防衛局交渉報告:米側への情報提供・共有はやはり不十分

沖縄BD

2014年02月09日 08:30

2月6日沖縄BDは他の環境・市民団体とともに、沖縄防衛局への要請交渉を行いました(琉球新報記事はこちら)。その内容を報告します。今回の交渉で明らかになったのは、私たちが「国防総省が迷惑する」と述べるほど、沖縄防衛局が米軍に提供してきた辺野古基地建設に関わる環境アセスや埋立承認申請の情報は、不十分、不誠実であったということです。


久しぶりに東恩納琢磨さんのジュゴンとウミガメの写真!

以下、要請文の質問に沿って、交渉で示された防衛局の回答と環境・市民団体のコメントをまとめました。なお今回の交渉で、環境アセスや埋立承認申請についての日米間のやり取りは、沖縄防衛局の調達計画部と米海兵隊の再編事業部が直接行っている、また防衛省内のやり取りは、経理装備局施設技術官と行っている、ことが分かりました。しかしそれらの部署の英語表記についは回答が貰えなかったので、後日回答をもらうことになっています。


質問1 「環境アセス」について、日本政府から米国政府へ提出された文書は「方法書」の一部抜粋部分の翻訳と『Futenma Replacement Facility Construction Project: ABSTRACT』以外にもありますか。もしあれば公開して下さい。

防衛局回答:
「方法書要約」や『Futenma Replacement Facility Construction Project: ABSTRACT』(補正評価要約書)以外で英文で米側に提出されているものは「準備書要約書」「評価書要約書」がある。

その他には「補正評価書」と「公有水面埋立承認申請書」があるが、それは日本語の文書をそのまま米側に提出している。

環境・市民団体コメント:
『ABSTRACT』(補正評価書要約書)のなかに、「方法書要約書」「準備書要約書」「評価書要約書」の内容はすでに含まれており、これらの文書に新たな情報は入っていない。

「補正評価書」と「公有水面埋立承認申請書」は膨大な量であるが、その日本語の文書をそのまま米側に提出したということは、米側が翻訳や解釈を行わなければならないことを意味する。翻訳や解釈が適切なものかを検証していく必要がある。


質問2 『Futenma Replacement Facility Construction Project: ABSTRACT』は、辺野古・大浦湾の自然環境と生活環境の現状と、沖縄県, NGO、専門家が指摘してきた自然環境や生活環境の保全に関する問題について、十分かつ正確に伝えていると考えますか。見解を示して下さい。

防衛局回答:
『ABSTRACT』(補正評価書要約書)は、米側に参考にしてもらうという位置づけで渡している。これが十分か正確かは、米側が判断するものである。

環境・市民団体コメント
『ABSTRACT』だけの情報で、米軍が環境保全に取り組むのは不可能である。なぜなら、防衛局自らがアセス調査した調査の結果や評価は、文字情報だけで、しかも要約された形でしか示されおらず、情報として不十分だからだ。防衛局が「補正評価書」で提示しているジュゴンの回遊や食跡についての「図」「表」「写真」等が一切記載されていない。これらの情報は、米軍がジュゴン訴訟で命令されている「ジュゴンへの影響を考慮」するためにも必要であり、提供されるべきだ。

『ABSTRACT』には、また「補正評価書」にも、「評価書」に対して沖縄県知事が示した「保全は不可能」という記述はない。環境団体が作成したデータ等を取り入れて、保全の問題がきちんと米側に伝わっているかを確認するべきだ。


質問3 『Futenma Replacement Facility Construction Project: ABSTRACT』についての米国政府からの反応はありましたか。もしあれば公開して下さい。

防衛局回答:
米側からの問い合せはこれまでない。

環境・市民団体コメント:
米側がもし『ABSTRACT』(補正評価書要約書)のみで情報は十分だと判断するのならば、それは大きな問題である。


質問4 「埋立承認申請」の手続きにおける自然環境と生活環境の保全に関する内容について、日本政府から米国政府に提出された文書はありますか。もしあれば公開して下さい。

防衛局回答:
埋立承認申請に関して日本政府/沖縄防衛局から米側に提供している文書は、日本語の「公有水面埋立承認申請書」である。この文書には、補正評価書と同様の環境保全を講じる図書も含まれている。

環境・市民団体コメント:
「公有水面埋立承認申請書」は膨大な量であるが、その日本語の文書をそのまま米側に提出したということは、米側が翻訳や解釈を行わなければならないことを意味する。翻訳や解釈が適切なものかを検証していく必要がある。


質問5 「埋立承認申請」の手続きでは、2012年6月にジュゴンの食跡が基地建設予定地に接する地点で確認されたこと、埋立土砂がジュゴンの餌場近くにある嘉陽の海岸から採取されること、県外から埋立土砂を大量に搬入するのに伴い「外来種」の問題があることなど新たな問題が露呈しましたが、その問題を米国側に伝えていますか。もし伝えているのならば、それを示す文書・資料を公開して下さい。

防衛局回答:
これらの情報は、米側に提供はしていない。補正評価書でもすでに似たような情報がある。また事後調査で新たに見つかったジュゴンの食跡については、公表を前提としていないので国内でも公表もしていなかった。

埋立申請承認に関わる沖縄県との4回に渡る質疑のやり取りや付随する資料については、米側には伝えていない。今後、必要に応じて、米側から要求があれば提供していく。

環境・市民団体コメント:
米軍は環境保全を行う義務があり、それはジュゴン訴訟やJEGSなどによっても要求されている。保全を行うためにはこれらの情報は必要であり、提供するべきである。「公有水面埋立承認申請書」には、県との4回の質疑応答や付随資料は入っていない。それらも米側に提供すべきである。

情報開示がこれだけ求められるなかで、「公表を前提としていない」として、調査結果を隠すという態度は問題である。

沖縄防衛局は、ジュゴンへの影響を避けるために海岸から10km離れて工事用の船を航行させ、建設予定地には入るには沖合10kmから直角に船を進めるとしている。しかしジュゴンが頻繁に餌を食べる嘉陽の海草藻場は、建設予定地から5kmしか離れていない。10kmや船のルートの根拠が明確でない。


質問6  「埋立申請承認」の手続きについて、米国政府からは、なんらかの反応がありましたか。もしあれば公開して下さい。

防衛局回答:
米側からは今まで問い合せはない。

環境・市民団体コメント:
「公有水面埋立申請書」については英語の要約版も存在しない。よって、米側はその膨大の量の文書を翻訳し解釈しなければならないが、その翻訳や解釈についての検証も必要である。


質問7 環境アセスと埋立申請承認手続きの内容について、米国政府と十分かつ正確な情報の交換と共有を行い、公開して下さい。

防衛局回答:
今後、必要に応じて、米側から要求等があれば行っていく。

環境・市民団体コメント
今回の要請への沖縄防衛局の回答では、環境アセスや埋立承認申請の手続きで指摘されてきた問題が米側にきちんと伝わっているか、それさえも確認できない。

今後お互いの情報を提供し共有していくために、防衛局、米軍、そして市民が一緒になって議論できる場所を、防衛局が中心となってぜひ設置してもらいたい。これについては再度要請する。