<辺野古アセス>緊急学習会のレポート

2012年11月04日/ 辺野古アセス

 10月25日(木)に「防衛省『有識者研究会』報告書を解体する緊急学習会」(主催:沖縄ジュゴン環境アセスメント監視団)がありました。そのレポートです。
 日本自然保護協会の安部真理子さんとアセス監視団の真喜志好一さんからのレクチャー、今後の取り組みのためのディスカッションという構成でした。

<辺野古アセス>緊急学習会のレポート


日本自然保護協会の安部真理子さん
「普天間飛行場代替施設建設事業に関する有識者研究会とNGOの取り組み」

○「有識者研究会」の動きとNGOの対応
 まず、4月27日に発足した評価書の補正について防衛省が助言を受ける「有識者研究会」の動きとそれに対して、NGOがどのように対応していったかの説明がありました。

<辺野古アセス>緊急学習会のレポート


  →防衛省「有識者研究会」これまでの経過についてはこちらに埋め込んである 「『有識者研究会』これまでの経過」の資料を参照してください。

 有識者研究会の発足を知ってから、NGOはアセスの透明性と科学性を同研究会へ要求する文書を出し、会議や議事録の公開を要求してきましたが、その要求が聞かれないままに5回の会議と2回の現地視察が行われていったその過程が説明されました。
 そしてその中で東京のNGOが国会議員と協力し、防衛省にヒアリングを行っていったこと、また沖縄と東京のNGOで有識者研究会に知事意見の重要点について意見書を出していったこと、有識者研究会への「中間的整理」にも意見を出していった取り組みが紹介されました。安部さんもおっしゃっていたように、NGO側は防衛省・有識者研究会の動きに、迅速に能動的に対応していったと思います。その経過がわかりやすく紹介されていました。

○有識者研究会の「中間的整理」への評価〜「やってはいけない助言
その後、有識者研究会の「中間的整理」に対してのNGO意見を資料(→こちら)に用いて、「中間的整理」において有識者研究会が行っている助言についての疑問点が具体的に紹介されました。その中からいくつか。
①埋め立て土砂
 中間的整理では、埋め立て土砂として本土のダムの堆積土砂を用いるという環境保全の面から多くの問題を含んだ案が、評価書の補正というレベルの記述ではなく、新たな提案として出されています。またこれは有識者研究会の意見なのか防衛省の意見なのか明確ではありません。これは有識者として「やってはいけない」助言の一つ。
②ウミガメ
 NGOは、キャンプ・シュワブ前の海浜のウミガメ類の上陸・産卵に対する評価に関する評価が妥当でないという意見を書いています。有識者研究会は「ウミガメ類は、事業実施区域及びその周辺において、キャンプ・シュワブ海浜のような産卵・孵化には決して良い条件とは言えない砂浜にまで上陸し、産卵している状況にある。このことを踏まえれば、事業実施に伴うキャンプ・シュワブ海浜の消失に対する代償措置として、ウミガメ類の上陸・産卵・孵化にとってさらに条件の良い産卵場を提供することにより、ウミガメ類の保全に対しての積極的な提案にもなることから、その実施の可能性について検討を行うことが重要である。」と環境保全措置を提案していますが、人間から見て良好であろうと思われる場所が必ずしもウミガメにとって良好な海浜とは限らないという指摘。「ウミガメはお話できないのに」と安部さんは説明していました。
③海草藻類について
 海草の移植は、中城港湾(泡瀬地区)における例をはじめとしてことごとく失敗し、移植元の生態系のみならず移植先の生態系まで破壊しているとNGOや専門家からの指摘があるにも関わらず、海草藻場の積極的な造成を助言していること。この失敗例を成功例として辺野古に用いることは問題であるという指摘。
④ジュゴン
 これは事業ありきでの意見提案が出されており、矛盾が多い助言となっています。「中間的整理」では、絶滅のリスクが高い状態を認識しながら「事業の実施がこれをさらに悪化させないように対処する必要がある」との意見を出していますが、そのような対処が可能であるかの根本的な議論がないということが指摘されています。
 また、これは全体的なことにも関わることでもありますが、評価書以前の環境アセスのプロセスを有識者研究会の委員の先生は把握していないので、アセス前の現地技術調査、現況調査などによるジュゴンとその生息海域への攪乱についての考察がありません。
 問題の多い一連のアセス手続きについては「中間的整理」の全体に関するところでも指摘してありますが、有識者委員は、評価書以前のことについての状況を把握しての助言が必要だと思わされる部分です。

□ 真喜志好一(沖縄ジュゴン環境アセスメント監視団)さん
「補正評価書の縦覧に備えて」

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○有識者研究会にアセス法の専門家がいない
真喜志さんからは、まず有識者研究会の9名の有識者の中にアセス法に詳しい人がいないことが指摘されました。

○知事意見と「中間的整理」と実態の対比
 その後、「中間的整理」の生活環境に係わる助言の(1)航空機騒音について(2)低周波について(3)水環境について、を「知事意見」と「中間的整理」、さらに報道されているオスプレイ配備後に把握されている実態と対比することによる、「中間的整理」の問題点の指摘がありました。
  
 航空機騒音と低周波音については、オスプレイの騒音実態(琉球新報2012年10月25日)や、オスプレイの低周波音がアセス基準を超えている実態(琉球大学渡嘉敷健准教授による測定)の報道の紹介がされ、「中間的整理」の意見「(1)航空機騒音について 航空機騒音による影響について、沖縄の住宅は鉄筋コンクリート造の住宅が多く、このような住宅は他の地域に比べ遮音性が高く、遮音対策を行う点について有利ではないかと考える。」「(2)航空機の運航に伴う低周波音の物的影響について、沖縄の住宅は、窓等のサッシがしっかりしたものが多く、低周波音によるサッシのがたつきは少ないと考えるが、家屋の中については、他の地域と同様に引戸の襖や障子などがあり、建具等ががたつく可能性が考えられる」)は疑問であり、意味をもたないものであることが整理されて説明されました。

 また、水環境については、NGO意見でも「『中間的整理』の全体に関すること」でも「海域については、海域に大きな構造物を作ることによる潮流の変化の予測が鍵を握る重要な要因の一つ」と書かれているように、この部分がくるうと、全てダメになるという重要な部分です。
 それにも関わらず、「中間的整理」では「水の濁りなどの予測の基本となる潮流シミュレーションについては、これまでの確認においては、概ね現在のシミュレーション技術に合意していることを確認しており、予測条件も概ね適切に設定され、着目すべきポイントについても、流れの状況が概ね的確に再現されていると考えられる」と一文に3回「概ね」が使われている意見が書かれています。真喜志さんは科学者の書く文であろうか、と疑問を投げかけていました。
 そして水象(潮流)の虚偽記載で予測・評価も虚偽になる項目と頁数をあげ、「有識者研究会は合計2602頁を書き直しさせろ」という要求をされていました。
  これがそれを視覚化した真喜志さんのパワーポイントの1枚です。
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 そして、補正評価書を迎え撃つために以下の呼びかけがなされました。

・ さらなる勉強会を重ねて…
・ 稲嶺名護市長、仲井真県知事部局に補正評価書への意見を出すよう働きかけ、
・ 沖縄県環境影響評価審査会に補正評価書への意見を出すよう働きかけ、
・ 政府による埋め立て承認願いを出させないように・・準備に入ろう

 その他、オスプレイ撤去、高江のオスプレイ・パッド建設阻止、普天間基地閉鎖の動きと連動しての流れを作っていくことの必要性を述べられました。

 質疑応答やディスカッションでは、補正書の公告縦覧や公有水面埋め立てのスケジュールの確認をして取り組みのロードマップを描く必要性、ジュゴン訴訟などの国際的な取り組みとの連関など、今後の計画を話し合い、会はしめられました。

 今後の取り組みについては、また情報があがり次第、ご報告します。

 報道はQABのこちら→辺野古「環境影響評価」有識者の中間報告の問題点確認(2012.10.26)

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左から名護から駆けつけたヘリ基地反対協の安次富さん、同じく名護から浦島さん、私、アオサンゴ作業部会の牧志さん。皆さんお疲れ様!



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Posted by 沖縄BD at 00:50│Comments(0)
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