評価書の中身(2):ジュゴン「複数年調査」「辺野古沖確認」

2012年01月03日/ 辺野古アセス

 こちらはジュゴンに関する報道内容です。

○「複数年調査」
 ジュゴンの調査が単年調査であったことは、準備書への意見でも多くの専門家、市民団体、市民などから批判されており、準備書の知事意見でも「21 ジュゴンについて(1)ジュゴンについては、調査範囲に辺野古地先海域を含めた複数年の調査を実施すること。」と述べられています。
 沖縄防衛局は、環境影響評価の手続きには定められていないが、アセス手続きの事後調査や環境監視調査に生かしたいとして、2009年4月、準備書提出後に「現況調査」を開始しました。防衛局はその時点では「評価書には反映させない」と説明しています(沖縄タイムス「県、現況調査を許可 辺野古移設知事「止める理由ない」5項目昨年に続き」(『沖縄タイムス』2010年6月30日)。上記記事で、沖縄大学の桜井国俊教授は「準備書を出し、アセス調査は終わっているはず。県知事が求めた複数年調査として、アセスを補強する可能性がある」と手続きを経ずに調査の結果だけを追加する違法性を指摘し「知事は調査の位置付けについて説明を求め、許可するかしないか、きちんと判断すべきだ」と指摘しています。
 この複数年調査についての報道は以下のとおりです。 

・アセス評価書 ジュゴン「複数年調査」(琉球新報、2011.12.26)→こちら
 【東京】米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に向け、防衛省が県に提出予定の環境影響評価(アセスメント)の評価書で、同省が2009年に県側に求められていたジュゴンの複数年調査実施に対し「調査済み」と提示することが分かった。09年の準備書提出以降も沖縄防衛局がジュゴンの調査を継続していたとして、県の要望を満たしていると回答する。
 ジュゴンをめぐっては、沖縄防衛局が09年に県などに提出した準備書で、環境省の調査報告書や同アセスの方法書に記載されていた名護市辺野古沖でのジュゴン1頭の発見記録を削除していたことが問題となった。ジュゴンの複数年調査の要望を受け、沖縄防衛局は調査を継続させており、今回の評価書で「複数年調査した結果、代替施設建設による影響は少ない」と示す。
 県は準備書に対し、「ジュゴンの複数年調査や個体数『3頭』の根拠の提示」などを求めていた。
 一方、辺野古沿岸部については名護市が「移設につながる手続きは認めない」として現況調査の申請を拒否。調査は代替施設建設予定周辺地域の全域では行われておらず、沖縄防衛局が主張する「複数年の調査済み」が科学的にどの程度信用度があるかは不明。
 県はジュゴンのほか、準備書に対し(1)住宅地上空の航空機飛行禁止や飛行高度制限に対する協定の検討(2)V字形滑走路による地元上空飛行回避で騒音や低周波が「相当低減される」という調査結果の根拠(3)辺野古集落に近いヘリパッド建設に再考を促す「地元意見への尊重」―などを求めている。(松堂秀樹)

この「現況調査」については、合意してないプロジェクトの記事「仲井真県知事が受理する「行政手続き」無視のご都合主義」(→こちら)を参照してください。この「複数年調査」が、法を無視して強硬に実施され名護市は許可をしておらず、仲井真県政が容認したものであること、「行政手続き」の無視と傍若無人の強硬姿勢がまかり通ってきたことを、上述沖縄タイムスの記事を引きながら指摘し、今回の評価書に対する知事や県の姿勢の批判につなげています。

○ジュゴン辺野古沖確認
・ジュゴンの遊泳初確認 辺野古崎沖調査(琉球新報、2011.12. 29) →こちら
 沖縄防衛局が28日未明に県に搬入した米軍普天間飛行場代替施設建設のアセス評価書は、新基地建設は大規模埋め立てにもかかわらず「環境保全上、特段の支障はないと判断」と結論付けた。準備書まで滑走路1600メートルで両端のオーバーラン100メートルとしていたが、評価書で米軍所用を理由にオーバーランを300メートルに拡張、滑走路を1200メートルに短縮した。
 新たに、低周波音による環境影響で名護市安部で環境基準値を超える予測値が初めて記録された。
 絶滅危惧種のジュゴンの調査では、これまでの嘉陽沖に加え、2010年度に移設先の辺野古崎沖で遊泳している姿が初確認された。開発段階で死亡事故を多発し、12年夏にも普天間に配備計画がありながら、これまで日本政府が配備を否定してきた海兵隊主力輸送機のMV22オスプレイも初めて対象機種に載った。

・「ジュゴン辺野古沖確認 09,10年度調査 結果と評価に矛盾」(琉球新報、2011.12. 29 ウェブ掲載なし)
 
辺野古沖や大浦湾で泳ぐジュゴンの姿が確認された、2009年度、10年度の防衛省による航空機追跡調査。準備書段階までは「主に嘉陽沖で確認」「辺野古前面の藻場を利用していない」と判断されてきたが、同省は自らの調査で辺野古地先での遊泳を確認したことになる。
 しかし沖縄防衛局で開かれた記者対象の説明で「追跡調査に加え、水の流れや餌場などへの影響も含め、現在確認されている地域での影響は少ないと評価している」との認識を示し、調査結果と評価に矛盾を残す形となった。
 また準備書で示された沖縄本島沿岸部での「個体数は3頭」との根拠が求められていた知事意見に対しては、「調査の中で確認したのが3頭だったため、3頭と推定した」と答えるにとどまった。
 アセス法に基づいた07年度、08年度調査は、月に1回(7日間ずつ)という頻度で、水中ビデオ撮影やパッシブソナー調査が行われていたが、新たな追加調査は自主的に行われたため、前述の2調査は未実施、回数も減っている。
 内容、回数ともに少ない調査の中で、辺野古沖でジュゴンが確認されたことについて、元WWF(世界自然保護基金)ジャパン主任の花輪伸一さんは「防衛省が事前調査する前は辺野古沖でかなりの目撃例があった。目撃頻度が減ったのは調査で環境が悪くなったからだ。空港を造ったら次どうなるかということまで予測するのが環境アセス。政府は影響がないという結論にむすび付けるために調査結果をこじつけている」と指摘している。


上記記事はこちら↓
評価書の中身(2):ジュゴン「複数年調査」「辺野古沖確認」

ジュゴンの評価書の内容については、「琉球新報」の識者談話(2011.12.30)で、花輪伸一さん(元WWFジャパン主任)が以下のコメントを出しています。
疑わしい科学的正当性
 辺野古アセスは方法書で事業内容をはっきりさせず、環境への影響が大きいオスプレイ配備も隠し続けていた。環境調査の方法にも、手続きに問題があり、調査結果の科学的正当性も疑わしい史上最低最悪のアセスといえる。
 辺野古アセスではジュゴンに対する影響や地域住民の生活環境にどのように悪影響を与えるかを評価することが非常に大切だ。
 一般的なアセスは方法書で調査方法を示し地域住民や専門家の意見を受けて調査方法を確定する。しかし辺野古沖の調査では方法書手続き前に事前調査を開始した。ビデオカメラ等を112ヵ所に設置するなど乱暴な方法で海域を攪乱し、ジュゴンに悪影響を与えた。
 評価書では付近にジュゴンが生息していないので建設に影響がないと結論付けているが、海域が攪乱されて移動したと解釈すべきだ。そうでなくては調査以前は辺野古沖で目撃されていたジュゴンがなぜ目撃されなくなったのか、最良の生息域の辺野古からなぜ嘉陽や古宇利に移動しているのか説明がつかない。
 辺野古アセスは手続きがアセス法の精神から逸脱している上に、調査方法を含めて非科学的だ。防衛省が軍事基地を造るためにこのアセスを強行するならば、日本のアセス制度は壊されてしまうだろう。



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Posted by 沖縄BD at 02:08│Comments(0)
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