北谷土壌汚染:BD検証結果2 住民説明会を検証しました~ポイントと検証全文をアップ

沖縄BD

2016年02月24日 01:01

   

記者レクいれてくださいと沖縄防衛局の方に交渉中の図。画像提供:記録同人


 北谷土壌汚染の住民説明会(2016年1月31日)の記者ブリーフィングに参加し、説明会と調査を検証しました。この結果は、2月17日に沖縄防衛局、北谷町、沖縄県に送付しています。
 
 大変長いものですが、アップしました。専門的なこともあり難しく、サクッとわかるまではいかないかもしれませんが、ポイントは以下のとおりです。
開催形式
・住民や町議、メディアの要求にも関わらず、非公開で行われた。
・沖縄防衛局、沖縄県、北谷町の位置づけが不明。
 北谷町が最初に対応したのになぜ町の説明はなし?
・一次データが公開されず、調査結果の検証が実質的に不可能な状態での開催は問題。

説明内容
イメージ操作が行われているという印象を持たれても仕方ない内容。
・あくまでも地権者のための調査であり、汚染調査が主目的ではない調査の説明なのに、それを説明していない。
・2地点という限定的な調査であるのに、安全性や掘削の影響の結論まで説明している。
・有害物質項目が基準値以下だとして非公開としている。その理由についても不明で国と県と業者の言いぶんはバラバラ。
・ダイオキシンのみに問題を矮小化させるイメージ操作をしている。

対策・追加調査方針
・「不安を払拭する」という目的がそもそもおかしい。
・資料等調査、表層土壌調査とも妥当性に欠ける。

説明会全文はこちらこちらです。
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「旧嘉手納飛行場(上勢頭)における土壌等調査に関わる説明会 検証


沖縄・生物多様性市民ネットワーク 共同代表 河村 雅美


 2016年1月31日、北谷の土壌汚染の問題で住民説明会が北谷商工ホールで開催された。

 沖縄・生物多様性市民ネットワークは住民説明会のありかたに、沖縄BDも要望書を提出してきたが、要望は聞き入れられず住民以外は非公開の形で行われた。

しかし、住民への説明会を開いたことにより、この問題が地権者の問題だけでなく、公けの議論になったという共通認識が持てたことは意味がある。 
 
今回、住民説明会後に行われた記者ブリーフィングに参加の機会を得ることができたため、開催形式、説明内容、今後の対策について池田こみち氏(環境総合研究所顧問)、桜井国俊氏(沖縄大学名誉教授)に意見を求めながら、説明会についての検証を行った。また、池田こみち氏から、入手した調査データにもとづく意見書が既に提出されており(「北谷町住宅建設地における調査結果について」(2015.12.1)、以下「池田意見書」)、調査自体の問題もここに含めることとした。

ダイオキシンに特化した形でこの汚染問題が展開されることは望ましいことではないが、川尻要氏(埼玉県立がんセンター臨床腫瘍研究所客員研究員)が述べるように(2015年12月17日 「沖縄タイムス」論壇)ダイオキシンは「低濃度であるから健康に影響ない」のではなく、「生活空間にあってはならない化学物質である」ことを、この問題に関わる者の共通認識としてまず確認しておきたい。

以下、その検証報告である。

1. 住民説明会の開催形式について
-非公開の問題
-一次データなき説明の問題
 沖縄防衛局は住民のみに説明会を行った。理由は公開にすると、率直な意見交換が妨げら れるためということであったが、琉球新報(2016.1.31)が指摘しているとおり、記者クラブ、 北谷町議、自治会長が公開を要望していたのにも関わらず、非公開の説明会となった。
その結果、琉球新報(2016.2.1)、沖縄タイムス(2016.2.1)、琉球朝日放送(「悲鳴を上げる土 地 北谷土壌汚染問題から見える沖縄の課題」2016.2.10)などが指摘しているとおり、この 説明会により住民の不信は増すことになったといえる。

 この形式の開催を追認し、住民側の公開の要望をメディアなどを通じて知った後、北谷町がどのように対処したのか、追求する必要がある。沖縄県、北谷町は住民、県民の意向を汲み、動く責任があることを認識し、次回の説明会の開催形式については、住民、県民の意思を尊重するオープンな形での開催が実現できるように働きかけるべきである。あるいは、問題発生の最初に対応したのは北谷町であるため、調査報告に特化した沖縄防衛局の説明会ではなく、北谷町が経緯を含めた説明会の開催を検討することも必要ではないかと考える。

 また、一次データが何も公開されず、当日の防衛局の配布資料が正しいものであるか、恣意的にデータが切り取られていないかを検証する材料がないという状態で説明会を行うことも問題であった。

2. 説明会開催の前提問題
-調査の射程、限界についての言及なし
-3者(沖縄防衛局、沖縄県、沖縄市)の責任の所在不明
 2-1 調査の限定性について言及がない。
 報告内容以前に、説明対象の調査が、目的も範囲も限定的なものであることを全く述べていなかったことは問題である。
 調査には調査を実施する目的があり、調査で知り得るものの範囲はその目的で決められる。範囲以外の結論をそこから導き出してはならない。
そもそもこの調査は、経緯、データ、資料から検証すると、地権者の住宅建設のための地盤強の調査、およびその中で発見された廃棄物調査を地権者の土地内で実施したものであり、土壌汚染の状態の把握を主たる目的に実施された調査ではない。

赤嶺政賢国会議員の防衛省への聞き取り(2016年2月10日)でも、「(今回は通常の土質調査とは性格が違うではないか。2箇所だけでは何が埋まっているかはわからないではないか、に対して)私どもとしては、廃棄物の確認というよりも、沈下と土質の調査が目的だった。」と述べており、そのことが確認されている。

したがって、報告された調査は、沈下と土質の状態を地権者に報告することが目的の調査であり、調査範囲も内容も非常に限定された調査である。この調査結果から、近隣住民に対して報告できること、結論として提示できることが限定的であることを、説明者は住民に対してまず、述べるべきである。

また、この説明会が何を目的として開催されているかどうかも述べられていないことも問題である。説明会は、まず事実を伝えることが目的である。防衛局の説明で頻出する「不安を払拭するため」という言葉は、住民の抱える疑問に対して誠実に答えるというよりは、住民に結論ありきで説明をしていると受けとめざるをえない。

以上のことから、住民に対しての調査に関する印象操作がなされていると受け取られてもいたしかたない説明をしているといえる。

2-2同席している沖縄県、北谷町はどのような役割なのか不明である
 住民説明会は以下のような次第で沖縄防衛局の広報担当により進行された。

1 開会
2. 挨拶 北谷町 玉那覇総務部長
3. 挨拶 沖縄防衛局 玉榮管理部次長
4. 土壌等調査の状況と今後の対応について
  (1)これまでの経緯について 沖縄防衛局 重政返還対策課長 
  (2)土壌等調査の中間報告について 沖縄県環境科学センター 古家部長
  (3)今後の対応について 沖縄防衛局 重政返還対策課長 
5. 質疑応答
6. 閉会

沖縄防衛局、沖縄県、北谷町が説明の席にあったが、以下の件が不明瞭である。
①沖縄県、北谷町は防衛局とともに、前列で説明の席についているが、防衛局の報告内容を全て了承し、合意したものとして、説明会の席にいるということを意味しているのか。
②沖縄県、北谷町はどのような役割を果たしているのか。責任の所在が不明である。
③頻出する「北谷町との調整」という言葉は何を意味するのか。
 
沖縄市サッカー場の件でも、3者の議論を公開せず、議事録も残っていないため、誰がどのような責任で判断を行ったかがわからない状態となっている。沖縄県も、沖縄防衛局に助言したといいながら、その後のチェックを怠ったために濁水対策の失敗が見逃された経緯がある(2015年8月)。今回も、沖縄県がデータ非公開の理由に関して混乱を招く発言をしている(後述)。また、以下に述べるような、問題のある説明会の内容を合意の上で沖縄防衛局に報告させていることは、大変問題であると私たちは認識している。いずれにせよ、専門性を持つ行政機関としての役割は、沖縄県は果たせないと考えることが妥当である。よって、役割の明確化、協議の透明化に関しては急務の課題と考えられる。

3. 「土壌等調査の状況と今後の対応について」の説明内容について
現在、限定的ではあるが、沖縄BDで入手している調査データを用いて、報告内容について検証する。

「これまでの経緯について」沖縄防衛局 重政返還対策課長
(1)経緯についての事実が不正確で省略が多い。
今回の土壌汚染問題の発端は、2010年の地権者の土地で廃棄物や、異臭が確認されたことであったが、異臭の件については経緯の中で触れておらず、調査結果の中にも異臭原因について言及されていない。
また、各ボーリング調査の経緯などが省略されている。これは、今回報告された調査結果が適切な手順で行われているかを知るために必要な情報であるので、省略するべきではない。説明会後、沖縄BDで、現在入手した資料や、聞き取りなどで経緯をまとめた【別紙】。これによって発覚した北谷町の返還跡地問題に関しては別途問題化する。
「2-1」で述べたような、調査が限定的であることも、ここで述べるべきである。それを述べずに、あたかも住民のために土壌汚染調査を実施してきたかのように受けとめられる説明の仕方は、誤解を招く。

(2)北谷町もこの経緯についての説明責任がある
 繰り返しになるが、地権者からの相談を最初に受けたのは北谷町であり、町としての対応の経緯、隣接地への対応、北谷町が担当した調査などについては北谷町が説明し、今回の調査内容については調査を実施している沖縄防衛局が説明をするべきであったのではないかと考えられる。今後の説明会の構成については検討が必要である。
2)土壌等調査の中間報告について沖縄県環境科学センター 古家部長


説明会資料

(1)地盤沈下の調査目的、土壌汚染の状況の調査についての説明が不十分である
 地盤沈下の調査が、住民にどのように関係があるのかが、明確に述べられていない。また、これまでの調査も含め、土壌汚染の調査が、沈下調査の付帯調査なのかどうかも明確に述べられていない。
 特に、「土壌汚染の状況」については、池田氏は「土壌汚染の状況とは何を指すのか。汚染物質、汚染の範囲、深さ、原因、影響などいろいろあると思うが」と、説明の不十分さを指摘している。

(2)廃棄物層の説明が不十分である。

 構成比の説明についても、防衛局の説明について、池田氏は、「ボーリングの結果概ねの廃棄物の構成比はどうだったのか。例えば、石・土が80%、金属2%、プラスチック10%、木片8%など」と不十分な説明を問題視している。
これについては図1「池田意見書」の表4を参照されたい。


(3)「土壌汚染」調査2地点の問題
①2地点での結論は問題
専門家からは、調査地点2地点での結論は問題であると指摘されている。
-桜井氏「ボーリング2地点のみのデータでは、まさに『群盲象をなでる』の観がある。かつてあったというゴミ捨て場のどこを調べたことになるのか、これではわからない。」「ダイオキシン類以外の特定有害物質25項目の数値は環境基準値以下ということで公表しない予定とのことだが、ゴミ捨て場全体を把握しないでのその結論は早計と言わざるを得ない。」(筆者へのメール:報告書の一部データを見て)
-池田氏「ダイオキシン類が検出されたのは廃棄物層の深い部分であること、その下の層からは低い濃度しか検出されていないので地下水等への影響はなく、深く掘削する工事を行わなければ問題ないとしているが、わずか2地点のボーリング調査からそのように言い切れるのか。」(「池田意見書」p.6)

②調査地点2地点の選択理由が不明瞭
 2地点の選択の理由が不明瞭である。最初の説明では「先ほど言いました東側の廃棄物層が厚いと考えられる調査対象地の東側のH26B-1地点とH26B-2地点のこの2つの地点で調査を行いました」とあるが、以前に実施したどの調査で、いかなる結果がでて、その結果、この調査地点でとった、という、2地点の必然性を示す説明がされていない。これについては、先述のとおり、これまでの調査経緯が説明されていないためでもある。
 沖縄BDが質問し、そこで初めて言及したが、その答えは以下のとおりであり、これも廃棄物層があることがわかっていてそこをやった、という説明で終始しており、根拠となる過去のデータもない。【別紙】の調査の順に沿って、廃棄物層はどこでどれだけ確認されたのか、何をもって今回の調査手順が決められ、調査地点を決定したかを明瞭に述べ、調査の妥当性について示すことができるようにするべきである。
“古家:2地点についてだが、さきほどの資料の4ページの上の図1というところで緑色で示しました点かつて調査が行われている地点であることを説明しましたけれど、その緑色で示した地点においてボーリングしてどこで廃棄物層が◎◎しているか(きれている?)わかっているんですけれども、そこをすでにわかっていましたので、その辺りでまず一点、この東側の、ここらへんで廃棄物層がボーリングして◎◎していることがわかっていましたのでひとつはそこを選んでいます。ここを選んで土壌汚染対策法で土壌汚染があるところは10m区画で調査しなさいと法律上マニュアルがあるので、その敷地内で10メートル離れるといったら、まあこの部分、廃棄物層がかつてのボーリングでわかっていて、この地点からなるべく10m離すというところで1点選んでいる。”(◎◎は聞き取れず)

 一方、先述した赤嶺議員の防衛省へ聞き取りによると、沈下と土質調査を目的とすることを前提とした上で、「今回、ボーリング調査の実施箇所を2箇所として理由は何か)30m四方で1ポイントで実施するのが普通であり、2ポイントは妥当と考えている。」と防衛省側は回答しており、これまでの調査結果との連続性での結果としての2ポイントという説明会での回答と齟齬があることが明らかになっている。

(4)ボーリングのコアの取り方が問題である
説明会では、説明されていなかったが、池田氏はボーリングのコアの取り方を以下のとおり問題視している。
池田氏「ボーリングのコアから6カ所を採取しているとのことだが、何を基準に6か所を選んでいるのか。誰が判断したのか。2つのボーリングコアからの採取カ所にずれがあるのは、なぜか。コアが連続していないのはなぜか。」
詳しくは、「池田意見書」を参照されたい。

(5)特定有害物質25項目の調査の非公開 
①非公開という問題とその理由
 土壌汚染対策法特定有害物質25項目の調査結果を非公開にしており、非公開にする理由を沖縄防衛局、沖縄県、沖縄県環境科学センターは説明していたが、どれも非公開にする理由に乏しく、説得力はない。
沖縄防衛局、沖縄県、沖縄県環境科学センター、のそれぞれの言い分も異なっていることも信頼性を失わせている。特に沖縄県からは、問われることがなかったにもかかわらず、速報値と最終の報告値が異なる事例があるということを述べ、それがなぜ起きるかの説明はせず、最終値公開までの作業過程に不信感を抱かせる発言があった。このような発言をしたからには、この速報値から最終報告値までに3者がどのような作業をしたか、説明することが必要になると考える。

[3者の見解の相違]
・沖縄防衛局重政「25項目の分析結果の公表については今の報告書は中間報告書で速報値になるので、北谷町、地権者と調整しつつ、公表について検討させてもらいたい。」

・沖縄県基地環境特別対策室松田「中間報告ということで沖縄防衛局から直接我々に受けており、いわゆる分析をした後に、いろいろチャートとしてデータがでてくるが、速報値として沖縄防衛局に提出してもらっている。その後、分析機関の方で、そういった自分たちの計算方法とかチャートの記載方法とかそういったものが、決められた手順にそってちゃんとやっているかチェックし直す。速報値というのが、正しい計算でだされているかどうかが最終的に出されてくるので、中には速報値と最終の報告値が違うということがこれまでの事例としてある。我々も全てのデータをもらっているわけではない。我々の方でもクロスチェックをするし、そういう意味でその段階ではデータとしては確定できるので、公表できるのではないかと、県としては考えている。

・沖縄県環境科学センター古家:「今回の中間報告でこういった値を出したのは、ダイオキシン類の値が高かったので、すぐにお伝えした方がいいという局の判断だった。25項目については実際私たちは分析しているんだが、確かに速報ではあるが、そこから大きく逸脱して、例えば表層の土壌から実際は25項目の値が非常に高いというようなことになることは考えづらいと思う。」

②「基準値」の問題
住民に対する説明会で、住民に対して「土壌汚染対策法とは何か」「基準値とは何か」について、沖縄防衛局が説明したのかについては不明である。しかし、配布資料には「すべて環境基準値以下」とのみ書かれ、配布された資料は、ダイオキシン類のパンフレットのみである。ダイオキシン類のみに問題を限定する恣意的な意図があると受け取られてもいたしかたない。

「基準値内」として、数値を発表しないことについて、池田氏は「基準値内でもどのような範囲にあるのかは重要な情報である。」と指摘している。
 「池田氏意見書」では、未汚染地域の土壌との比較で、下記、図2のような、見解を示しており、このような事実を住民が知ることは重要であると考える。



(6)ダイオキシン類
ダイオキシンの値については2箇所中1箇所の1800pg-TEQ/gのみの記述としているが、下記、図3の池田氏意見書「表2」にあるとおり、2点で調査基準値(250pg-TEQ/g)を越えている(サンプル2の320pg-TEQ/g)。少なくとも、調査基準値超のものは報告するべきである (*1)
池田氏は、この報告を受け、「スポット的に1800pg-TEQ/gがあったとは考えにくいのではないか。ダイオキシンの由来については、分析結果の詳細を公開してもらわないと第三者的に評価出来ないので即刻公表すべきである」と、問題視している。

 ダイオキシン類の由来は「農薬PCP(ペンタクロロフェノール)由来のものと、焼却由来のものであるということが確認されている」と、しているが、池田氏は「由来の検討のために、何を分析したのか、農薬類はなんと何を分析したのか。油分については分析していないのか」とこの報告にも情報の不十分さを指摘している。
 
PCPが何であるかについても、「農薬」とのみ説明しているが、米軍が持ち込んで民間に払いさげていた事実、毒性についての言及がない。これは、沖縄市サッカー場の駐車場側から発見されたドラム缶の内容物からも検出されており、(3)に記す投棄の実態、汚染の本質的な由来も射程にいれて、沖縄におけるPCPの意味についての言及があってしかるべきであると考える。


(7)汚染拡大、健康被害リスク
「現状では飛散等による汚染拡大や直接摂取による健康被害のリスクはない」という説明がされているが、池田氏は「ダイオキシン類の汚染分布がどうなっているか分からない段階で、健康被害は無いと断定することは問題ではないか」とこの説明を問題視している。

(8)地下水汚染の可能性
資料・説明では、「ダイオキシン類は水に溶けにくく、廃棄物層下部のダイオキシン類濃度は低いことから地下水汚染の可能性はない」と述べられているが、1か所による調査での断言、またダイオキシン類に限定していることを専門家は以下のように問題視している。

・池田氏コメント「たった1回、1カ所の調査で地下水への汚染がないと断定はできない。
沖縄市のサッカー場と同様に、浸出水(溜まり水)の分析を行ってみる必要があるのではないか。」

・桜井氏「「ダイオキシン類が水に溶けにくいことを根拠に問題は限定されていると沖縄防衛局は主張しているが、他の汚染物質はそれぞれ挙動が異なるので、問題を矮小化するためのイメージ操作と言える。」

3)今後の対応について 沖縄防衛局 重政返還対策課長

(1)専門家、愛媛大学森田客員教授の位置づけ
 沖縄市サッカー場の沖縄防衛局の調査でも森田氏が専門家として助言を行っているが、この位置づけが常に曖昧である。これまでの報告書でも、どこまでが調査会社の見解で、森田氏の意見や助言がどの部分なのかが示される形となっていない。まだ、これまでも森田氏の助言によって報告された調査結果は、正確性に疑義が唱えられている (*2)
 上述のように、「環境基準値内であれば問題ない」とするのか、「環境基準値以下でも注意するべきものがある」と、データを「評価」する専門家の役割は大きい。専門家の位置づけについて、これまでの対応からみても、北谷町はより重要性を認識すべきであると考える。

(2)調査方針


説明会資料


①「資料等調査」について
 「過去の航空写真、地形図等から米軍に起因する汚染が存在すると考えられる範囲を特定し、安全性を確認するため、平成8年の嘉手納飛行場一部返還地において資料等調査(調査方法(廃棄物の調査含む)、調査場所、汚染が発見された場合の対策等)を実施し、その結果を踏まえ、必要に応じて追加調査を実施する予定」と説明している。

 沖縄BDの質疑応答によって、この「資料等調査」の意味するところを確認したところ、2014年に公開された「キャンプ瑞慶覧(西普天間住宅地区)(25)支障除去措置に係る資料等調査」と同様のものであることが確認された。
 この資料等調査では、”資料調査において廃棄物の投棄や埋設に関する情報は把握されず、地形図による調査結果からも谷の埋立てや不自然な盛り土など廃棄物の埋設を疑う地形変化は確認されませんでした。ただし、廃棄物の投棄や埋設がなかったことを客観的に説明できる情報は得られませんでした。” と報告されていた(2014.8.13)。しかし、その直後に行われた文化財調査でダイオキシンが検出されたドラム缶が18本発掘され、土壌からは鉛が基準値の3倍検出され、その地点は「土壌汚染のおそれが比較的多い区画」に変更されている。その場でも指摘したが、これまでの防衛局の資料等調査では汚染の予想、汚染範囲の特定には限界がある。

 また、「安全性を確認するため」という文言には、「不安を払拭するため」と同様の結論ありきのニュアンスが感じられるため、このような文言は用いるべきではない。調査の目的は事実を把握することであり、安全性の確認ありきで進めるべきではない。

さらに、質疑応答の中の沖縄防衛局の回答からも、調査の妥当性等に疑義が唱えられている。

“重政:資料等調査においては、昔の地形図を調べて、米軍が使用していたところは標高何メートルだったのか、そして返還された平成8年以降の標高は何メートルだったのか、を比較し、米軍が埋め立てしているのであればそこに廃棄物があるかもしれない、それでその範囲を特定し、その範囲においてどのような方法で調査を行って安全を確認していく必要があるのかということはまずしっかりと検討していきたい。化学的調査については、資料等調査を行って必要があれば実施していきたいと考えている。”

との説明に、池田氏は「標高差から埋立の有無を確認し埋め立てていたら汚染があるかもしれないというのは極めて甘い考え方ではないか。埋立をしていなくても汚染物質を垂れ流したり、捨てたりしている可能性があるのでは」と防衛局の見通しの甘さを指摘している。また、「トレンチ調査を行うつもりはないのか。いずれにしてもボーリング調査では埋め立てられた廃棄物の実態は分からないのではないか。」と、廃棄物の実態を把握する調査方法のさらなる検討の必要性について提案している。

 以下の沖縄防衛局の回答では、ダイオキシン汚染に限定した調査方針であることも疑われるので、調査設計の確認が必要である。

“重政「今回はダイオキシンが検出されたということで内容についてはダイオキシンの汚染土壌対策マニュアルというのがあって、その中でまずは資料等調査をやるということという規定があるので内容についてはマニュアルに沿って調査していきたいというふうに考えている。」”

 沖縄の基地汚染の特徴は、1)投棄による2)「複合汚染」3)連続性がない (*3)
ということが、嘉手納基地跡地であり、窪地でゴミ捨て場であったという当該地と共通性のある沖縄市サッカー場の調査で明らかになりつつある。
 このような経験値と知見に基づいた追加調査設計を行うべきである。

②「(2)周辺住民の不安を払拭するため、隣接する民家(5棟)において表層土壌(ダイオキシン類)の調査をする予定」について

池田氏は、まず、調査目的について「そもそも『不安を払拭するため』というのが間違っている。『汚染の実態と原因』を解明するために調査を行うのが本筋ではないのか。不安を払拭するためということでは、危ないものは最初から調べない、調査が表層的になりやすいと言うことにもなりかねない。」と問題を指摘している。

表層土壌が表層からどれほどの距離なのかということについても、説明会で触れておらず、質疑応答で初めて5cmという数値に言及しており、住民に正しい事実を伝えているかどうかも疑われる。

池田氏は、この調査についても、「表層土壌は、風や人の移動などによって攪乱されているため、そこだけ調査しても安全性や汚染の実態などはわかるはずがない。」と有効性について疑問視している。

よって、調査方針として挙げられている2つの調査については追加調査として問題が多い。調査設計の段階から第3者、住民を含めて協議すべきである。

その他  住民との質疑応答などから

・「掘削しなければ問題はない」という説明
 「住宅建設のための基礎工事において、地表から5m以上掘削しない場合、特段の影響はない」というような説明をしているようだが、2点の調査でそのような結論を導きだすことはできないと思われる。これまでのどのような事例、経験値をもってそのような判断をしているのか不明であり、地権者にもどのような説明をしているのか、懸念が持たれる。
 沖縄BDは、独立行政法人土木研究所に民間地、住宅地での5mの深さでのダイオキシンの検出の経験があるかの問い合わせを行ったが、公共工事が主な事例なために、そのような事例は手元にない、その事例が集まっている機関なども知らないという回答であった。また、「止めよう!ダイオキシン汚染・東日本ネットワーク」「止めよう!ダイオキシン汚染・東日本ネットワーク・関西ネットワーク」にも問い合わせたが、そのような事例は扱ったことがないとのことであった。
 このように、全国的にも稀有な例であり、調査地点が2地点という調査結果を持って、掘削の影響を導きだすことは問題であると考える。

*1  情報筋によれば、沖縄県は、2箇所の調査指標値超過があるため、汚染は広範囲ないし複数地点存在することが想定されるという所見を北谷町に提供している(2015年11月)。なぜ沖縄防衛局にこのような報告を沖縄県と北谷町が許しているのか検証の必要がある。

*2 宮田秀明氏「旧嘉手納飛行場(26)土壌等確認調査(その2)嘉手納飛行場返還跡地内報告書 平成27年1月 沖縄防衛局調達部/中央開発株式会社についての意見書」(2015年2月27日)

*3 宮田氏は、2015年2月27日の「旧嘉手納飛行場(26)土壌等確認調査(その2)嘉手納飛行場返還跡地内報告書 平成27年1月 沖縄防衛局調達部/中央開発株式会社についての意見書」において、廃棄物の埋め立て地の汚染の性質の「不連続性」についての見解を“廃棄物の埋め立て地における有害物の種類や濃度は、均一ではなく、全くの不連続性を特徴とする。そのため、少し離れた地点における有害物質の種類や濃度は、水平的にも垂直的にも極めて大きく相違する。このような実態があるため、埋立地における汚染調査は、適切な間隔の適切な深さのボーリング調査を原則としている。”と示している。サッカー場でもフィールド側は枯れ葉剤由来のダイオキシン汚染、駐車場側はPCP、PCB由来のダイオキシン汚染と、連続性がない。

                                                                 以上

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