前回のブログでは、2014年の事後調査の報告書が開示されたこと、そしてその開示の過程で見えてきた問題点を3点書きました。開示してもらった報告書は本編717ページあり、内容についてはまだまだ検証できていませんが、この時点で気付いたことを何回かに分けて書いてみます。ジュゴン関連で書いていくつもりですが、どうしても気になった部分があるのでまずはこれから。
シュワブ(H26)水域生物等調査 報告書 P455
台風の影響についての報告
毎年台風を経験する沖縄での水域生物調査で、台風の影響を考慮することは大切です。沖縄防衛局の事後調査の報告書でも台風の影響についての記述があります。
前回出されている「シュワブ(H24)水域生物等調査 報告書」では、2013年10月に沖縄に接近、通過した台風25、26、27号のサンゴへの影響について「大型台風通過後のサンゴ類の撹乱状況」として記述があります。調査対象の「全ての地点において、台風通過後にわずかな損傷(全体被度の1%未満)がみられた」となっています(「シュワブ(H24)」におけるサンゴへの台風の影響の
記述はこちらから)。
今回開示された「シュワブ(H26)水域生物等調査 報告書」では、2014年10月に沖縄を通過した台風18、19号による、サンゴと海草藻場両方への影響について言及されています。
サンゴについての記述は、大浦湾口部の群集で「損傷したサンゴの被度は周辺全体の5%未満であった」大浦湾東部のアオサンゴ群落では「影響を受けたサンゴの被度は周辺全体破度の1%未満であった」等です。
シュワブ(H26)水域生物等調査 報告書 P457
一方海草藻場については「調査の結果、辺野古リーフ内で台風の影響はみられなかった」です。(P492)
台風で移動したアンカーの影響は?
しかし2014年10月に問題となった、台風によるアンカーやワイヤー(ボーリング調査のためのブイやフロート設置のために使用)の移動や、その移動による
サンゴへの損傷については全く触れていません(琉球新報の
記事はこちら。その後の展開については沖縄BDの
ブログ記事はこちら)。市民団体によりアンカーによるサンゴの破損が発覚したのは10月15日と17日。沖縄防衛局がサンゴへの台風による影響の調査をした日は10月18日。アンカーやワイヤーからのサンゴへの影響の可能性を考えて、その時点でなぜ調査しなかったのか。それとも行っているのに報告していないのか。疑問が残ります。
興味深いことに、
海草藻場へのアンカー痕跡については、10月から11月にかけて調査され、以下のように報告されています。しかしここでは、なぜか、台風とアンカーの移動の関係については明確には触れられていません。
シュワブ(H26)水域生物等調査 報告書 P488
(台風で)アンカーが移動することより海草藻場に与えた影響は調査して、サンゴについては調査していない。調査の一貫性や統合性に疑問がでてきます。それはなぜなのか(知事からの岩礁破砕許可と直接関係するので、サンゴやサンゴ礁については調査しなかったのか等、憶測が、、、)。
保全措置のためという事後調査の目的を見失ってはいないか。その目的に適った調査実態になっているのか。今回開示された報告書のこの部分は、事後調査全体を問い直す材料になっていると考えます。