沖縄県生物多様性地域戦略スタート:第1回策定検討委員会(1)

沖縄BD

2011年09月19日 16:03

沖縄県の、生物多様性地域戦略策定が本格的にスタートしました。

生物多様性地域戦略って?
・地方自治体が策定する生物多様性の保全及び持続可能な利用に関する基本的な計画であり、「生物多様性基本法」(2008年6月施行)で地方自治体の努力義務規定となっています。
・地域戦略策定において重要なことは、同基本法で「政策形成に民意を反映し」と定められている市民参加を、どのように実現させるかということ。
・「生物多様性条約(Convention on Biodiversity)」の地域における実現という面も重要な側面。
・ 「生物多様性国家戦略2010」では、地方公共団体の参画の重要性が基本戦略の中でも明記されています。
・国際的にも、生物多様性条約第9回締約国会議(2008年5月)で「都市・地方政府の参加促進決議」が採択されています。

環境省のこちらのページに他の自治体の策定状況も含め、まとめられています。

沖縄BDも、2009年の結成以来、この地域戦略の市民参加には関心を持ち、パブコメの提出、フォーラム開催、県議会での陳情などの取り組みを行ってきました。(沖縄BDの取り組みについては、後日まとめをアップします)

「地域戦略」がわたしたちもいっしょになって参加してつくったもの、だから私たちのものである、と県民が思えるようなものにつくりあげるためには、県民が納得する市民参加の形が必要であり、その実現のためには、私たち側の積極的な動きが必要とされています。
これまで、環境団体は「交渉」「申し入れ」という場面で県と向き合うことが多かったのですが、この地域戦略では、県や他の県民と「共につくる」というスタイルが私たちにも求められていると思います。
沖縄県側も初めての試みでいろいろと大変だとは思いますが、私たちもできるだけこの地域戦略の市民参加の動きをつくる主体として、ともに取り組んでいきたいと思います。このレポもそのひとつです。

さて、本題ですが、このたび、沖縄県が第1回沖縄県生物多様性地域戦略(仮称)策定検討委員会を下記のとおり開催しました。
沖縄BDからは事務局長の吉川秀樹さんが、委員として出席しました。また、沖縄BDで活動をともにしてくださっている沖縄大学の桜井国俊先生も委員として出席されていました。




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日時:平成23年9月13日(火) 14:00-16:00
会場:ホテルチュラ琉球 7階1ホール

会議次第
1 あいさつ
   沖縄県環境生活部 環境企画統括監 下地 岳芳
2 委員長選出
3 生物多様性地域戦略について
4 策定スケジュールについて
5 骨子(たたき台)(案)について
6 その他
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地域戦略は自然保護課が担当します。担当は、課長の富永さん、伊良部さん、渡嘉敷さん、笠原さんの4名。

○さて策定検討委員会何なのーってことですが、県の用意してきた資料をみてみます。
おおざっぱにいえば、戦略の骨子を議論し、まとめていく委員会です。

委員会は、次の事項を検討するとのこと(下記設置要綱より)。
 (1)生物多様性の現状と課題の抽出
 (2)生物多様性に関する基本的な考え方
 (3)生物多様性に対する取り組み
 (4)戦略の推進体制に関すること
 (5)その他必要事項
委員会のメンバーなどについては後述します。

○まず、どんなスケジュールで策定が進むのか。以下が策定ロードマップです。
ロードマップや叩き台を策定するところから、議論に加わらせてほしい、というのは私たちが何度も要求してきたのですが、それはかないませんでした。昨年度、行われた委託調査をもとに、策定検討委員会で叩き台を議論するということになりました。
今年度、来年度の2年間で作ることになっています。
まず、今年度の分です。
生物多様性地域戦略策定ロードマップ(平成23年度)=2011年度



検討委員会は3回行われる予定。今年度はあと、2回ですね。
県内各地のヒアリングを行い、そして庁内の推進会議を推進し、連携をはかるとのこと。縦割り行政への弊害をこの推進会議で乗り越えられるか、という部分も注目したいところです。

同ロードマップ(平成24年度)=2012年度



この年になると、前半でお役目は終わりになるようで、その後は、庁内推進会議にはかられ、最終的に案を審議し、答申を出すのは「審議会」という会です。この「審議会」の意味づけ、メンバー、検討委員会との関係はまだクリアではありません。が、ここは大事な部分だと思います。
この辺の手続きは少し、注意を持ってみる必要がありそうです。

では、策定検討委員会について
「沖縄県生物多様性地域戦略(仮称)」策定検討委員会設置要綱



沖縄県生物多様性地域戦略(仮称)策定委員名簿



・委員構成をぱっとみて思うのは、ジェンダーバランスの悪さ。男:女 15:1 
 女性については、生物多様性条約の前文で
「生物の多様性の保全及び持続可能な利用において女子が不可欠の役割を果たすことを認識し、また、生物の多様性の保全のための政策の 決定及び実施のすべての段階における女子の完全な参加が必要であることを確認し」

 と、書かれています。
 日本でもCBD市民ネットではジェンダー部会がたちあがり、活発な議論がされていました。

 生物多様性条約は、マイノリティ、「辺境」の声を聞く回路を作る条約でもある、ということを、もう少し意識するべきではないか、例えば離島の人も常設委員会メンバーに加えることは重要なことではないか、と感じます。
県の地域戦略の「発」の部分は、生物多様性条約ではなく、もしかしたら「国家戦略」「地域戦略の手引き」あるいは他の自治体の戦略なのかもしれません。しかし、沖縄BDの地域戦略へのスタンスは生物多様性条約の地域での実現であり、多様な主体の参画は、生物多様性条約自体の目的でもあります。私たちが参照すべきものは、条約そのもの、という共通認識をつくっていく必要があるかもしれません。

・また、市民団体が少なすぎます。先住民族と地域共同体を重要視する生物多様性条約としては、これも条約の精神を見据えているとはいえないのでは、と思います。

・会議の中でも指摘されていましたが、自然保護系へのメンバーの偏りも気になるところです。
条約は、単なる自然保護の条約ではなく、自然と密接に結びついた文化や地域社会の権利を重視したものであり、生物多様性というのは 「地域の歴史・自然史と密接に結びついた生態学」(千葉の生物多様性県民会議元代表の手塚さん)であることが、沖縄ではもっと考えられるべきではないでしょうか。
この視点の欠如は、昨年の委託調査の報告書にもあらわれており、一委員から、ある箇所への指摘がありました。それについては、次の報告でまた触れます。

このような件は「ヒアリング」で補う、ということを事務局は繰り返されていましたが、それがきちんと機能するのか見ていかないといけない と思います。

また、今回の会議では、事務局の後ろにいらっしゃった方の紹介がありませんでした。コンサルティング会社の方でしょうか?
県とコンサルティング会社との連携については、これまでの県の事業内容をウォッチしてきた経験から、沖縄BDは早くから県に「丸投げしないように」「どのように連携するのか」「選定の基準をクリアに」など、要求してきました。
透明性は、市民参加の基盤ですし、この部分も、明確な説明を求めていくことが必要になると思います。

今回は、ここまで。
次回から、骨子案と委員会の様子をレポートします。

 しかし~ここにある資料は県でリンクできるようにしてほしいです。
 市民参加には速やかな情報提供が必要
沖縄BDは委員を出しているので読めるのですが、他の人たちは読めないわけですから。
 今のところ全部スキャンして載せてるのですが、めんどくさいの。

 あと、普及啓発、というならばメディアを呼んで「始まりました!」と宣伝したらよかったのに、と思いました。委員と記者会見やってもよかったと思います。これから、県はそういう機会をもっと設けられたらいいと思います。
 
mmk

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