沖縄の枯れ葉剤問題入門
2011年12月17日/ 枯れ葉剤
沖縄の枯れ葉剤問題の簡単な資料をこちらにアップします。
これは、11月4日にジョン・ミッチェルさんが来沖し、辺野古での報告・交流会が開かれた際に、作成・配布したものに追加・修正をくわえたものです。
交流会の様子はこちら
→QABニュース動画枯れ葉剤問題で英ジャーナリストが報告 「退役軍人がシュワブで使用を証言」

当日説明の補助で使ったパワーポイントもPDFで添付しました。
今後、枯れ葉剤問題理解のためにもう少し整理したものを用意していきたいと思います。
---------------------------------------------------
枯れ葉剤とは?
厳密に言えば、「枯れ葉剤」とは、ベトナム戦争時代に米軍がベトナムの耕作地や密林を破壊するために使用した数種類の除草剤の総称です。そのうち、2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-1,4-ジオキシン(TCDD)というダイオキシン類のなかで最も強い毒性を含む枯れ葉剤は「エージェント・オレンジ」と呼ばれています。しかし日本においては通常、「枯れ葉剤」と「エージェント・オレンジ」は同義語として使われています。
ベトナム戦争中、1961-71年の10年余りにわたって、米軍は休みなく枯れ葉剤を撒き続けてきました。枯れ葉剤に晒されたベトナム人、米兵、韓国兵などに重い疾病をもたらし、その被害は2世代、3世代にも渡っています。
戦争終結後の今も、残留ダイオキシンの高濃度汚染地域(ホットスポット)がベトナムには28カ所あり、その周辺では今も障害児が生まれ、環境汚染も続いています。
沖縄の枯れ葉剤問題
米高官が「沖縄なくしてベトナム戦争を続けることはできない」と言明したほど、沖縄はベトナム戦争に深く関わってきました。そのため、沖縄でも枯れ葉剤が貯蔵、運搬、使用されてきたであろうという深い疑念がもたれてきました。しかし、現在でも米国防総省は沖縄での枯れ葉剤使用については認めていません。そして日本政府も,米国防総省の見解を追認しているのが現状です。
しかし米国防総省は、米国、プエルトリコ、カナダ、タイ、韓国(DMZ、非武装地帯)、ラオス、カンボジアをベトナム以外の枯れ葉剤実験・貯蔵地域として認めています。それにも関わらず、米軍の発進、補給基地として使われた沖縄での枯れ葉剤での存在や使用が認められないことは不自然なことといえます。
また1998年に米国退役軍人省は、沖縄での枯れ葉剤使用により疾病に至ったと主張する退役軍人に対して賠償を認めています。また2009年に米国退役軍人省は、1971年に行われた「レッド・ハット作戦」で、沖縄から太平洋のジョンストン島に移送され破棄された「化学兵器」のなかに枯れ葉剤が含まれていたことを同省の裁定の中で言及しています。
そして、ジョン・ミッチェルさんの一連の記事でもわかるように、退役軍人が沖縄での枯れ葉剤の貯蔵、散布、埋設などについて次々と証言しています。2011年8月には、米陸軍の元高官が国頭村と東村の米軍北部訓練場内と周辺一帯で枯れ葉剤散布を行っていたという証言の記事がありました。このことからも、沖縄で枯れ葉剤が使用されたことは、裏づけられています。
なぜ沖縄の枯れ葉剤が問題なのか
(1)沖縄県の環境、県民の健康、安全の問題として
ひとつは、これが、沖縄の環境、県民の健康などを脅かす全県的な問題であるということです。沖縄での枯れ葉剤使用は、那覇軍港への輸送から、知花弾薬庫やキャンプ・シュワブ、泡瀬通信基地などの貯蔵、北部訓練場での散布、北谷での埋設までの広範囲に渡っていたといわれています。
米国では、ベトナムに派遣された船の乗船者を海軍、沿岸警備隊の枯れ葉剤被害者のリストに追加しています。沖縄でも、那覇軍港からベトナム行きの船に乗船した基地労働者の記録があります。
また、沖縄の基地労働者のみならず、枯れ葉剤を米軍と物々交換をした農家の存在など、多くの県民が枯れ葉剤に晒された可能性があります。
様々な証言で、沖縄での枯れ葉剤使用が裏づけられているにも関わらず、米国政府が認めないために、沖縄での被害が調査されず、対応できないということにつながっています。沖縄県の人々の人権や健康が脅かされているのです。
(2)退役兵の命の問題として
また、沖縄での枯れ葉剤の使用が認められないことにより、沖縄で枯れ葉剤に晒されたことによる疾病で苦しんでいる退役兵の人々が、補償や医療保険を受けられないということです。また、枯れ葉剤の影響で障害を持つ退役兵の子供たちも同様です。これにより、適切な治療を受けられずに苦しみ、生命を奪われる退役兵がいるということです。
(3)政府と国民/県民の関係、日米関係の問題として
現在までの枯れ葉剤に関する日本政府の姿勢は、これまでの米軍基地問題に関する沖縄への不誠実な姿勢と変わることはありません。米国の姿勢を追従し、情報も公開せず、積極的な照会を行っていません。独自の調査も行おうとしません。この不誠実な姿勢をこの問題をとおして、あらためて問い正していくことが必要です。この不誠実な姿勢が、日米両国の人々の権利、命を奪っていることを、認識させていくことは急務です。
現在の動き(日本政府・沖縄県・自治体)
今年の一連の枯れ葉剤報道を受けて、県議会、自治体での質問、市民団体の要請行動が活発に行われています。
日本政府は報道や要請行動を受け、米国への照会を行っています。しかし、「枯れ葉剤が使用、貯蔵されたという資料や記録は見つかっていない」との米側の回答に対して、「引き続き問い合わせをしていく」という消極的な姿勢にとどまっています。
沖縄県は、県軍用地転用促進・基地問題協議会(軍転協)の日本政府への要請文に枯れ葉剤に関する要求項目を盛り込みました。しかし、積極的な環境調査、健康調査に踏み込む姿勢はまだ見えません。
韓国では今年5月、退役軍人の在韓米軍基地での枯れ葉剤使用の証言後、直ちに米韓合同調査を実施し、環境省が健康調査を行ったのとは対照的です。
自治体は、12月に北谷町が県と相談しながら、調査を始める意思を示しました。また、名護市議会は独自の聞き取りなどを行う予定です(これらについては、また別記事を設けます)
私たちのできること
このような日米政府を動かすために、沖縄での動きがこれから重要になってきます。
地元での証言などの事実を積み重ね、この問題を追及し続けていくことが必要だと思われます。そのために何ができるでしょうか。
例えば、
・世論を盛り上げる!
新聞投稿、自分のブログでのアップ、情報拡散のヘルプ
・外務省沖縄事務所、沖縄県への問い合わせ
・要請行動への参加(沖縄BDでは参加の呼びかけがあります)
・県議会傍聴
・枯れ葉剤に関することを知っている人が周りにいないか聞いてみる。もしいたならば、その証言を集め、県議、市町村議員、取 り組み団体に届ける。
(枯れ葉剤に関する質問を行った県議、市議、要請行動を行った市民団体などは、
沖縄・生物多様性市民ネットワークのブログにまとめてあります。
→http://okinawabd.ti-da.net/e3634306.html )
などがあげられます。
現在の沖縄の枯れ葉剤の取り組みについては、沖縄・生物多様性市民ネットワークのブログで更新予定です。そちらも参照してください。
http://okinawabd.ti-da.net/
また、「合意してないプロジェクト」ブログも、情報、ジョン・ミッチェルさんの記事の翻訳などをアップしてくれています。
http://www.projectdisagree.org/
-------------------------------------------------------
「沖縄の枯れ葉剤問題について」(11/4交流会のパワーポイント)
(PDF: 864KB)
これは、11月4日にジョン・ミッチェルさんが来沖し、辺野古での報告・交流会が開かれた際に、作成・配布したものに追加・修正をくわえたものです。
交流会の様子はこちら
→QABニュース動画枯れ葉剤問題で英ジャーナリストが報告 「退役軍人がシュワブで使用を証言」

当日説明の補助で使ったパワーポイントもPDFで添付しました。
今後、枯れ葉剤問題理解のためにもう少し整理したものを用意していきたいと思います。
---------------------------------------------------
沖縄の枯れ葉剤問題について
枯れ葉剤とは?
厳密に言えば、「枯れ葉剤」とは、ベトナム戦争時代に米軍がベトナムの耕作地や密林を破壊するために使用した数種類の除草剤の総称です。そのうち、2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-1,4-ジオキシン(TCDD)というダイオキシン類のなかで最も強い毒性を含む枯れ葉剤は「エージェント・オレンジ」と呼ばれています。しかし日本においては通常、「枯れ葉剤」と「エージェント・オレンジ」は同義語として使われています。
ベトナム戦争中、1961-71年の10年余りにわたって、米軍は休みなく枯れ葉剤を撒き続けてきました。枯れ葉剤に晒されたベトナム人、米兵、韓国兵などに重い疾病をもたらし、その被害は2世代、3世代にも渡っています。
戦争終結後の今も、残留ダイオキシンの高濃度汚染地域(ホットスポット)がベトナムには28カ所あり、その周辺では今も障害児が生まれ、環境汚染も続いています。
沖縄の枯れ葉剤問題
米高官が「沖縄なくしてベトナム戦争を続けることはできない」と言明したほど、沖縄はベトナム戦争に深く関わってきました。そのため、沖縄でも枯れ葉剤が貯蔵、運搬、使用されてきたであろうという深い疑念がもたれてきました。しかし、現在でも米国防総省は沖縄での枯れ葉剤使用については認めていません。そして日本政府も,米国防総省の見解を追認しているのが現状です。
しかし米国防総省は、米国、プエルトリコ、カナダ、タイ、韓国(DMZ、非武装地帯)、ラオス、カンボジアをベトナム以外の枯れ葉剤実験・貯蔵地域として認めています。それにも関わらず、米軍の発進、補給基地として使われた沖縄での枯れ葉剤での存在や使用が認められないことは不自然なことといえます。
また1998年に米国退役軍人省は、沖縄での枯れ葉剤使用により疾病に至ったと主張する退役軍人に対して賠償を認めています。また2009年に米国退役軍人省は、1971年に行われた「レッド・ハット作戦」で、沖縄から太平洋のジョンストン島に移送され破棄された「化学兵器」のなかに枯れ葉剤が含まれていたことを同省の裁定の中で言及しています。
そして、ジョン・ミッチェルさんの一連の記事でもわかるように、退役軍人が沖縄での枯れ葉剤の貯蔵、散布、埋設などについて次々と証言しています。2011年8月には、米陸軍の元高官が国頭村と東村の米軍北部訓練場内と周辺一帯で枯れ葉剤散布を行っていたという証言の記事がありました。このことからも、沖縄で枯れ葉剤が使用されたことは、裏づけられています。
なぜ沖縄の枯れ葉剤が問題なのか
(1)沖縄県の環境、県民の健康、安全の問題として
ひとつは、これが、沖縄の環境、県民の健康などを脅かす全県的な問題であるということです。沖縄での枯れ葉剤使用は、那覇軍港への輸送から、知花弾薬庫やキャンプ・シュワブ、泡瀬通信基地などの貯蔵、北部訓練場での散布、北谷での埋設までの広範囲に渡っていたといわれています。
米国では、ベトナムに派遣された船の乗船者を海軍、沿岸警備隊の枯れ葉剤被害者のリストに追加しています。沖縄でも、那覇軍港からベトナム行きの船に乗船した基地労働者の記録があります。
また、沖縄の基地労働者のみならず、枯れ葉剤を米軍と物々交換をした農家の存在など、多くの県民が枯れ葉剤に晒された可能性があります。
様々な証言で、沖縄での枯れ葉剤使用が裏づけられているにも関わらず、米国政府が認めないために、沖縄での被害が調査されず、対応できないということにつながっています。沖縄県の人々の人権や健康が脅かされているのです。
(2)退役兵の命の問題として
また、沖縄での枯れ葉剤の使用が認められないことにより、沖縄で枯れ葉剤に晒されたことによる疾病で苦しんでいる退役兵の人々が、補償や医療保険を受けられないということです。また、枯れ葉剤の影響で障害を持つ退役兵の子供たちも同様です。これにより、適切な治療を受けられずに苦しみ、生命を奪われる退役兵がいるということです。
(3)政府と国民/県民の関係、日米関係の問題として
現在までの枯れ葉剤に関する日本政府の姿勢は、これまでの米軍基地問題に関する沖縄への不誠実な姿勢と変わることはありません。米国の姿勢を追従し、情報も公開せず、積極的な照会を行っていません。独自の調査も行おうとしません。この不誠実な姿勢をこの問題をとおして、あらためて問い正していくことが必要です。この不誠実な姿勢が、日米両国の人々の権利、命を奪っていることを、認識させていくことは急務です。
現在の動き(日本政府・沖縄県・自治体)
今年の一連の枯れ葉剤報道を受けて、県議会、自治体での質問、市民団体の要請行動が活発に行われています。
日本政府は報道や要請行動を受け、米国への照会を行っています。しかし、「枯れ葉剤が使用、貯蔵されたという資料や記録は見つかっていない」との米側の回答に対して、「引き続き問い合わせをしていく」という消極的な姿勢にとどまっています。
沖縄県は、県軍用地転用促進・基地問題協議会(軍転協)の日本政府への要請文に枯れ葉剤に関する要求項目を盛り込みました。しかし、積極的な環境調査、健康調査に踏み込む姿勢はまだ見えません。
韓国では今年5月、退役軍人の在韓米軍基地での枯れ葉剤使用の証言後、直ちに米韓合同調査を実施し、環境省が健康調査を行ったのとは対照的です。
自治体は、12月に北谷町が県と相談しながら、調査を始める意思を示しました。また、名護市議会は独自の聞き取りなどを行う予定です(これらについては、また別記事を設けます)
私たちのできること
このような日米政府を動かすために、沖縄での動きがこれから重要になってきます。
地元での証言などの事実を積み重ね、この問題を追及し続けていくことが必要だと思われます。そのために何ができるでしょうか。
例えば、
・世論を盛り上げる!
新聞投稿、自分のブログでのアップ、情報拡散のヘルプ
・外務省沖縄事務所、沖縄県への問い合わせ
・要請行動への参加(沖縄BDでは参加の呼びかけがあります)
・県議会傍聴
・枯れ葉剤に関することを知っている人が周りにいないか聞いてみる。もしいたならば、その証言を集め、県議、市町村議員、取 り組み団体に届ける。
(枯れ葉剤に関する質問を行った県議、市議、要請行動を行った市民団体などは、
沖縄・生物多様性市民ネットワークのブログにまとめてあります。
→http://okinawabd.ti-da.net/e3634306.html )
などがあげられます。
現在の沖縄の枯れ葉剤の取り組みについては、沖縄・生物多様性市民ネットワークのブログで更新予定です。そちらも参照してください。
http://okinawabd.ti-da.net/
また、「合意してないプロジェクト」ブログも、情報、ジョン・ミッチェルさんの記事の翻訳などをアップしてくれています。
http://www.projectdisagree.org/
-------------------------------------------------------
「沖縄の枯れ葉剤問題について」(11/4交流会のパワーポイント)

Posted by 沖縄BD at 15:52│Comments(0)