国連人種差別撤廃委員会(CERD)へ要請文を提出

2012年02月23日/ 国連

国連人種差別撤廃委員会へ要請文提出
辺野古/大浦湾と高江における米軍基地建設の検証と早急な対応を


2012年2月10日、「琉球弧の先住民族会」(AIPR)、「沖縄・生物多様性市民ネットワーク」(OkinawaBD)、「反差別国際運動」(IMADR)の3団体は、国連人種差別撤廃委員会(CERD)に対して、沖縄県名護市の辺野古/大浦湾における米軍基地建設と東村高江におけるヘリパッド建設の現状を、差別と人権侵害の視点から検証し、早急に対応するように要請文を提出しました。

同委員会は2010年4月に、日本政府による琉球/沖縄の人びとへの継続的な差別に懸念を表明し、「沖縄における軍事基地の不均衡な集中が、住民の経済的、社会的および文化的な権利の享有に否定的な影響を与えている」との見解を示しています。そして「沖縄の人びとの権利を推進し、適切な保護措置および政策を確立」するため、「沖縄の人びとの代表者と幅広い協議を行う」ように日本政府に勧告しています。

今回の要請は、同委員会の見解や勧告を無視するかたちで強行されている新たなる米軍基地とヘリパッド建設を、歴史的に続いてきた琉球/沖縄の人びとへの差別と人権侵害のさらなる表れであると認識し、その是正を日米政府に促すよう、同委員会に働きかけるものです。また同委員会のこれまでの見解や勧告は、「先住民族」という視点から琉球/沖縄の人びとを対象にしていましたが、今回の私たちの要請では、沖縄に本土から移住してきた人びとも、米軍基地の集中や新たな基地建設により、同様の差別や人権侵害を受けていることを訴え、差別や人権侵害の連鎖が起こっていることも訴えています。

なお、この要請は、人種差別撤廃委員会の「早期警戒と緊急手続き」に基づき提出したものです。現在ジュネーブで開催されている同委員会の作業部会で取扱いが議論され、委員会によるアクションが必要と判断された場合は、委員会の全体会議で採択され、今会期が終了する3月9日までに日本政府に書簡が送られることになります。
 先日、来沖されたIMADRの白根さんに、ジュネーブで大変ご尽力いただいています。

琉球弧の先住民族会(AIPR)
沖縄・生物多様性市民ネットワーク(沖縄BD)
反差別国際運動(IMADR)

以下、要請文の抜粋を貼り付けます。原文と全訳は後日アップします。
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【原文英語、下線部抜粋・仮訳】                      
2012年2月14日現在

早期警戒と緊急手続きに基づく
国連人種差別撤廃委員会への要請
Request to the Committee on the Elimination of Racial Discrimination (CERD)
under the Early Warning Measures and Urgent Procedures

日本国沖縄における米軍基地建設の現状

2012年2月10日提出

琉球弧の先住民族会(AIPR)
沖縄・生物多様性市民ネットワーク(沖縄BD)
反差別国際運動(IMADR)

構成
添付文書リスト
1.はじめに
2.背景
 2.1 琉球王国の日本への併合と沖縄への米軍基地の集中
 2.2 1972年の沖縄復帰と米軍基地の存続
 2.3 沖縄に関する特別行動委員会 (SACO)合意と新米軍基地建設計画
3.CERDが早期警戒と緊急手続きを検討するに必要な状況(要旨)
 3.1 辺野古/大浦湾における米軍基地建設
 3.2 高江における6つの米軍ヘリパッド建設
 3.3 ICERD条項の違反
4 委員会への要請


1. はじめに
1)わたしたちは人種差別撤廃委員会(CERD)に対し、その「早期警戒措置と緊急手続き」のもとに、日本国沖縄県、沖縄本島北部の辺野古/大浦湾、およびやんばるの森の高江の2箇所において計画されている米軍新基地建設について検討し、緊急アクションを要求する文書を提出する。

2)米軍新基地建設は、計画への強い反対にも関わらず、琉球/沖縄人および沖縄に居住する日本人に対して、日米両政府により強いられてきた。琉球/沖縄人と沖縄に居住する日本人は既に在日米軍の不均衡な「負担」を負い、その被害を受けてきた。在日米軍の74%は日本領土面積のわずか0.6%の沖縄に集中している。在日米軍の存在は、琉球/沖縄人と沖縄に居住する日本人に対して、米兵による事故や犯罪、騒音、環境破壊などの様々な問題を起こしてきた。

3)もし新基地が建設されたならば、環境だけでなく、琉球/沖縄人および沖縄に居住する日本人の生活への膨大かつ取り返しのつかない被害と損害をさらに強要することとなる。事実、日米政府はこの計画を策定し、実施する過程において、琉球/沖縄人の自己決定権、生活権、環境権および表現の自由の権利を既に侵してきた。

4)(沖縄において)米軍基地が集中していること、そして米軍基地の存在によって様々な問題が起こされていることから、これらの新たな建設計画は、琉球/沖縄人に対する日米政府によって継続して行われている差別政策とその実施、および人権侵害の表れとして認識されるべきである。この計画は沖縄で居住する日本人にも影響を与えている。

5)私たちは、日米政府による琉球/沖縄人に対する長く、広範囲にわたる差別政策とその実施、および人権侵害を終わらせることにCERDに助力を求めるとともに、辺野古/大浦湾および高江での、問題ある軍事基地建設を中止させるため、CERDがこの現状を検討し、緊急アクションを起こすことを要求する。

2. 背景 (略)

3. CERDが早期警戒と緊急手続きを検討するに必要な状況(要約)
3.1 辺野古/大浦湾における米軍基地建設 
生物多様性豊かな沿岸区域である名護市辺野古/大浦湾への米軍基地建設計画に対して、自らの生活と環境の権利をうったえ、琉球/沖縄人と沖縄に居住する日本人は、15年以上、この建設計画に自分たちが行使できるあらゆる民主的で非暴力の手段を用いて反対し、抗議してきた。国内外のNGOも反対し、抗議してきた。
沖縄の圧倒的な反対にも関わらず、日本政府は建設計画を推進し続けている。米軍基地建設を担当している機関である沖縄防衛局は、環境影響評価(以下、環境アセス)を、建設計画を推進させるために、強圧的かつ欺瞞的な手法をしばしば用い、環境アセスを政治的な道具として利用してきた。その環境アセスは、科学的な論理性が危ういことと民主的手続きを歪めていることから批判されている。
 現在、環境アセスも最終的な評価書の段階となり、沖縄県のアセス審査委員会が出した結論は、評価書には多くの欠陥があり、もし基地建設が実行される場合は、環境保全は不可能であるというものである。
 琉球/沖縄人および沖縄に居住する日本人が民主的な取り組みの中で反対の声を挙げ続けているにも関わらず、日米両政府は建設計画推進続行を確認している。このような差し迫った状況に、琉球/沖縄人および日本に居住する日本人は、日本政府が米軍基地建設を強要するために、沖縄県知事の辺野古/大浦湾の埋立て許認可の決断という地元の意思決定過程に強力な手段を用いて介入してくるのではないか、という非常に強い懸念を抱いている。
この建設計画、それに伴う環境アセスのプロセスや日本政府によるその他の行為は「先住民族の権利に関する国際連合宣言(UNDRIP)」30条「関連する公共の利益によって正当化されるか、もしくは当該の先住民族による自由な合意または要請のある場合を除いて、先住民族の土地または領域で軍事活動は行われない」の違反である。
また、UNDRIP29条の「先住民族は、自らの土地、領域および資源の環境ならびに生産能力の保全および保護に対する権利を有する。国家は、そのような保全および保護のための先住民族のための支援計画を差別なく作成し実行する」にも違反している。
また、UNDRIP第 32 条 1項「先住民族は、自らの土地または領域およびその他の資源の開発または使用のための優先事項および戦略を決定し、発展させる権利を有する」と2項「国家は、特に、鉱物、水または他の資源の開発、利用または採掘に関連して、彼/女らの土地、領域および他の資源に影響を及ぼすいかなる事業の承認にも 先立ち、先住民族自身の代表機関を通じ、その自由で情報に基づく合意を得るため、当該先住民族と誠実に協議かつ協力する」にも違反している。

3.2高江における米軍ヘリパッド建設
沖縄本島の北部のやんばるの森周辺に位置する高江は、東村にある小さなコミュニティーであり、約160人の人口は、琉球/沖縄人と日本人の住人とで構成されている。やんばるの森は、稀少生物が生息する日本で生物多様性が最も豊かな地域の1つであり、地元のコミュニティーの暮らしの基盤を与えている。
1957年から米軍はやんばるの森の大部分を訓練のために使用してきた。現在やんばるの森の30%は、米軍の「北部訓練場」に指定されている。この訓練場では、使用頻度の高い22の米軍ヘリパッドが既に存在し、付近の地元のコミュニティーや環境に様々な問題や危険を引き起こしているが、SACO合意により、新たな6つの米軍ヘリパッド建設が計画されている。
高江の住民、琉球/沖縄人と沖縄に居住する日本人、NGOや専門家は、行使できるあらゆる民主的で非暴力な手段を用いて、この建設計画に反対し続けている。
2007年6月に、沖縄防衛局が建設工事を開始したため、高江住民は支持者とともに工事現場付近での座り込みを開始し、5年間、座り込み抗議活動を行っている。
高江住民が、沖縄防衛局に建設計画問題の解決のため、対話を呼びかけているにも関わらず、沖縄防衛局は2008年11月、ヘリパッド建設反対のための平和的な座り込みをしている高江住民や支援者15人に対して、通行妨害禁止仮処分命令を那覇地方裁判所に申し立てた。
当初、申し立てられた者の中には、8歳の少女が含まれていたが、後に沖縄防衛局はその少女の訴えを取り下げた。2009年の12月には裁判所は14人のうち12人を取り下げた。2010年12月、裁判所は沖縄防衛局と2人の被告(高江区の住民)に法廷外における和解を勧告した。沖縄防衛局は、被告との和解を拒んでいるため、そのような和解は未だ行われていない。
この訴訟は、多くの人々からヘリパッド建設に反対する人々を標的としたスラップ訴訟ととらえられており、現在係争中である。最終判決は2012年3月14日に出される予定である。
高江の訴訟が係争中であるにもかかわらず、沖縄防衛局は、建設計画に反対する地元住民や支援者に、強圧的なやり方をもって工事を進めている。2011年2月、現場での人々の抗議行動を無視し、沖縄防衛局は隊列で高江に繰り込み、建設現場のやんばるの森を切り倒しはじめた。直近の出来事では2012年1月、沖縄防衛局は、スピーカーを用いて地元住民と支援者に工事再開のために道をあけるようにと要求し、工事の再開を試み、平和的な座り込みを続けている座り込みの人々に肉体的・精神的なハラスメントを与えた。
辺野古/大浦湾と同様に、沖縄防衛局の新たな6つのヘリパッド建設計画と、それに伴う工事はUNDRIPの29条、30条、32条1項、32条2項に違反しているとみなすべきである。

3.3 ICERD条項の違反
日本政府と国家アクターの行為がCERDの2.1(a)、2.1(c)と5に違反すると考えられるため、上記の状況は、CERDの早期警戒と緊急手続きの下での、CERDによる緊急な注意とアクションを要する。

4. 委員会への要請
市民社会のアクターは地域、国家、および国際レベルにおいて、琉球/沖縄人に対する長期に渡る差別から生じる様々な問題を取り上げてきた。日本の第3-6次定期報告書は2010年2月CERDによって検討され、委員会は、総括所見において、正式勧告を出した。CERDのフォローアップ手続き下において、日本政府による追加情報が提供されたが、差別問題を監視する、あるいは差別問題に取り組むための、いかなるアクションも起こされておらず、琉球/沖縄人と沖縄に居住する日本人の権利を保護する方策や政策も制定されていない。上述のような状況は、関係する全てのステークホルダー、特に日米両政府による緊急のアクションを要するものである。この文脈において、私たちは、委員会に早期警戒と緊急手続きの下、下記の件を敬意をもって要求するものである。

 a)日米政府に辺野古/大浦湾、および高江における米軍基地建設計画に関して、徹底した見直しを行い、琉球/沖縄人および沖縄に居住する日本人の同意が得られなければ、建設を中止することを含む適切なアクションをとることを要求すること。

 b) 日本政府が、琉球/沖縄人と沖縄に居住する日本人の代表と広く、真の意味での協議を持ち、特に、辺野古/大浦湾の米軍基地建設と高江ヘリパッド建設、および米軍基地の存在によってもたらされる悪影響全般に関しての適切な方策をとるように要求すること。
   
 c) 沖縄防衛局と日本政府に、高江の平和的に座り込みをしている人々への肉体的、精神的ハラスメントを直ちにやめるように要求すること。

d)日本政府が、琉球/沖縄人に対する差別の意図を持つ、あるいは、差別を生むような、他国との合意も含む、政策、規則、政策実践を見直し、修正し、撤回し、破棄することを要求すること。

 e)日本政府が琉球/沖縄人を先住民族として正式に認識し、ILO169号を批准し履行することを要求すること。


(翻訳:沖縄・生物多様性市民ネットワーク)

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人種差別撤廃条約に関しては、IMADRが人種差別撤廃条約の活用ガイド(英語)を発行しています。これも白根さんが作成したもので、わたしたちもこれを見て、勉強しました。
IMADRサイトより:”日本を含み世界174ヶ国が締結している人種差別撤廃条約。条約機関である人種差別撤廃委員会(CERD)は毎年2月と8月に会期をもち、締約国の定期報告書を審査しています。条約実施にかかるこれら活動に、日本を含む世界のNGOは積極的に関与する時代。そうした活動に役立ちたい!ジュネーブに拠点をもつ国連NGOとして蓄積した知恵と経験をもとに、このたびIMADRは”ICERD and CERD: Guide for Civil Society Actors” を発行しました。どなたでもご自由にご覧いただけます。”
こちら(PDF、英語)

国連人種差別撤廃委員会(CERD)へ要請文を提出
1月14日、IMADRの白根大輔さんが講師のAIPR主催の国連活動学習会国連ワークショップ。ホワイトボードに早期警戒と緊急措置の文字が..。




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Posted by 沖縄BD at 16:58│Comments(0)
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