辺野古新基地建設「集中協議」に関する要請

2015年08月26日

8月21日金曜日、沖縄BDは、沖縄県知事公室/辺野古新基地問題対策課に対して要請交渉を行いました。お忙しいなか対応して下さった県職員のみなさん、ありがとうございました。感謝を申し上げます。また、今回の要請交渉の基盤となる「要望書」の作成に関わって下さった日本自然保護協会、13の賛同団体にも感謝を申し上げます。そして交渉に参加して下さった沖縄BD、賛同団体のみなさん、ご苦労さまでした。「要望書」と賛同団体のリストはページの一番下です!

辺野古新基地建設「集中協議」に関する要請

要望書の手交 ©棚原盛秀


要請の背景
今回の要請は、辺野古・大浦湾における米軍基地建設に関して、現在沖縄県と日本政府の間で行われている「集中協議」に関する要請でした。全部で5回予定されている「集中協議」ですが、翁長知事と菅官房長官の間ですでに2回開催。双方の主張は平行線を辿り、協議は決裂に向かっている様相です(沖縄タイムス記事(2015.08.08)を参照)。

その状況のなかで私たちは、日本政府がこの「集中協議」を、基地建設強行のための一つの手続として位置づけないかという懸念をもっています。特に埋立て承認の留意事項として沖縄県が求めた「協議」として、日本政府によりこの「集中協議」が扱われる可能性を懸念しています。

勿論、県も国も、現在のところ、建設強行に繋がる位置づけではないという見解で「集中協議」を行っています。ただ私たちとしては、沖縄県がその見解を明確にし維持すること、そして何を担保に「集中協議」のスコープや位置づけが成立しているのかを明確にしてもらう必要があると考えていました。

また、第3者委員会の「法的瑕疵有り」の報告書の精査が沖縄県によりまだ終わっていないなか、今回の「集中協議」が行われることで、県の精査に影響を与えないかという懸念もありました。


沖縄県からの回答
対応して下さった辺野古新基地建設問題対策課のみなさんからは、以下のような回答をもらっています。

・今回の「集中協議」は、埋立承認の際に付した「協議」とは異なる。普天間移設問題全体についての協議となる。
・第三者委員会の報告書は精査を進めている。集中協議が精査に影響を与えることはない。県の方針に変わりはない。
・県民(国民)への説明は、協議後の記者会見で努めている。翁長知事や官房長官が説明してきたことが、集中協議の内容であろう。

「集中協議」に関する沖縄県の認識を再度明確に説明してもらい、一応一安心、といったところです。特に私たちの、「もし日本政府が、埋立て承認の留意事項に関する「協議」を行おうとしてら、きちんと断るのですね」という質問に対して、「そういう場合があったならきちんと断る」という態度を明確に示してもらいました。沖縄県の立場は確認できたと思います。


懸念、要望、私たちの取り組み
しかし今回の要請交渉で、私たちの懸念が払拭されたわけではありません。事実、懸念が深まったり部分もあります。それゆえ懸念を払拭する努力を私たち沖縄BDも行うべきだと考えてます。

まず1点目の懸念ですが、残念なことに、「集中協議」のスコープや位置づけを明記した文書は存在しない、ということが今回の交渉で分かりました。結局、明確な担保はない、といっていいかもしれません。(ちなみにトップ同士の協議の議事録等もないそうです、、、。記者会見で内容については説明しているというのですが、、。)

ここに沖縄県と日本政府がその解釈でもめている「普天間基地5年以内運用停止」の問題と同じような構造が見えてきます(沖縄タイムス記事(2015.04.25)を参照)(琉球新報記事(2015.8.23)を参照)。仲井真前知事が埋立を承認する際に日本政府に対して「5年以内運用停止」を要請し、日本政府はそれに取り組むことになっていました。しかしこの「5年以内運用停止」という要望の前提やスコープ、定義、その位置づけについて沖縄県と日本政府で明確に記載した文書等は存在せず、現在のグダグダ状態になっているわけです。

現在進行中の「集中協議」が、日本政府により辺野古新基地建設の強行の手続き/言い訳として利用されないように、私たち沖縄BDも注視し、沖縄県に協力していかなければと思います。

それから2点目の懸念は、今回対応して頂いた知事公室/辺野古新基地建設問題対策課を含む県の「事務方」と、県三役のコミュニケーションが必ずしもスムーズに行われていないのでは、という印象を持たざるをえなかったことです(これは、今回だけではなく、他に機会における県職員のやり取りのなかからも受けてきた印象でもあります)。「集中協議」についてきちんと知事公室の職員に伝えられているのかどうか、と思わせられるような回答が職員の方からありました。

勿論、県自体が大きな組織ですし、また政治的要素が強い問題だけに、全ての情報や意見がスムーズに伝わるとは思っていません。しかし知事公室という部署は最も三役と事務方の密接な情報・意志の伝達・理解が要求される場所であるはずです。特に要請を行う県民の立場からすると、県政全体が一丸となってこの問題に取り組んでいける体制を確立してもらい、示してもらいたいと思います。

それから3点目の懸念ですが、これはこの9月に予定されている翁長知事の国連人権理事会への参加と関係します(琉球新報記事(2015.07.23)を参照)。国連は、辺野古新基地建設や沖縄における米軍基地の集中にこれまで懸念を表明しており、これらの問題解決のために、沖縄側と日本政府による「協議」や日本政府からの説明を求めてきました(沖縄BDと他のNGOによる国連への要請、その要請に基づく国連と日本政府のやり取りについては、このブログを参照http://okinawabd.ti-da.net/e4128463.html)。日本政府は「対話」「協議」は行っている、説明は行っている、振興策を実施している、という回答を繰り返しています(日本政府からの辺野古新基地建設問題に関する国連への回答例はこちらから)。

私たちは、翁長知事の国連人権理事会への参加にあたり、日本政府が今回の「集中協議」をもって、また「協議」「対話」を通して説明責任を果たしている、基地建設は行う、と弁明するのではないかと懸念しています。翁長知事は、辺野古新基地建設反対の立場から、今回の「集中協議」について検証し、適切な評価を行い、国連に伝える必要があると思います。私たちも国連に働きかけてきた環境NGOの一つとして、可能な形で翁長知事を支援したいと思います。

長くなりましたが、以上です!

H.Y.


要望書: %E7%9C%8C%E7%9F%A5%E4%BA%8B%E5%AE%9B%E8%A6%81%E6%9C%9B%E6%9B%B8%EF%BC%88NACS-J%E3%80%81BD%EF%BC%89final-4.pdf (PDF: 91KB)

*この要望書では、菅官房長官の8月3日の記者会見について、沖縄タイムスのウェブ版の記事を引用し「車両による資材の搬入、実施設計、協議等、これについて提示する予定です」としています。しかし、沖縄タイムスと琉球新報の紙面版では「提示」ではなく「停止」となっています。沖縄県の職員からこの違いについて指摘がありました。ありがとうございました。

賛同団体リスト: %E8%B3%9B%E5%90%8C%E5%9B%A3%E4%BD%93%EF%BC%88%E7%9C%8C%E7%9F%A5%E4%BA%8B%EF%BC%89%EF%BD%86.pdf (PDF: 43.15KB)



















Posted by 沖縄BD at 11:27│Comments(0)
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