沖縄市サッカー場:ドラム缶たまり水専門家意見1)宮田秀明氏~ダイオキシンは溶出

2015年04月08日/ 沖縄市サッカー場/ 日米地位協定/ 環境協定/ 枯れ葉剤/ 基地返還跡地/ 汚染/ 沖縄県環境政策/ 沖縄防衛局

 沖縄・BDは、沖縄市サッカー場のドラム缶が埋設されていた場所、周辺にたまっていた水や底面土壌についての沖縄防衛局の調査・分析が妥当なものであるか、専門家に評価していただいています。

 沖縄市サッカー場:ドラム缶たまり水専門家意見1)宮田秀明氏~ダイオキシンは溶出
沖縄防衛局HP 調査結果現場写真より切り取り(http://www.mod.go.jp/rdb/okinawa/07oshirase/kanri/houkokusyo6/13.pdf

この記事では、ダイオキシンの専門家の宮田秀明氏(摂南大学名誉教授)の意見を紹介します。
宮田先生は、池田こみちさんと同じく、サッカー場の調査の最初から、意見書を書いてくださっています。
 沖縄市サッカー場調査評価:ダイオキシン専門家宮田秀明氏からの意見書をリリース
 [沖縄市サッカー場汚染]ダイオキシン専門家宮田秀明氏意見書についての報道
 沖縄市サッカー場監視・評価プロジェクト2nd ラウンド:宮田秀明氏意見書

意見書のオリジナルについては下に貼り付けているので、詳細はそちらを参照してください。

宮田先生の意見書で重要なポイントは、ダイオキシン類がどのような状態で存在しているのかの分析です。
たまり水をフィルターでろ過をし、ろ過前と、ろ過後のダイオキシン類の濃度の測定をすることにより、ダイオキシン類がどのような状態で存在しているか---ダイオキシンが粒子に吸着している状態(懸濁体)か、あるいは液体として溶けている状態(溶存体)---かがわかります。
 参考:「ダイオキシン類挙動モデルハンドブック」(平成16年3月環境省環境管理局総務課ダイオキシン対策室)
 
この分析から、宮田先生は、高濃度のダイオキシン類が長期間持続して溶出しているという結論を出しています。沖縄防衛局の「汚染範囲は限定的である」という見解は、汚染の影響を矮小化していることがみてとれます。

また、沖縄防衛局の調査結果の分析が正確でないことを2点指摘しています。 

 以下、ポイントをまとめてみました。
  
1)たまり水のダイオキシン濃度は高い
 未ろ過水 170pg/-TEQ/L (環境基準値水質、1pg-TEQ/L以下、の170倍)、ろ過水 33pg-TEQ/L(33倍)とダイオキシン濃度として高い値を示していることが、まず指摘されています。(環境基準値:水質 1pg-TEQ/L以下)。
 また、環境総合研究所の池田こみちさんの意見書でも、「(猛毒ダイオキシン類である)2,3,7,8-TCDDの15%は決して小さい割合でない。水試料で、 2.3.7.8-TeCDDの毒性等量濃度の割合が15%程度というのはかなり高い。土壌ではほとんどでない)」とコメントなさっていました。

2)雨水等によって埋め立て物から異常な濃度のダイオキシン類が持続して溶出していることを示唆している。 
 ダイオキシンは「溶存体」という存在形態で溶解(粒子に吸着している状態ではない)しており、”当該地域の埋立物に起因するダイオキシン類が雨水等によって容易に溶出される状況にある。その状況は長期間にわたって持続していたものと判断される。”と結論づけられています。
 ダイオキシン類の汚染がそこにとどまらず、溶け出していたという、大変、危険な状態が続いていたことがわかります。

3)沖縄防衛局の調査は明らかに不正確な分析がある
 沖縄防衛局の調査の以下の2点が不正確であると指摘しています。 
①ダイオキシン異性体分析で焼却由来の分析がされていない。
沖縄防衛局は、ダイオキシン異性体分析で
“今回のたまり水は前回実施(平成26年6月調査)のたまり水に比べ,1,2,3,7,8-PeCDDの割合がやや多く(今回:27.6%,前回: 21.3%), 2,3,4,7,8-PeCDFの割合がやや少なく(今回:2.5%,前回:8.4%)なっているが,その他の異性体割合は概ね類似しており,たまり水のダイオキシン類は,前回実施(平成26年6月調査)分と同一なもの(2,4,5-T中不純物,PCP中不純物,およびPCBに由来するダイオキシン類が混合して存在していた)と考えられる。“(p.30)
と考察していますが、
宮田先生は、
”溜まり水に検出される主なダイオキシン類化合物は、2,3,7,8- TeCDD、1,2,3,7,8-PeCDDおよび1,2,3,4,6,7,8-HpCDDである。特に、1,2,3,7,8-PeCDDは、焼却関連物(焼却灰、焼却飛灰など)に含まれる代表的なダイオキシン類異性体であることを考慮すると、沖縄防衛局の本報告書の30頁に記載されている”「2,4,5-T中不純物、PCP中不純物、およびPCBに由来するダイオキシン類が混合して存在していた」と考えられる“との内容は、正確ではない。おそらく、焼却関連物も埋立物に含まれており、それらからの溶出物も混在していたものと判断される

と、沖縄防衛局の分析を否定しています。

また、意見書にはありませんが、1,2,3,7,8-PeCDDが一般的な焼却関連物としては高く、他の化学物質があったのかもしれないが、それを知る研究結果やこれまでの知見はない、と宮田先生はおっしゃっていました。

 これについては、池田こみちさんから、「これまでの調査結果の範囲内に納めることによって、これ以上問題の射程が拡がらないことこと、処理処分についてもできるだけ限定的にしたい意図があるようにみえるも仕方がない書き方ではないか」と追加の説明がありました。
 確かに、これによって、焼却関連物がドラム缶の中にあったこと、灰の処分、沖縄でよく見られる風景であった野焼きによる被害の可能性など、問題の射程は、広がります。

②ダイオキシン類の溶解性を増加させる物質を一般土壌に存在する腐植物としている。
 ポイント2で示されているダイオキシン類の溶解性を増加させる物質について、沖縄防衛局は、
 ”これらのことから,ろ過水のダイオキシン類は,水中のフミン酸やフルボ酸などに保持されて,ろ液中に通常より多く存在していた可能性が考えられる。(p.30)”
と、一般土壌に存在するものと考察していますが、
宮田先生は、
“今回の調査結果では、溜まり水に含まれていた170 pg-TEQ/Lのダイオキシン類の中、約1/5に相当する33 pg-TEQ/Lも溶存体として存在しる。このような極めて高率で溶存体として存在するためには、ダイオキシン類の溶解性を増加させる物質が溜まり水に含まれていたと考えられる。本報告書の30頁には、一般土壌に存在する腐植物であるフミン酸やフルボ酸が溜まり水に含まれており、ダイオキシン類の溶存体を増加させたものと記載されている。しかし、溜まり水は着色しており、土壌由来であればほとんど着色しないものと思われる。遺棄・埋設物にはいろいろな廃棄物が含まれており、特に、界面活性剤のような油性物質と水性物質の両者を熔解できるような物質が溜まり水に溶けていたものと思われる。産廃の埋め立て地などでは、溜まり水の色が褐色や赤色のものもあり、明らかに埋め立て物を反映している。溜まり水にダイオキシン類が異常に高い濃度で存在していることは、当然のことながら埋め立て物に起因するものである。当然のことながら、着色物質も埋め立て物に起因するという考え方が、適切であると判断される。”
と、ダイオキシン類の溶解性を増加は、ドラム缶の中身に起因すると見解を述べています。

 これも、やはり問題の射程が広がらないように、自然由来、一般的な条件にとどめておきたいという意図があるように考えられても仕方がないと書き方であるといえます。

4)埋め立て物は「ドラム缶」とは限らない
 これまでの調査では、「ドラム缶」を前提として行われてきましたが、”一方、当該地域の埋立物は、全てが金属製のドラム缶であったのであろうか。ポリ袋や段ボール等の非磁気性の容器のものはなかったのであろうか。”と、問題を提起しています。
 そして、廃棄物の埋め立て地における有害物の種類や濃度は、均一ではなく、全くの不連続性を特徴とする。そのため、少し離れた地点における有害物質の種類や濃度は、水平的にも垂直的にも極めて大きく相違する。このような実態があるため、埋立地における汚染調査は、適切な間隔の適切な深さのボーリング調査を原則としている。と、磁気探査に頼らない調査を提言なさっています。
 
 このような問題点の指摘から、やはり調査の結果のみでなく、調査結果からの分析、評価が大事であることがわかります。
 
 本来ならば、沖縄防衛局は、ダイオキシン類の状態がどのような状態であるのか/あったのか、そしてそれはどのような影響を及ぼし、汚染範囲を推測する点でどのような意味があるかを、報告書で説明しなければならないはずです。しかし、そのような報告になっていません。

 私たちはやはり調査を監視する姿勢を強くもった市民となって、調査・報告体制を整え、環境・安全・安心を守っていかなければならないことを改めて認識させられる意見書です。防衛局の見解を聞きたいと思います。
 
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旧嘉手納飛行場(26)土壌等確認調査(その2)嘉手納飛行場返還跡地内報告書 
平成27年1月 沖縄防衛局調達部/中央開発株式会社についての意見書


平成27年2月28日

摂南大学名誉教授
宮田秀明


1. 溜まり水のダイオキシン類について
 今回の調査結果では、溜まり水のダイオキシン類濃度は、未ろ過水で170 pg-TEQ/Lおよびろ過水で33 pg-TEQ/Lであり、極めて異常に高い。今回の検出濃度は、平成26年6月の沖縄防衛局の調査結果(未ろ過水:150 pg-TEQ/L;過水で55 pg-TEQ/L)および沖縄市の調査結果(未ろ過水:190 pg-TEQ/L;過水で64 pg-TEQ/L)と同様なレベルである。これら一連の結果は、旧嘉手納飛行場のコザ運動公園においては、雨水等によって埋立物から異常な濃度のダイオキシン類が、持続して溶出していることを示唆するものである。
 溜まり水の未ろ過水とろ過水に含まれているダイオキシン類は、ポリ塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン(PCDDs)、ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDFs)およびコプラナーPCB(Co-PCBs)の多様な異性体から構成されているが、ほぼ類似した異性体割合を示している。この結果は、埋立物から溜まり水に移行するダイオキシン類は、溶出量だけでなく、溶出成分もほぼ類似していたことを示唆するものである。
 溜まり水に検出されるダイオキシン類の濃度は、PCDDs>>PCDFs>Co-PCBsの順であり、圧倒的にPCDDs濃度が高い。
 表1に示すように、溜まり水に検出される主なダイオキシン類化合物は、2,3,7,8-TeCDD、1,2,3,7,8-PeCDDおよび1,2,3,4,6,7,8-HpCDDである。特に、1,2,3,7,8-PeCDDは、焼却関連物(焼却灰、焼却飛灰など)に含まれる代表的なダイオキシン類異性体であることを考慮すると、沖縄防衛局の本報告書の30頁に記載されている”「2,4,5-T中不純物、PCP中不純物、およびPCBに由来するダイオキシン類が混合して存在していた」と考えられる“との内容は、正確ではない。おそらく、焼却関連物も埋立物に含まれており、それらからの溶出物も混在していたものと判断される。

    表1. 溜まり水に存在しているダイオキシン類の主な異性体

沖縄市サッカー場:ドラム缶たまり水専門家意見1)宮田秀明氏~ダイオキシンは溶出


 一方、今回の調査においては、通常の分析では使用しない極めて小さい孔経(0.1μm)のメンブランフィルターを用いて、溜まり水をろ過している。前回は通常使用する0.5μmのフィルターを使用していた。一般に、水中のダイオキシン類の大半は、浮遊粒子に吸着して存在していると言われている。そのため、今回は可能な限り浮遊粒子に吸着したダイオキシン類をろ過時に除去する目的で、通常使用しない極微細孔のフィルターが使用された。
その結果、溜まり水のダイオキシン類濃度は、未ろ過水では、今回の濃度(170 pg-TEQ/L)は、前回(150 pg-TEQ/L)よりも若干高かったにも係わらず、ろ過水にでは、今回の濃度(33 pg-TEQ/L)は、前回(55 pg-TEQ/L)よりも大幅に低下している結果となっている。
今回の調査結果において、溜まり水には0.1μmよりも微小の浮遊粒子が存在していないことが明らかにされている。従って、今回のろ過水に含まれているダイオキシン類は、粒子に吸着しているものではなく、溜まり水に「溶存体」という存在形態で溶解しているものである。
上述したように、今回の調査結果では、溜まり水に含まれていた170 pg-TEQ/Lのダイオキシン類の中、約1/5に相当する33 pg-TEQ/Lも溶存体として存在しる。このような極めて高率で溶存体として存在するためには、ダイオキシン類の溶解性を増加させる物質が溜まり水に含まれていたと考えられる。本報告書の30頁には、一般土壌に存在する腐植物であるフミン酸やフルボ酸が溜まり水に含まれており、ダイオキシン類の溶存体を増加させたものと記載されている。しかし、溜まり水は着色しており、土壌由来であればほとんど着色しないものと思われる。遺棄・埋設物にはいろいろな廃棄物が含まれており、特に、界面活性剤のような油性物質と水性物質の両者を熔解できるような物質が溜まり水に溶けていたものと思われる。産廃の埋め立て地などでは、溜まり水の色が褐色や赤色のものもあり、明らかに埋め立て物を反映している。溜まり水にダイオキシン類が異常に高い濃度で存在していることは、当然のことながら埋め立て物に起因するものである。当然のことながら、着色物質も埋め立て物に起因するという考え方が、適切であると判断される。
本調査結果、前回の調査結果および沖縄市の調査結果を考慮すると、当該地域の埋立物に起因するダイオキシン類が雨水等によって容易に溶出される状況にある。その状況は長期間にわたって持続していたものと判断される。従って、その汚染原因となる埋立物等の完全な除去が緊急課題である。

2. 調査方法について
 今回の調査報告書は2015年2月10日に公表されている。しかし、沖縄防衛局は、それ以降の2月13日に4本、2月19日に2本のドラム缶が新たに検出されたことを発表した。これで当該地域では合計100本のドラム缶が見つかったことになる。
前回の調査(旧嘉手納飛行場(25)土壌等確認調査8その2)調査報告書概要板、平成26年6月)においては、磁気探査結果を主体とした調査によってドラム缶を検出している。
 一方、当該地域の埋立物は、全てが金属製のドラム缶であったのであろうか。ポリ袋や段ボール等の非磁気性の容器のものはなかったのであろうか。
  廃棄物の埋め立て地における有害物の種類や濃度は、均一ではなく、全くの不連続性を特徴とする。そのため、少し離れた地点における有害物質の種類や濃度は、水平的にも垂直的にも極めて大きく相違する。このような実態があるため、埋立地における汚染調査は、適切な間隔の適切な深さのボーリング調査を原則としている。
 今回の調査は、これまでの調査結果において最高濃度を示したドラム缶を対象として、その下方への調査を実施している。上述したように、この最高濃度を示したドラム缶の検出後に新たなドラム缶が検出された。その分析は、今後、実施される予定となっている。もし、新たなドラム缶がさらに高い濃度の結果であったならば、今回の調査方法は、不適切と言わざるを得ないことになる。
 また、全ての埋立物がドラム缶であったとの確証はあるのだろうか?もし、確証がないとすれば、磁気探査による調査自体が不適切となる。
 従って、当該地域における汚染範囲の確定は、ボーリング調査結果を基礎とすることが基本であり、その結果に基づいて、汚染対策を実施することが原則である。


 
宮田秀明氏意見書PDF
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