記者会見:環境NGOで米国海洋哺乳類委員会(MMC)を訪問 

2014年05月20日/ 辺野古/ ジュゴン訴訟/ 辺野古アセス

 5月15日から24日まで、名護市長が訪米していますが、その期間、沖縄の環境団体も訪米し、米国政府の独立機関である海洋哺乳類委員会(US Marine Mammal Commission、以下MMC)を訪問します。
 
 訪米するのは、名護市議であり、ジュゴン保護基金、エコツアーを主宰するじゅごんの里の代表である東恩納琢磨さん、沖縄・生物多様性市民ネットワーク、ジュゴン保護キャンペーンセンターの吉川秀樹さんの2名です。

 MMC訪問について、5月16日に記者会見を行ってきました。
 
記者会見:環境NGOで米国海洋哺乳類委員会(MMC)を訪問 


 詳細は下記の説明をみていただければと思いますが、米国MMCへの訪問は、ジュゴン訴訟の判決文で明らかになったとおり、辺野古の基地建設の事業者が米国国防総省でもあること、ゆえに、ジュゴン保護の手続きをとる責任が米国にもあることを、再度確認し、米国側の動きを促す機会になるでしょう。

 さらに、ジュゴンに関しては、沖縄側の要請だけではなく、MMC側からの働きかけがあったことは重要です。MMCが、2009年の年次総会に沖縄側の関係者を招き、ジュゴン訴訟と沖縄の状況について聴取したという経緯は、海洋哺乳類の保全を担う米国機関側からも、沖縄のジュゴン保護に関わる姿勢が示されたということを意味します。聴取を受け、MMCは基地建設と運用のジュゴンへの影響についての国防総省の分析を検証する意思を示しました。その実現が期待されます。

 また、国防総省の分析は、日本側の環境アセスに大きく依拠しています。MMCによる国防総省の分析の検証は、環境団体が不備や透明性の欠如を指摘してきた日本政府の環境アセスに、国際的な目がはいるという機会となることと思います。
 詳しくは、下の説明をごらんください。

要請の背景
 2013 年12 月仲井真弘多沖縄県知事は、日米両政府が進める辺野古・大浦湾における米国海兵隊普天間飛行場代替施設建設(以下基地建設)のための埋立て申請を承認しました。その後、埋立て工事に向けての入札等の手続きが着々と進み、報道ではこの秋の知事選挙前の年内着工が伝えられています。しかし、基地建設が押し進められる根拠となっている「環境に影響はない」とした沖縄防衛局の環境アセスや、仲井真知事による埋め立ての承認は、科学的な正当性を欠くものであり、環境アセスの法制度や公有水面埋立法に反するものと、環境団体は考えています。
  そこで、日米両政府により進められる辺野古・大浦湾での基地建設がもたらす絶滅危惧種ジュゴンへの影響について訴え、ジュゴン保護・保全の立場から、MMCに対して要請を行うこととなりました。
 また、今回のMMC訪問は、基地建設反対という名護、沖縄の民意を訴える稲嶺進名護市長の訪米とも重なります。環境団体は、環境面からのサポートをするということになります。

 要請内容
 2008年1月の米国連邦地裁のジュゴン訴訟の判決によって、米国防総省は、国家歴史保存法(NHPA)のもと、基地がもたらすジュゴンへの影響に対して「回避と緩和の目的をもって、考慮すること」が命じられています。つまり、基地建設と運用によるジュゴンへの影響を米国防総省が分析を行い、影響があるならば何らかの対応を行わなければならないということです。
 今回の環境団体のMMCへの要請は、米国防総省が行うジュゴンへの影響の分析や対応に対して、米国政府の独立機関としてMMCが科学的、専門的知見から検証を行い、コメントしてもらいたい、という内容になります。
 そのために、①日本政府が行った環境アセスについての問題点、②埋立て申請承認手続きと沖縄県知事の埋立て承認についての問題点を提示していきます。

米国海洋哺乳類委員会(MMC)とジュゴン保護 
 海洋哺乳類の保護と保全を担う米国政府の独立機関であるMMCは、同基地建設がもたらすジュゴンへの影響の可能性の報告を日本のNGOから受け、2000年より同基地建設計画の動向を注視してきました。米国政府の機関である米国防総省が関わる基地の建設や運用がもたらす絶滅危惧種ジュゴンへ悪影響を懸念しているからです。

  MMCは、国家歴史保存法(National Historical Preservation Act 以下NHPA)のもと米国連邦地裁で争われてきた「ジュゴン訴訟」の2008年1月の原告勝利の判決を受け、同基地建設計画へより明確にそして具体的に関わり始めました。なぜなら、米国防総省に対して、国家歴史保存法(NHPA)のもと、基地がもたらすジュゴンへの影響に対して「回避と緩和の目的をもって、考慮すること」を連邦地裁が命じたからです。MMCは2009年12月に開催されたMMC年次総会に、沖縄と米国より関係者(沖縄からは東恩納琢磨、吉川秀樹、米国からはCBDのMiyoko Sakashita)を招き、ジュゴン訴訟と沖縄の状況についての聴取を行いました。その会議において、沖縄から参加した東恩納琢磨、吉川秀樹から、米国防総省が日本政府の環境アセスをどのように使用するか等の問題も含め、MMCが国防総省が行うジュゴンへの影響の分析を検証することの必要性を示し、検証の要請を行いました。

 MMCは、その要請を受けて、2009年の連邦議会への年次報告書で、「NHPAのもと米国防総省が行う基地建設のジュゴンへの影響の分析を、MMCが検証しコメントする意図である」として明記しました。

     2009年の年次報告書はこちら The Marine Mammal Commission Annual Report to Congress 2009
    
記者会見:環境NGOで米国海洋哺乳類委員会(MMC)を訪問 


今こそMMCのコメントの時期
  一方原告勝訴の判決を下した連邦地裁は、2012年2月、基地建設計画の実効性が不透明であるとしてジュゴン訴訟を一時停止しました。理由として連邦地裁は、その時点において日本の環境アセスがまだ完了していないこと、同基地建設と海兵隊の沖縄からのグアム移転計画がリンクされなくなったこと、基地建設により生息域が破壊されるという結論を沖縄県が環境アセスにおいて示すことが予想されること、知事が「県外移設」を求めていること、同基地建設計画への連邦議会員からの予算面での問題点の指摘を上げています。

 しかし沖縄においては、2012年12月に環境アセスの手続きが終わり、2013年3月には基地建設のための埋立て承認申請の手続きが始まりました。そして、2013年12月には仲井真弘多知事が埋立てを承認し、現在、埋立工事に向けての手続きが進んでいます。報道では知事選挙前の年内着工が伝えられています。

  この工事着工への動きを受けて、ジュゴン訴訟で求められているNHPAの遵守のための国防総省自らのジュゴンへの影響の分析を近々示すことが予想されます。これは同時に、MMCが米国防総省の基地建設のジュゴンへの影響の分析を検証し、コメントする時期が来ていることを意味しています。
  
要請日時:
 5月20日 午前11:00- @MMC

参加者::
NGO・市民社会
東恩納琢磨(ジュゴン保護基金、名護市議会議員、ジュゴン訴訟の原告)
吉川秀樹 (沖縄・生物多様性市民ネットワーク、SDCC)
Bill Snape (米国CBD(生物多様性センター)、CBDもジュゴン訴訟原告)

MMCの対応者
 Michael Gosliner  (General Counsel (法務担当責任者))、他

 今回の沖縄からの派遣にかかる費用は、ヘリ基地反対協と沖縄平和市民連絡会からのカンパによって賄われることになりました。両団体のご理解とご協力に深く感謝を申し上げます。
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<報道 >
・QAB: 市民団体がMMCに要請へ (2014.5.16) 

・県内紙の報道は後で追加します。  



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Posted by 沖縄BD at 17:19│Comments(0)
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