2012年01月25日 23:54
米軍普天間飛行場の移設に向けた環境影響評価(アセスメント)手続きで、評価書の内容について専門家から意見を聞く県のアセス審査会(宮城邦治会長)が19日午後、西原町のエリスリーナ西原ヒルズガーデンで始まった。
宮城会長は冒頭、事業者である沖縄防衛局が評価書を未明に搬入するという手法について「審査会の会長、県民の一人として憤りを禁じ得ない」と厳しく指摘。「日本政府、沖縄防衛局は将来に禍根を残すことがないよう、誠意を持って意見を受け止めてほしい」と要望した。
傍聴席には80人以上の市民らが詰めかけ、審議を見守った。審査会は早ければ来週にも2度目が開かれる見通し。2月上旬までに数回開かれる予定で、環境保全の見地から意見をまとめ、仲井真弘多知事に答申する。
知事は飛行場設置に関する意見提出期限の2月20日までに、審査会の答申を踏まえ、最後の意見を述べる
県アセス審査会の初会合は、普天間飛行場代替基地への垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ配備を評価書で初めて明らかにしたことなど、沖縄防衛局の“後出し”の手法に強い批判が噴出した。環境影響を過小評価していると読める内容に論理矛盾を指摘する意見も出され、各分野で厳しい意見をつけた答申が予想される。
評価書は総合評価として、環境への影響を「やむを得ず出る」としつつも「影響の程度および範囲は、評価の基準とした各種指標のなかにおおむね収まっており、環境保全上、特段の支障は出ない」と判断している。これに対し、委員から厳しい意見が相次いだ。
堤純一郎副会長(琉大教授)は「これだけ大きな埋め立て地を造って、海流が変化しないわけはない。小学生でも分かることで、環境へ影響を及ぼさない、あるいは限定的だと評価すること自体間違っている」と厳しく批判。宮城邦治会長(沖国大教授)も審査会終了後、記者団の質問に「まだ細かく精査していないが、事業を前に進めたいという防衛局の意志の方が非常に強く表れた評価になっていると思う」と指摘した。
今回、評価書でオスプレイ配備が明示されたほか、準備書段階で台形で示されていた飛行場周辺の飛行経路を楕円(だえん)形に変更した。それに伴い周辺集落の騒音予測も変化している。
本来、アセス手続きは「準備書段階でアセスメントが終わり、(知事らが)意見を述べて問題があれば修正し評価書が出る」(堤副会長)流れだ。「評価書は準備書から大きな変化があってはいけない」(同)とされる。県環境影響評価条例で知事意見期間を45日と短いのは、その考えを前提にして設定されているとみられる。
しかし、今回、最終段階に来て大きな変更が次々と示された。審査会は「時間の中でやらざるを得ない」(宮城会長)との姿勢だが、評価書自体の形骸化の指摘は免れない。(内間健友)