去った5月20日、沖縄と米国の市民社会/環境団体のメンバーは、米国海洋哺乳類委員会(Marine Mammal Commission/MMC)を訪問し、辺野古・大浦湾で押し進められる米軍基地建設のジュゴンへの影響に関しての要請を行いました。MMCとは、1972年の米国海洋哺乳類保護法のもと、ジュゴンなどの海洋哺乳類の保護と保全を目的として設置され重要な役割を担ってきた米国連邦政府の独立専門機関です。
参加者
今回の要請において沖縄と米国の市民社会/環境団体からは以下のメンバーが参加しました。
東恩納琢磨さん(ジュゴン保護基金、じゅごんの里、名護市議)
Ken Nakamura-Huber さん(沖縄BD、New Wave to Hope)
Bill Snapeさん(生物多様性センター, Washington D.C.)
吉川秀樹(沖縄BD、ジュゴン保護キャンペーンセンター)
MMCからは以下の4氏に対応して頂きました。
Mike Gosliner氏 (法務部局長)
Dennis Heineman氏 (科学部局長)
David Laist氏(政策とプログラム分析官)
Victoria Cornish 氏(エネルギー政策官)
また訪米中であった名護市の稲嶺進市長と玉城デニー国会議員も、忙しスケジュールを調整し私たちの要請行動に同席して下さいました。心より感謝を申しあげます。
要請とMMCの対応
私たちの要請は以下の2点です。(要請文の原文と沖縄BDの河村雅美さんの和訳はpdfファイルで下に添付しています。河村さんありがとう!)
1)MMCの2009年の連邦議会への年次報告で示されているとおり、MMCが国防総省の分析結果を入手次第、ジュゴンの基地建設が与える影響についての国防総省の分析を精査し、それについてコメントすること。MMCが国防総省の分析の精査とコメントをする際に、国防総省のために翻訳された環境影響評価関係の文書を含む、日本政府から国防総省へ提供された情報について考慮していくこと。
2)MMCによる国防総省の分析の精査とそれに対するコメントが行われる前に、キャンプシュワブ区域使用許可証を日本政府に発行することを含む、基地建設事業を構成するいかなる行為をも国防総省は行うべきではない、という勧告をMMCから出すこと。
私たちの要請に対して、
MMCからは以下のような対応とコメントが、要請の場において、またその後のメールのやり取りなかでありました。
1)この問題を再度提起してくれて感謝する。
2)MMCとして述べてきたこと、出来ることは行っていく。
3)MMCは小さな機関であり国防総省のような大きな機関の事業への影響は限られる。
4)提供された写真などを見る限りでは、世界自然遺産に指定されてもいいような環境だ。その環境を失うことはshameだ。
要請の場で
MMCからは以下のような質問がでて、それに対して私たちは以下のように回答しました。
5)この海域にはジュゴンの他に海洋哺乳類はいるか?
→ ザトウクジラが来ているという情報がある。
6)キャンプ・シュワブでの訓練や演習の影響はあるか?
→ 日本政府の環境アセスではその点について触れられているが「影響はない」としている。
7)ジュゴンや海草藻場について、環境アセス以外の調査はあるか? 独立した専門家やNGOで調査を行っているか?その結果は報告されているか?
→ 環境省の調査やNGOの海草藻場の調査などがある。
→ その結果は報告書としてだされているのもあるが、日本語での報告書である。
8)MMC以外には、他にどこにこの問題を提起する予定か?
→ IUCNやUNEP/CMSのジュゴンの専門家への問題提起を予定している。
提出文書/資料など
今回の要請にあたり、
要請文の他に日本政府が行った環境アセスに関する私たちの5つの懸念を示した
「メモ」をMMCに提出しました。(「メモ」の原文と河村雅美さんの要約(和訳)は下に添付しています。)また5月16日にチームザンの海草藻場の調査により、基地建設/埋立て予定地にジュゴンの食み跡が発見されたことを報告し、その食み跡の写真も提示しました。その他にもヘリ基地反対協の資料や名護市の資料も提出しました。さらに要請後のメールのやり取りでは、日本生態学会が今年1月にだした辺野古・大浦湾での基地建設中止を求める「要望書」も提出しています。
チームザンの最新の食み跡の報告と写真は、「ジュゴンが辺野古・大浦湾を利用するのは限られているので、基地を建設しても影響がない」という日本政府の見解に対して、さらなる科学的な検証や調査が必要だという私たちの主張の後ろ盾になったと思います。このタイミングで、建設/埋立て予定地に食み跡を残したジュゴンと、それを発見したチームザンのメンバーに感謝です!
2000年以来、米軍基地建設とジュゴンの関係を注視してきたMMC。2009年には、東恩納琢磨さん、Miyoko Sakashitaさん(米国生物多様性センター)、吉川秀樹をハワイでのMMC年次総会に招待し、状況について説明する機会を与えてくれました。今回のMMCへの要請行動はこれまで培われてきた関係のなかで行われたものです。
今回の要請を実のあるものにするには、さらに私たち市民社会が以下のようなMMCに対して以下のような働きかけをいかにタイミングよくやっていけるかに関わっています。
1)情報提供を継続して行っていく。
2)MMCとその他の海洋哺乳類研究者をつないでいく。
3)MMCの分析を、ジュゴン訴訟に活かすようにする。
4)MMCの分析を国内の動きにつなげること。
5)その他の国際機関とつなげること。
TIME IS CRUCIALです。みなさんの応援をお願いします。
なお今回のMMCへの要請行動は、ヘリ基地反対協と沖縄平和市民連絡会の支援により行われました。心より感謝を申し上げます。
以下、要請文やメモの原文、和訳/要約、そして先日6月1日に行われた「MMCへの要請行動の報告会」で使用したパワポ、レジメを資料として添付します。
(PDF: 50.58KB)(要請文原文)
(PDF: 141.79KB)(要請文和訳)
(PDF: 67.11KB)(メモ原文)
(PDF: 123.01KB)(メモ要約)
(PDF: 802.36KB)(6月1日報告会パワポ)
(PDF: 141.26KB)(6月1日報告会レジメ)