国連人種差別撤廃委員会(CERD)からの日本政府への書簡(和訳)

2012年03月20日/ 国連

 国連人種差別撤廃委員会が日本政府に質問状を出すことを採択したことは、こちらの記事でお伝えしました。
 国連人種差別撤廃委員会(CERD)のウェブページに、同委員会から日本政府にあてた書簡(英文)のコピーがアップされています(→こちら)ので、沖縄BDの仮訳をこちらに掲載します。

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国連人種差別撤廃委員会から日本政府への書簡(仮訳)】
2012年3月9日

在ジュネーブ国際機関日本政府代表部
特命全権大使
小田部 陽一閣下

 人種差別撤廃委員会第80回セッションにおいて本委員会は、早期警告と緊急手続きの制度のもと、NGOにより提出された沖縄における新たな米軍基地建設計画に関する情報を、初期手続きとして、検討したことをお伝えいたします。

 本委員会は、民族グループである琉球/沖縄の人々、および沖縄に居住する日本人が、(辺野古/大浦湾における)基地建設は地域の自然環境と人々の生活環境に深刻な影響を及ぼすと主張し、報告されているような大規模な公的抗議や批判を行ってきたにも関わらず、辺野古/大浦湾において軍事基地建設が計画されていることを特に懸念しています。本委員会はまた、高江地域に隣接する日本で最も生物多様性が豊かな地域のひとつであるやんばるの森への環境的悪影響が避けられないことから、高江住民や沖縄の他の自治体議会が絶えず反対してきた、高江において計画されている6つの米軍ヘリパッド建設を懸念しています。さらに本委員会は、上述の計画を進める際に、沖縄の人々を関与させるための明確な措置がとられていないことを懸念しています。

 本委員会は、沖縄の人々が被っている繰り返される差別に対して懸念を示した同委員会の前回の最終見解(CERD/C/JAP/CO/3-6, パラグラフ21)に、(日本)政府の注意を促すものとします。同見解において、本委員会は、沖縄への軍事基地の過度の集中が住民の経済的、社会的、および文化的権利を享受することに悪影響を与えている、という「人種主義の現代的形態に関する特別報告者」の分析(E/CN.4/2006/16/Add.2)を繰り返し示しました。

 委員会はこの2つの計画の実際の状況と、およびこの地域に住む民族コミュニティーの権利を守るためにとられている措置についての情報を提供するよう、日本政府に要請します。

 条約の9(1)条と手続き規約の65条に従い、委員会は緊急に、上記の問題と懸念についての情報を、2012年7月までに受け取ることを希望しています。

 本条約が効果的に実施されることを期待し、日本政府との建設的な対話を継続することを委員会が望んでいることを、ここに繰り返させていただきたいと思います。

Alexei Avtonomov
国連人種差別撤廃委員会議長

(翻訳:沖縄・生物多様性市民ネットワーク)
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CERD Japan Original)

[補足資料]
・上記書簡で言及されている「前回の最終見解(CERD/C/JAP/CO/3-6, パラグラフ21)」の文書(英・和)を下にアップします。昨年4月、沖縄BDから市民外交センターを通じ、人種差別撤廃NGOネットワーク(ERDネット)作成の同文書に辺野古・高江の件をいれていただきました。
・「人種主義の現代的形態に関する特別報告者」の分析(E/CN.4/2006/16/Add.2)は、2006年に来沖された国連の調査官「人種主義・人種差別に関する特別報告者」のドゥドゥ・ディエン氏が、2006年末に国連総会に提出した「ディエン報告」です。
これについては、反差別国際運動(IMADR)のこちらのページに多くの情報がまとめられています。
「日本における人種差別の撤廃にむけて」
 また、季刊『新沖縄フォーラム けーし風』67号(2010年6月)「特集 国連勧告をめぐって--脱植民地主義と沖縄の自己決定権」にもこの報告のことが詳しく特集されています。
→同号詳細・購入はBooks Mangrooveのこちらから

[報道]
・県内2紙の報道は高江のブログがまとめてくれました→国連が日本に書簡、外務省は否定
 ウェブ版で読めるものはこちら
琉球新報 ”「県民差別」を否定 政府、国連書簡に回答へ”(2012年3月15日)
この記事では、日本政府の反応については以下のように、書かれています。 
【東京】米軍普天間飛行場移設問題をめぐり、ジュネーブの国連人権差別撤廃委員会が日本政府の見解や現状などの説明を求める書簡の送付を決めた件で、日本政府は、沖縄県民への差別を否定し、辺野古移設が最善だと回答する方針を固めた。
 14日に開かれた自民党の外交部会で外務省側が明らかにした。
 部会では、小野寺五典部会長が「もし国連が『人種差別だ』と決定した場合、辺野古移設に与える影響は小さくないのではないか」と指摘。
 外務省は「影響が全くないとは言えないが、日米両政府がしっかりと(辺野古移設に)関与していることを説明したい。勧告が出るようなことを避けたい」と述べた。
 委員会は同書簡で、普天間の辺野古移設について「琉球民族および沖縄在住の他の日本人が地域環境と生活状況に重大な影響を与えるとして大規模な反対および非難を行っているにもかかわらず、普天間飛行場の辺野古移設が提案されていることを懸念している」と指摘。東村高江でのヘリパッド建設についても「高江住民および沖縄の地方議員が継続的に反対している」と指摘し、懸念を表明している。
 日本政府の回答期限は7月末。人種差別撤廃条約の順守状況を監視する次回8月の会合で審議を行い、状況に応じて是正勧告を出すとみられる。勧告に法的拘束力はない。

-QAB ニュース→普天間移設問題 国連 日本に質問状(2012.3.13)

・英文記事はこちら
-U.N. panel on racial discrimination to question Japan gov't over Okinawa policy(The Mainichi Daily News, March 13,2012)
-U.N. panel weighs in on Futenma (The Japan Times, March 15, 2012)

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補足資料
-Follow-up Information from the Japan NGO Network for the Elimination of Racial Discrimination in relation to the CERD recommendations included in paragraphs 12, 20 and 21 of its Concluding Observations on Japan (CERD/JPN/CO/3-6)
CERDsJPNsCOs3-6sFollow-upsJapans-sRev-2.pdf (PDF: 97KB)
・人種差別撤廃NGOネットワーク(ERDネット)のフォローアップ情報
CERD%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%A2%E3%83%83%E3%83%97sERDs%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E.pdf (PDF: 225KB)


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Posted by 沖縄BD at 18:31│Comments(0)
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