと答えました。
(軍転協要請部分)
5.米軍の活動及び基地運用による生活環境被害や自然環境破壊の防止対策の強化について
キ 過去に本県の米軍施設内で枯れ葉剤が使用されていたとする退役米軍人等の証言について、事実関係を早急に確認し、地元自治体等への説明を行うこと。

(回答部分)
1在沖縄米軍施設・区域内における枯葉剤の使用等に係る報道を受け、外務省から米側に事実関係の確認を求めたところ、米側から、改めて過去の記録を確認した結果として、当時米軍が枯葉剤を沖縄へ持ち込んだことを示す資料は何ら確認できなかった旨の回答がありました。なお、米側は、韓国に枯葉剤を持ち込んだ記録は存在することを認めています。
2 また、米側からは、報道されている退役米軍人の証言にはいくつかの疑問点があり信憑性があるとは考えていないとの説明を受けています。
3 沖縄県は、平成15年度以降毎年、県内の米軍施設・区域周辺の河川等においてダイオキシン類の調査を行っていると承知しています。政府としては、これに加えて更に調査を行うかどうかについて、今後新たな事実確認が判明するか等の状況を見て判断していきたいと考えています。

 この問題は、国と国という政府間の問題ではあるものの、県民の健康や安全を守る立場であるはずの沖縄県が、外務省の代弁者のような回答をすること、それをそのまま鵜呑みにし、沖縄県独自の分析をしないことは、私たちから強く批判し、その姿勢を正すよう要請しました。
 また、退役軍人の声を大切にしてほしいということも、伝えられました。勇気を出して声をあげた退役兵のアクションも、要請部分で伝えています。

○今後の県への要請
 このような交渉を踏まえ、あらためてわたしたちは、次回以下のことを要請したいと思っています。
・「意見書」に即して、これまでの調査などを見直し、県の見解や今後の計画を説明する。
・元米軍基地雇用員の聞き取りなど、県内で可能な調査を行い、退役軍人の証言などをすりあわせていく作業を行う。
・審決文の原文にあたり、日本政府からの回答について、県独自に分析する。

 沖縄BDとしては、沖縄県が回答の拠り所としている軍転協の動きを把握し、次回の要請に反映できるような動きも、市民側からつくっていくことが必要ではないかという意見も出されています。
 
 交渉の中ででた、いくつかの共有したい情報については、また別記事にする予定です。

 河村雅美
 (写真は沖縄BD会員の牧志治さん提供)


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Posted by 沖縄BD at 01:35│Comments(0)
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