返還予定の西普天間住宅地区文化財調査に関する要請(宜野湾市・教育委員会)

沖縄BD

2015年02月18日 23:30

    

QABニュース

 
 「キャンプ瑞慶覧西普天間住宅地区の汚染調査などに関するこれまでの経緯」の記事にもあるとおり、2014年8月15日から実施されている文化財発掘調査で異臭・油臭、ドラム缶18本が確認され、沖縄防衛局が土壌等確認調査を実施しました。2014年12月に調査結果(「西普天間住宅地区内報告書」)が報告・公開され、土壌から環境基準値を超える鉛、ドラム缶内容物からはダイオキシンが検出されたことが報告されています。

 文化財調査の担当箇所である宜野湾市教育委員会は、沖縄防衛局の調査報告をもとにした報告と、2月以降を目処に掘削を伴う文化財調査を再開することを案内する文書(12月26日付け宜教文第182-3号)を、宜野湾市のウェブサイトで公開しています。
 
 しかし、文化財調査再開の決定過程やその市民への文書には以下のような問題があります。 

1)沖縄防衛局の報告が妥当なものか、作業員や市民の安全を保証できるかを宜野湾市独自の検証や判断をせずに、そのまま市民へ報告し、文化財調査再開の意向を示していること。
  2013年6月に沖縄市サッカー場で発見されたドラム缶の調査では、沖縄市が沖縄防衛局のカウンター調査を行って、監視的役割を果たしている。沖縄防衛局は、住民の環境・安全面から、調査・報告をしているとは限らないので、調査結果とその評価を第3者が行うことが必要である。

2)廃棄物、土壌汚染を想定した安全面からの作業員のマニュアルが整備されていないこと。
  2014年3月、海軍病院隣接地の提供区域内でのドラム缶発見時、県内紙で「職員の安全を確保するためにも対応マニュアルは必要」と宜野湾市教育委員会文化課がコメントしているにも関わらず(沖縄タイムス2014.3.23)、対応が未整備のまま、作業員が無防備な状態で作業が行われていたことは無責任である。また、調査再開の判断時においても、マニュアル整備がされていないことも作業員の安全確保を軽視している。
BDブログ記事参照→キャンプ瑞慶覧ドラム缶:包括的な調査計画や遺棄物のマニュアル必要(201.4.8)

3)状況証拠であるドラム缶を含む現場写真が米軍からの許可がないため、いまだ公開されていないのにもかかわらず、調査を終わらせてしまっていること。
 沖縄市のサッカー場の調査でも、内容物だけでなく、ドラム缶の外観や状態は状況証拠となる情報として重要であり、公開されている。今回の事案については、その認識もなく、その公開をまたずに(要求もぜず)調査を集結させることは問題である。

4)市民への報告の記述が不適切・不十分であること。
  そもそも報告書の内容を宜野湾市が咀嚼していないままの市民への報告、作業員への説明であるため、極めて不適切、不十分である。以下に一例として、不十分、不適切と思われる点を列挙する。
・ドラム缶を単に「異物」と記述しており、問題の矮小化を図っているようにみえる。
・ダイオキシンが検出されているにも関わらず、その記述(基準値を超えてはいないが、沖縄市の平均値より高いものであること、PCPなどのダイオキシン由来の分析、TCDDなどの値)がない。
・鉛の基準超過のため、今後、追加の土壌汚染調査が提案されていることにも言及がないこと。
・「適切な措置」が何に対しての措置なのか不明であり、何を何のためにモニタリングするのかも明確でない。
・沖縄防衛局の調査報告へのリンクもついておらず、不親切な案内である。

5)関係部署との協議調整・連携体制が不備であること。
 文書では「市教育委員会では関係部署との協議調整を測ってきたところですが」と記されているが、どの部署とどのような協議をしたかが記されていない。そもそも報告書が公開されてから1週間足らずの協議が意味のあるものだったかどうかも疑わしく、協議過程を明らかにする必要がある。

 ということで、2月10日に宜野湾市教育委員会、宜野湾市に対応を要請しました。沖縄市サッカー場の件から意見書を書いてくださっている環境総合研究所の池田こみちさんの意見書を添えて、要請書を提出しました。(下に要請書と意見書を埋め込みました)

宜野湾市教育委員会教育部与那原類文化課長、教育部総務課島袋清松次長兼課長、基地政策部まち未来課伊波興博次長兼課長が対応してくださいました。
 


 ただ、今回は要請を事前に送付してあるにも関わらず、回答は用意されておらず(沖縄県でも沖縄防衛局でも用意して対応するのですが)、要請はうけたまわるとのことのみの対応でした。文化財調査もスケジュールどおり進めるようです。

 跡地法改正後初の試みで、文化財調査で米軍の投棄物が出るということで、非常に難しい対応であることは理解できます。国と市町村の関係も難しい部分があるでしょう。
 汚染の専門家がいないというのも、問題だとは思いますが、今回は、沖縄防衛局の調査結果を検証できる専門家の意見を「セカンド・オピニオンのように」(by 吉川秀樹さん)聞いて判断すればよいのだと思います。作業する方たちの安全や、市民への説明責任はきちんと果たしていただきたいということはお伝えしました。
 QABニュースのインタビューでは、”利用”と”支障除去”の対比で「(返還跡地)利用の件に関しては非常にそのスピーディーですし、お金もかけていると、支障除去に関しては透明性も確保されていないし、専門家も確保されていない」と話しました。
 
 沖縄県にも電話で確認しましたが、調査報告の件は、協議会の支障除去部会で防衛局が説明し、関係者で「意見交換」をして終わったということでした。

 
 要請には、宜野湾市議、桃原功議員、伊佐哲雄議員、米須清正議員、宮城勝子議員、玉城健一郎議員の5名に同行していただきました。お礼申し上げます。
 これから市議会などで、質問、要求をしていただけると思います。よろしくお願いします。


要請文はこちらです。

西普天間ドラム缶対応要請文書(宜野湾市・教育委員会) Final by BDOkinawa



 (PDF: 245.52KB)

池田こみちさんの意見書はこちらです。

宜野湾市あてERI池田こみち氏コメント by BDOkinawa



 (PDF: 471.92KB)


全県的な問題でもあるので、沖縄防衛局・沖縄県にも別途写し要請文を送付しました。

宜野湾市要請写し送付・要請 沖縄防衛局・沖縄県 2015年2月 by BDOkinawa



 (PDF: 184.06KB)

報道はこちら:
QAB→ 西普天間住宅地区の土壌汚染調査徹底を要請 (2015.2.10)

琉球新報


沖縄タイムスの記事は沖縄市のドラム缶が同日にまたもや発見された沖縄防衛局リリースといっしょに報道されていました


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調査報告の報道もこちらにアップしておきます。







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