防衛局交渉より:政府の「保全措置」は問題だらけ1

沖縄BD

2016年02月28日 10:04

去った1月25日、ジュゴン保護キャンペーンセンター(SDCC)が沖縄防衛局に対して要請交渉を行いました。基地建設をあくまで強行する沖縄防衛局ですが、それが手続き的にも可能ではないことが改めて明らかとなる交渉でした(SDCCのブログ記事はこちらから)。私はSDCCのメンバーでもあるのでこの要請交渉に参加しました。交渉で分かったこと、そしてさらに「問題化」していかなければならないことを3回に分けて書きます。

1) 基地建設を進める前提条件であるはずのジュゴンの保全措置ができていない
日本政府が基地建設を進めるにあたっては「保全措置」が前提条件となっています。勿論それは、名ばかりの保全処置ではなく、実質的効果を伴ったものでなければならないはず。しかし沖縄防衛局がジュゴンの保全措置として示してきた「海草藻場の移植」や「ジュゴン監視・警戒システム」は相変わらず多くの問題を抱えています。

潰れる海草藻場とジュゴンの関係
基地建設が強行されれば潰される沖縄本島最大の海草藻場。沖縄防衛局の環境アセスでは、辺野古と大浦湾で合わせて被度5%以上の海草藻場が約600haが存在するとされています。(沖縄防衛局の海草藻場に関する環境アセス補正評価書はこちらから

新基地建設/埋め立てにより直接潰される海草藻場(被度5%以上)は、辺野古と大浦湾で合わせて約78ha。同海域の海草藻場全体の13%にあたります。


     沖縄防衛局の環境アセス『補正評価』で示された海草藻場と新基地の関係


沖縄防衛局は、アセス調査の際には、この新基地建設/埋立て予定地でジュゴンの食み跡を発見することはできませんでした。それを根拠に、ジュゴンは新基地/埋め立て予定地周辺を利用していない、だから基地を建設してもジュゴンに影響ない、という結論と予測に至っていました。

しかしアセス後に行った同局の2013年度の事後調査では埋め立て予定地で食み跡を発見し(沖縄防衛局の『シュワブ』(H24)水域生物等調査 報告書』はこちらから)、さらには2014年5 月〜7月のNGOの調査では100本以上の食み跡が発見されています(NACS-Jの報告はこちらから)。基地建設/埋め立て予定地がジュゴンの重要な餌場であることは確かです。(アセスの結果と事後調査等の結果の乖離については後で書きます)。

見えない「海草藻場の移植」という保全措置の計画と有効性
さて沖縄防衛局は、埋立てにより潰される海草藻場に対して「海草藻場の移植」を行うことを「保全措置」としてきました。これは海草藻場自体の保全措置でもあり、海草藻場を餌場とするジュゴンの保全措置でもあるということでした。それゆえ今回の交渉で僕たちが特に追求したのは、移植の具体的内容と、両方への保全措置としての有効性についてでした。

しかし沖縄防衛局は、どこに、どれだけ、どのような海草の種を移植するのかという具体的な計画を未だ提示できないとのことでした。それゆえその有効性についても示せませんでした。保全措置についての技術的議論を行うのは環境監視等委員会ですが、そこでも議論が進んでいるとは言えません(環境監視等委員会の議事録はこちらから)。

勿論、具体的計画が提示できれば工事を進めていいということではありません。しかし、移植の計画提示をできなれば、手続き不履行であり、手続き不履行のままで工事土砂の投入開始などできない、と主張できるはずです。沖縄県、そして僕たち市民が、手続きの不履行という視点から、工事開始を阻止していくことに繋げることができるはずです。

海草藻場の移植の技術的な問題点と環境監視等委員会
保全措置としての海草藻場の移植の技術も問題や有効性の問題は以前から指摘されてきています。(海草藻場の移植の問題点については環境省のこの報告書を参考)。

沖縄防衛局は勿論、私たちがしっかりと認識すべきは、現在海草藻場が存在しているところは、海草にとって環境条件が適しているのでそこで存在している、ということです。海草の胞子が海中で拡散し、それがきちんと根を付け/張り、成長し、海草藻場を作っていくのは、そこの環境条件が適しているからなのです。他の場所に移植しても、環境条件が整っていなくては移植が成功するとは言えません。また仮に海草藻場の移植が成功しても、移植先の生態系への影響があることも考えなければなりません。

さらには、海草藻場の移植が成功したからといって、そこにジュゴンが来て餌場にするとは限りません。ジュゴンの餌場として機能するには、人的影響が少ないなど、その他の多くの条件を充たすことが要求されます。それらを考慮すると「海草藻場の移植」を有効なジュゴンの「保全措置」とするのは非常に難しいはずです。

海草藻場の移植についての技術的議論を行うのは環境監視等委員会です。そこがこれからどのような議論を行っていくのか、そこで示された議論がどのように保全措置の計画や実践に反映されていくのか、それが有効性をもったものなのかを、私たち市民としても注視していく必要があります。









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