人種差別撤廃委員会:日本政府定期報告書で情報提供を要求

2012年11月10日/ 国連

  国連人種差別撤廃委員会(CERD)からの情報提供要請に対する日本政府回答(2012年8月4日)に対しての、CERDから日本政府に出された文書(2012年8月31日)について、以下のとおりリリースを出しましたのでここにお知らせします。(沖縄BDブログ参考→ 「人種差別撤廃委員会からの情報提供要請に対する日本政府回答」、2012年8月4日)
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2012年11月9日

国連人種差別撤廃委員会(CERD)が来年1月締め切りの日本政府定期報告書で
沖縄の米軍基地建設に関する情報提供を要求

 国連人種差別撤廃委員会(CERD)は、8月の同委員会第81回会期(於:ジュネーブ)において、「早期警戒措置・緊急手続き」のもと、沖縄の米軍基地建設に関して、前会期に引き続き、審議を行いました。そして日本政府に対し、2013年1月14日を期限とする人種差別撤廃委員会政府定期報告書において、さらなる情報提供をすることを要求した書簡を8月31日付けで出しました。

経緯
 2012年2月に「琉球弧の先住民族会」(AIPR)、「沖縄・生物多様性市民ネットワーク」(沖縄BD)、「反差別国際運動」(IMADR)の3団体は、辺野古/大浦湾における米軍基地建設と東村高江におけるヘリパッド建設の現状に対し国連の早急な対応を求める要請を、「早期警戒措置・緊急手続き」のもとCERDに提出しました。
 それを受けてCERDは、第80回会期においてこの案件についての審議を行い、結果、同建設に対する懸念を示し、3月9日付けで日本政府に情報提供を要求する書簡を出しました。日本政府は7月31日付けでCERDへの回答を提出していました。
日本政府の回答を受け、CERDは第81回会期において更なる審議を行い、8月31日付で日本政府宛に2度目の書簡(添付)を送付しました。人種差別撤廃条約第9条で締約国は、条約の履行状況に関し、定期的に委員会に報告書を提出することが定められており、2013年1月は日本政府の第7,8,9回定期報告書の締め切りとなっています。今回の書簡で、日本政府は、辺野古/大浦湾、東村高江の米軍基地建設問題を含む、特に沖縄で地域のサポートや同意が得られていない計画に関しての最新かつ詳細な情報を上記定期報告書の中で提供することを要求されました。

国連からの書簡と要求の意味づけ
今回の書簡での要請は、辺野古/大浦湾の米軍基地建設問題と高江のヘリパッド建設問題を含む沖縄の状況や人権・差別問題の審議が、原則非公開である早期警戒措置・緊急手続き下から、委員会が定期的に公開して行う政府報告書審査の枠組みの中に移行し継続されることを意味します。
また、今回の早期警戒措置・緊急手続き下の審議を経て、沖縄における米軍基地の存在と運用から派生する人権侵害の状況が、今後委員会が行う政府定期報告書審査の中での重要事項の一つとして認知されたことにより、NGOにとってはこれに関する様々な問題提起や情報提供をより全般的に行い、その審議や日本政府の対応を公式にフォローする枠ができたことにもなります。
なお7月に日本政府がCERDに提出した回答は、辺野古環境アセスに関しての記述の不正確さ、高江のSLAPP裁判や「オスプレイ配備」には触れていない等、多くの問題があります。今回一連の動きに関わってきたNGOとしては、まず日本政府の回答に対して、さらなる説明を求めていく予定です。

人種差別撤廃委員会からの書簡(英文正文)は以下のとおりです。
CERD Japan31082012
こちらにアップされています。→http://www2.ohchr.org/english/bodies/cerd/docs/early_warning/Japan31082012.pdf

同書簡訳文
【国連人種差別撤廃委員会から日本政府への書簡(仮訳)】

2012年8月31日

閣下、
 人種差別撤廃委員会は、本委員会第81回会期において、早期警戒措置・緊急手続きのもと、その居住地域における米軍基地建設に関する沖縄のコミュニティーの状況について、さらなる審議をおこなったことをお伝えいたします。本委員会は、2012年3月9日付け本委員会書簡への回答として提出された情報について、日本政府に感謝申し上げます。

 本委員会は、提供された回答と説明に対してここに感謝を述べるとともに日本政府に対し、地域コミュニティーに影響を与える諸問題に関し、地域コミュニティーとの協議の継続と、コミュニティーの参加を奨励したいと思います。

 さらに、沖縄の人々が被っている継続的な差別に関して、本委員会 (CERD/C/JAP/CO/3-6, para.21)(1) 、および「現代的形態人種主義に関する特別報告者」(E/CN.4/2006/16/Add.2)(2) が既に表明した懸念を考慮するとともに、本委員会は締約国に対し、2013年1月14日を期限とする第7、8、9回政府定期報告書(seventh, eighth and ninth periodic reports)(3) において、沖縄で展開される計画について、地域コミュニティーの支持と合意を得るために予定されている、あるいは実行されている施策について、最新かつ詳細な情報を提供することを要求します。

在ジュネーブ国際機関日本政府代表部
特命全権大使
小田部 陽一閣下

 本条約の効果的履行の促進のため、日本政府との建設的な対話の継続を本委員会が望んでいることを、ここに表明させていただきたいと思います。

 閣下に対する当方の最高の敬意をお受けいただく存じます。

Alexei Avtonomov
国連人種差別撤廃委員会議長

[訳注]
(1)日本政府が人種差別撤廃委員会の政府報告審査を受けて,2010年3月9日に採択された同委員会の最終見解のパラ21「委員会は、締約国に対し、沖縄の人びとの権利を促進し、および適切な保護措置および政策を確立するため、沖縄の人びとが被っている差別を監視するために沖縄の人びとの代表者との幅広い協議を行なうよう奨励する」。
(2) 2006年に来沖した国連の調査官「人種主義・人種差別に関する特別報告者」のドゥドゥ・ディエン氏が、2006年末に国連総会に提出した「ディエン報告」。
(3)人種差別撤廃条約第9条で締約国は、締約国による条約の履行状況に関し、定期的に委員会に報告書を提出することが定められている。2013年1月は日本政府の第7,8,9回定期報告書の同時締め切りとなっている。
(翻訳・注:沖縄・生物多様性市民ネットワーク)

補足説明
<経緯>
・2012年2月10日
 「琉球弧の先住民族会」(AIPR)、「沖縄・生物多様性市民ネットワーク」(沖縄BD)、「反差別国際運動」(IMADR)の3団体で国連人種差別撤廃委員会に対して、辺野古/大浦湾における米軍基地建設と東村高江におけるヘリパッド建設の現状に対し、早急に対応を求める要請文を提出。
・2012年3月9日
国連人種差別撤廃委員会は、第80回会期において日本政府に対し、上記2問題の情報提供を7月31日までに提出することを要求。
・2012年7月31日
  日本政府が、CERDに回答を提出。
・2012年8月6日
  上記3団体が、CERDに「沖縄における米軍基地建設の状況に関するアップデートとフォローアップ情報(3NGO共同提出文書と2012年3月9日付CERDから日本政府への書簡送付以降の情報)」を提出。
・2012年8月15日
  「人種差別撤廃委員会からの情報提供要請に対する日本政府の回答に対してのNGOからのコメント」をCERDに提出
・2012年8月31日
  CERDから日本政府に、2013年1月14日〆切の人種差別撤廃条約日本定期報告書で沖縄の米軍基地建設に関する情報提供を要求。
 ※各文書は、沖縄・生物多様性市民ネットワークブログ「国連」タグの記事に掲載。http://okinawabd.ti-da.net/c190157.html
<今後の展開>
・2013年1月14日までに日本政府が人種差別撤廃条約日本定期報告書の中でさらなる情報を提供。
<さらなる国連における取り組みの可能性>
国際人権条約に基づく国連条約機関には「人種差別撤廃委員会」の他にも「自由権規約委員会」「社会権規約委員会」「女性差別撤廃委員会」「子どもの権利委員会」などがある。これら条約機関のみでなく、国連憲章の基づき設置されている「国連人権理事会」やこの人権理事会下に設置された諸々の機関、手続きを通して、沖縄の基地問題を国連や国際社会への訴えかける具体的取組みの可能性がある。
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○沖縄タイムス報道 「国連 政府に対話促す」(2012年11月10日)
人種差別撤廃委員会:日本政府定期報告書で情報提供を要求


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