西普天間: 県議会陳情を提出--利用も調査も県の役割がみえず

2015年06月28日/ 日米地位協定/ 環境協定/ キャンプ瑞慶覧/ 議会陳情/ 基地返還跡地/ 汚染/ 西普天間/ 沖縄県環境政策/ 沖縄防衛局

 返還された西普天間住宅地区について、県議会陳情を出しました。

 ブログ記事で紹介した、沖縄タイムスの記事でも触れられていましたが、跡地利用の具体的な計画が異例の早さで策定されています。「『仲井真弘多前知事の肝いり』(政府関係者)の側面が色濃く反映された」と紹介されています。
 辺野古の側面から、翁長県政の前知事からの断絶性が前面に出ていますが、その他の政策は同じと知事自らが認めているのですから、その連続性については、議員も県民も注意してみていく必要があります。

 直近のニュースとしては、日本政府は6 月22日、西普天間住宅地区の「国際医療拠点構想」と高度医療機能の導入としての「琉球大学医学部と同付属病院の移設」を経済財政運営の指針「骨太方針」に明記したことが挙げられます。
 自民党HP 西普天間基地跡地における国際医療拠点化等の推進について
 
 なぜ、「国際医療拠点」なのか、普天間高校の移設はどのように決まったのか、県民はそれをたどる材料を示されていない状態にあります。
全県的な議論はいつ行われたのか、県の役割も不明確です。 

 それは汚染調査を含む「支障除去」についても同じです。並行し、錯綜している調査計画は誰が統括するのでしょうか。沖縄県は「返還実施計画」で防衛局の要求した項目について、追求していくことに自覚的でしょうか。

 議員にもしっかり注視してもらいたいと思います。

西普天間: 県議会陳情を提出--利用も調査も県の役割がみえず

宜野湾市HP「瑞慶覧まちづくりハンドブック(入門編)」の作成について


----------------------------------------------------------------------------
2015年6月25日


沖縄県議会議長
喜納 昌春殿

                沖縄・生物多様性市民ネットワーク
沖縄県宜野湾市志真志4-24-7 セミナーハウス304
NPO法人「奥間川保護基金」事務所内
             共同代表/ディレクター 河村雅美 
           
返還跡地西普天間住宅地区の利用/支障除去について
(陳情)

2015年3月に返還された米軍基地跡地である西普天間住宅地区の利用計画策定・支障除去が、沖縄県の役割が不明確なまま進んでいます。2012年改正跡地利用特措法、初の適用事例であるにもかかわらず、全県的な議論がされないまま、日本政府の政策にひきずられ、県民はその過程から置き去りにされている状態であるように見受けられます。
この問題は一地域の問題ではなく、全県的な問題であるゆえ、沖縄県はその問題を把握し、跡地の利用や利用に至る過程が、県民の意思を反映したものであるか、真に沖縄県民のための制度になっているかを検証していく責任があると考えます。
これまでの過程をみても、政府が主張するような「先行モデル」「モデルケース」とはいうことができない問題点が見受けられます。
   
利用計画策定と支障除去において、県に主体的な責任を果たしていただくために、具体的に、以下を陳情します。

1. 利用計画策定について
1)現在の案が、どのように策定されたのかについて、複雑であるために県民は議論できない状態になっている。策定主体、提案に関わる関係機関を明確にし、時系列で整理して説明すること。また、詳細を県民に説明する文書を策定し、広く公開・周知すること。
 「国際医療拠点」「人材育成拠点」については、特にその概念形成の経緯や、概念そのものがわかりにくいので、「国際医療」とはなにかも含め、十分に説明すること。
 
2)現在の案は、2013年(平成25年)宜野湾市基地跡地対策課/宜野湾市軍用地主等地主会「キャンプ瑞慶覧西普天間住宅地区 まちづくり手引書」によると、地主会が策定してきたゆとりある「住宅中心のまちづくり」から「都市機能を持つまちづくり」に大きく変更されている。この理由を、宜野湾市と地主会は、「嘉手納以南の返還跡地利用の『先行モデル』となる地区であり、宜野湾市の新たな拠点のひとつとなる可能性があるから」という状況変化の理由で説明している。これは変更の理由になっていない、これまで当事者としてつみあげてきたまちづくりの計画が、十分な説明なく国の政策を理由に変更されことは、問題であると考える。2012年の「キャンプ瑞慶覧返還予定地区(宜野湾市部分)」では「本地区のまちづくりの主役は、地主やその家族、周辺の住民、宜野湾市民の皆さんです」と記されているが、日米政府の政策により、この部分が反故にされてしまったといえる。その後のアンケートも既成のメニューにおざなりな質問をして、合意形成を行っており、地権者からは、現時点でも不満の声もあがっているようである。
 このように、地元の積み上げを「状況変化」で崩してしまうことが「先行モデル」となることは、あってはならないと考える。今後、跡地利用法を適用する他の返還地のためにも、県としてこれまでの過程を検証、検討する必要がある。
このような意思決定過程について、沖縄県は各時点で把握していたのかを述べること。またこの決定過程について、県として見解を述べること。

3) 意思決定過程には、「キャンプ瑞慶覧(西普天間住宅地区)の跡地利用に関する協議会(以下、「協議会」)」のメンバーのみで、地権者以外の一般市民が入っておらず、協議会は公開されていない。つまり、近隣のコミュニティさえも、決定過程に意見がインプットできないシステムになっている。このような閉じられたシステムの中で、近隣の住民に影響のある案が決定されていくことは問題であると考えるが、県の見解とこの点に関する今後の対応を述べること。

4)跡地利用特措法の「拠点返還地」制度も同地区に初適用されたが、国の取り組み方針がこの制度によって策定されることにより、沖縄側の意思決定過程に国政与党の介入が強くなるリスクがないか、検討し、県の見解を述べること。

5)「国際医療拠点」の重粒子線治療施設建設案は、前県知事や沖縄県医師会の意向が反映されており、利用計画案策定過程が不透明である。重粒子線治療施設自体についても、地権者にもアンケート、説明会で詳しい十分な説明はされておらず、地元が利用できる総合病院と誤解している人々もいる。
また、沖縄県の医療や厚生事情から導き出された、沖縄県地域医療の優先事項としての案として策定されたものとは考えにくい。沖縄県に建設する立地面からのアドバンテージにも疑問が持たれ、採算性の面からも懸念が多い。
「集患」や県民の負担策軽減などが、後から考えられていることなどからも、案ありきで、県民や市民に目が向いていない計画案のように見受けられる。
この技術が医療技術で最先端治療として維持し続けられるものなのかについての説明もない2014年6月18日沖縄大学56周年記念講演で小出裕章氏は、「重粒子線加速器の周辺にあるものは放射性物質に変わってしまう」と述べている。このような放射線リスク、廃棄物処理の問題についてのリスクも十分説明されていない。また、医療の名のもとに原子力業界が利用を進める背景についても述べており、計画策定時にそのようなことが行われていないか、沖縄県は県民と検証し、沖縄にとってふさわしい案であるか考える機会を持つべきである。
まずは、以下の点を説明すること。
①なぜ沖縄県で重粒子線治療施設が必要なのか、県民の利益の観点から説明すること。
②重粒子線治療施設について、沖縄県は地権者、周辺住民について説明する機会はあったのか説明すること。なぜ地権者で誤解が生じているのか、検討すること。
③採算的に視野においているメディカルツーリズム面で、沖縄県のアドバンテージについて、本土、およびこの分野では先進的な近隣アジア諸国との比較で具体的に説明すること。
④採算性が取れなかった場合の経済的な補填方法、県民負担について説明すること。
⑤重粒子線のリスク、廃棄物処理の問題について、具体的に説明すること。

6)人材育成拠点ゾーンに移転される普天間高校の移転地は、2013年春に海軍病院が移転されたキャンプ・フォスターの隣接地であり、病院本体からはフェンス一枚隔て200〜300メートルしか離れていない場所である。また、跡地では汚染ドラム缶や鉛が発見された場所でもあり、騒音も懸念されるなど、米軍基地被害にさらされる可能性のある土地である。
今年初めに同高校の同窓会やPTA会から移転要請の署名が市を経由して県教育委員会へ提出されたとらしいが、敷地の狭さだけの理由で当該地の状況説明は全く記載されていなかったとのことである。
計画案を推進するにあたり、移転署名を根拠にするようであるが、このように普天間高校の移設位置などの実態が知らされていないような署名活動であったという背景を県は確認できているのか。また、キャンプ・フォスターのフェンス沿いに高校を移転するリスクについて、県はどのような認識をもっているのか。

2. 支障除去について
1)支障除去過程における沖縄県の役割、責任について不明確である。沖縄市サッカー場の例では、沖縄防衛局の調査の評価が問題になっているにも関わらず、沖縄県・宜野湾市は調査の監視・評価の役割を担うことについて消極的であることは、問題である。基地環境特別対策室がそのような役割を取らないことは承知しているが、沖縄県はこの西普天間返還跡地の汚染調査で、どのような役割を担うのか、具体的に述べること。

2) 西普天間の各々の調査設計や調査結果を踏まえた全体のフローチャートがなく、錯綜していることは「キャンプ瑞慶覧(西普天間住宅地区)の跡地利用に関する協議会」第6回議事録でも宜野湾市と防衛局間で確認されている(2014年8月12日)。(“【宜野湾市:伊佐部長】「支障除去のスケジュールとうちの文化財の調査がいま一つかみ合っていないような気がいたします。表面調査とですね。かみ合うように一つよろしくお願いいたします。
」【沖縄防衛局:三沢課長】「そこはおっしゃるとおり、まだかみ合っていません。我々も今回、ある程度の調査計画は立案したものの、まだ細かいところが検討できていないところがありますので、そこは1つずつきちんと整理しながら調整していきたいと思っています。そこは逆にこちらからもよろしくお願いします。」”)
 このように整理がされていない中、返還前の文化財調査でドラム缶が発見され、沖縄防衛局による汚染調査において「資料等調査報告」では予見できなかった埋め立て物や、鉛の汚染が発覚している。鉛の汚染は、調査報告書でも深度を伴う追加調査が提案されている。その中で、環境影響評価も進行中であり、市民は調査の現状が把握できる状態にない。
沖縄県は、「国の責任で」と責任を回避せずに、このような錯綜・混乱している調査設計や調査報告を整理し、県民へわかりやすい形で公開する調整役をつとめること。

3)現在、沖縄防衛局は、宜野湾市の要請で、地元企業のために、調査の入札を細切れで出している(土壌調査は5件、磁気探査は22件、6月12日付)。
①この調査項目については、入札前に沖縄防衛局といつ協議したのか説明すること。沖縄防衛局の「返還実施計画」に対しての沖縄県知事意見(2014年2月5日)で「返還実施計画に記載された調査項目だけでなく、県民の安全安心の観点から幅広く調査を実施していただきたい」と要請しているが、その意見に沿う努力を県は行っているのか。
②また、それに加え、このように調査がバラバラに実施されることは、調査結果をまとめて把握することができない懸念がある。
沖縄防衛局によれば、この調査報告などを集約する予定はないとのことであるので、沖縄県が調査を把握するためにも、県が集約し、県民にわかりやすく周知する役割を果たすこと。

4)アスベストの処理についての現状、防衛局、宜野湾市、沖縄県でどのような協議を行っているか報告すること。また、住民への説明会を、条例改正の説明とともに、県がイニシアチブをとり、3者で実施すること。

5) 「旧嘉手納飛行場(26)土壌等確認調査(その2)キャンプ瑞慶覧(西普天間住宅地区)」調査報告書で、当初、米軍の許可がなかったために公開されなかったドラム缶の写真(現在は公開)について、環境団体、国会議員はその公開について取り組んできた。地位協定改正、環境協定に取り組んでいるとされる沖縄県は、この間、どのような働きかけを日米政府に行ったか説明すること。

6)沖縄防衛局の「返還実施計画」に対して沖縄県知事が要請した「(廃棄物の有無について)
15. 廃棄物の調査については、『地中レーダー探査等により廃棄物の有無を調査する』としているが、同探査の深度や精度、確認できる廃棄物の種類等について予め関係機関と調整を行っていただきたい。」の調整についてはどうなっているか、説明すること。

                                                        以上
----------------------------------------------------------------------

%E6%B2%96%E7%B8%84%E7%9C%8C%E7%9C%8C%E8%AD%B0%E4%BC%9A%E9%99%B3%E6%83%85201506%E8%A5%BF%E6%99%AE%E5%A4%A9%E9%96%93.pdf (PDF: 299.7KB)


同じカテゴリー(日米地位協定)の記事

Posted by 沖縄BD at 22:58│Comments(0)
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。