ジュゴンが国際学会でヘレン・マーシュ博士の講演に(2012.7)

2013年01月02日/ 辺野古アセス

 辺野古アセスのアクションが休み明けに始められる前に、防衛局がまたこんなことやったよ〜全く〜なんていう記事をアップし続けるのも飽きたということもあり、"Save Henoko" のための海の向こうの力強いサポートがあるよ、という元気のでる記事をポストします。

 辺野古の話は沖縄BDが書く文書でも、こちらのブログでも度々触れてきましたが、国連人種差別撤廃委員会、国連環境計画(UNEP)、生物多様性条約(CBD-COP)、国際自然保護連合(IUCN)、ジュゴン訴訟など、沖縄の人々が本土や国境を越えて外国の人と協力しあい、多くの国際的な場にあげ続けてきました。
 この記事はそれに加えて、国際学会の2,000人の研究者が集まる場で、辺野古のことが話された歴史的瞬間をご紹介する記事です。

 昨年7月、安部真理子さんが、オーストラリアのケアンズで開催された国際サンゴ礁学会に参加しました。そのプレナリーでジェームズクック大学のヘレン・マーシュ博士が"世界各国から集まった2,000人の研究者の前で「辺野古」の話を話してくれたという報告を、沖縄BD等のメーリングリストにしてくれました。この記事はその報告がもとになっています。
 ヘレン・マーシュ博士は、"Conserving coral reef megafauna: issues of ecological process, biodiversity, cultural diversity and food security(サンゴ礁に生きる巨大な動物を守る:生態学的、生物多様性、文化の多様性と食糧確保の点から)"と題し、世界のジュゴンの保全の話の冒頭で、辺野古のジュゴンのことを話したそうです。
安部さんが講演の和訳の要旨を作ってくれましたので(いつも忙しいのに感謝です)、下に載せました。沖縄のことを話してくれたことだけでなく、保護の成功例、若い科学者へのすばらしいメッセージが含まれています。

 
ジュゴンが国際学会でヘレン・マーシュ博士の講演に(2012.7)


動画があがっています。英語ですが、最初の4~6分のところで'Okinawa','Henoko'という言葉が出てきますし、プレゼンテーションファイルも映されているのでぜひごらんください。
 このICRS2012のサイトのプレゼンテーションのサイトにアクセスし、右からHelene Marsh氏(タイトルは「Conserving coral reef megafauna: issues of ecological process, biodiversity, cultural diversity and food security」です)の動画を選んで下さい。このような↓画面です。

ジュゴンが国際学会でヘレン・マーシュ博士の講演に(2012.7)


最初の5-6分間の間に沖縄の基地のこと、ジュゴン訴訟の話が出てきますが、その時にでてくるプレゼンテーションファイルです。
ジュゴンが国際学会でヘレン・マーシュ博士の講演に(2012.7)
力強い、政治的動物  
(ジュゴンvs国防長官ラムズフェルド ジュゴンの勝訴/ ジュゴンvs 国防長官ゲイツ)

 ジュゴン訴訟やそれが及ぼす国際的な動きについては、COP10で私と吉川さんがプレゼンをしているので、整理してまたここに載せる予定です。とりあえずは昨年、辺野古アセスが国際的に持つ意味をまとめた<辺野古アセス>審査会への意見(河村雅美)(2012.1.28)にジュゴン訴訟についての部分がありますので、そちらをごらんください。
 ヘレン・マーシュ博士の最新のジュゴンの著書のイントロダクションは、沖縄のジュゴン、ジュゴン訴訟のことで始められています。それについても別記事でご紹介します。

                                  河村雅美
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ヘレン・マーシュ博士の講演(プレナリー):講演概略:
マーシュ博士は最初にmegafaunaの定義を次のようにした。「megafauna:サンゴ礁に棲む巨大生物」は「ジュゴンのような海棲哺乳類、サメ、海鳥、ウミガメといった大きな生物」と定義した。これらはかつて優占種だった生物たちである。これらの海の大きな生き物たちの保全には、生態学的な価値とともに、社会的、文化的、経済学的(エコツーリズム、フカヒレの取引など)な価値が取り入れられることが必要である。
 『ジュゴンほど力強く、政治的に強い動物はいない』。鯨が政治的な動物であることは世界中の人々が知っているが、ジュゴンはあまり知られていないのでここで紹介しよう。1997年に米国国防総省と日本の首相が沖縄に米軍基地建設の計画を立てたのがきっかけだ。この場所は「辺野古」と言い、沖縄の既存の米軍施設であるキャンプシュワブの近くにある。日本の天然記念物であるジュゴンが、ラムズフェルド元国防長官と法廷で闘い、驚くべきことにジュゴンが勝った。そして、国家歴史保存法(NHPA:National Historic Preservation Act)においてもジュゴンは保全の対象となることが認められた。次にジュゴンは次の国防長官をつとめたロバート・ゲイツ元国防長官と闘い、この戦いでもジュゴンは勝った。ここで大きな質問は(50billion question)は「ジュゴンは雌の国務長官(=クリントン国務長官)に勝つことができるか?(Can the dugong defeat a female Secretary of State ?)」である。私はジュゴンが勝つと信じている。
 人間が与える海の巨大生物に与える影響にはボートストライク、混獲、汚染 、沿岸開発ダイナマイトフィッシュング、気候変動、ハンティング、船の衝突などがある。世界の多くの場所でこれらの海の巨大生物が絶滅の危機に瀕していて、これらの保全には文化や伝統の保全、地域の人たちが自分で守ることが大切である。
 多くのサンゴ礁を持つ国々は所得が低い。これらの場所では海の巨大生物は生しておいた方が殺すよりも地元の人たちにとって価値が高い。成功事例に1つであるパラオを紹介しよう。ダイバーにサメを見せるサメダイビングがある。これはGDPの8%となり、国の税収入の14%となる。またサメダイビングを楽しむ人がレストランで使うお金も地元にとっては結構大きな収入源である。これに気付いたパラオ政府は、サメのサンクチュアリを作っている。フィジーで同様な取り組があり、ダイビング業界が大きな収入源となっている。フィジーダイビング業界は地元にお金を入れている。
 もう1つの事例としてオーストラリアのトーレ ストレイト(Torre Strait)島でのウミガメ保護区の話をしよう。どれくらいよく保全されているかというと、前大統領がウミガメ保護区を訪れようとしたところ、許可書を持っていなかったため、足を踏み入れることもできなかったということがあった。ここのレンジャーはそれ位に意識が高い。
ウミガメは海面上昇などの影響で、産卵に適した砂浜が減り、産卵に影響が出ている。
また産卵地は気候変動の影響を受けやすいと言える。海面上昇により産卵地が減る、卵が生存率が低くなる、(温度により子ガメの性別が決まるため)性的な偏りも生じる。
 サンゴ礁の巨大生物を取り巻く状況を解消するには地域の人たちに任せるコミュニティベースの管理導入が必要である。そのためには文化や伝統の多様性も保全しなければならない。ジュゴンやウミガメは食糧確保と言う意味でも重要である。所得の低い国々にとってはジュゴンもウミガメも食糧源。モザンピークでは、フカヒレの取引、つまりサメをとるための網にジュゴンもかかる、ためにサメもジュゴンも脅かされている。国立公園内でも保全が徹底していないのが現状だ。
 海の巨大生物の研究はまだまだ生物学的側面に偏っているが、エコノミックインセンティブや代替の生き方を示すことも必要だ。多方面からのアプローチの導入が必要である。
これから海の巨大生物を守るために若い人たちに一言アドヴァイスする。我々はマルチリンガルにならなければいけない。なぜならば価値観が全く異なる人々にメッセージを伝えなければならないのだから。アカデミックな側面も大事だが政治的リーダーに意見を聞いてもらえることも大事である。
(安部真理子)
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Posted by 沖縄BD at 16:06│Comments(0)
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