沖縄市サッカー場:國吉信義さん「行政・住民も監視を」の記事から考えられること

2015年05月09日/ 日米地位協定/ 環境協定/ 枯れ葉剤/ 基地返還跡地/ 汚染/ 沖縄県環境政策/ 沖縄防衛局

 さてさて遅くなってしまいましたが、沖縄防衛局の調査にコメントをくださっている國吉信義さんをサッカー場にお連れした時の記事が、タイムスに掲載されましたので、こちらで紹介します。
 記事は2つのポイントがあります。ちょうど防衛局の中間調査結果の発表の日であったので、そのデータを見ての件と、調査体制の件の2つのポイントです。
 
沖縄市サッカー場:國吉信義さん「行政・住民も監視を」の記事から考えられること

このブログ記事は、後者の調査体制の件です。前回の國吉さんの記事でもご紹介しましたが、國吉さんは米国の空軍マーチ基地で、汚染調査に携わっており、調査を監督官庁に監視される立場におられました。
 その國吉さんが、現在の沖縄市サッカー場の調査に対して、以下のような意見を記事で述べています。
”住民や環境保護団体が意見を言える仕組みがない防衛局の調査、ドラム缶に関する住民説明会も開かれていないと知った國吉さんは、「米国では考えられない」と批判した。
 米国では情報公開と住民参加が基本だ。さらに調査設計段階から連邦や州、郡の環境部局が携わる。日本のやり方では「調査が防衛局の勝手やり放題になりかねない。複数機関や住民が目を光らせ、調査を監視するシステムが必要だ」と警鐘を鳴らす。”


 これを受け、少し材料を集めて考えたことを書いてみました。
調査の「監視」とはなにか
 このような認識で、私たちも監視プロジェクトを続けているつもりです。では、調査の「監視」とはなにか、特に行政の監視とは何なのか、ということですが、そこはわかりにくいかもしれません。が、基本的には、実は私たちのしていることと変わりません。以前、こちらの記事(「沖縄県の実施する「周辺環境調査」の問題:これはレポートではない」)で紹介したFort Ordという浄化サイトの書類(下に埋め込みました)から、それをうかがい知ることができます。
 
 この書類は、監督官庁として、有害物質規制局(Department of Toxic Substances Control)から陸軍Fort Ord閉鎖基地環境コーディネーターにあてた手紙です。陸軍が実施した原状回復/フィージビリティ・スタディを精査した専門家の意見をまとめたもので、データの有効性の担保、調査区域の単位など、調査の要素の妥当性について問題を指摘し、より適切であると考えられる方法を提案し、文言はこう修正せよ、などの指摘まで書かれています。
 調査が科学的で妥当なものであるかどうか、常に専門家の目をもって指摘できる、ということが監視するシステムの基本的なあり方だと思います。

機関間のやりとりの可視化
 さらに重要なことは、このように機関間のやりとり自体が、ウェブで誰からもアクセスできるようにしているということだと思います。 監督官庁が機能を果たしているかも、市民が監視できるシステムである必要もあるからです。

 やりとりを可視化する、ということはあまり指摘されませんが、重要なことです。裏付けをもって、適切な要求を、しっかりとした形式(文章、文体、文書の形式)で行っているかどうかを監視されれば、緊張感をもって、質の高いやりとりがなされる可能性は高くなるでしょう。

 私たちのプロジェクトも基本的には同様のことをしています。専門家に調査の精査を依頼し、それを整理してとりまとめ、調査の実施者に伝え、メディアやウェブなどの手段で自分たちの主張を伝えるということです。

日本、沖縄で何が今できるか/一方、現状は
 日本の場合、基地汚染調査体制では、監督官庁がないことがまず問題ですが、それでもできることはあります。
それは、沖縄市や沖縄県が科学的知見を持って、沖縄防衛局に自らの調査の評価を提示することでしょう。現実をみてみると、沖縄市は途中までやっていましたが、市長が変わったらやめたようです。西普天間は、宜野湾市にそれをやるように要求しましたが、それはやらずに進めています。沖縄県は、新セクションをつくっても、すぐに現場に反映するべく姿勢はみえてきません。日-沖の政治的文脈からなる自己規制の土壌が崩れないように見受けられます。

 また、防衛局、沖縄県、沖縄市が「協議」の上、調査を進めていくとか、進めているといつもいっていますが、その部分をオープンにしていくことでしょう。「協議している」「要求している」とだけ、報告されてもどのようにそれが行われているかを可視化することが必要だと思います。
 私たちはその「協議」の公開を要求してきました。特に沖縄県には、協議のファシリテーターのような役割を果たしてもらいたい、議事録を作成してくれという要請もしたことがあります。(他の件でも、沖縄県は米国や日本政府とのやりとりなど、全て公開すべきだと思っています。沖縄県がどのような要求や交渉をしているのか、米国になめられないような書簡を出しているのか、その後、しつこく交渉しているのかなど、です。)

沖縄は主体的監視者になれるか
 メディアも市民も沖縄防衛局の「隠蔽」のストーリーを好みがちなので、沖縄県や市町村行政のチェックを怠りがちですが、政策提言としては、この部分が今後の基地環境行政のキモ、そして、日米地位協定改正や実の伴う環境協定の実現への確かな道筋であると考えます。
 監視主体として、相手に認識されるかどうかの能力をつけ、それを表に出していく、というたゆまぬ作業が沖縄には必要なのではないでしょうか。

 市民も待っていても理想的な法制度は上からおりてきてはくれないことを認識しなければならないと思います。米国でも、浄化プログラムへの住民参加は、スーパーファンドプログラムに住民参加に関する規定がないことから、環境防衛基金(Environmental Defense Fund)とニュージャージー州が EPA を相手取って起こした訴訟で得たものです。
 訴訟で環境行政が変わっていく米国とは違う手段で、どのように主体的な参加者となりうるのか。まずは、主体的な監視者となることが大事であるという、社会的・文化的土壌を耕すことが必要なのですが、未だできないでいるのが、現在の私たちであると考えています。

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Posted by 沖縄BD at 01:48│Comments(0)
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