沖縄BD 高江ヘリパッド問題の声明文

2011年02月24日

                          2011年2月24日

沖縄・生物多様性市民ネットワーク声明文
防衛省による米軍ヘリパッド建設工事中止と建設計画撤回、
およびヤンバルの森の保全を求める声明



2010年12月、沖縄防衛局は東村高江において、住民らの非暴力の抗議と対話の要求を押し切り、
住民との話し合いを求めた裁判所命令を無視して、米軍のヘリパッド建設の工事を強行再開
しました。木々が伐採され、土嚢が投げ入れられ、高江の住民の暮らしとヤンバルの森は、
今また新たなる危機を迎えています。工事の強行再開は、工事に反対する住民・市民、工事を
請け負う業者、そして防衛局職員を無理矢理対立させ、けが人が出る異常事態となっています。
この工事は、環境破壊と人権侵害を引き起こしています。

ヤンバルの森には、1,000種以上の高等植物や5,000種以上の動物が生息し、日本のなかでも生物多様性の最も豊かな地域の一つとなっています。そこには絶滅危惧種のノグチゲラやヤンバルクイナを含む数多くの在来種や固有種が生息しています。また森に抱かれるように高江を含む小さな集落が点在しており、住民が暮らしを営んでいます。

沖縄県は、琉球列島を世界自然遺産に登録する取り組みのなかで、ヤンバルの森を最も重要な地域の一つとして掲げています。日本の環境省も、2010年10月に名古屋で開催された第10回生物多様性条約締約国会議(COP10)直前に、ヤンバルの森を近い将来、国立公園に指定すると表明しました。

しかし、ヤンバルの森の大部分は1957年から米軍の訓練場として使用されており、現在でも森の30パーセントが米軍の訓練場となっています。そこにはすでに22の米軍ヘリパッドがあり、頻繁に使用され、騒音問題など多くの問題を起こしています。高江の集落を囲むように6つの新たな米軍ヘリパッドを建設することは、高江の集落とヤンバルの森全体に多大な影響を与えることは明白です。

このヘリパッド建設計画には、1999年から、地域住民のみならず、国内外の学会、自然保護団体が見直しを要請してきました。国際自然保護連合(IUCN)は、日本政府に2度の勧告を行い、ヘリパッド建設計画への懸念を示し、ヤンバルの森に生息するノグチゲラやヤンバルクイナの保護を求めています。

日本政府が議長国を務めた昨年のCOP10においては、沖縄・生物多様性市民ネットワークを含む国内外の75のNGOは「CBD-COP10開催国日本の開発行為に対するNGO共同宣言」を行い、米軍ヘリパッド建設計画の見直しを求めました。英国のGuardian紙は、沖縄防衛局に対して「沖縄の貴重な生物多様性に影響を与えない他の場所(での建設)を考慮せよ」としています。またゼロ絶滅連盟(世界20カ国、68の研究機関やコンザベーション・インターナショナルなどの環境保護団体で成るthe Alliance for Zero Extinction, AZE)は、世界の最優先保護地587カ所の一つとして、ヤンバルの森を選定しています。

 私たち沖縄・生物多様性市民ネットワークは、私たちが「環境・平和・人権」を中心として活動してきたこと、そしてこの国内外の声を踏まえ、住民の暮らしと、生物多様性の豊かなヤンバルの森を守るために、ヘリパッド建設工事の即時中止と建設計画撤回を、沖縄防衛局、防衛省、そして米国政府に要求します。

 そして、COP10会議で採択された「愛知ターゲット」の「生物多様性の損失を止めるために効果的かつ緊急な行動を実施する」ミッション(使命)を踏まえ、沖縄県、環境省、米国政府に対し、ヤンバルの森の保全の責務があることを深く認識することと、保全の実行を求めます。


沖縄・生物多様性市民ネットワーク
共同代表  伊波義安、城間勝、高里鈴代


連絡先
事務局 吉川秀樹 (090-2516-7969)
yhideki@cosmos.ne.jp

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[記者会見補足資料]

「ヤンバルの森を守れ」の国内外の声
ヘリパッド建設計画が公になった1999年以降、高江の住民、高江区は勿論、自治体、NGO、学会、科学者/専門家たちが、この建設が高江の集落やヤンバルの森全体に影響を与えると訴え、建設の反対や見直しの声をあげてきた。

東村高江区は、1999年10月と2006年2月にヘリパッド建設反対決議を、2007年1月にはヘリパッド建設阻止行動決議を採択している。大宜味村も2010年6月にヘリパッド建設反対決議を採択している。東村は、2010年6月にノグチゲラ保護条例を制定している。

⇒別紙(沖縄BDの「緊急のよびかけ 沖縄ヤンバルの森と人々の暮らしを守ろう:米軍ヘリパッド建設工事強行再開」からの抜粋資料)参照。http://bit.ly/e4pdt3

「公開質問状」に対する沖縄防衛局の対応について
沖縄BDをはじめとする19団体は、2010年6月24日にヘリパッド建設に関する公開質問状を沖縄防衛局に提出し、文書による回答を求めた。5項目32の質問は、防衛局の「自主アセス」に関することから、ヤンバルの森の国立公園、世界自然遺産への指定に対する防衛局の見解など多義にわたるが、ほとんどが事実確認を求めるものであった。公開質問状の提出は、説明責任を果たしていない沖縄防衛局への住民・市民からの切実な訴えであった。

沖縄防衛局は7月15日の交渉において、自らが起こした高江に関わる裁判が「係争中」であることを理由に、全ての質問に対して「回答は差し控えたい」とした。また「市民と文書でやりとりすることはこれまで行っていない」ということで文面での回答はなかった。

沖縄防衛局の対応は、大きな問題である。裁判と何ら関係もない質問に関しても「係争中」であることで回答していない。「裁判が係争中」ということを盾に、すべての質問に対しての説明責任を逃れ、その一方で裁判所による住民との「話し合い」の要請を無視し、工事を強行再開している。沖縄防衛局のこの対応は、民主主義の基盤となるべき法の精神や仕組みを大きくゆがめている。このような手法が今後使われることを危惧する。

沖縄県、環境省、米国政府の「ヤンバルの森の保全」の責務
沖縄防衛局が「自主アセス」の結果に従い米軍ヘリパッドの建設工事を行っていることで、沖縄県、環境省、米国政府(国防総省)がヤンバルの森の保全の責務を逃れるわけではない。

例えば、ヤンバルの森には、ノグチゲラ、ヤンバルクイナ,ホントウアカヒゲ、ヤンバルテナガコガネなど日本の「種の保存法」やその他の法律で保護されている種が生息しており、その種の保護やその生息地の保全に対して、沖縄県と環境省は責務がある。

米国政府の責務は、1972年5月15日の日米合同委員会で承認、署名された「施設分化委員会覚書き(5.15メモ)」において、北部訓練場内での「本施設・区域内にある指定された水源涵養林並びに保護すべきものとして指定された鳥類及びそれらの自然生息地に対し、いかなる損害もあたえないようあらゆる合理的予防措置を講ずる」と明記されている。また2010年の日本環境管理基準「Japan Environmental Governing Standards(JEGS)」は、日本政府により指定された種が危機に瀕しているならば、特別な保護の対象となる(沖縄BD仮訳)」(C13.2.3)と明記している。
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Posted by 沖縄BD at 08:21│Comments(1)
この記事へのコメント
防衛局の強行に怒ります。官僚は保守的であると「考えを改めるのに遅い!」
元総理鳩山氏の証言から(琉球新報紙)もきずかされます。アメリカの利益ばかり守る施策にはガッカリします。過去も現在も変わりません。沖縄はどうなってんの?これからどうなるの?おきなわはウチナンチュで守っていかなくちゃーと考えさせられます.カン・サンジュン東大教授が「沖縄の未来を考える」で参議員糸数慶子さんとの対話で話されていたことが心に残ります。
Posted by 仲里朝治 at 2011年02月28日 02:28
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