沖縄県海岸防災課との交渉の報告:埋立て承認に専門的知見の裏付けなし
2014年06月09日/ 公有水面埋立対策/ 辺野古
去った6月6日沖縄BDは、他の環境団体や市民グループとともに、沖縄県海岸防災課との要請交渉を行いました。交渉の目的は、昨年12月に知事が下した米軍基地建設のための辺野古・大浦湾の埋立て承認に関する事実関係を確認することでした。まずお忙しい中対応して頂いた海岸防災課の職員のみなさんに感謝を申し上げます。
沖縄県海岸防災課との要請交渉の様子(Y. Makishi撮影)
海には環境調査船が入り、キャンプ・シュワブの陸側では大規模な工事が続く辺野古・大浦湾の「現場」。そして反対行動を阻止するために立ち入り禁止区域の拡大や刑特法をちらつかせる政府。緊張感が高まる現状を受けて行われたのが今回の要請です。それゆえ、私たちもそして海岸防災課も声を荒げる場面が何度もある交渉になりました。沖縄の置かれた、厳しい、悲しい現実です。以下、要綱交渉の内容と私の個人的考察をまとめてみます。
専門家不在の承認
今回の要請の目的は、承認に至る過程のなかで、公有水面埋立法の第4条1項2号で求められている環境保全への配慮が適切になされいたのか、を確認することでした。
具体的には、以下の5つの項目について、沖縄県庁の誰が、どれだけの専門的知見をもって、承認の判断を下したかを説明してもらうことでした。
①ジュゴンの保全
②サンゴ類の保全
③海草藻場の保全
④外来種の問題
⑤米軍基地の運用に関する問題
私たちの質問に対する沖縄県海岸防災課からの回答はまとめると以下の通りになります。
1)承認の判断を下したのは、海岸防災課の3名の職員である。
2) 承認の判断を下した職員は5項目に関して「専門的レベル」の知見をもっていない。
3) 承認の判断を下すにあたり、海岸防災課/土木建築部が専門家に助言を求めること、専門家と協議することはしなかった。
4) 「承認」の判断において、また判断後において、環境保全について「懸念が払拭できない」との意見を出した環境生活部との直接のやり取りとりはなかった。
5) 制度上、判断する職員が「専門家レベル」の知見を持たなくても、専門家と協議しなくても、承認はできるものである。
辺野古・大浦湾の海岸域は、沖縄県の「自然環境の関する保全の指針」で最も厳しい評価ランク1(自然環境の厳正な保護を図る)に指定されているところです。その地域での埋立てについて判断するには、科学的専門的知見が必要であり、慎重に慎重を重ねた協議や議論が必要であったはずです。特に、沖縄県の環境生活部が、県の環境アセス審査会等の専門家の意見に基づき、環境保全についての「懸念は払拭できない」という意見を提出していることを考慮すると、少なくとも環境生活部との協議や議論は必要であったはずです。
沖縄県が委託する専門家の意見を無視し、専門家との協議さえも持たなかったこが許されていいはずがありません。これでは沖縄の環境が守れるはずがありません。これでは、公有水面埋立法で求められている環境保全の考慮をしたことにはなりません。これらは重要な問題として、世論としては勿論、県議会においても、関係自治体の議会でも追求し続けることが必要です。
承認のもとになったのは職員の判断か:知事の責任について (個人的考察)
しかし今回のこの承認の判断を、海岸防災課の3職員の問題や、制度的手続きの問題としてのみ考えることは非常に無理があると私は考えます。それについて私の個人的考察を示しておきます。
今回の私たちの要請交渉は、先の「百条委員会」における知事や土木建築部長が宣誓のもと証言した議事録の内容を基にして、つまり証言内容が「事実」であるということを前提として行っていました。
百条委員会の議事録で示されていることは、
1) 承認は知事の「政治的判断」ではなく、法に基づいた「行政判断」であった。
2) 知事は、様々な関係部署や名護市長の意見/見解をまず聞いて/考慮して、その後で承認の判断を下した。
ということです。
これを整理すると、環境保全に関して問題がある、あるいは「懸念は払拭できない」とする名護市長や環境生活部部長の意見とは異なり、唯一、埋立て申請は法の基準に「不適合とはいえない」(法の基準に適合している)とした海岸防災課の判断が、知事の承認につながったということです。私たちはこの「前提」を事実として、知事の判断の基になったとされる海岸防災課の職員やその職員の専門的知見について追求したわけです。
しかしこの前提自体が本当に正しいのかどうか、ということを考えないといけないと思います。
例えば、3名の職員の判断が先にあったのではなく、知事の政治的判断が先にあり、その後で3名の職員がその知事の承認の判断にもとづいて、承認の根拠になることを考えださねばならなかった、という可能性です。3名が専門家に聞こうと思っても、それが許されなかった。3名が環境保全に関するきちんとした知見をもつことが許されないかたちで、承認の根拠を考えださなければならなかった、という可能性です。もしこれらが現実であったのなら、3名の職員は非常に不当な形で、知事の承認の責任を負わせられていることになります。
勿論これは、私しの個人的考察です。しかしこの新たな米軍基地建設のための埋立ての承認という歴史的重さを考えると、3人の海岸防災課の職員が、環境保全に関する専門的知見もなく、専門家に聞くこともなく、制度上可能だからということで承認の判断を下し、それを知事が受けて埋立てを承認したというシナリオはあまりにも無理があると思います。この問題も、世論として追求することとは勿論、ぜひ議会においてもしっかりと追求していくべきだと思います。
以上、報告と考察でした。
沖縄・生物多様性市民ネットワーク
吉川秀樹
(PDF: 104.18KB)
添付書類 (埋立承認の判断基準に関する公開質問)
沖縄県海岸防災課との要請交渉の様子(Y. Makishi撮影)
海には環境調査船が入り、キャンプ・シュワブの陸側では大規模な工事が続く辺野古・大浦湾の「現場」。そして反対行動を阻止するために立ち入り禁止区域の拡大や刑特法をちらつかせる政府。緊張感が高まる現状を受けて行われたのが今回の要請です。それゆえ、私たちもそして海岸防災課も声を荒げる場面が何度もある交渉になりました。沖縄の置かれた、厳しい、悲しい現実です。以下、要綱交渉の内容と私の個人的考察をまとめてみます。
専門家不在の承認
今回の要請の目的は、承認に至る過程のなかで、公有水面埋立法の第4条1項2号で求められている環境保全への配慮が適切になされいたのか、を確認することでした。
具体的には、以下の5つの項目について、沖縄県庁の誰が、どれだけの専門的知見をもって、承認の判断を下したかを説明してもらうことでした。
①ジュゴンの保全
②サンゴ類の保全
③海草藻場の保全
④外来種の問題
⑤米軍基地の運用に関する問題
私たちの質問に対する沖縄県海岸防災課からの回答はまとめると以下の通りになります。
1)承認の判断を下したのは、海岸防災課の3名の職員である。
2) 承認の判断を下した職員は5項目に関して「専門的レベル」の知見をもっていない。
3) 承認の判断を下すにあたり、海岸防災課/土木建築部が専門家に助言を求めること、専門家と協議することはしなかった。
4) 「承認」の判断において、また判断後において、環境保全について「懸念が払拭できない」との意見を出した環境生活部との直接のやり取りとりはなかった。
5) 制度上、判断する職員が「専門家レベル」の知見を持たなくても、専門家と協議しなくても、承認はできるものである。
辺野古・大浦湾の海岸域は、沖縄県の「自然環境の関する保全の指針」で最も厳しい評価ランク1(自然環境の厳正な保護を図る)に指定されているところです。その地域での埋立てについて判断するには、科学的専門的知見が必要であり、慎重に慎重を重ねた協議や議論が必要であったはずです。特に、沖縄県の環境生活部が、県の環境アセス審査会等の専門家の意見に基づき、環境保全についての「懸念は払拭できない」という意見を提出していることを考慮すると、少なくとも環境生活部との協議や議論は必要であったはずです。
沖縄県が委託する専門家の意見を無視し、専門家との協議さえも持たなかったこが許されていいはずがありません。これでは沖縄の環境が守れるはずがありません。これでは、公有水面埋立法で求められている環境保全の考慮をしたことにはなりません。これらは重要な問題として、世論としては勿論、県議会においても、関係自治体の議会でも追求し続けることが必要です。
承認のもとになったのは職員の判断か:知事の責任について (個人的考察)
しかし今回のこの承認の判断を、海岸防災課の3職員の問題や、制度的手続きの問題としてのみ考えることは非常に無理があると私は考えます。それについて私の個人的考察を示しておきます。
今回の私たちの要請交渉は、先の「百条委員会」における知事や土木建築部長が宣誓のもと証言した議事録の内容を基にして、つまり証言内容が「事実」であるということを前提として行っていました。
百条委員会の議事録で示されていることは、
1) 承認は知事の「政治的判断」ではなく、法に基づいた「行政判断」であった。
2) 知事は、様々な関係部署や名護市長の意見/見解をまず聞いて/考慮して、その後で承認の判断を下した。
ということです。
これを整理すると、環境保全に関して問題がある、あるいは「懸念は払拭できない」とする名護市長や環境生活部部長の意見とは異なり、唯一、埋立て申請は法の基準に「不適合とはいえない」(法の基準に適合している)とした海岸防災課の判断が、知事の承認につながったということです。私たちはこの「前提」を事実として、知事の判断の基になったとされる海岸防災課の職員やその職員の専門的知見について追求したわけです。
しかしこの前提自体が本当に正しいのかどうか、ということを考えないといけないと思います。
例えば、3名の職員の判断が先にあったのではなく、知事の政治的判断が先にあり、その後で3名の職員がその知事の承認の判断にもとづいて、承認の根拠になることを考えださねばならなかった、という可能性です。3名が専門家に聞こうと思っても、それが許されなかった。3名が環境保全に関するきちんとした知見をもつことが許されないかたちで、承認の根拠を考えださなければならなかった、という可能性です。もしこれらが現実であったのなら、3名の職員は非常に不当な形で、知事の承認の責任を負わせられていることになります。
勿論これは、私しの個人的考察です。しかしこの新たな米軍基地建設のための埋立ての承認という歴史的重さを考えると、3人の海岸防災課の職員が、環境保全に関する専門的知見もなく、専門家に聞くこともなく、制度上可能だからということで承認の判断を下し、それを知事が受けて埋立てを承認したというシナリオはあまりにも無理があると思います。この問題も、世論として追求することとは勿論、ぜひ議会においてもしっかりと追求していくべきだと思います。
以上、報告と考察でした。
沖縄・生物多様性市民ネットワーク
吉川秀樹
(PDF: 104.18KB)
添付書類 (埋立承認の判断基準に関する公開質問)
Posted by 沖縄BD at 13:30│Comments(0)
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