「自主アセス」についての回答 

沖縄BD

2011年07月10日 19:15

前の記事の要請2「沖縄BDや他の団体が2010年6月24日に提出した『公開質問状』へ回答して下さい」との関連で、自主アセスに関するやり取りです。

   (自主アセスとは何か?については、資料や公開質問状の該当部を下に貼り付けましたの
   でごらんください。)

沖縄防衛局は「自主アセス」のなかで、事後調査(モニタリング等)を行い、必要であれば希少種の移植や移動等を行い、その結果を報告するとしています。

前回の3月1日の交渉の時と同様、今回の交渉でも移植や移動の結果はどうなっているのか、報告書を県に提出しているかを聞きました。

もちろん前回同様、「係争中だから回答できない」という態度でしたが、交渉のなかで「事後調査は行っている」「まだ報告書は提出していない」等の回答を引き出しました。

前回の交渉では、報告書を「県に提出した」と回答していましたが、こちらが調べてみると提出されていませんでした
その点の指摘も含めて追求したところ、今回は前回答を翻し、報告書を提出したではなく、口頭での報告だったとしました

ヘリパット建設予定地N-4では、ノグチゲラのさえずりが聞こえているようです。
きちんとした事後調査の施行と、その結果の開示、そしてそれに基づいた対応が、これからのヤンバルの森を保全するための焦点の一つです。

オスプレイ配備の問題自体は、県や市町村や他の団体もいろいろ動いていくと思います。
しかし事後調査や保全の問題については沖縄BDの動きが重要になっていくと思います。
みなさんのご協力をよろしくお願いします。

自主アセス=「北部訓練場ヘリコプター着陸帯移設事業(仮称)環境影響評価図書」は
       さい塾のこちらで読むことができます。      
   
以下、公開質問状の「自主アセス」の部分の抜粋です。
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2「自主アセス」について
沖縄防衛局は、ヘリパッド建設にあたり、「沖縄県環境影響評価条例(平成12年12月27日、沖縄県条例第77号)の適用外でありますが、事業者の自主的な判断によ り、沖縄県環境影響評価条例に準じて環境影響評価を実施」したとしています1

しかし沖縄県において、30メートル以上の「ヘリポート」を設置するには、「沖縄県環境影響評価条例」(以下沖縄県アセス条例)に基づいた環境アセスが必要です2。 直 径45メートルのヘリコプター着陸帯、その周りの15メートルの無障害物帯(合計7 5メートル)、そして「進入路」や「歩行ルート」を建設するこの事業に対して、沖縄 防衛局は、自主アセスではなく、沖縄県のアセス条例に従ったアセスを行うべきであり、 沖縄県アセス条例の「適用外」という認識そのものが間違いだと私たちは考えます。

沖縄県アセス条例上、条例対象事業としてのヘリポート(またはヘリパッド)かどう かを定める要件は、「滑走路の長さが30メートル以上であるもの」なのであって、当 該ヘリポート(またはヘリパッド)が、誘導路等の設備を備えているかどうかは、航空 法や自衛隊法が求める要件に過ぎないのです。航空法や自衛隊法はアセス法令ではあり ません。

そもそも、ヘリポートまたはヘリパッドという用語は、一般に、日常用語上だけでな く、自衛隊法も、誘導路等を備えているはずのないヘリコプター離着陸帯について、「屋上ヘリポート」などと呼び、「陸上ヘリポート(屋上ヘリポートは除く)」などと定める など、両者を区別しているわけではないのです。

したがって、ヘリコプター離着陸帯について、米軍の要求は「ヘリパッド」であるの で、沖縄県アセス条例対象事業は「ヘリポート」と定めているから、したがって、計画 されている「ヘリパッド」建設は、沖縄県アセス条例の適用外である、という論法は、著しく沖縄県アセス条例を逸脱した解釈です。

そのような解釈が許されるとするなら、ヘリコプター離着陸帯の滑走路の長さが50 メートル、あるいは、100メートルでも、条例対象外事業ということになり、このよ うな解釈は、まさに、条例の趣旨を逸脱した解釈だと指摘せざるを得ないのです。

さらにこの「自主アセス」は、「事業に係る環境の保全について適正な配慮がなされ ることを確保し、もって現在及び将来の県民の健康で文化的な生活の確保に資すること を目的とする」とする沖縄県アセス条例の第1条(目的)を無視したものであり、沖縄 防衛局が述べる「条例に準じた」環境アセスにはなっていません。環境アセスは、事業 の環境への影響を適切に評価し、影響の回避、緩和を考慮し、情報公開をして、それが 正しく行われているか住民・市民に評価されなければ、目的を達することはできません。 ましてや、軍事施設という危険性を伴う事業が「自主アセス」によって影響評価される ことは、納得できません。

特に、沖縄防衛局の「自主アセス」は、事業予定地の「動植物の状況」を含む北部訓 練場の自然環境の把握について多くのデータを収集したものの、「環境アセス」に不可 欠とされる「対象事業の目的及び内容」「対象事業が実施されるべき区域の概況」「影 響評価の予測および評価」等、多くの肝心の項目に関しては、十分に対応されていませ ん3。 これでは、環境アセスの体をなしえているとは言えず、国民の税金の無駄使い としか言いようがありません。
以上を踏まえ、以下の質問をします。真摯にお答え下さい。

1)沖縄防衛局は、何を根拠に「沖縄県環境影響評価条例」が定める環境アセスを実施 しなくてもいいとしているのですか4。そして何を根拠に「自主アセス」が適切だとするのですか。

2)「自主アセス」では、運用される機種やその飛行ルートが明記されていませんが、 それはなぜですか。運用される機種やその飛行ルートを明確にして下さい。またG地区 と宇嘉川河口を結ぶ歩行ルートではどのような訓練が行われるのか、明確にして下さい。

3)「自主アセス」では、現在あるヘリパッドの状況、ジャングル訓練と現状や、海岸 付近での訓練等その運用の概況に十分な説明がされていませんが、それはなぜですか。 特に、市民が情報公開法を使って情報を求めたことにより、北部訓練場には現在22の ヘリパッドが存在することが明らかになっていますが、そのヘリパッドの数、位置、そ して運用状況について「自主アセス」では触れられていません。それはなぜですか。現在の北部訓練場の運用状況を明確にして下さい。

4)「自主アセス」では、現在のヘリコプター訓練により生じている騒音や墜落の危険 性の問題や、その問題に対する地域住民の不安や懸念について、どのような調査をしま したか。明確にして下さい。

5)「自主アセス」では、G地区と宇嘉川河口を結ぶ歩行ルートや、県道からN−1地区 そして畑(H、G地区)へ続く工事用道路の建設が示されていますが、その事業に対す るアセスが行われていないのはなぜですか。また同歩行ルートではどのような訓練をす るのかを明確にして下さい。

6)「自主アセス」では、ヘリクプターの事故等による住民の暮らしや環境への影響に ついて何一つ言及されていません。住民の暮らしや環境への影響の回避・低減を図る意 味でも、事故等を想定したアセスはなされるべきだと私たちは考えますが、それについ て、沖縄防衛局はどのような見解を持っていますか。例えば、ダムや集落にヘリコプタ ーが墜落した場合、どのような対策をとるのか、米軍と協議していますか。もし協議し ていたら、その内容を示して下さい。もし協議していないのなら、その理由を説明してください。

7)N-4地区とH地区は、当初ヘリパッド設置事業を請け負っていた事業者が倒産した ため現在は他の事業者が引き継いでいますが、引き継ぎの状況やそれに伴う変更を住 民・市民に明確にし、今後の「工事工程(手順)」を質す事項を立て直す必要はありませんか。また沖縄防衛局自ら定めた「高江ヘリパッド建設工事は1地区ずつ(ただし N-4地区とH地区は一緒)」という基準を遵守していきますか5

8)「自主アセス」のもと沖縄防衛局が開催してきた「説明会」は、あまりにも一方的であり、住民・市民の質問や懸念に応えたものとは決して言えず、むしろ住民・市民に 不信感を植え付けています。環境アセスの目的である「合意形成」からほど遠いもので あったと住民・市民が判断している「説明会」を、沖縄防衛局はどのように認識してい ますか。

9)以上の私たちの懸念を考慮し、「沖縄県環境影響評価条例」に従い、米軍から確か な情報を得ながら、新たな調査を行い、説明をし、適切な対応をする意思はありますか。 またないとしたら、なぜそのような対応をする必要がないと考えますか。

*環境と「自主アセス」に関する質問は、「4 生物多様性豊かなやんばるの環境について」の項目で以下のとおり取り上げています。

2)なぜ沖縄防衛局の「自主アセス」では、IUCN 勧告や、環境省や沖縄県の国立公園 設立や世界遺産指定へ取り組みについて言及していないのですか、アセスの対象項目にいれないのですか。

3)「自主アセス」では「自然環境保全への取り組み」「生活環境保全への取り組み」、 動植物に対する「保全処置」が示されていますが、何を根拠にその「取り組み」「保全 処置」が実効性、効果性があるとしているのですか。その判断を下した専門家は誰ですか。


注)
1
『環境影響評価図書案のあらまし 北部訓練場ヘリコプター着陸帯移設事業(仮称)』、2006年2月、 那覇防衛施設局(現、沖縄防衛局)。
2
「沖縄県環境影響評価条例」第2条第2項第 1 号に基づいた「沖縄県環境影響評価条例施行規則」の 第3条に定める「別表第1(第3条関係)」の「5 条例別表5の項目に該当する対象事業」を参照。そ こには、沖縄県環境アセスの対象事業として、「(4)航空法施行規則(昭和 27 年運輸省令第 56 号)第 75 条第1項に規定する陸上ヘリポート(屋外ヘリポートを除く。)及び自衛隊法(昭和 29 年法律第 165 号)第2条第1項に規定する自衛隊が設置する陸上ヘリポート(以下「ヘリポート」という。)の新設の 事業(滑走路の長さが30メートル以上であるものに限る。)」「(5) 条例別表の5の項に該当する対 象事業」にかかる「条例第2条第2項第1号の事業の規模の要件」)と明記されている。

3 例えば、「沖縄県環境影響評価条例」で定められている「対象事業の目的及び内容」「対象事業が実施さ れるべき区域(以下「対象事業実施区域」という。)の概況」「対象事業に係る影響を受ける範囲であると 認められる地域及びその概況」等の項目について、適切なアセスが行われているとは言えない。

4 沖縄県は、沖縄防衛局が行うヘリパッド建設事業は、県アセス条例の対象外だという見解を示している (2007年2月26日、平成19年第1回沖縄県議会(定例会)213ページ)。しかしこれは、あくま でその時点での県の見解/解釈であり、例えば司法の場で、この県の見解/解釈と条例の合致が確立され ているわけではない。

5 『北部訓練場ヘリコプター着陸帯移設事業(仮称)環境影響評価図書』(2007〔平成19〕年2月)の2 -21ページを参照。
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