パブコメ:ラムサール条約実施に関する国別報告書(案)への意見

沖縄BD

2011年10月16日 00:30

沖縄BDでは、「ラムサール条約実施に関する国別報告書(案)に対する意見の募集」にパブリックコメントを提出しました。
意見募集案内は→こちら


現在工事が再開している泡瀬干潟も、登録の条件を十分に満たしています。

ラムサール条約のキーワードとなる「ワイズユース(賢明な利用)」の日本政府の現状認識には、強い不満を覚えます。「ワイズユース」を決め、実行していく主体はだれなのでしょうか。

以下、提出した意見です。
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2011.10.6
[氏名]沖縄・生物多様性市民ネットワーク
(担当:事務局長 吉川秀樹、事務局次長 河村雅美、
     沖縄リーフチェック研究会会長 安部真理子)

[意見]

パブコメ全般に対し;

1)意見募集期間を長く、公開する書類は読みやすくしてほしい。

パブリックコメント募集として公開された書類の書き方が読みにくいうえに、提出時に、添付ファイルは受理しないなど不可解な条件が多すぎる。締め 切り直前に回線が混むとわかっているならば締め切りの方を延長すべきであろう。また意見の募集期間も短すぎ、国民からの意見を広く集めるという誠 意が全く見えない。

また提出形式についても、国の環境を守ることに責任を負っているのは環境省の方なのであるから、どのような形式で意見が提出されようとも、提出さ れた側の方から抽出する努力をすべきである。

「ラムサール条約実施に関する国別報告書(案)」へのコメント

意見1:
1. セクション2のC
「いくつかの湿地においてはワイズユースを進めることが困難で、人々との生活との間に軋轢があった」
2.事実認識が異なる、あるいは事実をすべて認識していないのではないか。
3.例えば沖縄県泡瀬干潟や浦添、豊見城、石垣島における新石垣空港建設、宮古島における海中トンネル建設、中海(島根県・鳥取県)、諫早湾などのような湿地をめぐる大小様々な公共工事を抱える地域においては、ワイズユースとは何かを理解していないのは政府や県や市や事業者の方であり、そのため住民との軋轢が生じている。

意見2:
1.セクション2のD
2.優先順位が間違っている
3.すでに壊されてしまった湿地に関しては再生が優先順位に上るとしても、まだ人手が入っていない湿地や、地域住民により持続可能な方法で用いら れてきた湿地についてはそのままの状態を保全することを優先順位の上位とするべきであろう。

意見3:
1. セクション2のF
2. 支援の提言が偏っている
3. 東日本大震災関連事項のみではなく、福島原発に由来する湿地(沿岸環境)の破壊や原発起因の海洋汚染から生じる影響についても、どのように扱うのか、明記すべきである。

意見4:
1. セクション2のF
2.ラムサール条約登録湿地がきちんと管理保全されているかどうか、事務局、政府が定期的にチェックすべきである。
3.中海(鳥取県、島根県)では大部分において湖岸から50 メートル沖合からが特別保護区となっており、その水域がラムサール条約の登録湿地となっている。そのため湖岸線や湖岸から50メートル以内の水域では人工 ビーチ造成などの工事が今でも大規模に行われている。湖環境を守る上で湖岸の保全が重要であることは言うまでもない。ラムサール事務局および日本 政府は、ラムサール条約登録湿地の保全状態を定期的にチェックすべきであり、また中海の場合は包括的に保全を進めていけるよう、湖岸線までがラム サール登録湿地とならねばならないことを認識し、働きかけるべきである。
 このような見せかけだけのラムサール条約湿地登録地の存在を認めることが本来おかしい。

意見5:
1.セクション2のJ
2.「ラムサール条約の登録は『地域おこし』の一環として捉えられているケースが多いが」の事実認識の根拠がわからない。また、「条約湿地の保全 および賢明な利用に関して、その土地毎の状況に応じた方法での推進が必要となる。」の部分は、この文章の前半と関係なく、行われるべきである。
3.事実認識の根拠が不明であるため。

意見6:
1. セクション3、目標1の1.1.3
2. 東北はもちろんであるが、「全国的に長期的定期的なモニタリングが必要である。特に、モニタリング1000の対象から外されている大浦湾や泡瀬干潟など、 事業をめぐって住民との対立が起こっている地域に関しては、行政が積極的にモニタリングを行い、客観的なデータを示すべきである。」と記載すべきである。3. モニタリングは定期的に行うべきであり、特に問題となっている湿地のモニタリングは積極的に行うべきである。過去3年間にわたり全国的な調査を行っていな いとのことであるが、現状を抑えることが最も大事なことではないのかと考える。

意見7:
1.セクション3.目標1.3.1
2.「『生物多様性国家戦略 2010』が 2010 年 3 月に閣議決定されており、これを国家湿地政策として位置づけている」とあるが、これは事実認識がおかしい。
3. 国家戦略は、国家湿地政策としては不十分であり、そのように位置づけられているという認識は国民内にはないと考える。

意見8
1. セクション3の目標1の1.3.5
2.追加情報の部分で、環境影響評価の手続き自体に問題がある事例があることを正直に書くべきである。
3. 沖縄県の泡瀬干潟の埋立て事業に係る環境影響評価は行われたが、その環境影響評価自体が、科学的な信頼性の面から大きな問題があることが指摘されており、事実、緩和手段である海草移植も成功したとは言えない。手続きが行われればいいということではなく、環境影響評価自体の信頼性にも 言及すべきである。

意見9:
1.セクション3、目標1の1.4.2
2.福島を含む東北地域、沖縄などの場合は貧困緩和や食物と水の確保という側面も必要である。
3.沖縄は国連から先住民の認定を受けている地域であるが、自分達の所有する湿地を含む自然環境を貧困緩和や食物と水の安全保障のために使えてい ない現状がある。また東日本大震災や福島原発の被害を受けた場所に住んでいる住民にとっては,災害による湿地を含む自然環境の喪失が。貧困や食物 と水の安全保障問題に繋がっていく。これらの住民にとっては貧困緩和や食物と水の安全保障計画は問題であり、これらに貢献できるような湿地プログ ラムが必要である。
「該当しない(Not applicable)」などとカテゴライズせず、日本も貧困問題や水問題を抱える地域になってしまったことを認識すべきである。

意見10
1. セクション3の目標1の1.6.2
2. 追加情報の部分に、なぜNOなのかを、具体的な事例等も含めて説明すべきである。
3. 国別レポートの目的は、進展部分ばかりを報告するだけではないはずである。どの部分が、どのようにまだ出来ていないのか、なぜなのかを記述することによ り、より正確なレポートになる。それらの情報を、条約加盟国が共有することに、条約の意義があると考える。

意見11:
1.セクション3の目標1の1.7.2
2.流域単位での水資源管理を考慮した政策と管理が必要である。
3.現在流域単位での水資源管理ができていない現状をきちんと認識していることは評価できるが、流域単位で管理をしていけるようになるよう努力を すべきではないのか。東日本大震災以降、日本においても天然の水が非常に大事であることがわかったのではないのか。

意見12:
1.セクション3の目標1の1.11.2
2.湿地の保全と賢明な利用に悪影響を及ぼす措置を排除する方策を講じたとのことであるが、泡瀬干潟等の事例が抜けている。
3.湿地の保全と賢明な利用に悪影響を及ぼす措置を排除する方策を講じたとのことであるが、例えば沖縄県泡瀬干潟や浦添、豊見城、石垣島における 新石垣空港建設、宮古島における海中トンネル建設、中海(島根県・鳥取県)、諫早湾など明らかに対策が講じられていない場所も多いことを認識すべ きである。

意見13:
1.セクション3の目標2の2.7.1
2.追加として記載されている情報が不十分であり、また認識も事実と大きく異なる部分がある。
3.福島原発からの海洋汚染の影響を受けて生態学的特徴が維持されている訳がないであろう。泡瀬干潟の問題については日本自然保護協会が出してい る「泡瀬干潟・海草藻場、サンゴ群集モニタリング調査結果(
http://www.nacsj.or.jp/katsudo/awase/pdf/_20110914awasesiryo.pdf)」が科学的データをもって示すよう、同海域における工事の影響は、部分的な喪失などというレベルではなく、干潟全般に及んでいる。これらのことをきちん と認識し対処していくべきである。

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