4)「責任の範囲」vs「ヘリ/オスプレイヘリパッドの範囲」
ヘリ/オスプレイパッドは、着陸帯(直径45メートル)とその外にある無障害物帯(幅15メートル)からなり、全体では直径75メートルの円形となっている。そしてその工事は、幾つかの行程を経ていく。例えば、今回崩落が問題となっているN4では、平成23年3月には無障害物帯の部分やその外側の木々が伐採され、今年度は着陸帯部分の工事が行われている。
また工事の行程にはおいては必要に応じて、法や条例等に合わせて工事申請が行われている。例えば今回の着陸帯の工事は、上記したように、沖縄県の赤土等流出防止条例に従って工事申請を行っている。
ところが今回の工事申請をしたのはN4着陸帯の直径45メートルの部分に関してのみ。無障害物帯に関しては申請していない。しかし崩落が起こったのは無障害物帯の部分。
沖縄防衛局が固執する「崩落は工事とは関係ない」「降雨が原因」という主張は、今回の工事申請によって生じた「責任の範囲」と関連しているのだろうか。
もしそうであれば、条例の網の目をくぐって責任を避けようとしているとしか考えられない。あるいは、交渉でNさんが指摘したように、今回申請していない無障害物帯のなかでも何らかの工事が行われていたのかもしれない。盛土の工事が行われていたかもしれない。
これらの点については今回の交渉では明確な回答が得られていない。これからの交渉での重要なポイントである。
5)「立ち入り申請」vs「沖縄県・東村」
沖縄県や東村がN4に「立ち入り調査」を行った際、米軍への提供区域という理由で、沖縄防衛局が県や村に現場の写真撮影を禁止している。防衛局との交渉前に私たちは、その事態に対して「県の弱腰」「防衛局の横暴」という見解を持っていた。
しかし交渉においての防衛局の説明は、非常に不可解なものであった。
防衛局の説明によると
1)沖縄県や東村が防衛局に、調査目的の立ち入り申請をするときに、写真撮影を行うことを個別に申請しなかった。
2)よって、防衛局も、米軍に立ち入り許可の申請書を出す時、写真撮影についての申請をしなかった。
3)申請がなかったので、防衛局は、現場において県や村の写真撮影を禁止した。
この説明は私たちにも最初よく理解できなかったが、現場でカメラをかまえた途端、撮影禁止と言われた県の村の職員は、まさに狐につままれた感じだったかもしれない。写真が撮れないので県の職員は「一生懸命スケッチをしていた」らしい。腹立たしくもあり、情けなくもあり、滑稽でもある。
写真撮影に関する申請の手続きを知らない沖縄県や村も問題であろう。これまできちんとそういう調査をやってこなっかったから知らなかったかもしれない。しかし同時に、調査のための立ち入り申請を出されて、「写真撮影」があることを予想できなかったという防衛局の見解は、どう考えてもおかしい。
これからは県も防衛局もしっかりと事前協議をして、立ち入り調査を行って欲しい。そして、その立ち入り調査の費用は、国民の税金から出ていることを、しっかりと認識して欲しい。
6)「世界自然遺産登録」と 「ヘリ/オスプレイパッド建設」
私たちは今回の要請で、ヘリ/オスプレイパッドが建設されているやんばるの森が、奄美・琉球諸島の世界自然遺産の登録にむけて、非常に重要な場所であることを訴えた。そして、防衛局が自然遺産登録への取組みに、どのような認識をもっているのか、自らはどのような取組みを行っているか、そしてどのような調整を米軍としているかを質問をした。しかしPart Iで示したように、その回答は、主管の林野庁から連絡がないので、自分たちとは関係ない、という態度であった。
交渉での宮平さんの言葉が、私たちの憤りを現している。
「私たちは世界自然遺産への登録に向けての動きがあり、2003年には喜びました。しかしその5年後には、新聞で「琉球諸島推薦足踏み」「障害は基地」「基地はやはり負の遺産」「遺産推薦を基地が障害」と大々的に報じられてがっかりしました。 それについての見解も今回、求めているのですよ。それについて、米軍と防衛局はどんなやりとりをやっているのか、ということです。環境省は、1月31日に暫定リストに登録していま遺産登録に向けてやっている。県も「やんばるの森林の利用は環境に配慮して行う」として模索してやっている。そういうなかで、これは林野庁の分野だとか、私たちは回答を控えるとか、そういう形で逃げられては困る。今の世界の流れである「共生」。世界遺産登録に向けて、基地がどんな障害になっているか、そしてそれをクリアーするにはどうすればいいか、まじめに考えてとりくまないといけない」。
この言葉を聞いた防衛局員は、すこしうなだれて「その重要性は認識している」と答えていた。
世界自然遺産への登録に向けて、保全措置の担保の有無が大きなクライテリアのひとつであることは、強調しても強調しきれない。
今回露呈した、土砂の崩壊、沖縄防衛局の情報の隠蔽、原因の認識は、すべて保全措置の担保とはほど遠い。そして勿論、この生物多様性豊かなやんばるの森に、にヘリ/オスプレイパッドが建設されていること自体大きな問題だ。
奄美・琉球諸島が世界自然遺産はいま、暫定リストに掲載されている。沖縄防衛局も、沖縄県も、環境省も、林野庁も、米軍も、住民・市民も、同じテーブルについて協議をしなければならないはずだ。